中小企業ほど効果を実感 大企業だけでない働き方改革の波

働き方改革は大企業だけのもの?

働き方改革の機運が高まる一方、「大企業がやること」「中小企業には関係ない」といった声もよく聞かれます。実際、ザイマックス総研が2017年10月に実施した企業向けアンケートの結果によると、従業員1,000人以上の企業における働き方改革実施率(すでに実施済み+現在取り組み中)が64.5%であったのに対し、100人以上1,000人未満では40.9%、100人未満では26.6%と、企業規模によって取り組み状況に差がみられました【図表1】。

【図表1】<企業規模別>働き方改革への取り組み実態(2017年10月)

ただし、直近1年間の動きをみてみると、特に中間層にあたる100人以上1,000人未満の企業(以下「中規模企業」)が、新たな取り組みに着手している傾向がみられました。例えばテレワークする場所や制度の整備状況について、2017年春調査と2018年春調査の結果を比較すると、中規模企業は「在宅勤務制度」や「レンタルオフィス、シェアオフィス等の利用」の導入率が他グループと比べても大きく伸びていることがわかります【図表2】。

働き方改革の実施率が大企業ほど高かった【図表1】でも、「これから取り組む予定・検討中」という回答に注目すると、中規模企業が17.1%と最も多くなっています。大企業から始まった改革の波が段階的に中小企業にも広がり、全体に定着していく時期に差し掛かっているのかもしれません。

【図表2】<企業規模別>働き方改革への取り組み実態(2018年春・2017年春の経年比較)

切実な目的意識

また、働き方改革を実施(または予定・検討)している企業に対してその目的を聞いたところ、特に中規模企業では、大企業以上に切実な目的意識を持って取り組んでいることがわかりました。

その結果が【図表3】です。まず、複数の選択肢において中規模企業の回答率が最も高くなっていることから、より明確な目的に向けて改革に取り組んでいる様子がうかがえます。例えば「長時間労働の是正」や「業務の効率化」といった直接的な目的を持っている中規模企業は6割弱に上り、喫緊の課題解決策として、働き方を変えようとしていると考えられるでしょう。

【図表3】<企業規模別>働き方改革の目的(複数回答、上位のみ抜粋、2017年10月)

また、人材確保があらゆる企業にとって課題となる中、「離職率の低下」や「採用の強化」といった目的についても、中規模企業が最も高くなっています。従業員のワークライフバランスやモチベーション、満足度向上といった、人材確保に影響すると考えられる項目も同様です。

これらの結果は、働き方改革が中小企業の人材確保策として有効であると考えられていることの表れかもしれません。給与水準などを大幅に上げることは難しくても、柔軟な働き方や快適なオフィス環境を用意してワーカーに魅力を感じてもらうことは、中小企業にとって現実的な手段となっているのではないでしょうか。その意味でも、働き方改革を「ワーカーのための福利厚生」ではなく、企業にとっての経営戦略として捉える必要があるといえます。

中小企業ほど改革の効果を実感

切実な目的意識をもって働き方改革に取り組んだ中規模企業は、その効果もより強く実感しているようです。働き方改革の効果を5段階で評価してもらったところ、企業規模が小さいほど「非常に感じている」「やや感じている」と回答した割合が高く、100人以上1,000人未満の中規模企業では71.3%に上りました【図表4】。

【図表4】<企業規模別>働き方改革の効果実感(2017年10月)

具体的な内容としては、「長時間労働の是正」「生産性の向上」「業務の効率化」といった複数の項目について、中規模企業が大企業以上に効果を感じているようです【図表5】。特に「長時間労働の是正」と「業務の効率化」については、「働き方改革の目的」としても挙げている中規模企業が多かったことから、目的意識を持って取り組んだ効果が表れているのかもしれません。

【図表5】<企業規模別>働き方改革の具体的な効果(複数回答、抜粋、2017年10月)

コスト負担がネックに

このように、働き方改革に取り組んでいる企業はその効果を感じているにもかかわらず、中小企業での実施率がいまだ低い要因の一つが、コスト負担の重さです。

働き方改革の中でも、特にオフィス施策を実施する上での懸念事項/阻害要因を聞いたところ、中規模企業は「コスト負担が重い」「費用対効果が不明瞭」といったコスト関係の懸念を、他のグループよりも強く感じていることがわかりました【図表6】。

【図表6】<企業規模別>オフィス施策を実施する上での懸念事項/阻害要因(複数回答、抜粋、2017年10月)

例えば、オフィス移転やレイアウト変更によってオフィス環境を改善したり、サードプレイスオフィスなどのテレワーク環境を整えたりするためのコストは、大企業ほど資本力のない中小企業にとって重く、費用対効果が明確でなければ踏み出しづらいかもしれません。

しかし、企業アンケートの結果からは、働き方を変えている中規模企業は大企業以上に明確な目的意識を持って取り組んでいること、そしてその結果、生産性の向上といった効果を実感していることがわかりました。つまり、企業規模にかかわらず着手してみることに意味があるといえそうです。

最初から予算を大きくとらなくても、スモールスタートで自社に最適な方法を模索していくなど、身軽な中小企業に適した取り組み方はあるはずです。重要なのは、働き方改革の目指すべきゴールをまず策定し、その効果を最大化するための働き方やオフィスの在り方を考えることではないでしょうか。

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