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2022.12.15

大都市圏オフィス需要調査 2022秋②働き方とワークプレイス編

~サテライトオフィス導入率は約 3 割、地方展開の可能性も~

1. はじめに

コロナ禍を機にテレワークが急速に普及し、場所や時間に捉われない柔軟な働き方が定着しつつある。それにともない、企業のオフィス需要にも変化がみられるようになっている。

ザイマックス不動産総合研究所では2016年秋より、全国の企業に対してオフィス利用の実態や働き方に関するアンケート調査を半年に1回行い、オフィス需要との関係について継続的に分析を行ってきた。本レポート「②働き方とワークプレイス編」は、その第13回調査結果のうち、主に企業のテレワークの利用実態やワークプレイス戦略などを示す結果をまとめたものである。なお、同日公表の「①需要動向編」(*1)では、オフィス需要の実態と今後の方向性を示す結果をまとめている。

主な調査結果
  • ・ 何らかのテレワークする場所を整備していると回答した割合は69.2%、特にサテライトオフィスは28.5%と過去最高の導入率であった。
  • ・ コロナ禍発生以前と比べ、従業員のパフォーマンスが「上がった」と回答した割合は15.6%、「下がった」は14.1%で、前回調査の結果から改善された。
  • ・ ワークプレイス戦略の見直しの意思があると回答した割合は63.4%を占め、メインオフィスの施策として「コミュニケーションのための場づくり、集まるための機能を重視する」(48.1%)など、ハイブリッドワークを前提とした施策に関心がある。
  • ・ 今後取り組みたいテレワークする場所に関する施策として、「在宅勤務制度」の導入意向(39.8%)は現在の導入率と比べて減少している一方、「サテライトオフィス」(29.8%)は現在と同程度のニーズがある。
  • ・ 地方でのワークプレイス展開に関する施策について、興味があると回答した割合は36.9%であり、「リゾート地などで一時的に働けるワーケーション施設を整備・利用する」(52.1%)、「地方のサテライトオフィスをサービス利用する(一時的・定常的)」(49.0%)といった施策に関心が高い。また、これらの施策による「従業員満足度・ワークライフバランス向上」(68.9%)といったメリットに期待している。

2. 調査結果

2.1. テレワークの実態と働き方

従業員がテレワークする場所について、「在宅勤務制度」、「専門事業者等が提供するサテライトオフィス(*2)等」、「自社が所有・賃借するサテライトオフィス等」の3つのうち1つ以上を整備していると回答した割合は69.2%であった【図表1】。

*2 サテライトオフィス…メインオフィスや自宅とは別に、テレワークのために設けるワークプレイスの総称。専門事業者がサービス提供するものや企業が自前で設置するものがある。

【図表1】何らかのテレワークする場所を整備している割合

テレワークする場所ごとに導入率をみると、コロナ禍の影響を受けて大きく伸びた「在宅勤務制度」は今回60.0%と、頭打ち感がみられる。一方、サテライトオフィスは28.5%と、過去最高の導入率となった【図表2】。

【図表2】在宅勤務制度とサテライトオフィスの導入率

在宅勤務を導入している企業に対して、全従業員に占める在宅勤務を利用できる人(対象者)と在宅勤務を実際に利用している人(利用者)の割合を聞き、「100%」「50%以上100%未満」「0%超50%未満」「0%」の4つに分類した【図表3】。

在宅勤務の対象者については、40.1%が「100%」と回答し、「50%以上100%未満」(36.0%)と合わせると、従業員の半数以上を在宅勤務の対象者としている割合は全体の76.1%となった。在宅勤務の利用者についても、従業員の半数以上が利用している割合が57.5%と、制度があるだけではなく実際に利用もされている実態が明らかとなった。

【図表3】全従業員に占める在宅勤務の対象者と利用者の割合

一方、サテライトオフィスについては、対象者が全従業員の半数以上であると回答した割合は58.2%を占めていたものの、利用者では20.3%にとどまり、対象者の割合と利用者の割合の間でギャップがみられた【図表4】。背景として、サテライトオフィスは多くの場合、働く場所の一つとして導入されており、対象者に対して座席数が少ないことや、コロナ禍においては不特定多数との接触を避けられる在宅勤務を選択する従業員が多いことなどが考えられる。

【図表4】全従業員に占めるサテライトオフィスの対象者と利用者の割合

そのほかの働き方に関する取り組みについては、「どこでもメールやスケジュールがチェックできる仕組みの活用(モバイルワーク)」(74.5%)や「外出時でもオフィス同様のネットワーク環境で仕事ができる仕組みの活用(モバイルワーク)」(64.9%)、「モバイルワークができるように、従業員にIT端末を支給」(60.4%)といったICT投資の施策が上位に並んだ【図表5】。

【図表5】働き方に関して少しでも取り組んでいる施策

2.2. 働き方の評価と課題

コロナ禍発生以前と比べ、従業員のパフォーマンスがどのように変化したかを聞いた結果、今回の調査では「変わらない」が62.7%と過半数を占めた【図表6】。変化があったなかでは、「上がった」が15.6%、「下がった」が14.1%と拮抗している。2021年秋調査と比較すると、パフォーマンスの評価は改善しており、コロナ禍発生を機にテレワークを導入した企業も、徐々に環境整備や運用ルール策定などを整え、新しい働き方でパフォーマンスを向上させていると考えられる。

【図表6】コロナ禍発生以前と比較した従業員のパフォーマンス

テレワーク運用について困ったことや課題を聞いたところ、「コミュニケーションが難しい」(57.0%)がもっとも多く、2021年秋調査と比較して課題感が増している【図表7】。次いで「マネジメント(業務、勤怠、評価等)が難しい」(42.1%)、「職種等によりテレワークできる人とできない人の不公平感がある」(30.2%)が並んだ。また、「従業員の生産性・業務効率の低下」は2021年秋調査から10.5ポイント減少しており、【図表6】でも確認した通り、テレワークで働く環境が整ってきたと考えられる。

【図表7】テレワーク運用の困ったことや課題

2.3. ワークプレイス戦略の見直し

コロナ禍の発生を機に、企業は出社率のコントロールやテレワークの活用といった課題に直面し、ワークプレイスを総合的に見直す必要に迫られることとなった。そこで、ワークプレイス戦略の見直しに着手しているかどうかを聞いた結果が【図表8】である。これをみると、「着手していないし、する予定もない」(36.6%)がもっとも多いものの、残りの63.4%は、将来的にワークプレイス戦略を見直す意思を持っていることがわかった。

【図表8】ワークプレイス戦略の見直しの着手状況

ワークプレイス戦略見直しの着手状況別に「①需要動向編」【図表7】の今後のオフィス面積の変化をみた結果が【図表9】である。ワークプレイス戦略見直しに「半年~1年以内に着手予定」と回答した企業のうち、半数以上がオフィス面積を変化させる意向があることがわかった。

【図表9】<ワークプレイス戦略見直しの着手状況別>今後のオフィス面積の変化

また、ワークプレイス戦略の見直しの意思がある(【図表8】)企業のみ抽出し、メインオフィスについて関心のある施策を聞いたところ、前回調査に引き続き「コミュニケーションのための場づくり、集まるための機能を重視する」(48.1%)が最も多かった。次に「リモート会議用に個室やブースを増やす」(44.0%)が続き、テレワークと出社を使い分けるハイブリッドな働き方を前提とした施策が上位となった【図表10】。

【図表10】メインオフィスについて関心のある施策

同じくワークプレイス戦略の見直しの意思がある企業に、ワークプレイス戦略の見直しに関して困ったことや課題を聞いた結果が【図表11】である。「出社率のコントロール・最適化が難しい」(37.0%)が最も多く、前回調査から6.2ポイント増加している。次が「オフィスの最適なレイアウトをどう考えるか」(31.5%)となっており、メインオフィスのあり方や運用に関するものが上位となった。また、「適正なオフィス面積がわからない」や「BCP対策をどのようにしていけばいいかわからない」など多くの項目が前回調査から伸びている。

【図表11】ワークプレイス戦略の見直しに関して困ったことや課題

2.4. 働き方とワークプレイスの方向性

ここからは、働き方やワークプレイスについて今後の方向性を確認していく。

【図表12】は、働き方に関する施策について、【図表5】で現在導入済みと回答した割合に、現在は未導入だが今後取り組みたいと回答した割合(未導入かつ今後の意向あり)を積み上げたものである。「資料・書籍等のペーパーレス化」は未導入かつ今後の意向ありの割合が17.3%であり、現在の導入率(53.0%)と合計すると、将来的に7割以上が取り組む可能性があることがわかる。そのほか、現在2割前後が導入済みの「従業員のスキルアップ・研鑽・リカレント教育の支援」「フレキシブルなオフィスレイアウトの導入」「従業員満足度(ES)調査の実施」に加え、現在の導入率は低い「地方などオフィス拠点から遠方に住んでいても働ける制度の整備・活用」「地方や海外など遠方でも働けるワーケーション制度の整備・活用」といった先進的な施策も、未導入かつ今後の意向ありの割合が10%以上あり、導入率の伸びが予想される。

【図表12】働き方に関して今後取り組みたい施策

また、現在の状況に関わらず、テレワークする場所に関して今後(1~2年程度先まで)取り組みたい施策について聞いた結果が【図表13】である。現在60.0%が導入している「在宅勤務制度」の導入意向は39.8%に減少している一方、「サテライトオフィス」は現在と同程度のニーズがあることがわかる。

【図表13】テレワークする場所に関して今後取り組みたい施策

ワークプレイス戦略見直しの意志がある企業のみに絞ると、今後取り組みたい施策(意向)は、在宅勤務制度が48.7%、サテライトオフィスが45.4%と、2つの施策の導入意向はほぼ同程度となった【図表14】。

【図表14】ワークプレイス戦略見直しの意思がある企業の、
テレワークする場所に関して今後取り組みたい施策

ここからは、今後サテライトオフィスを利用したいと回答した企業の利用ニーズを深堀りする。

まず、サテライトオフィスを利用したい理由を聞いた結果が【図表15】である。「従業員の通勤・移動時間の短縮のため」(64.2%)と「在宅勤務のデメリット(集中しづらい、同居家族、家が狭い等)をカバーするため」(63.3%)が6割を超えた。続いて「従業員のワークライフバランス向上」(48.1%)が上位にあがったほか、「仕事と育児・介護などの両立支援」(31.3%)は前回調査から伸びているなど、従業員の働きやすさをサポートする役割が期待されている様子がうかがえる。

【図表15】今後サテライトオフィスを利用したい理由

次に、今後サテライトオフィスを利用したい意向がある企業に対して、利用したいサテライトオフィスのタイプを聞いた結果が【図表16】である。もっとも人気のあるタイプは前回調査に引き続き「個人作業のための個室・ブース等を他社とシェアするタイプ」(66.7%)であった。また、「自社の社員のみで専用的に利用するタイプ」は52.1%と、対照的な機能を持つ「他社社員とオープンな空間を共有するコワーキングタイプ」(26.2%)の約2倍となった。

【図表16】利用したいサテライトオフィスのタイプ

さらに、地方(現在の本社所在地以外のエリア)でのワークプレイス展開について興味のある施策や期待するメリットについて聞いた。興味のある施策については、36.9%が、いずれかの施策に「興味がある」と回答した【図表17】。

【図表17】地方でのワークプレイス展開に関する施策への興味の有無

地方でのワークプレイス展開に興味がある企業は「リゾート地などで一時的に働けるワーケーション施設を整備・利用する」(52.1%)、「地方のサテライトオフィスをサービス利用する(一時的・定常的)」(49.0%)といった施策への関心が高い【図表18】。

【図表18】地方でのワークプレイス展開に関して興味のある施策

また、地方でのワークプレイス展開に期待するメリットとしては「従業員満足度・ワークライフバランス向上」が68.9%と最も多く、次いで「地方人材の採用」(48.1%)となった【図表19】。

【図表19】地方でのワークプレイスを展開に期待するメリット

3. おわりに

今回の調査では、コロナ禍で急拡大したテレワークが現在も引き続き利用されていることがわかった。特に、在宅勤務制度の導入率はコロナ禍発生から年月が経ち頭打ち感があるのに対し、サテライトオフィスの導入率は増加を続けていた。「①需要動向編」で確認したとおり、多くの企業はコロナ禍収束後も出社とテレワークを使い分けるハイブリッドワークを継続する意向であり、今後もテレワークの場所を拡充する流れは進む可能性がある。

一方で、テレワークにおけるコミュニケーションへの課題感が増している状況も明らかとなった。ワークプレイス戦略の見直しを検討する企業は、こうした課題に対処するためメインオフィスの機能更新に高い関心を持っている。今後はテレワークする場所の整備により従業員の働きやすさをサポートすると同時に、コミュニケーションなどの機能に特化したメインオフィスの在り方を模索していくことになるだろう。また、地方へのワークプレイス展開に興味を持つ企業も一定数みられ、各企業のワークプレイス戦略はますます多様化していくと予想される。メインオフィスとテレワーク拠点からなるワークプレイス全体を、企業がどのように構築していくのか、引き続き調査していく。

調査概要

調査期間

2022年10月18日~10月30日

調査対象

・ザイマックスグループの管理運営物件のオフィスビルに入居中のテナント

・法人向けサテライトオフィスサービス「ZXY(ジザイ)」契約先

・ザイマックスインフォニスタの取引先

上記合計 47,115件

有効回答数

1,566件 回答率:3.3%

*事業所単位で集計しているため、同一企業であっても事業所が異なれば別の回答として処理している。

調査地域

全国(東京都、大阪府、愛知県、福岡県、神奈川県、埼玉県、千葉県、その他)

調査方法

メール配信による

調査内容

  • 入居中オフィスについて
  • ・ 契約形態/オフィス種類/所在地/契約面積/賃料単価(共益費込)/在籍人数/出社人数/座席数
  • ・ 出社率(実態・意向)
  • オフィス需要の変化(2021年10月~2022年9月)
  • ・ 面積の変化とその内容・理由
  • ・ 賃料単価の変化
  • ・ 在籍人数の変化
  • コロナ禍の働き方について
  • ・ 働き方に関する施策の取り組み状況/テレワークの場所に関する施策の取り組み状況/在宅勤務・サテライトオフィスの整備状況
  • ・ 従業員のパフォーマンスの変化
  • ・ テレワーク運用の困ったことや課題
  • ・ ワークプレイス戦略の見直しの着手状況/困ったことや課題
  • 今後のオフィス需要の見通し
  • ・ 景況感/注力したいテーマ
  • ・ 面積の意向
  • ・ オフィスに関する施策の意向/働き方に関する施策の意向/テレワークの場所に関する施策の意向/ 利用したいサテライトオフィスのタイプ/利用したい理由
  • ・ 地方でのワークプレイス展開に関して興味のある施策/地方でのワークプレイス展開に期待するメリット
  • 企業属性
  • ・ 業種/従業員数/従業員の平均年齢
  • 回答者属性
  • ・ 所属部署/役職


《回答企業属性》



参考資料

【参考1】<従業員数別>在宅勤務制度とサテライトオフィスの導入率

【参考2】<オフィス所在地別>在宅勤務制度とサテライトオフィスの導入率

【参考3】<業種別>在宅勤務制度とサテライトオフィスの導入率

【参考4】<従業員数別>ワークプレイス戦略の見直しの着手状況

【参考5】<オフィス所在地別>ワークプレイス戦略の見直しの着手状況

【参考6】<業種別>ワークプレイス戦略の見直しの着手状況



《関連調査》

【大都市圏オフィス需要調査】
・2016年秋調査(第1回)「大都市圏オフィス需要調査2016<需要動向編>」…2017年1月12日公表
・2016年秋調査(第1回)「大都市圏オフィス需要調査2016<働き方の変化とオフィス編>」…2017年1月30日公表
・2017年春調査(第2回)「大都市圏オフィス需要調査2017<需要動向編>」…2017年8月2日公表
・2017年秋調査(第3回)「大都市圏オフィス需要調査2017秋」…2017年12月7日公表
・2018年春調査(第4回)「大都市圏オフィス需要調査2018春」…2018年7月3日公表
・2018年秋調査(第5回)「大都市圏オフィス需要調査2018秋」…2018年12月18日公表
・2019年春調査(第6回)「大都市圏オフィス需要調査2019春」…2019年6月26日公表
・2019年秋調査(第7回)「大都市圏オフィス需要調査2019秋」…2019年11月27日公表
・2020年春調査(第8回)「大都市圏オフィス需要調査2020春(6月実施)」…2020年7月29日公表
・2020年秋調査(第9回)「大都市圏オフィス需要調査2020秋」…2020年12月2日公表
・2021年春調査(第10回)「大都市圏オフィス需要調査2021春」…2021年6月9日公表
・2021年秋調査(第11回)「大都市圏オフィス需要調査2021秋」…2021年12月22日公表
・2022年春調査(第12回)「大都市圏オフィス需要調査2022春①需要動向編」…2022年6月15日公表
・2022年春調査(第12回)「大都市圏オフィス需要調査2022春②働き方とワークプレイス編」…2022年6月15日公表
・2022年秋調査(第13回)「大都市圏オフィス需要調査2022秋①需要動向編」…2022年12月15日公表

【働き方とワークプレイスに関する首都圏企業調査】

【トピックレポート】
・「経営課題としてのワークプレイス戦略」…2021年3月22日公表


レポート内のグラフに関して
・構成比(%)は、小数点第2位を四捨五入しているため内訳の合計が100%にならない場合がある。
※当レポート記載の内容等は作成時点のものであり、正確性、完全性を保証するものではありません。
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参考:働き方×オフィス 特設サイト

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