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【WORKTREND㊳】欧州連合(EU)が持続可能な建築環境のためのマニフェスト採択を要請

仕事とワークスペースをメインテーマとする世界的な知識ネットワーク「WORKTECH Academy」(ワークテック・アカデミー)では、グローバルトレンドを俯瞰する多彩な記事を発表している。今回はそのなかから、サルース・グローバル・ナレッジ・エクスチェンジ社の編集ディレクターであるアンドリュー・サンソム氏による、「持続可能な建築環境のための欧州マニフェスト」に関する記事の内容を、日本の読者に紹介する。

記事原稿:EU urged to adopt manifesto for sustainable built environment

世界グリーンビルディング評議会(World Green Building Council)は、欧州グリーンビルディング評議会の24のメンバーと共同で、持続可能な建築環境に関する一連の政策提言「持続可能な建築環境のための欧州マニフェスト」を発表した。

この動きは、エネルギー安全保障を含むEU全体のいくつかの重要課題に対処するため、6月の欧州議会選挙を前に持続可能な建築政策を優先するようEU内で圧力が高まっていることを背景に行われた。

建築部門は欧州のエネルギー需要の40%を占め、その80%は化石燃料によるものである。エネルギー効率の高いビル改修を加速させれば、化石燃料への依存を減らし、欧州の何百万人もの人々のエネルギー料金を削減することができる。

また、持続可能な建築環境政策は、EUが現在直面している失業危機を救うこともできる。世界グリーンビルディング評議会によると、建物のグリーン改修に100万ユーロが投資されるごとに、EUでは平均18件の地元での長期雇用が創出される計算になる。

協働の呼びかけ

この提言は、ワークプレイス部門におけるESGの取り組みにも影響を及ぼす。マニフェストは、EUの政治家に対し、持続可能な建築物がもたらす社会的、環境的、経済的利益を包含する政策の枠組みを建築部門と協働して開発・実施するよう求めている。8つの柱にまたがる提案には以下の内容が含まれる。

  • 既存建築物の大規模改修を優先し、遅くとも2035年までに、EU全域の対象となるすべての建築ストックをゼロエミッション建築物に転換することで、オペレーショナルカーボン(*運用時の二酸化炭素排出量)だけでなくエンボディドカーボン(*資材調達から解体・廃棄までの二酸化炭素排出量)も含め、建築物のライフサイクルにおける炭素排出量を削減する。
  • 廃棄物枠組み指令において、有害でない建設・解体廃棄物および副産物の埋め立てを段階的に禁止することで廃棄物を削減し、資源と材料の使用と再利用を最適化することにより、建築環境における循環型経済を構築する。
  • 公衆衛生や雇用の改善に寄与する、健康的で公平かつ強靭な建物と都市を築くために、社会気候基金(Social Climate Fund)を2026年の予定より早く導入し、低所得世帯が室内の空気質を改善するエネルギー改修工事を行うための資金を提供する。

世界グリーンビルディング評議会の欧州責任者であるローラ・パラレス氏は、「政策立案者がこれらの提言を受け入れることは極めて重要です。来たる選挙で誰が選ばれるかにかかわらず、議題の最前線には引き続き、EUグリーンディールの目標達成に不可欠な持続可能な建築環境政策をしっかりと据えておかなければなりません」と説明している。

さらに、世界グリーンビルディング評議会の最高責任者であるクリスティーナ・ガンボア氏は、「欧州全域の建物が生活を向上させる可能性があることは何年も前から認識されていました。関係各国は今すぐ行動し、EU法の総合的な政策措置によってこの可能性を確実に実現しなければなりません。世界グリーンビルディング評議会と各国のグリーンビルディング評議会は、エネルギー効率が高く、再生可能で公正な建築環境への移行に取り組む政策立案者を支援する用意があります」と述べている。

これらの提言は、持続可能な建築環境の議題を最優先事項として維持するため、選挙に先立って欧州各地の地域政策立案者と協議される予定である。

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