なぜ「1人あたりオフィス面積」が減っているのか



(出所)ザイマックス不動産総合研究所「1人あたりオフィス面積調査(2016)」(2016)

一般的に、オフィスに必要とされる面積は「オフィスを利用する人数」×「1人あたりのオフィス面積」で計算されます。この考え方に基づき、当社では2008年から毎年、ザイマックスグループが管理するビルの各入居企業テナントの賃借面積と利用人数を集計し、1人あたりオフィス面積を調べてきました。

2011年以降、1人あたりオフィス面積は縮小を続けており、2016年の中央値は前年比0.07坪減の3.80坪*と、過去最小を記録しています。縮小の背景には何があるのでしょうか。
*中央値とはこの場合、半数のテナントは3.80坪より小さく、残り半数のテナントは3.80坪より大きいことを意味します。

1人あたりオフィス面積が変動する要因は、主に以下の3つです。

1)入居人数の増減
通常のオフィス賃貸借契約では、賃借面積は契約期間を通して固定されています。その間、採用や人事異動などによる人数の変動があるため、同じ面積に対して利用人数は増減します。ここ数年については採用を強化している企業が多く、オフィスの人数が増えていることから、1人あたり面積が縮小傾向となっていると想定できます。

2)オフィススペースの効率化(フリーアドレス席の導入など)
フリーアドレス席やグループアドレス席を導入してオフィス内のスペースを効率化することで、同じ面積のまま入居人数の増加に対応することが可能となり、その結果、1人あたり面積が縮小するケースがみられます。こうした施策はスペースの効率化だけでなく、社内を移動する機会が増えることによるコミュニケーションの活性化などの効果もあるとされています。

3)新たなスペースの創設(カフェスペースの新設など)
最近の特徴として、オープンなミーティングスペースやカフェスペースなど、従来なかったスペースをオフィス内に新たに設けるケースがみられます。この場合、入居人数や他のスペースに変更がなければ、必要なオフィス面積は増えるため、1人あたり面積は拡大することになるでしょう。しかし実際には、従来の会議室や固定席を削減したり、(2)の施策を併用したりすることで同じ面積のまま導入している企業も多く、必ずしも1人あたり面積が拡大しているわけではないようです。こういった新機能を持つスペースは、コミュニケーションやコラボレーション、社員のモチベーションアップなどにつながり、仕事の質を向上させる効果が期待されています。

近年、オフィス内のレイアウトは、スペース効率やコスト面だけでなく、仕事の質や生産性向上への影響といった面を重視して設計されるようになってきています。オフィスの使い方が変化するなか、1人あたり面積が今後どのように推移するのか、さらにはオフィスの必要面積の考え方がどのように変わっていくのか、引き続き動向をみていきます。

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