テレワーク経験者が感じるメリットとデメリット

テレワークへの不安と実際のデメリット

働き方改革の盛り上がりに伴い、テレワークの導入企業が増えています。業務効率化やワークライフバランス向上といったテレワークの効果が認識される一方、ザイマックス総研が首都圏で働くオフィスワーカーを対象に行った「テレワークの実態調査」*では、全回答者(テレワーク経験者・未経験者を含む)の78%がテレワークに対して何かしらの不安要素を感じていることがわかりました。

興味深いのは、テレワーク未経験者も含む全回答者がイメージしている不安と、経験者が実際に感じたデメリットに差がある点です。まず、全ての項目で、イメージされている不安ほど、テレワーク経験者はデメリットを感じていないという傾向がみられました。テレワーク導入前に抱く不安は、杞憂に終わる場合も多いようです。

*2016年11~12月、自営業主以外の有職者で、主な仕事場が首都圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)と回答した15~69歳の男女3,094人を対象に実施。

【図表1】テレワークへの不安と実際に感じたデメリット(「あてはまる」と「ややあてはまる」の合計割合)

また、テレワーク未経験者を含む全回答者の多くは「仕事上のコミュニケーション量が減る」(53.2%)、「ホウレンソウ(報連相)がしづらい」(43.9%)といったコミュニケーション面の不安を抱いていますが、テレワーク経験者に限定すると、その不安を感じている割合はそれぞれ1~2割にとどまります。むしろ経験者が不安要素として上位にあげたのは、「仕事のON/OFFの切り替えがしづらい」(37.9%)、「長時間労働になる」(25.4%)といった労働負荷に関することでした。ワーカーの心身の健康、ひいては雇用維持や生産性向上の観点から見ても、労働負荷の軽減はテレワークを導入する上で考えなければならない課題といえるでしょう。

実際のデメリットと働く場所の関係

こうしたデメリットの感じ方は、テレワークをする場所によっても変わってくるようです。働く場所の違いによる差をみたところ、主に自宅で働いている人の方が、自宅以外の場所で働いている人よりもそれぞれのデメリットを感じている割合が高い結果となりました。

【図表2】テレワーク実施場所によるデメリットの感じ方の差

この背景には、日本の住宅事情や在宅勤務に関する理解不足があるのかもしれません。「自宅でテレワークをしたことがある」と回答した人の一部にヒアリングを行ったところ、「書斎や自室がないため仕事モードになれない」「家にいると家族から用事や子どもの相手を頼まれてしまって集中できない」といった声が聞かれました。特に家族と同居している場合は、勤務時間であるという意識を家族にも持ってもらう必要がありそうです。

また、日常的に在宅勤務を行っているある女性は、「今の勤務スタイルを続けさせてもらうためにも信用を裏切れない。だから会社で働くとき以上に精度を高めなければとプレッシャーを感じる」と話していました。自宅だと家事などの私用でサボりやすいイメージがある分、仕事への取り組みをアウトプットの量や質でアピールしようという気持ちが長時間労働につながる場合があるようです。

こうした在宅勤務のデメリットを考慮し、自宅以外でテレワークを行う場合、サテライトオフィスやシェアオフィスといった「サードプレイスオフィス」の利用が考えられます。オフィスと同様の環境を用意できるためON/OFFが切り替えやすく、帰宅時間を意識することで長時間労働になりづらいといった利点があります。業務効率化やワークライフバランス向上といったテレワークの効果を得るためにも、ワーカー任せではなく、企業側が適切な環境を提供するという意識が今後は必要になってくるかもしれません。

メリットを伸ばして生産性向上につなげる

同調査では、多くのテレワーク経験者が実際にメリットを感じているということもわかりました。

【図表3】テレワークへの期待と実際に感じたメリット(「あてはまる」と「ややあてはまる」の合計割合)

特に、「集中して仕事ができる」(49.7%)、「仕事の成果が向上する」(39.1%)、「いいアイデアが出せる」(36.1%)といった仕事の質の向上につながる効果を感じている人が多く、意外にも「家族との時間が増える」(34.3%)、「残業時間が減る」(33.7%)、「自分の趣味や余暇などの時間が増える」(27.8%)といった時間効率化に関するメリットを感じている人の割合を上回る結果となりました。また、「ストレスが減る」と回答した人も4割を超えており、ワーカーの心身の健康が、仕事に対する集中力や成果、創造性などに好影響を与えている可能性もあるかもしれません。

在宅勤務にせよサードプレイスオフィス勤務にせよ、前述の通り日本の住宅事情や慣習、ワーカーの意識などと馴染みづらい部分もあり、導入したもののすぐに効果を実感できないという企業はまだ多いのが現状です。短期的に結論を出すのではなく、トライアンドエラーを繰り返して最適化を図る努力が必要でしょう。

導入に成功している企業の例をみると、最初は外出が多い部門や育児・介護中の従業員などに限定導入し、利用者の声を反映しながら、徐々に全体へと拡大していくパターンが多いようです。自社の中でテレワークを必要としているのは誰なのか、導入効果が高いのはどんな職種・部門なのかを見極めることが、導入にあたっての最初の検討事項となるかもしれません。

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