2025.01.22
大都市圏オフィス需要調査2024秋
~ハイブリッドモデルでの運用を模索、会議室不足が喫緊の課題に~
新型コロナウイルス感染症の流行は、日本企業の働き方を変え、オフィスの使い方にも影響を与えた。一応の収束を迎え、各社が今後の働き方を模索するなか、コロナ禍に最適化されたオフィスには新たな課題も生じている。
ザイマックス不動産総合研究所(以下、ザイマックス総研)では2016年秋より、企業のオフィス利用の実態や働き方に関して半年に1回アンケート調査を行い、オフィス需要との関係について継続的に分析を行っている。このたび、その第17回調査の結果をまとめたレポートを公表した。本ページは<概要版>として一部を抜粋したものである。
- ・ 過去1年間におけるオフィス面積の変化について、「拡張(した+する可能性)」(14.0%)が「縮小(した+する可能性)」(7.1%)を上回った。DIは6.9とプラス方向に伸長している【図表1】。
- ・ 今後(2~3年程度先まで)のオフィス面積について、「拡張したい」と回答した割合(19.0%)が「縮小したい」(6.2%)を上回った【図表2】。
- ・ 2023春調査以降は出社率に大きな変化はみられず、ハイブリッドモデルが定着している【図表3-1】。
- ・ メインオフィス内で今後増設・新設したいスペースとして「リモート会議用ブース・個室」(22.9%)などのニーズが高く、多様なスペースを備えたABWのためのオフィスレイアウトの整備が進んでいくことがうかがえる【図表3-2】。
- ・ メインオフィスに関する困ったことや課題の1位は「会議室やリモート会議用スペースなどが不足している」(60.2%)であった【図表4-1】。具体的には「1人用(リモート会議用ブース・個室)」「2~4人用」「4~10人用」といった日常的な会議で利用する規模の会議用スペースが不足している【図表4-2】。会議室不足への対策としては、自社内での対応にとどまらず、外部サービスを活用するニーズもうかがえた【図表4-3】。
- ・ 6つのタイプのフレキシブルオフィスについて、自社の働く場としての利用関心度を聞いたところ、「貸会議室サービス」や「テレワーク支援型」について、認知・利用の浸透がうかがえた【図表5】。
<調査概要>
調査期間:2024年11月14日~11月24日
調査対象:・ザイマックスグループの管理運営物件のオフィスビルに入居中のテナント
・法人向けサテライトオフィスサービス「ZXY(ジザイ)」契約先
・ザイマックスインフォニスタの取引先
上記合計 55,699件
有効回答数:1,693件 *事業所単位で集計しているため、同一企業であっても事業所が異なれば別の回答として処理している。
調査地域:全国(東京都、大阪府、愛知県、福岡県、神奈川県、埼玉県、千葉県)
調査方法:メール配信による
topic 1
過去1年間のオフィス面積について、「拡張(した+する可能性)」の合計は2021春調査を底に増加傾向だったが、今回調査では2023年秋調査から横ばいの14.0%となった【図表1】。「縮小(した+する可能性)」は7.1%となり、2021春調査をピークに減少が続く。
拡張合計と縮小合計の差であるDIは6.9とプラス方向に伸長している。コロナ禍発生後の縮小トレンドから転換し、拡張トレンドが強まってきている。
【図表1】過去1年間のオフィス面積変化の実績+可能性
topic 2
今後(2~3年程度先まで)のオフィス面積について、「拡張したい」と回答した企業は19.0%で、「縮小したい」(6.2%)を上回った【図表2】。
経年では2021春調査を底に「拡張したい」が増加傾向であったが、コロナ禍以前(2019春調査以前)の水準までは戻らず横ばいとなった。
【図表2】今後のオフィス面積の変化
topic 3
出社率は、2023春調査以降「100%(完全出社)」が微減傾向・「60%~99%(出社派)」が微増傾向であるなどの変化はあるものの、概ね横ばいで推移している【図表3-1】。2023年5月の新型コロナウイルス感染症の5類移行を経て、出社回帰に振れたが、直近は出社率の変化が落ち着いていることがわかる。
また、メインオフィス内の多様なスペースについて、現在あるものと、今後増設・新設したいものを聞いたところ、今後増設・新設したいものとして「あてはまるものはない」(44.1%)と回答した割合が高く、現状で十分だと感じている企業が多かった【図表3-1(図表右)】。一方、「リモート会議用ブース・個室」(22.9%)のほか、10%以上が回答した項目もあった。
ハイブリッドモデルが定着しつつあるなか、リモート会議用ブース・個室やフリーアドレス席、リフレッシュスペースなど多様なスペースを備えた、ABWのためのオフィスレイアウトの整備が進んでいくことがうかがえる。
【図表3-1】出社率の実態(経年比較)
【図表3-2】オフィスに現在あるスペース(左)と、今後増設・新設したいスペース(右)
topic 4
メインオフィスに関して困ったことや課題の1位は「会議室やリモート会議用スペースなどが不足している」(60.2%)であり、突出して高い結果となった【図表4-1】。会議室やリモート会議用スペースは業務に欠かせない機能であり、その不足は喫緊の課題として認識されていると考えられる。
不足している会議室について具体的にたずねたところ、「1人用(リモート会議用ブース・個室)」「2~4人用」「4~10人用」と回答した割合がそれぞれ4割超であり、日常的な会議で利用する規模の会議用スペースの不足感がみてとれる【図表4-2】。
また、会議室不足への対策を5つあげ、それぞれの興味度を聞いた結果、オフィス拡張やレイアウト変更による増設、運用の工夫といった自社内での対応にとどまらず、外部サービスの活用も同等の興味を集め、各施策で4割前後が「(とても・やや)ある」と回答した【図表4-3】。
【図表4-1】メインオフィスに関して困ったことや課題
【図表4-2】不足している会議室のタイプ
【図表4-3】会議室不足への対策についての興味度
topic 5
6つのタイプのフレキシブルオフィスをあげ、自社の働く場としての利用関心度を聞いたところ、「貸会議室サービス」や「テレワーク支援型」は、「わからない」と回答した割合が比較的少なく、「すでに利用している」と回答した割合が高いことから、認知・利用ともに浸透していることがうかがえる【図表5-1】。「すでに利用している」と「興味がある」の合計はそれぞれ約5割となった。
【図表5】フレキシブルオフィス6タイプの利用関心度
《関連調査》
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