2025.07.30
大都市圏オフィス需要調査2025春
~定着しつつある新たな働き方に見合うワークプレイス戦略の模索は続く~
コロナ禍を受け普及した出社とテレワークのハイブリッドワークは、今後の恒常的な働き方として定着しつつある。新たな働き方に適したワークプレイスとはどのようなものだろうか。
ザイマックス総研では2016年秋より、企業のオフィス利用の実態や働き方に関して半年に1回アンケート調査を行い、オフィス需要との関係について継続的に分析を行っている。このたび、その第18回調査の結果をまとめたレポートを公表した。本ページは<概要版>として一部を抜粋したものである。
- ・ 過去1年間のオフィス面積の変化:「拡張(した+する可能性)」の合計は16.4%、「縮小(した+する可能性)」の割合は7.6%。DIは8.8と2024春調査から微増した【図表1】。
- ・ 今後(2~3年程度先まで)のオフィス面積:「拡張したい」(18.5%)が「縮小したい」(5.3%)を上回る【図表2】。
- ・ 出社率:新型コロナウイルス感染症の5類移行後(2023春調査以降)は、平均出社率が7割前後の状況が続く【図表3】。
- ・ オフィス施策を実施するうえで重視すること:2019春調査と比較すると2024春調査と同様にすべての項目で回答割合が増しており、オフィスに多様な要素が重視されるようになった状況が継続している。「ワーク・エンゲイジメントの向上」では2024春調査からさらに6.0ポイント伸びており、直近でさらに重視度が増している【図表4】。
- ・ メインオフィスについて課題に感じていること:「快適な温度調整が難しい」(38.1%)が1位。次いで「会議室が不足している」(28.7%)や「リモート会議用個室が不足している」(19.7%)【図表5-1】。
- ・ 今後の各スペースの変化:「増やしたい」と回答した割合が最も高かったスペースは「会議室スペース(複数名用個室、1名用リモート会議室)」(35.0%)【図表5-2】。
- ・ フレキシブルオフィス9タイプの利用関心度:「シェア型会議室(小規模・短時間)」は「すでに利用している」と「興味がある」との合計が最多(45.9%)【図表6】。
- ・ ワークプレイス戦略に関する課題:「チームワークやコミュニケーションを活性化できていない」(30.9%)や「従業員のエンゲージメント向上に寄与できていない」(29.7%)、「ウェルビーイングなオフィスづくりができていない」(25.8%)といった、ワークプレイスに単なる作業空間以上の役割を持たせることに関する課題が上位【図表7】。
<調査概要>
調査期間:2025年6月3日~6月15日
調査対象:・ザイマックスグループ各社の管理運営物件のオフィスビルに入居中のテナント
・法人向けサテライトオフィスサービス「ZXY(ジザイ)」契約先
・ザイマックスインフォニスタの取引先
上記合計 58,095件
有効回答数:1,769 件 *事業所単位で集計しているため、同一企業であっても事業所が異なれば別の回答として処理している。
調査地域:全国(東京都、大阪府、愛知県、福岡県、神奈川県、埼玉県、千葉県)
調査方法:メール配信による
topic 1
過去1年間のオフィス面積について「拡張(した+する可能性)」の合計は16.4%、「縮小(した+する可能性)」の割合は7.6%であった【図表1】。また、DIは8.8と2024春調査から微増している。
2021春調査を潮目に縮小トレンドから拡張トレンドへの転換が進み、直近では拡張トレンドで安定しつつあることがみてとれる。
【図表1】過去1年間のオフィス面積変化の実績+可能性
topic 2
今後(2~3年程度先まで)のオフィス面積について、「拡張したい」と回答した企業は18.5%で、「縮小したい」(5.3%)を上回った【図表2】。経年でみると、「拡張したい」の割合は2021春調査を底に増加傾向であったが、今回調査では2024春調査と同程度に落ち着いた。
【図表2】今後のオフィス面積の変化
topic 3
出社率は、新型コロナウイルス感染症の5類移行後(2023春調査以降)は概ね横ばいで、平均出社率が7割前後の状況が続いている【図表3】。ただし、「60%~99%(出社派)」は2023春調査から今回調査までで計5.0ポイント増加し「1%~39%(テレワーク派)」が計3.5ポイント減少するなど、内訳にはやや変化がみられる。
【図表3】出社率の実態(経年比較)
topic 4
オフィス施策を実施するうえで重視することを聞いた結果を、コロナ禍発生前の2019春調査と比較すると、2024春調査と同様にすべての項目で回答割合が増加していた【図表4】。コロナ禍を経てオフィスに多様な要素が重視されるようになった状況が継続しているといえる。
「ワーク・エンゲイジメントの向上」では2024春調査からさらに6.0ポイント伸びており、直近でさらに重視度が増していると考えられる。
【図表4】オフィス施策を実施するうえで重視すること
topic 5
入居中のメインオフィスについて課題に感じていることは「快適な温度調整が難しい」(38.1%)が1位であった【図表5-1】。2位以降には「会議室が不足している」(28.7%)と「リモート会議用個室が不足している」(19.7%)が続き、ハイブリッドワークが定着するなか、会議用スペースが不足している状況がみられた。
オフィス内の各スペースについて今後どうしたいかを聞いた結果でも「会議室スペース(複数名用個室、1名用リモート会議室)」を「増やしたい」が35.0%にのぼり、会議室不足の課題感の強さがうかがえる【図表5-2】。
【図表5-1】入居中のメインオフィスについて課題に感じていること
【図表5-2】今後の各スペースの変化
topic 6
9つのタイプのフレキシブルオフィス(*)を提示し、自社の働く場としての利用関心度を聞いたところ、「テレワーク支援型ワークプレイス」「シェア型会議室(小規模・短時間)」「貸会議室サービス(大規模)」では「すでに利用している」割合がいずれも2割超であり、ほかのサービスに比べて浸透していることがうかがえる【図表6】。「すでに利用している」と「興味がある」との合計が最も高かったのは「シェア型会議室(小規模・短時間)」(合計45.9%)であった。
「セットアップオフィス」や「オフィスビル内共用スペース」「ワーケーション施設」では、「すでに利用している」割合こそ低いものの「興味がある」と回答した企業が目立った。
【図表6】フレキシブルオフィス9タイプの利用関心度
topic 7
ワークプレイス戦略に関して困ったことや課題を聞いた結果、「チームワークやコミュニケーションを活性化できていない」(30.9%)や「従業員のエンゲージメント向上に寄与できていない」(29.7%)、「ウェルビーイングなオフィスづくりができていない」(25.8%)といった、ワークプレイスに単なる作業空間以上の役割を持たせることに関する課題が上位にあがった【図表7】。オフィスに求められる要素が多様化するなか(【図表4】)、企業がワークプレイス戦略の構築に苦慮している様子がうかがえる。
また、「現在の働き方に適応したワークプレイス環境であるか判断できない」(26.6%)、「出社率のコントロール・最適化が難しい」(22.5%)、「適正なオフィス面積がわからない」(16.7%)といった、コロナ禍以降の働き方の変化への対応を課題として挙げる企業も一定数いることがわかる。
【図表7】ワークプレイス戦略に関する課題
《関連調査》
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