WORKTREND

【WORKTREND㊱】仕事と職場のグローバルトレンド2024「20のキーワード」(前編)

仕事とワークスペースをメインテーマとする世界的な知識ネットワーク「WORKTECH Academy」(ワークテック・アカデミー)では、グローバルトレンドを俯瞰する多彩な記事を発表している。今回はその中から、2024年1月に発表したトレンドレポート「The world of work in 2024」を紹介する。

レポートでは、「人」「場所」「テクノロジー」という切り口で、2024年に注目すべき20の主要トレンドを取り上げている。「人」に関する予測では、企業文化からウェルネスの表面的な取り組みへの魅力が薄れることや、ハイブリッドワークにおける経営者と従業員の対立の終結、またエクスペリエンスに関してその場しのぎのアプローチをとらなくなることなどが挙げられる。「場所」においては、品質よりも「個性への逃避」が進むことや、香りの空間、リサイクル・オフィス家具、バイオモーフィズムなどが取り上げられている。「テクノロジー」のトレンドでは、スマートビルの管理およびデザインにおけるAIの役割とスマート通勤の新潮流が予測される。

前編では、以下の10キーワードについて解説する。

10キーワード

1.個性への逃避(Flight to character)

高品質またはプレミアムなスペースでは不十分かもしれない

パンデミックの余波を受け、企業がオフィススペースの見直しを余儀なくされるなか、ESGや持続可能性の基準が厳しい一等地のAクラスオフィスへの需要を生み出した「質への逃避」は不動産業界にとって数少ない慰めのひとつであった。

しかし、2024年には、「高品質」または「プレミアム」なスペースだけでは、もはや人々をオフィスに呼び戻せなくなるかもしれない。コンサルティング会社ERA-coのユーザー戦略グローバル責任者であるアマンダ・スタナウェイ氏によると、人々が居場所に意味や目的、納得感を見いだしたいという欲求は、むしろ「個性への逃避」につながるという。組織は、スペースに物語や歴史、目的を結びつけることで、ユーザーに完璧さではなく「違い」を提供するようになる。

「個性への逃避」とはどのようなものなのか? 組織は、無個性な商業タワーの均質なスペースを借りる代わりに、技術的なパフォーマンスを保ちつつ個性豊かな場所や建物を探し求めるようになるだろう。このアプローチの鍵は、異なるボリュームや空間配置、あるいは歴史的な参照点など、さまざまな属性を持つ豊かで重層的な空間をつくり上げることにある。

個性にこだわることで、BランクやCランクの不動産を模範的なワークプレイスに変えることができる。ERA-co社は、このアプローチの事例としてシドニーで手がけた2つのプロジェクトを挙げている。1つは、M&Cサーチ社と共同で、100年以上の歴史がある指定文化財のスペースを多様な広告会社のための個性的な拠点に生まれ変わらせたプロジェクトである。もう1つは、不動産開発のグッドマン社と共同で、古い帽子工場を産業遺産を生かした光あふれる緑豊かなキャンパスに改装したプロジェクトである。どちらのプロジェクトも、その場所、歴史、目的に正真正銘リンクした個性的な空間を創り上げようという意欲を示す先駆けとなっている。

2024年は、「個性への逃避」が始まる年になるだろうか。

2.香りの空間(Scented space)

オフィスはブランド戦略に寄与する香りを求めるようになる

2024年、オフィスはバラの香りに包まれるだろうか。今年は、ワークプレイス設計において軽視されがちな嗅覚が前面に押し出され、香りの風景がようやく注目を集めるようになるだろう。

香りは、私たちの考え方や行動に大きな影響を与えることが一貫して示されている。例えば、ラベンダーの香りはリラックスさせると同時に、他人を信頼する可能性を高めることが科学実験で明らかになった。また、ローズマリーの香りは記憶力を高め、レモンの香りは仕事のパフォーマンスを高め、オレンジの香りは不安を軽減する効果がある。

ニューヨーク・タイムズ紙の「When You Think About Your Credit Card, Does a Fragrance Come to Mind?(クレジットカードについて考えるとき、フレグランスが思い浮かびますか?)」という記事によると、特定の香りがアレルギー反応の可能性を下げることから香りへの注目が高まっているという。

この著者はまた、「企業は今、ファッションデザイナーを模倣し、顧客が忘れないような特徴的な香りを作るために開発会社を雇っている」と述べ、マスターカード社のエクスペリエンス・センターの香りの選定について紹介している。同社のマーケティング・チームは、「ブランドが市場シェアを奪い合い、特にワーカーや顧客が自宅からオフィスに戻り始めているなかで、香りはますます企業のブランド戦略の重要な一部になる」とみて、顧客の五感すべてを刺激するような空間をつくりたいと考えている。

2024年には、ワークプレイスの香りは、家具や照明と同じように、企業が考慮すべきものとなっているだろう。

3.よりスマートなビル(Smarter buildings)

AIをビルのシステムに統合することがゲームチェンジャーとなる

スマートビルは次にどこへ向かうのか? 2024年には、ビル管理システムに人工知能を組み込む企業が増加する見込みである。これらのシステムは入居者の行動から学習し、まったく新しいレベルの効率化が実現するだろう。

センサや他のデータ収集インフラと組み合わせることで、AIは将来のシナリオや利用状況を予測することができ、この情報をビル管理・運営の意思決定に活用することで、持続可能性の向上、コスト削減、プロセスの簡素化が可能になる。

このようなAI主導のアプローチについては、2022年にロンドン大学バートレットの研究者ウィル・セラーノ氏がコンピューティング専門誌に寄稿した論文で、「iBuilding(iビルディング)」という造語を用いていた。セラーノ氏は、建物が「資産、機能、空間の利用状況を監視する方法において、よりインテリジェントになる」と語っている。

意思決定プロセスの高速化は、企業が複雑な環境のなかでより変化に対応でき、より機敏になることを意味する。また、さまざまなデータセットを統合し、利用パターンが互いにどのように相関しているかをよりよく理解することで、建物の稼働率や行動に関するより深い洞察を得ることができる。

ビル管理システムにおけるAIの役割は、オフィス設計などを手がけるアリア社が2024年の重要なトレンドとして説明する「没入型、インテリジェント、パーソナライズされたワークプレイス」を実現するための、ジグソーパズルの最後のピースになるかもしれない。

アリア社によれば、没入型複合現実、メタバース、デジタル・ツイン、ゲーミフィケーションの技術が、照明、温度、音響、人間工学など個人の好みに合わせて将来のワークスペースをパーソナライズする技術と並ぶことが予想されるという。しかし、スマートビルを次のレベルに引き上げるには、AIにしか提供しえない衝撃を、ビル管理システムに与えられるか否かにかかっている。iBuildingが実現する日は、それほど遠くないかもしれない。

4.木材の時代(Time for timber)

木造建築は心理的なメリットをもたらす

オフィスビルにおける木材の使用は、以前より広まっている。米アーカンソー州に建設されたウォルマート社の新本社が、米国最大のマスティンバープロジェクトとして注目されているだけでなく、2023年12月にはオーストラリアのパースにて、世界で最も高いハイブリッドティンバータワーが公開された。建築事務所フレイザー&パートナーズが設計した「C6」と名付けられたこの住宅タワーは、高さ189.1メートルで、42%がマスティンバーでできている。

ブリティッシュコロンビア州にある世界的な木材サプライヤーのナチュラリー・ウッド社の定義によると、「最先端の技術を駆使して、木材製品を接着剤、釘、ダボで何層にも重ね合わせて」できた大型の構造用パネルや柱、梁などの製品が「マスティンバー」である。これらの丈夫で多用途な製品は、二酸化炭素を大量に排出する材料や建築システムに代わる、環境に優しい代替品である。

同社はさらに、「気候変動と低炭素ソリューションの必要性に直面し、マスティンバーは、長いスパンの屋根構造から高い木造タワーまで、新しいデザインの可能性を切り拓いている」と主張する。シンク・ウッド社も「マスティンバーは一流の建築・設計専門家の想像力をかきたて、その可能性を進化させ続けている」と提言している。

今注目されているのは、木材の構造的特性だけでなく、その使用による心理的、環境的効果もプラスに働いていることである。木目が視界に入るとストレスが軽減し、ウェルビーイングや仕事のパフォーマンスが高まることが証明されており、木造建築は現在、オフィスや大学のキャンパスでその真価を発揮しつつある。2024年に新築または改築されるワークプレイスでは、より多くの木製部材が使用されることが予想される。

5.ウェルネスの「見せかけの光沢」が薄れる(The wellness gloss)

従業員は健康に対するより深いアプローチを期待する

2024年に、企業文化からウェルネスの見せかけの光沢は失われるのか? ワークプレイスにおける健康とウェルビーイングの取り組みが見直される時期が迫っている。コロナ禍以来ウェルネスへの関心と投資は増加傾向にあったが、ここにきてウェルネスに対する表面的な取り組みを減らし、より深いアプローチを採用する動きが広がりつつある。

2024年には、より多くの従業員がその場しのぎの解決策ではなく、より科学的根拠に基づいた解決策を求めるようになるだろう。職場に犬を連れてくることや、モチベーションを高めるような講演を聞くこと、メンタルヘルスに関する企業セミナーに参加することだけではもはや十分ではない。従業員は、健康とウェルビーイングを向上させる、より踏み込んだ取り組みを求めるようになるだろう。

その場しのぎの解決策はすでに欠陥を見せ始めている。アメリカ心理学協会の「2023 Work in America」報告によれば、調査対象の55%の従業員が、雇用主は職場が実際よりもはるかに心理的に健康的で安全だと考えていると感じている。これは、従業員の実際の経験と、ウェルビーイングへの投資効果に対する経営者の評価との間に乖離があることを示唆している。

健康と仕事に対するより深いアプローチとはどのようなものだろうか? これにはさまざまな側面がある。シカゴを拠点とするリサーチ・デザイン・コネクションズ社のサリー・オーガスティン氏は、仕事における3つの中核的動機づけ(能力、自律性、他者とのつながりを感じること)を特定する自己決定理論(SDT)などの基本モデルに、改めて焦点を当てることを提案した。また、スウェーデンの心理学者ソフィア・ヴィオッティ氏は、人々が仕事を進めるためにコンピュータを与えられるのと同様に、職場でメンタルヘルスを管理するためのツールも与えられるべきだと語った。一方、インドを拠点とするデザイン会社であるアドリアンス社の社長チンマエ・アナント氏は、ウェルネス対応のワークスペースを設計しようとする動きは非常に強くなっているが、多くの取り組みが取引的でプログラマティックであると指摘した。彼女によれば、健康と仕事に対する統合的なアプローチは、ワークプレイスを構成するさまざまなシステム(技術、自然、物質、文化、人間、空間)をより包括的な枠組みの中で調整することが必要である。

このトレンドがどのように展開するにせよ、2024年にはウェルネスの光沢は失われそうである。

6.街中の建築物(In-between architecture)

「ストリートファニチャー」には、都市中心部の活性化に果たす役割がある

都市における商業ビルのファサードや屋外緑地に対する吟味は、2023年にピークを迎えた。一方で、都市インフラの中であまり注目されないが、重要な要素である「インビトウィーン・アーキテクチャ(街中の建築物)」についてはどうだろうか。

電話ボックス、ベンチ、水飲み場、広告看板、バス停、車止め、街灯、光ファイバーケーブルボックスといった「ストリートファニチャー」は、多くの都市の最も面白く、注目すべき特徴を提供してきたといえるだろう。例えば、パリの街並みは、ニューヨークやロンドンとは大きく異なる。

ワークテックロンドン2023での基調講演者であるフィナンシャル・タイムズ紙の建築評論家エドウィン・ヒースコート氏は、このユニークで過小評価されている都市文化の側面にもっと注意を払うべきだと提唱した。ヒースコート氏は著書『On the street:In Between Architecture』で、通勤者やオフィスワーカーの生活におけるストリートファニチャーの役割についていくつか重要な課題を提起している。

人々がオフィスに戻り、都市の中心部を活性化させるためには、例えばe-バイクやスクーターの利用を増やすための駐輪場や充電基盤を提供するなど、支援的で技術的に対応した街並みが必要である。水飲み場があれば、徒歩や自転車での通勤がより魅力的になるだろう。公共の家具は、都市空間での社会的な相互作用を向上させることができる。

現在、中心市街地では、民間の開発業者よりもむしろ、市当局がインビトウィーン・アーキテクチャの整備の主導権を握っている。しかし、複合施設の開発で公共空間と私的空間の境界線が曖昧になるにつれ、より楽しく、実用的で、快適な街並みをつくる要素について改めて考えることは、私たち全員にとって有益なことだろう。

7.オレンジ・エコノミー(The orange economy)

クリエイティブ産業は、他の産業が低迷するなかでも好調を維持

2024年には、苦境に直面するビジネスセクターがある一方で、クリエイティブ産業(イギリスの作家ジョン・ハウキンズの造語で「オレンジ・エコノミー」とも呼ばれる)は一つの例外として脚光を浴びている。

オレンジ・エコノミーの中核をなすのは、デザイン、広告、建築、芸術、出版、ソフトウェア、研究開発などのクリエイティブ産業である。オレンジ・エコノミーは、人々の創造性を市場性のある商品やサービスに変えることから生まれる知的価値によって推進されており、雇用を創出する潜在力として広く認知されつつある。

パンデミック以降、イギリスのクリエイティブ産業は平均を上回る成長を遂げている。ロンドンでは現在、雇用の5人に1人がクリエイティブ・セクターであり、他のビジネスセクターがスペースを縮小するなかで、オレンジ・エコノミーは、コワーキングやイノベーション地区などさまざまなタイプのオフィスにとって潜在的な光となっている。

研究によれば、2030年までにイギリスのクリエイティブ産業ではIT、音楽、テレビなどの需要により、追加で120万人の労働者が必要になるという。ただし、この成長は英国政府の適切な支援があってこそ維持できるものである。ロンドンの仕事のエコシステムは、ますます文化的かつ創造的な経済の繁栄に依存するようになり、それに伴って、よりインフォーマルでコラボレーティブなワークスペースが求められるようになるだろう。

スペインの主要都市もまた、オレンジ・エコノミーの可能性を注視している。ワークテック・マドリード2023では、クリエイティブ産業の拡大が都市変革の触媒として機能することを学んだ。2024年にはクリエイティブ産業への注目が高まることが予想される。

8.出社をめぐる管理者と従業員の対立の終結(Calling a truce)

管理者と従業員、フレキシビリティをめぐる対立の回避へ

2023年、管理者と従業員との間には、フレキシブルワークの将来をめぐる分裂が広がっていた。

WFHコンソーシアムが2023年夏に実施したグローバル調査では、完全出社を求める管理者と、少なくとも週の一部は自宅で働きたいという従業員との間に、34カ国でギャップが広がっていることが明らかになったのだ。この不一致は憂慮すべきものと見なされた。

しかし我々は、2024年には出社頻度をめぐって、管理者と従業員との間で休戦が成立するかもしれないと予測している。テスラ社CEOのイーロン・マスク氏が「ラ・ラ・ランドに住むラップトップ層」を声高に軽蔑したことが話題になったが、他の多くの大企業は、ハイブリッドワークに適応し、リモートワーカーを管理する方法を粛々と学んでいる。

休戦が成立するとしたら、その条件は経済の見通しによるところが大きい。厳しい経済状況が続き、雇用市場がさらに逼迫すれば、雇用主はすでに優位に立っているため、義務化、監視、モニタリングを通じてオフィス回帰を積極的に推し進めるかもしれない。

しかし、米国が景気後退を回避し、世界的な景気の見通しが明るくなれば、従業員がパンデミック時代の柔軟性を少なくとも一部維持するような、より現実的な調整が行われるだろう。この「適温(Goldilocks)シナリオ」では、従業員は、週に2~3日出社することになるかもしれない。

対立の終結をもたらす重要な要因は、フレキシブルに働く権利を保護する新しい法律の導入である。例えばイギリスでは、フレキシブル・ワーキング法案が2024年春に成立する見込みで、従業員は入社初日からフレキシブルな勤務形態を要求できるようになる。休戦の効果を確認する手掛かりとしては、企業が「対面のプレミアム」(出勤するスタッフに対するより高い給与)を支払うこと、または「チーフ・ハイブリッド・オフィサー」を雇い、経営幹部から新しいハイブリッドワーク環境を適切に管理できるようにすることなどが挙げられる。

9.バイオモーフィズム(Bring on biomorphism)

私たちを自然に近づけるバイオフィリック・デザインよりも、さらに思慮深いアプローチへと移行するのか

人々に自然環境とのつながりを感じさせるバイオフィリックな空間デザインは、2023年にも重要なトレンドとなった。2024年はさらに進み、バイオフィリアからバイオモーフィズム(生物などの有機的な造形をデザインに反映させる手法)へと移行できるだろうか。

バイオモーフィック・デザイン・アプローチの提唱者は、この変化が従業員に驚きと興味を与え、より心理的な快適さを提供し、持続可能性の目標を満たすと信じている。

MITメディアラボの元准教授でオックスマン研究所のデザイナーであるネリ・オックスマン氏は、現在の標準的な建築は自然界とのつながりが十分でないと主張し、「自然と人間との完全な相乗効果の未来を促すデザイン」を求めている。

彼女のアプローチは、自然、生物、デジタルの各領域にまたがる相互関係を探求する、システム中心のデザインアプローチに基づいている。これは、バイオフィリック・デザインを超え、自然界に見られるパターンや形を空間や物体のデザインにより深く反映させるバイオモーフィズムの領域に進んでいる。同氏の作品では、自然界に見られる構造物から着想を得て、自然素材を使用し、境界を押し広げる有機的なデザインを生み出している。例えば、エビの殻やリンゴの皮、落ち葉を使ってデザインされ、ロボットによって建設された建築パビリオン「Aguahoja」は、現代のテクノロジーと新素材を融合させ、トンボの羽を模した構造を作り出している。

オフィススペースにバイオモーフィズムを取り入れる傾向は、デザイナーや建築家が自然の木材や地元の植栽を使用するだけでなく、自然とより深いつながりを生み出すことを示唆している。提供されるものは、自然の形を模倣することで生まれる深い安心感と、二酸化炭素を削減するより思慮深いアプローチである。簡単な切替ではないが、今年はワークプレイスデザインのアプローチがバイオモーフィックへと移行する動きが期待される。

10.大いなる眠り(The big sleep)

睡眠不足による疲労がウェルビーイングに打撃を与える

労働者の睡眠不足とそれが企業のパフォーマンスに与える影響に対処することは、新しい問題ではない。しかし2024年には、睡眠の健全さが、特に人事を担当する多くの企業管理者にとって、ウェルビーイングの中心的なテーマになるだろう。

「I am tired(私は疲れている)」というフレーズは、2004年にGoogleトレンドデータが始まって以来、最も多く検索された。

睡眠不足の副作用は重大かつ広範囲に及ぶ。集中力の欠如からストレスの増加まで、深刻な注意を要する問題である。長期的な睡眠不足は、従業員をより深刻な精神的健康状態にさらし、それはさらに職場での生産性を低下させる可能性がある。

したがって2024年には、企業が睡眠の健全さを重視する環境を醸成することが重要になるだろう。そのためには、働きすぎを美化する考え方から、良質な睡眠のメリットを認識し、積極的に促進する考え方へと転換する必要がある。睡眠不足は従業員だけでなく、組織にとっても莫大な金銭的コストがかかる。生産性やモチベーションの低下と医療費を合わせると、雇用主は従業員1人あたり年間2,000ドル近いコストを負担する可能性があると推定された。

2023年の時点ですでに従業員の疲労や倦怠感が懸念されていたが、企業がより多くの従業員をオフィスに戻すように働きかけ、長時間通勤により1日の睡眠時間が削られるようになれば、この懸念はさらに高まるだろう。定期的な休憩を重視し、睡眠の健全さについて前向きに議論する施策は不可欠だが、それにはマインドの転換が必要である。

後編へ続く

TOPへ戻る

関連記事

VIEWPOINTWORKTREND

【WORKTREND㉟】センサ技術でよりよい職場へ。非言語情報を生かし、セレンディピティを誘発する

荒川豊/九州大学 大学院システム情報科学研究院 教授

進化したセンサ技術を用いて働く環境をどのように改善できるか、センサ技術の最先端に携わる専門家に話をうかがった。

VIEWPOINTWORKTREND

【WORKTREND㉛】Z世代を引き寄せ「サステナブルワーク」を実現するには

「WORKTECH22 Tokyo」レポート

これからの人材戦略にフィットしたワークプレイスの役割とは。世界の最新トレンドを紹介する。