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【WORKTREND㉛】Z世代を引き寄せ「サステナブルワーク」を実現するには

「WORKTECH22 Tokyo」レポート

世界的な知識ネットワーク「ワークテック(WORKTECH)」のオンラインカンファレンスが2022年12月に開催され、不動産やテクノロジー、建築、デザインなどの有識者による最新トレンドの共有が行われた。今回は、企業の人材戦略に関する最新のトレンド(*)を紹介する。

  • EY Consulting、Landor & Fitch、LEGOの講演より抜粋

企業間の人材争奪戦はますます激化

ルイーズ・ディレンダール(Louise Dyrendahl)
Nordic Workforce Advisory Leader, EY Consulting

現在、ほとんどの先進国で少子高齢化が進んでおり、長期的には労働力人口の減少が不可避である。幸いなことに、テクノロジーの進歩によって労働力のグローバルな移動が容易となり、さらにリモートワークが普及したことで国境を越えての人材確保が可能となった。近年、人材資源が豊富なアジア諸国や若い人口が増加し続けるアフリカは、世界の企業から熱い視線を浴びている。

企業の人材プールが広がる一方、ワーカーにとっても選択肢が莫大になっている。転職先のチョイスが増えるなか、パンデミックによる価値観の変化や、柔軟な働き方の普及により、ワーカーが所属企業を見る目は厳しくなった。実際、コロナ禍から経済回復が早かったアメリカでは、企業を自主退職する人が急激に増加する「大退職」(Great Resignation)という社会現象が起き、注目を集めている。EY Consultingが2022年4月に実施したグローバルアンケートでは、過半数のワーカーは所属企業がハイブリッドな働き方や成長するための学習機会を提供していないと答え、不満を抱えていることがわかった。さらに、一年以内に離職する可能性があると答えたワーカーは全体の43%にのぼり、前年の7%より大幅に増加した。

企業が人材を引き留めるにはどうすればいいのだろうか。従来から求められる妥当な人事評価と報酬はもちろんのこと、柔軟な働き方や個人のキャリアプランに沿ったリスキリングコースの提供も当たり前になりつつある。ワーカーが求める生活と仕事の条件に応え、長期にわたって楽しく働いてもらう「サステナブルワーク」を実現するには、それ以上のことが求められている。

多様化したワーカーのニーズに対応する

アポリーヌ・ピコ(Apolline Picot)
Creative Director APAC, Landor & Fitch

かつて、企業勤めのワーカーのほとんどは出世志向が強く、仕事上の目標を達成するために残業や休日出勤を日常的に行い、個人生活を犠牲にすることは当たり前であった。また、キャリアの安全性を重視していたため、安易に離職することはなかった。つまり、ワーカーが企業の都合に合わせており、企業は妥当な人事評価と報酬さえ提供していれば人材の確保には困らなかった。

しかし、パンデミックを経て多くのワーカーの価値観は変化した。キャリアの安全性や報酬を優先する旧来的なワーカーが減る一方、企業のパーパスへの共感や、働き方のフレキシビリティといった新たな条件を重視するワーカーの存在感が強まりつつある。企業が人材を確保するためには、このように多様化したワーカーの特徴やニーズを知り、それらに対応することが必要であろう。

パンデミックを経てワーカーが分化した(アポリーヌ・ピコ氏の講演を基にザイマックス総研にて作成)

創造者:組織に縛られたくない、自由な働き方を好むワーカー。このタイプは起業志向が高く、ギグワーカーになることも多い。企業との親和性は一見低いが、彼らが共感できるパーパスを企業が提供できれば、深い関係を構築できる可能性もある。また、彼らを組織に引き留めるにはスーパーフレックスの働き方を提供することも有効だと考えられる。

ケアラー:家族のことを最優先するワーカーで、子育てなどのために仕事を辞めてしまうことも多い。最も重視するのは仕事のフレキシビリティや、日常生活に役立つ福利厚生、たとえばクリーニング店で使えるクーポン券や利用しやすい介護サービスなどである。また、一時的に辞めても復職できる仕組みはケアラーを引き寄せる有効なソリューションであろう。

理想主義者:Z世代でよくみられるタイプで、養う家族や住宅ローンがなく、仕事において何よりも大切にするのはやりがいと仲間である。彼らは企業のパーパス、カルチャーに共感すれば最も仕事にエンゲージしやすく、強い戦力になるタイプだといえる。そのため、自社で働くことで社会にどのように貢献できるか、未来にどのような影響をもたらすかをきちんと伝えることや、企業カルチャーを全社的に浸透させることが不可欠である。

こうした多様なワーカーのなかから企業に合う人材を引き寄せ、そして定着させるには、企業理念に基づいたワークエクスペリエンスの提供が有効だと考えられる。たとえばオフィスのデザインや働き方、社員同士のコミュニケーションスタイルなど、あらゆることに企業カルチャーを浸透させることで、既存従業員のエンゲージメントを高めるだけでなく、新入社員も順応しやすくなり、さらには外部労働市場にも企業の魅力が伝わっていくであろう。

レゴキャンパスでしか得られないエクスペリエンスとは

ティム・アーレンスバッハ(Tim Ahrensbach)
Global Workplace Strategist, LEGO Workplace Experience

2022年に創業の地・デンマークでオープンした新たな本社「レゴキャンパス」は、実はコロナ禍以前から計画されていた。当初は、分散した拠点を集約し、従業員を集めるための新社屋と位置づけられていたため、執務スペースは従来通り人数分が用意され、全体の70%を占める主要な空間として設計されていた。

しかし、パンデミックで在宅勤務を導入したことにより、オフィスに求められる役割が変わった。在宅勤務では個人の生産性は維持できてもチームワークに支障が生じやすいとの考えから、従業員に週3日以上の出社を求める方針が決まり、オフィスは自宅では得られない体験を提供する場所として再設計されることになった。

再設計にあたって、まずオフィスで行うべき最も重要なアクティビティを「社交」「創造的思考」「コラボレーション」「グループ学習」「企業とつながる」の5つに整理した。これらのアクティビティを支えるため、コラボレーション・ミーティング用のスペースと、社交のためのスペースの面積を大幅に増やし、執務スペースと3:3:3の割合で全体スペースを再配置した。

オフィスで最も重要な5つのアクティビティ(ティム・アーレンスバッハ氏の講演を基にザイマックス総研にて作成)

また、社屋だからこそ提供できるリアルな体験を通じて、企業カルチャーを感じさせてイノベーションを促すことや、レゴコミュニティの一員として団結させることが必要であると考えた。そのため、インテリアデザインには全面的にレゴブランドの世界観を打ち出し、色鮮やかなレゴブロックをイメージしたさまざまなスペースがつくられた。

代表例の一つとして、レジャーやスポーツ用のファシリティを備え、従業員同士が一緒に楽しい時間を過ごすために設計された「ピープルハウス」というスペースがある。利用対象は本拠点所属の従業員に限らず、レゴキャンパスを訪れる世界中のメンバーを想定している。玩具メーカーが楽しさを提供する対象として、顧客はもちろん従業員をも重視することは、社内のイノベーション創出とチームビルディングにも有効だろう。企業カルチャーを体現した「ピープルハウス」のような空間を提供することで、従業員にレゴグループとのコネクションを深め、エンゲージメントを高めてもらうことを目指している。

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