“フレキシブルワーク先進国”ロンドンの働き方とオフィス潮流

「WORKTECH17 LONDON」に参加

「WORKTECH17 LONDON」に参加

2017年11月、働き方×オフィス編集部は、フレキシブルワーク(*1)先進国であるロンドンを訪問しました。目的はロンドンワーカーの働き方と働く場所を視察すること、そして14~15日に開催された「WORKTECH17 LONDON」に参加することです。

*1 働く人それぞれの状況に合わせて働く場所や時間を柔軟に選択する、自由度の高い働き方。

「WORKTECH」(ワークテック)は、ワークスタイル変革と不動産・ワークスペースをメインテーマとする世界的なカンファレンスです。2011年から毎年各国で開催され、不動産やIT、サービス、建築、家具といった業界関係者を集めて新たなトレンドを生み出そうとしています。2018年4月5日には東京で初開催され、ザイマックスも講演を予定するなど、今後日本でも注目を集めるかもしれません。

今回のロンドン会場では、マイクロソフトやエアビーアンドビーといったグローバル企業による講演のほか、「コワーキングオフィスの波」がテーマのパネルディスカッションなども行われ、世界中から集まった参加者が熱心に聴講していました。

フレキシブルワークプレイス探訪@ロンドン

WORKTECHの会場を出ると、次はロンドン市内に点在するフレキシブルワークプレイス(*2)を巡りました。

*2 フレキシブルワークを実践するための、多様な働く場所の総称。専門事業者が提供するシェアオフィスやコワーキングオフィス、企業のサテライトオフィスなどのほか、広義にはカフェや図書館などの公共空間も含む。

ロンドンはフレキシブルワークプレイスの数が世界最多クラスと言われていて、オフィスワーカーの働く場所の選択肢として支持されている様子が見受けられました。特にここ数年は東京同様、フリーランスやスタートアップだけでなく、一般企業が自社の従業員に利用させるケースが拡大しつつあるようです。

この背景にあるのが、ロンドン中心部の賃料上昇です。ブレグジット(英国のEU離脱)による先行き不透明感から企業のコスト抑制マインドは強まっており、5~10年契約で縛られる従来の賃借オフィスに対する忌避感の受け皿として、よりフレキシブルに利用できるワークプレイスが選ばれているのでしょう。

例えば、全世界で約290拠点を展開する最大手「WeWork」。ロンドンでは、2018年中に現在の21拠点から33拠点まで増える予定(*3)で、需要の旺盛さがうかがえます。

*3 WeWorkオフィシャルサイトにて編集部が「近日オープン」「告知」件数を確認。

編集部が訪れたソーホー地区の拠点はビル1棟丸ごとWeWorkで、大小さまざまな企業が区画単位で入居し、利用者たちは自社の区画だけでなく、1階のコミュニティスペース(パントリーやキッチンなど)でも、休憩したり社外の人々と交流したりして過ごしていました。

また、イギリス国内に33拠点を展開する「The Office Group(TOG)」のオックスフォード・サーカス駅付近の拠点を訪れると、こちらも1階はカフェスペースとなっており、長テーブルでメンバーたちが思い思いに過ごしていました。上階には会議室などの共用施設も整備されています。

ロンドンには、上記のような専用スペース以外にもテレワークできる場所が豊富にあります。最近特に人気なのがデザインホテルのロビーです。

例えば「CitizenM」や「The Hoxton」のロビーでは、誰でも無料Wi-Fiや共有のパソコンを利用することができ、快適に長時間滞在できるため、常に多くの若者がそこで仕事をしていました。「The Hospital Club」はホテルやテレビスタジオ、イベントスペース、ゲストルームなどを併設したメンバー制クラブで、メディア系やデザイン系企業の役員などがフレキシブルワークの場として活用しています。

また、ロンドンのカフェは東京以上に、コーヒーを飲む場所ではなく仕事をする場所として利用されているようです。公園のベンチでパソコンを広げて働く人も多数見かけました。クイーン・エリザベス・オリンピック・パークという公園では、太陽光発電を利用した電源付きのベンチを発見。まだ実験段階のようでしたが、今後はロンドン市内に豊富にある公園で、電源を使って何時間でも仕事ができるようになるかもしれません。

2017年からは使われなくなった電話ボックスが無料公共Wi-Fiスポットとして活用されています。オフィスと街の境界線が東京よりも曖昧で、いつでもどこでも働ける雰囲気が感じられました。

東京との比較

近年、「人材」にフォーカスして働き方を変え、生産性を向上させることは各国共通の課題であり、東京でもロンドンでも、フレキシブルかつ効率的な働き方への意向は高まっています。しかし、この2都市の企業がフレキシブルワークを目指す背景には異なる部分もあるようです。

例えば、テレワークを導入する目的。先ほど述べた通り、ロンドンでは高騰する賃料の削減ニーズが強く、固定費削減を主な目的としてフレキシブルワークプレイスを利用するケースが多いといいます。一般的に、英国では従業員への交通費支給がない企業も多く、都心オフィスに通勤するよりも自宅や近所のフレキシブルワークプレイスで働く方が、ワーカーとしても負担が少ないという面もあるのかもしれません。

一方で東京は、ロンドンと同じく都心部のオフィス賃料が高止まりしているものの、コスト削減よりも人口減少を背景とした人材確保の側面が強く、より多様な人材を確保するために柔軟な働き方を導入せざるをえないという状況があります。

オフィスワーカーの絶対数が減っていく日本では、時間や場所の制限により「今まで活躍できていなかった人材」、つまり女性や高齢者層に焦点が当てられているのです。

対してロンドン企業が確保したいのは「高度人材」です。ミレニアル世代(*4)に焦点を当て、正社員、フリーランス、業務委託など雇用形態問わず、世界中から優秀な人材を集めています。「ロンドンにもうイギリス人はいない」という冗談があるほどです。若い高度人材に効率的なワークプレイスを提供し、シビアに生産性を高めようというのがロンドン企業の今の意向です。

*4 1980年代半ば~2000年前後に生まれた世代。インターネットが当たり前にある世界で成長し、上の世代とは異なる価値観を持つ層であるとされている。

このように、東京とロンドンは抱えている事情や課題が異なるため、フレキシブルワークの導入についても、一概にロンドンを追いかければいいというわけではないでしょう。しかし、今まで活躍できていなかった人々がより仕事に参画しやすい環境や、無駄を削減し効率よく働ける体制は参考になる部分も多そうです。今ある労働力を最大限に生かすべき日本では、フレキシブルワークの必要性はロンドン以上に高いのかもしれません。

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