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【WORKTREND㉒】グローバル:新しい働き方を理解するための7つのモデル(後編)

英国「WORKTECH Academy」(ワークテック・アカデミー)が2022年第一四半期に発表した「Seven models to make sense of the new world of work」のトレンドレポートでは、7つの理論モデルを中心に、それぞれ異なる角度から新しい働き方を実現するために、企業が現在直面している実践的な課題を探る。

前編に続き、後編では「データ主導のワークプレイス戦略」「テクノロジー」「デザイン」「ウェルビーイング」の4つのモデルについて解説する。

モデル4:データ主導のワークプレイス戦略~データは今ハイブリッドワークプレイス戦略を支え、推進するために活用されつつある~

「データ主導のワークプレイス戦略」という新たなトレンドへ

ワークプレイス・テクノロジーやツールの使用から得られるデータは、すでに従業員の行動に関する深い洞察を与えてくれている。さらに現在、データがワークプレイス戦略策定の中心に据えられ、それを推進する「データ主導のワークプレイス戦略」というトレンドが生まれつつある。

データ主導のワークプレイス戦略の成長を加速させる要因の一つが、ハイブリッドワークへの移行である。ワーカーが理想の体験を構築するために自ら意思決定できるハイブリッドワークモデルにおいて、データはワーカーがより効果的に働くために必要なスペースやテクノロジー、コラボレーションツールを提示して活用を促すなど、ワーカーと管理者の双方が最高の状態で働けるようにサポートする。

そして、ワーカーとそれらツールとの相互作用からデータが収集され、ワーカーの要求を常に追跡するフィードバックサイクルが構築される。たとえば、誰がいつどのスペースを利用しているかを検知するセンサーや、コラボレーションやネットワーク分析の機能を提供する「Microsoft Vivaインサイト」、一度にスペースにいる人数を確認するためのスワイプカードのアクセスデータ、従業員のインタビューやパルス調査など、さまざまな方法でデータが収集されている。これらのデータは、単独でも優れた洞察をもたらすが、組み合わせることで未知の相乗効果や矛盾を発見する手助けをし、戦略的な意思決定に貢献してくれる。たとえば、オフィス内の稼働率データをテクノロジー需要調査と照らし合わせることで、あるスペースが特定のテクノロジーの不足により十分に活用されていないことを明らかにすることができるかもしれない。そして管理者は、不足しているテクノロジーを導入し、そのスペースの稼働率が向上するかどうかを確認することができるだろう。

データを活用することで、意思決定の根拠をデータポイントやパターンに基づいて明確に追跡できるため、より強固なワークプレイス戦略を実現できる。たとえば以前は、借りていたビルの1フロアを解約するといった決定の多くが推測で行われていたが、データはより説得力と透明性が高く、人間の偏見や政治的な影響を受けにくい強固な意思決定の基盤を提供する。

ただし、データ主導のワークプレイス戦略は特効薬ではない。熟慮された分析が重要であり、データセットにも外れ値や誤認識があることを理解する必要がある。一方で、きれいに整理され、目的をもって分析されれば、データはハイブリッドワークの混乱のなかで強固なワークプレイス戦略の構築を望む企業にとって強力なツールとなりうるだろう。

データ主導の職種別ワークプレイス戦略モデル

データの強力な活用法の一つは、さまざまな職種に応じたワークプレイス戦略を策定することである。なぜなら、ハイブリッドモデルにおいては職種ごとに特定のニーズがあり、企業はそれぞれ個別に対応しなければならないからである。

管理者はまず、各職種のデータを分析し、それぞれの「アジャイル指数」を理解することが重要である。たとえば、受付は原則週5日出社する必要があるのに対して、プロジェクトマネジャーはハイブリッド型で役割を遂行できる場合もあるなど、各職種の出社頻度に基づいてアジャイル指数を0から1の間に割り当てることができる。そして、これらの洞察をワークプレイス戦略やチェンジマネジメントに反映させることで、すべての従業員が配慮されていると感じられる状態を実現し、画一的なハイブリッド・ポリシーに従業員が不満を抱くことを避けることができる。

さらに、データを活用することで、従業員やチームがオフィスにいる時間のばらつきを把握することができる。アンワーク社のカレンダーモデル【図表1】では、職種やチームによって、活動内容や時期などさまざまな要因により、オフィスでのコラボレーションに必要な時間が異なることを示している。多くの人にとって「毎週2日出社」といった厳密なハイブリッドモデルは適切ではないかもしれない。たとえばプロジェクトチームの場合、プロジェクトのキックオフ時に1週間だけ出社して、残りの1ヶ月はリモートで働くといったことも可能である。一方、人事部では採用時期、財務部では決算時期など、季節的な要因でチームごとの出社頻度が決まることもある。データを通じてこのようなパターンを理解することで、管理者は考慮すべき多様なニーズを把握でき、より最適なワークプレイス戦略を構築できるだろう。

【図表1】アジャイル指数とカレンダーモデル
【図表1】アジャイル指数とカレンダーモデル

プライバシー侵害不安にどのように対処すべきか

データを収集・活用することは明らかに有益だが、従業員の抵抗はその実践の大きな障害となるかもしれない。多くの企業がデータ主導の戦略に二の足を踏む理由は、データ収集が従業員からすると「押しつけがましい」と感じられかねないためである。

データ主導のワークプレイス戦略を策定する際には、従業員の不安を解消するために以下の4つの要素に取り組むことが重要である。

  • 透明性:まずは従業員を意思決定プロセスに参加させること。たとえば、従業員に意見を述べる機会を与え、それに対するフィードバックを提供する必要がある。また、企業はデータを収集する際に、何のためにどのようなデータを集めるのかを従業員にわかりやすく伝えなければならない。
  • 匿名性:収集されたデータはすべて二重または三重に匿名化され、完全な匿名性が保証される必要がある。データ主導のワークプレイス戦略を実現するために必要なのはワークプレイスの全体像と何を改善すべきかに関するデータだけであり、個人を特定できるような詳細なデータは必要ない。データの匿名化を徹底し、それを従業員に保証することは、個人をより大きな絵の中の小さな部分として位置づけることになり、データ収集へのためらいに対抗する鍵となる。
  • 目的意識:目的や価値のないデータを集めないことは重要である。たとえば、あるテクノロジーツールが特定の職種に役立つかどうかに関する調査を行う際に、性別や性的指向といったデータを求めると、何か不吉なことが起こっていると従業員に思わせてしまうかもしれない。
  • 価値提供:iPhoneユーザーの90%以上が顔写真や指紋の提供を受け入れている理由は、デバイスの利便性を高めるためである。従業員は自分のデータが有意義に活用され、恩恵が受けられるならば、データを集められても構わないと考えるだろう。従業員にとって何らかの価値を提供することで、企業は自由に取得した正確なデータからよりよい利益を得ることができるようになる。

モデル5:テクノロジー~新しい働き方を真に実現するため、ワークプレイス・テクノロジ―は「過度な期待」を経て「幻滅期」を乗り越えなければならない~

ワークプレイス・テクノロジ―は啓発期へ

ワークプレイス・テクノロジ―は、ハイブリッドワーク・ソリューションの道標のように思われている。パンデミック以来、企業は続々と登場した新たなテクノロジーに過度な期待を寄せ、多額の投資を行い続けたが、テクノロジーがワークプレイスの課題のすべてに応えられないと知るとすぐに幻滅してしまった。ハイブリッドワークとデジタル技術の両方が成熟している今、ワークプレイス・テクノロジーはどのように成熟していくのか。

ITアドバイザリー会社のガートナーは、テクノロジーやアプリケーションの成熟度の経過変化、及びテクノロジーが実際のビジネス課題の解決や新たな機会の開拓にどのように関連する可能性があるかを視覚的に説明するため、ハイプ・サイクル(【図表2】)を導入した。2021年11月に開催されたワークテックアカデミーのイノベーションデーで、50社以上の会員企業にハイプ・サイクルのどのあたりに位置しているかを尋ねた結果、大多数はまだ実験的な段階であり、すでに過度な期待のピーク期を経験し、幻滅期にあることがわかった。「意思決定と統合の段階にある」と回答した企業はほとんどいなかった。それから約6ヶ月が経過した今、ハイブリッドワークを促進するテクノロジーの主流化が進みつつある。

デジタル変革の道のりは、企業のニーズによってそれぞれ異なるものである。ガートナー社最高情報責任者ジャッキー・フェン氏は、企業は期待に胸を膨らませて次のトレンドを追いかけるのではなく、組織にとって価値があるという正しい理由でテクノロジーを採用することで、ハイプに振り回されることなく、谷間を乗り切ることができると主張した。一方で、避けられない幻滅が訪れた際にも、そのくぼ地を乗り越え、組織が最も大きな利益を得られる可能性のある分野に焦点を当てることが重要である。

ガートナー社のハイプ・サイクル:テクノロジー・ライフサイクルの5つの重要なフェーズ

ガートナー社のハイプ・サイクルの5つの重要なフェーズを説明する。

  • 黎明期:潜在的技術革新によって幕が開く。初期の概念実証やメディアの報道によって大きな注目が集まる。多くの場合、使用可能な製品は存在せず、実用化の可能性は証明されていない。
  • 過度な期待のピーク期:初期の宣伝では数多くの成功事例が紹介されるが、失敗事例も多い。行動を起こす企業が一部あるが、少数に留まる。
  • 幻滅期:実験や実装で成果が出ないため、関心が薄れる。テクノロジーの創造者らは淘汰される。生き残ったプロバイダーが早期採用者の満足のいくように自社製品を改善した場合に限り、投資は継続される。
  • 啓発期:テクノロジーが企業にメリットをもたらしたことを示す具体的な事例が増え始め、理解が広まる。第2世代と第3世代の製品が登場する。より多くの企業が試験的に資金を提供する。ただし、保守的な企業は依然として慎重である。
  • 生産性の安定期:主流採用が始まる。プロバイダーの生存可能性を評価する基準がより明確に定義される。テクノロジーの適用可能な範囲と関連性が広がり、投資は確実に回収されつつある。
【図表2】テクノロジー期待変化のハイプ・サイクル
【図表2】テクノロジー期待変化のハイプ・サイクル

「テック主導のハイブリッドオフィス」事例:アクセンチュア、ニューヨーク

グローバル総合コンサルティング会社のアクセンチュアは、米ニューヨークのマンハッタンウエストに位置するオフィスにおいて、新しいワークプレイステクノロジーに多額の投資を行ってきた。本オフィスは、フレキシブルで適応性の高い環境を提供し、テクノロジーと融合したワークプレイスデザインの最前線に位置している(*1)。

  • ビデオ会議(VC):Microsoft Teamsのルームが最も多いオフィスであり、オフィス全体で合計129のコラボレーション可能なTeams環境が整備されている。32台のMicrosoft Surface Hubにより、追加のVC装置を部屋に持ち込み、より豊かなコラボレーション体験と、遠隔地の参加者がその場にいる人と同じ位置にいるようなデジタル平等性を実現することができる。
  • 仮想現実(VR):従業員がVR体験に没頭できるように、特別なVRスペースと設備、6万台のオキュラスのヘッドセットなどに多額の投資を行っている。入社式をバーチャル環境に移行し、新入社員がVRを通じてビジネスについて学んだり同僚に会ったりすることができる。
  • デジタルサイネージ:オフィス内に22ヶ所のデジタルサイネージを設置し、従業員のスマート・アクセス・カードとワークプレイス・アプリからユーザーを識別し、ビル内の道案内や関連性の高いコンテンツを提供する。
  • データ収集:人々がどこでコラボレーションしているか、オフィスがどのように利用されているかなどを理解するために、大量のスペース関連データを収集している。Microsoft Analyticsのプラットフォームを通じて従業員のコラボレーションを測定し、受動型赤外線センサー(PIR)を導入して席の使用状況を監視している。
  • ワークプレイス・アプリ:「Places」と呼ばれる従業員用アプリを導入し、従業員が承諾した場合に限り、スペースの予約、コンテンツやイベントスケジュールの閲覧、交通機関のライブデータの確認、屋内ナビゲーションの使用、オフィスにいる同僚の確認などができるようにする。アプリは、登録されたユーザーの好みに基づき、おすすめや誘導を行う。
  • ITサポート:オフィス内に技術の専門家が常駐するITソリューションバーを設置し、故障や不具合品の交換などのITサポートを提供している。

モデル6:デザイン~パンデミック時のテクノロジーに焦点を当てていた企業は現在、ハイブリッド時代に向けたオフィス空間の改造に奮闘している~

デザインプロセスの不透明さの解消へ

パンデミック初期には、企業はテレワークを確立させる必要に迫られていたため、デザインよりもテクノロジーに注目が集まったのは当然のことだった。しかし、パンデミックが収束に向かい多くの人がオフィスに戻っている今、ハイブリッド時代に企業の生産性を復活させるためのデザイン要素に関心が向かいつつある。より個性的で人間中心的なポストコロナのオフィスを実現するためのスペースや構造、家具、照明、レイアウト、色、アメニティ、サービスなどをどう設計するかというデザインプロセスそのものが、再び脚光を浴びている。

テナント企業は、オフィスを縮小するにしても拡張するにしても、オフィス改造が必要だと認識しているだろう。しかし、多くの企業では、デザインプロセスが不透明であり、ワークプレイスにおけるウェルビーイングやコラボレーション向上などの結果を得るために必要なデザイン要素があまり理解されておらず、議論も十分にされていないという課題を抱えている。

長年の建築研究の結果では、ブリーフィング(設計与件整理)と、その過程でさまざまなニーズを調整することが重要だと判明した。英国王立建築家協会は、プロジェクトの成果を向上させるための「決定的要素」として、よりよいブリーフィング・プロセスと必要な成果の明確な定義を挙げている。これは、どのようにして実現できるだろうか。

デザイン会社のエリアは、プロジェクトを通してコミュニケーションと意思決定を行うための構造として、新たなデザイン・フレームワークを開発した【図表3】。このフレームワークは、すべての関係者が同じ言葉で話すことを保証するための支援構造として想定されており、デザインチームとのコラボレーションを向上させるという課題に対する一つの解決策である。エリア社デザインディレクターであるジェームズ・ジーキー氏は、「オフィススペースの役割について不確実性と複雑性が増している今、クライアントはデザインがどのように組織の成果につながりうるかについて、より多くの指針と明確さを求めている」と述べた。新しい時代の期待に応えるこうした解決策は、今後も数多く生まれてくるだろう。

デザイン・フレームワーク

エリア社が開発したデザイン・フレームワークでは、建物の立地や構造から内部スペースの細部まで、ワークプレイス・プロジェクトの意思決定における重要な要素を説明している。

【図表3】デザイン・フレームワーク
【図表3】デザイン・フレームワーク

デザイン・フレームワークは、以下4つのレイヤーで構成されている。

  • ドライバー(Drivers):プロジェクトの成功要因と望ましい結果を定義するもので、詳細なブリーフィングのための強固な基盤を形成するために最初にクライアントと交渉する必要がある。フレームワークの上位にあり、すべての決定の原動力となる。たとえば、クライアントが重要な成果としてコストや文化、サステナビリティなどを最初に定義すれば、その後の決定が正しく成果や目標に到達しているかどうかを確認できる。
  • 必須要素(Essentials):ドライバーを明確にしたうえで、「必須」要素に関する意思決定を行う。これは基本的な設計要因であり、プロジェクトを支える基盤となる。オフィス内の空間に関する初期の決定に加えて、アメニティや敷地、インフラに関する要件に基づいて、立地や入居する建物など基本的な意思決定に影響を与える可能性がある。
  • 活性化要素(Activators):機能的な要件を超えて全体的なデザイン・コンセプトを実現するための要素であり、内部構造や視覚的な面白さを生み出し、内部環境を調整する。建物の内部空間をどのように使うか、スペースとその中の動きをどのように構成するかという幅広い決定から、体験を促進するための照明や構造、家具などの使用方針まで、さまざまなスペースの活用関連要素が含まれる。
  • 識別要素(Identifiers):組織または組織内のチームにとって意味のある色や素材、ブランディング、工芸品またはアートなどを使用して、組織の文化や個性、理念、価値観に関するメッセージを表現する要素。この要素の決定は最後に行われるかもしれないが、ほかの要素をまとめ、帰属意識とアイデンティティを促進するうえで非常に重要である。

モデル7:ウェルビーイング〜ハイブリッドワークの世界では、従業員が物理的に安全で快適であることを保証するだけでは十分ではない。心理的ウェルビーイングも重要である~

心理的ウェルビーイングはなぜ重要なのか

パンデミック時に、従業員のウェルビーイングは企業の重要な優先事項となった。リスク管理アドバイザリー会社WTWの健康・福利厚生シニア・ディレクターであるレジーナ・アイルケ氏は、「従業員の採用や定着に悩む雇用主は、ウェルビーイングプログラムを優秀な人材を惹きつけるために有効な差別化要因と考えるだろう」と主張した。しかし、多くの企業は今のところ、従業員がオフィスに戻った際の物理的ウェルビーイングのみに焦点を合わせている。新しい換気システムや仕切り、ソーシャルディスタンスの表示などに投資し、物理的な安全性と快適性を向上させている一方で、ハイブリッドワーカーの全体的なウェルビーングに投資している企業は比較的少ない。それは、従業員のニーズに無関心だからではなく、指導方針が欠如しているからである。

ハイブリッドモデルが実現し始めると、従業員のウェルビーイングをめぐる話題は変化していく。企業はもはやオフィスでの基本的な物理的快適性と安全性を提供するだけでは十分ではなく、仕事を成し遂げる能力、帰属意識やアイデンティティの創造といった高次のニーズに対応し、柔軟なワークプレイスのなかで機能的・心理的快適性を提供する必要がある。

環境快適性モデル

モントリオール大学環境デザイン学部名誉教授ジャクリーン・ビッシャー博士が開発した環境快適性のピラミッドモデル(【図表4】)では、快適性を物理的快適性から機能的快適性及び心理的快適性まで3つのレベルに分類している。ハイブリッド時代においては、人々がどのような環境で働いているかに応じて幅広く見直すことができる。このモデルは、元々オフィス環境のために開発されたが、現在では、より広範な仕事の生態系に適用されている。

【図表4】環境快適性モデル
【図表4】環境快適性モデル

このモデルでは、快適性を物理的快適性/機能的快適性/心理的快適性という3段階のビラミッド構造で表し、マズロー氏の欲求5段階説と同様に、心理的欲求を満たすには、まず基本的な生理的欲求を満たさなければならないとしている。

  • 物理的快適性(Physical comfort):ワーカーのワークプレイス体験の基礎となり、基本的な居心地の良さの最低基準を設定する。物理的快適性が十分でないと、ワーカーは健康や安全が脅かされる恐れを感じ、場合によっては(たとえば室内空気の汚染など)仕事を遂行することができなくなる。
  • 機能的快適性(Functional comfort):近年の建物のほとんどは基本的な安全衛生基準を満たしているが、それだけでは機能的に快適なワークスペースとはいえない。機能的快適性とは、従業員がどのようなタイプの作業(コンピューターベース、相互作用、集中、協働、高専門性など)を行うにしても、効果的に遂行できるようにサポートする環境性能であり、まったくサポートされない最低レベルから非常に協力的で快適な最高レベルまでの評価範囲で分類することができる。
  • 心理的快適性(Psychological comfort):プライバシー、環境制御、人間関係、アイデンティティ意識、帰属意識および所有意識の基準に基づく。プライバシーは、他者からのアクセスを制御する必要性が最もよく認識されている。環境制御には、ワークスペースを占有・利用している各個人が設備にアクセスし、条件を変更できたり、意思決定の過程に参加できることが含まれる。

企業は、適切な設備を整備することで従業員の機能的ウェルビーイングを高めることができる。しかし、心理的ウェルビーイングを高めるためには、単に安全性と業務効率性を満たすだけでは不十分であり、従業員の帰属意識や感覚的なウェルビーイングに焦点を当てる必要がある。

ウェルビーイング戦略のために企業は何に投資しているのか

WTW社の調査(*2)によると、企業は2022年から2023年に向けたウェルビーイング戦略の優先事項として、従業員の感情的・経済的ウェルビーイングに関する福利厚生やプログラムに重点を置いていることがわかった。具体的には以下のような施策が考えられる。

  • ファイナンシャル・ウェルビーイング:34%の企業は、新しい家族の誕生や住宅購入など、従業員の経済的に重要な意思決定ポイントにおいて、ファイナンシャル・ウェルビーイング・プログラムの導入を計画している。
  • モバイルアプリ:25%の企業は、物理的ウェルビーイングのために従業員へのモバイルアプリの利用促進を計画または検討している。このグループのうち65%は、調査時点ですでにこれらのアプリを提供している。
  • サービスへのアクセス:約40%の企業は、出社制限の引き上げやサービスの拡大など、従業員のサービス利用支援プログラムの再設計を計画または検討している。

WTW社レジーナ・アイルケ氏は、「従業員のウェルビーイングのあらゆる側面をサポートする包括的な戦略を策定している組織は、最も効果的に目標を達成できるだろう。また、その戦略を従業員に明確に伝えることも重要である」と述べている。

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