2024.07.31
大都市圏オフィス需要調査2024春
~「出社多めのハイブリッドモデル」へ移行、オフィスは拡張トレンドへ~
新型コロナウイルス感染症の5類移行をもってコロナ禍が一応の収束を迎えてから、1年が経過した。日本企業の働き方は変化しているだろうか。ザイマックス不動産総合研究所では2016年秋より、企業のオフィス利用の実態や働き方に関して半年に1回アンケート調査を行い、オフィス需要との関係について継続的に分析を行っている。このたび、その第16回調査の結果をまとめたレポートを公表した。本ページはその<概要版>として一部を抜粋したものである。
- ・ 過去1年間のオフィス面積の変化:「拡張(した+する可能性)」は15.9%。2021春調査を底に3年連続で増加【図表1】
- ・ 今後(2~3年程度先まで)のオフィス面積:「拡張したい」(19.2%)が「縮小したい」(5.1%)を上回る【図表2】
- ・ 出社率:「100%(完全出社)」の企業は24.7%。「60%~99%(出社派)」(44.4%)が微増傾向で、多くの企業ではハイブリッドワークを継続しているものの出社が徐々に増えていると考えられる【図表3】
- ・ オフィス施策を実施するうえで重視すること:「従業員の満足度向上」(64.4%)が2019春調査からプラス36.1ポイントと大幅に伸長【図表4】
- ・ 今後増設・新設したいスペース:上位は「会議室(個室)」(25.0%)や「リモート会議用ブース・個室」(24.9%)【図表5】
- ・ メインオフィス(*)について課題に感じていること:「快適な温度調整が難しい」(42.3%)が1位。次いで「会議室が不足している」(32.4%)や「リモート会議用個室が不足している」(26.4%)が続いた【図表6-1】。この結果をメインオフィスの快適性評価別に比較すると、これら上位3項目については快適性評価が最高(5~6点)のグループでも一定数が課題に感じていることがわかった【図表6-2】
- ・ テレワークする場所に関する施策の導入率:在宅勤務制度は45.5%、サテライトオフィスは29.7%。ともに2023春調査から横ばい【図表7】
<調査概要>
調査期間:2024年6月4日~6月16日
調査対象:・ザイマックスグループの管理運営物件のオフィスビルに入居中のテナント
・法人向けサテライトオフィスサービス「ZXY(ジザイ)」契約先
・ザイマックスインフォニスタの取引先
上記合計 55,645件
有効回答数:1,836件 *事業所単位で集計しているため、同一企業であっても事業所が異なれば別の回答として処理している。
調査地域:全国(東京都、大阪府、愛知県、福岡県、神奈川県、埼玉県、千葉県)
調査方法:メール配信による
topic 1
過去1年間のオフィス面積の変化について、「拡張(した+する可能性)」の割合は15.9%となり、2021春調査を底に増加している【図表1】。同様に、「縮小(した+する可能性)」の割合は7.6%となり、2021春調査をピークに減少している。
拡張合計と縮小合計の差であるDIは8.3とプラス方向に伸長しており、コロナ禍発生を機にしばらく続いた縮小トレンドは落ち着いたばかりでなく、拡張トレンドに入ったといえるだろう。
【図表1】過去1年間のオフィス面積変化の実績+可能性
topic 2
今後(2~3年程度先まで)のオフィス面積について、「拡張したい」と回答した企業は19.2%で、「縮小したい」(5.1%)を上回った【図表2】。経年でみても「拡張したい」の割合は2021春調査を底に増加傾向であるが、コロナ禍以前(2019春調査以前)の水準には戻っていない。
【図表2】今後のオフィス面積の変化
topic 3
現在の出社率(実態)を時系列でみると、「100%(完全出社)」が24.7%と、新型コロナの5類移行直後に実施した2023春調査から横ばいが続いている【図表3】。
ただし、実態・意向ともに「60%~99%(出社派)」は微増傾向である。このことから、現在も多くの企業では出社とテレワークを使い分けるハイブリッドワークを継続しているものの、その内訳としては出社が徐々に増えていると考えられる。
【図表3】出社率の実態と意向(経年比較)
topic 4
オフィス施策を実施するうえで重視することを聞いた結果、1位は「生産性の向上」(68.5%)であった【図表4】。
コロナ禍発生前の2019春調査と比較すると、2位の「従業員の満足度向上」(64.4%)がプラス36.1ポイントと大幅に伸長しており、オフィスに対する価値観に変化があったことがうかがえる。また、すべての項目で回答割合が増加しており、オフィスづくりに対する期待や経営課題解決における役割が増していると考えられる。
そのほか、伸びが大きかったものは赤線のとおりである。
【図表4】オフィス施策を実施する上で、重視すること
topic 5
オフィス内の多様なスペースについて、現在あるもの(図表左)では「固定席」(78.4%)や「会議室(個室)」(70.3%)に次ぎ、「オープンなミーティングスペース」(58.6%)が上位となった【図表5】。
一方、今後増設・新設したいもの(図表右)では「会議室(個室)」(25.0%)や「リモート会議用ブース・個室」(24.9%)、「フリーアドレス席」(17.3%)などが多かった。ハイブリッドモデルを継続しながら出社が増えた(topic 3)ことから、出社時の対面会議とリモート会議がどちらも増えており、専用スペースのニーズが高まっていると考えられる。今後は、柔軟な働く場所の選択とコミュニケーション活性化とを両立させるワークプレイス設計が求められていくだろう。
【図表5】オフィスに現在あるスペース(左)と、今後増設・新設したいスペース(右)
topic 6
入居中のメインオフィスについて課題に感じていることの1位は「快適な温度調整が難しい」(42.3%)であった【図表6-1】。2位以降には「会議室が不足している」(32.4%)と「リモート会議用個室が不足している」(26.4%)が続き、出社が増えたことで会議用スペースが不足している状況がうかがえる。
この結果を、メインオフィスの快適性評価別に比較したところ、快適性評価が低いグループほど、すべての項目について課題に感じている割合が高かった【図表6-2】。たとえば、「快適な温度調整が難しい」は52.9%、「会議室が不足している」は43.4%に上った。一方で、上位3項目については快適性評価が最高(5~6点)のグループでも一定数が課題に感じていることもわかった。「会議室が不足している」や「リモート会議用個室が不足している」といった項目は、働き方の変化にオフィスの適応が追いついていない状況であると考えられ、今後の改善が期待される。
【図表6-1】入居中のメインオフィスについて課題に感じていること
【図表6-2】<メインオフィスの快適性評価別>
入居中のメインオフィスについて課題に感じていること
topic 7
在宅勤務制度の導入率は2021春調査をピークに減少し、今回の調査では45.5%となった【図表7】。また、サテライトオフィスの導入率は29.7%となり、どちらも2023春調査からほぼ変化がみられなかった。
【図表7】在宅勤務制度とサテライトオフィスの導入率
《関連調査》
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