楽しく働ける通勤時間は片道45分未満? テレワーク・デイズをきっかけに見直そう“痛勤”

2019年7月22日~9月6日の間、全国の企業・団体に対してテレワークや時差出勤、フレックスタイム制などの多様な働き方を奨励するキャンペーン「テレワーク・デイズ」が実施されます。

総務省や経済産業省などが2017年に始めたこの取り組みは、2020年東京オリンピック・パラリンピック開催期間中の交通混雑緩和を目指すもの。大会期間中、朝の通勤時間帯(午前7~10時)の首都圏鉄道利用者は平常時より約1割増えると試算※1されており、何も対策をとらなければ大会運営のみならず、都内に勤めるワーカーの通勤や企業活動にも支障をきたす可能性があります。

そもそも平常時でも、首都圏から都心部へ向かう通勤の実態としては、乗車率100~200%の満員電車に長時間乗ることが当たり前となっており、時間・体力の消耗やそれによる生産性低下などの社会的損失が指摘されてきました。テレワークによってこうした“痛勤”を回避することは、社会的意義だけでなくワーカー個人、ひいては企業とってのメリットにもつながるはずです。

では、テレワークによって通勤時間を短縮したり、満員電車に乗らずに済んだりすることで、具体的にどのような効果が期待できるのでしょうか。ザイマックス総研が2019年2月に実施した「オフィスワーカー調査2019」の結果について、通勤時間を軸にさまざまな分析を行ったところ、二つの興味深い傾向がみられました。

  • ※1 東京都「2020大会輸送と企業活動との両立に向けて- 2020TDM推進プロジェクト」より

1.長時間通勤によって損なわれるもの

まず、通勤時間の長さがワーカーのモチベーションやエンゲージメントにどのような影響を与えるのか。「仕事満足度」や「毎日楽しく働けているか」、「勤務先に対して帰属意識を感じるか」など複数の項目に対する通勤時間の影響を統計的手法により分析したところ、「楽しく働けている」という回答への有意な影響がみられました。

下表は、自宅から勤務先への通勤時間※2と、「毎日楽しく働けている」と感じる確率の関係を示したものです。*の数が多いほど統計的に有意な(信憑性のある)影響があり、数値が0より小さければ、「毎日楽しく働けている」と感じる確率にマイナスの影響を与えるといえます。今回の調査では通勤時間35分からマイナスの影響がみられ始め、45分以上になるとより有意な影響があることがわかりました。

つまり、通勤時間が45分以上であることは、ワーカーが「楽しく働けている」と感じる確率を下げる影響があるということができます。

  • ※2 回答者が通常使用している通勤手段(電車、バス、自動車、自転車、徒歩など)による、自宅からのドア・ツー・ドアの所要時間(片道)。

【表1】通勤時間が「毎日楽しく働けている」と感じる確率に与える影響

通勤時間が「毎日楽しく働けている」と感じる確率に与える影響

2.都心5区への通勤は近くても高ストレス

次に、通勤時間の長さだけでなく、居住地と勤務地の組み合わせ、つまり「通勤する方向」に着目しました。今回の調査では、通勤ストレス※3が通勤時間に比例する傾向が確認されていますが、通勤する方向によっては、ストレスの表れ方に異なる傾向がみられたのです。

  • ※3 通勤ストレスを0(最低)~10(最高)の11段階で聞いた値

下表は、首都圏を①都心5区(千代田・中央・港・新宿・渋谷)、②18区(都心5区を除く東京23区)、③郊外(東京23区を除く首都圏全域)の3エリアに分け、居住地と勤務地の組み合わせごとに平均通勤時間と平均通勤ストレスを示したものです。

【表2】居住地・勤務地エリア別の平均通勤時間(上段)と平均通勤ストレス(下段)

居住地・勤務地エリア別の平均通勤時間(上段)と平均通勤ストレス(下段)

表の通り、18区居住と郊外居住のグループでは、同じエリア内への通勤時間が最も短く、比例して通勤ストレスも低くなっており、職住近接が通勤ストレス軽減に有効であることが示唆されています。また、どちらも通勤時間は45分以内で、前述の「楽しく働けている」と感じる確率が損なわれない範囲にも収まっています。

しかし都心5区居住のグループだけは、最も通勤時間の短くなる同エリア内への通勤よりも、より時間のかかる18区への通勤の方がストレスが低くなる傾向がみられました。また、18区居住グループでは、都心5区へ向かう場合と比べて郊外へ向かう通勤時間は23分も長くなるにもかかわらず、ストレス差は0.2に留まり、ストレスと時間が比例しませんでした。

これらのことより、周辺部から都心部への通勤は、逆方向と比べてストレスがより大きくなる可能性があると考えられます。現状、首都圏にあるオフィスの大部分は都心部へ集中しているため、都心へ向かう上り電車が一様に混雑して”痛勤”を生み出し、所要時間に関わらずストレスを感じる状況になっているのでしょう。

3.“痛勤”解消には郊外の多様なワークプレイス

以上2つの分析結果から、通勤ストレスを抑えて楽しく働くには「所要時間45分未満で周辺部へ向かう通勤」をすれば良いことになります。しかし、都心部のオフィスを郊外へ移転したり、従業員に都心へ転居してもらったりする対策は容易ではなく、現実的ではありません。

そこで有効なのが、都心オフィスとは別に多様なワークプレイスの選択肢を周辺部に用意すること。自社で所有・賃借するサテライトオフィスの設置や、専門事業者が提供するシェアオフィスサービス等を利用する方法などがあります。特にシェアオフィスサービスは近年、従量課金制や月額制など、期間も面積もフレキシブルに利用できる多様なサービスが登場しており、企業が導入するうえでのハードルが下がりつつあります。

テレワーク・デイズでもこうしたワークプレイスの利用が奨励されており、応援団体として登録されたサービス事業者や自治体は160以上※4。2020年東京大会前の本番テストに位置づけられる今年のテレワーク・デイズは、従業員の”痛勤”回避にトライする好機になるのではないでしょうか。

  • ※4 2019年テレワーク・デイズ公式サイトより、ワークスペース提供団体のみ(2019年7月3日時点)。

ENGLISH

TOPへ戻る

関連記事

VIEWPOINT

「オフィス移転」を働き方改革のチャンスに変える

オフィス移転を機に、従来の働き方を変える企業が増えています。移転担当者の体験談からは、その理由や効果が見えてきました。

VIEWPOINT

中小企業の課題解決にも テレワーク・デイズ展開する総務省の思い

今年7月に実施される「テレワーク・デイズ」で、日本の働き方はどう変わるのか。舵取りを務める総務省 渋谷闘志彦氏に話を聞きました。