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2022.03.03

働き方とワークプレイスに関する首都圏企業調査 2022年1月

~刻々と変化する状況をデータで追う~

2020年春の新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受け、政府が時差出勤やテレワーク等を推奨したことにより、多くの企業やオフィスワーカーは働き方の見直しを余儀なくされた。なるべく自宅から出ず、人に会わずに働くという制約は、在宅勤務をはじめとするテレワークの推進を半ば強制的に促したとみられ、今日まで働き方改革の文脈において行われてきたワークプレイスに関する議論を活発化させる契機ともなっている。

ザイマックス不動産総合研究所(以下、ザイマックス総研)では、企業のオフィス需要を可視化するために、全国レベルの「大都市圏オフィス需要調査」を2016年より年2回、継続的に実施している。また特に首都圏の企業を対象に、2020年8月より合計4回、コロナ禍のなかでの働き方の現状や課題、施策についてのアンケート調査(以下、2020年8月調査、2020年12月調査、2021年1月調査、2021年7月調査)を行った【参考】。コロナ禍で状況が日々変化していくなか、多くの企業が出社率を制限し、出社とテレワークのバランスを試行錯誤している様子が明らかになった。

今回は、2022年1月27日~2月6日にかけて首都圏の企業を対象に行った第5回調査(以下、2022年1月調査)の結果を公表する。この調査では、現在の出社率やテレワーク実施状況に加え、コロナ禍収束後のワークプレイスに対する考えについてたずねた。

【参考】都心5区の人流、新規感染者数、緊急事態宣言・
まん延防止等重点措置の発令時期と調査時期の関係

主な調査結果

    1. オフィスとテレワークの利用状況

  • ・ 現在出社率の平均値は57.4%であった。
  • ・ 在宅勤務は約9割の企業が、サテライトオフィスは約4割の企業が導入している。
  • 2. コロナ禍収束後のオフィスのあり方

  • ・ コロナ禍収束後の出社率を50%未満にしたい企業の割合(「0%」と「0%以上50%未満」の合計)は24.5%であった。
  • ・ コロナ禍収束後に少しでもテレワークを行う意向がある企業は74.1%と、全体の約7割を占めた。
  • ・ オフィスの面積は、「縮小したい」(19.5%)が「拡張したい」(6.0%)を上回った。
  • ・ メインオフィスにおいて興味のある施策としては、コミュニケーションのための機能や、テレワークに対応するための機能などが上位に挙がった。
  • ・ メインオフィスを選ぶ際に興味がある性能・付加価値は「安心安全への配慮(防犯、防災性能、耐震性等)」(62.4%)が最も多かった。

【関連調査】
2021年12月22日公表「大都市圏オフィス需要調査2021秋

1. オフィスとテレワークの利用状況

企業に対し、現在の出社率(全員が出社した場合を100%とする)をたずねたところ、「100%(完全出社)」は11.3%と約1割にとどまっており、9割近くの企業が出社率を制限していた【図表1】。また、平均値は57.4%だった。

【図表1】現在出社率(ヒストグラム)(n=266)

現在の出社率について、「0%」「0%超50%未満」「50%以上100%未満」「100%」の4つに分類し、過去調査からの推移をみたものが【図表2】である。コロナの感染拡大が収まっていた2020年12月調査においては出社率を50%以上としている企業が多い。一方で、緊急事態宣言が発出された直後に行った2021年1月調査では、出社率を50%未満に制限している企業がほかの調査時期と比較して多い。その後の2021年7月調査、2022年1月調査では、出社率50%未満に制限している企業が約4割と大きな変化はみられなかった。

【図表2】現在出社率の推移

在宅勤務の状況についてたずねたところ、「導入している」企業が全体の86.1%を占めた【図表3】。過去の調査と比較しても大きな差はみられず、引き続き在宅勤務が行われている様子がみてとれる。

【図表3】在宅勤務の導入状況


サテライトオフィス(*1)の導入状況をたずねたところ、「導入している」と回答した企業が38.3%と、全体の約4割を占めた【図表4】。

*1 サテライトオフィス…メインオフィスや自宅とは別に、テレワークのために設けるワークプレイスの総称。専門事業者がサービス提供するものや企業が自前で設置するものがある。

【図表4】サテライトオフィスの導入状況

2. コロナ禍収束後のオフィスのあり方

2.1. コロナ禍収束後の出社率の意向

コロナ禍収束後に目標としたい出社率(将来意向)を、全員が出社した場合を100%としてたずね、「0%」「0%超50%未満」「50%以上100%未満」「100%」の4つに分類した【図表5】。コロナ禍収束後に出社率を「50%未満」にしたい企業の割合(「0%」と「0%超50%未満」の合計)は24.5%、「50%以上100%未満」にしたい企業は49.6%、「100%」つまり完全出社にしたい企業は20.3%であった。

【図表5】コロナ禍収束後の出社率の将来意向

さらに内訳を細かくみたところ「100%(完全出社)」(20.3%)が最も多く、次いで「50%~」(19.2%)であった【図表6】。出社率の将来意向の平均値は64.5%となった。また、少しでもテレワークを行う意向がある企業は74.1%と、全体の約7割を占めていた。このうち、「0%(完全テレワーク)」(2.3%)を除いた71.8%の企業は、テレワークと出社を使い分ける企業であるといえよう。

【図表6】コロナ禍収束後の出社率の将来意向(ヒストグラム)(n=266)

2.2. コロナ禍収束後のメインオフィスの意向

コロナ禍収束後、多くの企業がテレワークを行う一方で、メインオフィスに求める価値はコロナ禍以前とは異なるものになってくるだろう。そこで、コロナ禍収束後のメインオフィスについて、企業がどのように考えているのかをみていく。

まず、面積の意向についてたずねたところ、「縮小したい」(19.5%)が「拡張したい」(6.0%)を大きく上回った【図表7】。この傾向は過去4回の調査とおおむね同様である。それぞれの理由をたずねたところ、「縮小したい」理由としては、テレワークによる必要面積減少のほかに、コスト削減を挙げる企業もみられた。「拡張したい」理由としては、人員増加を挙げる企業が多かった。また、「変えない」理由としては、出社人数が減ってもソーシャルディスタンスを確保する必要がある、テレワークを行わないため必要面積が変わらない、といった回答のほか、既に縮小済みであるといった理由も多く挙げられた。2021年1月調査と比較して10ポイント近く「縮小したい」が減少しているが、その背景の1つとして、コロナ禍発生後続くテレワークの影響を受け、既にオフィスの縮小を行った企業の存在があると考えられる。

【図表7】コロナ禍収束後の面積の意向

コロナ禍収束後のメインオフィスについて、興味のある施策をたずねたところ、コミュニケーションのための機能や、テレワークに対応するための機能などが上位に挙がった【図表8】。ザイマックス総研が行った首都圏オフィスワーカー調査(*2)においても、出社のメリットとして「コミュニケーションがとりやすい」が挙がっていることや、テレワークの不満として「コミュニケーションがとりにくい」ことが挙がっていることから、コロナ禍収束後のメインオフィスはコミュニケーションの場としての機能が重視されていくと考えられる。

*2 2021年12月17日公表「首都圏オフィスワーカー調査 2021

また、過去調査と比較すると、「健康や感染症対策に配慮したオフィス運用に見直す(衛生管理等)」や「従業員の出社状況を把握する(座席を予約制にする等)」といった項目が伸びており、コロナ禍収束後に向けてオフィス内の環境や運用体制を整えようとしている企業が増えていることがわかる。

【図表8】コロナ禍収束後に興味のあるメインオフィスの施策

最後に、メインオフィスを選ぶ際に興味がある性能・付加価値をたずねたところ、約6割の企業が「安心安全への配慮(防犯、防災性能、耐震性等)」と回答した【図表9】。「ウェルネスへの配慮(健康性、快適性等)」も約4割の企業が回答しており、多くの企業でワーカーが安心して健康的に働ける環境を求めていることがあきらかとなった。

【図表9】メインオフィスを選ぶ際に興味がある性能・付加価値(n=266)

3. おわりに

2020年春以降、新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、出社の制限やテレワークの導入、時差出勤の実施など、企業はさまざまな対応を行ってきた。結果的に、これまで漸進的であった働き方改革の歩みは加速した。

今回の調査では、現在の企業の出社率およびテレワークの導入状況、そしてコロナ禍収束後のメインオフィスの意向について明らかになった。在宅勤務やサテライトオフィスの導入率は過去調査と比較して大きな差はみられず、引き続きテレワークが行われている様子がみてとれた。

コロナ禍収束後は、完全出社に戻す意向の企業が約2割を占めた一方で、7割以上の企業はテレワークを行う意向があることがわかった。メインオフィスについては、コミュニケーションの場づくりや集まるための機能や、リモート会議のための設備に興味がある企業が多い。また、コロナ禍収束後に向け、オフィス環境やオフィスの運用について考え始めている企業が増えているようだ。

コロナ禍によって世の中が大きく変わっていくなかで、働き方とワークプレイスがどのように変化していくのか、今後も動向を注視する必要がある。ザイマックス総研は引き続き、有益な調査結果を公表していく予定である。


回答企業属性(上段:%、下段:n)

調査概要

調査期間

2022年1月27日~2月6日

調査対象

・ザイマックスインフォニスタの取引先企業

・ZXY 会員企業

上記合計 40,400社

有効回答数

266社  回答率:0.7%

調査地域

首都圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)

調査方法

メール配信による

調査内容

  • オフィスの利用状況について
  • ・ 出社率(現在の実態・将来意向)
  • テレワークの利用状況について
  • ・ 在宅勤務の状況
  • ・ サテライトオフィスの状況
  • コロナ禍収束後のメインオフィスについて
  • ・ 面積意向とその理由
  • ・ 興味のある施策
  • ・ 興味のある性能・付加価値
  • 企業属性
  • ・ 業種/従業員数
  • 入居中オフィスについて
  • ・ 所在地
レポート内のグラフに関して
・構成比(%)は、小数点第2位を四捨五入しているため内訳の合計が100%にならない場合がある。
※当レポート記載の内容等は作成時点のものであり、正確性、完全性を保証するものではありません。
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参考:働き方×オフィス 特設サイト

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