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2021.12.17

首都圏オフィスワーカー調査 2021

~ワーカーの働き方と価値観の変化を捉える~

ここ数年、働き方改革が注目されていたことに加え、2020年春には新型コロナウイルスの感染拡大に伴う政府からのテレワーク要請や緊急事態宣言を受け、多くの企業は働き方や働く場所の運用の見直しを迫られた。こうした働き方の変化は企業の経営戦略だけでなく、オフィスワーカーの価値観にも影響すると考えられる。

ザイマックス不動産総合研究所(以下、ザイマックス総研)では、企業とオフィスワーカーのそれぞれの視点から働き方と働く場所の変化を捉えるため、企業については「大都市圏オフィス需要調査」を2016年秋より計11回、加えて「首都圏企業調査」を2020年8月より計4回、オフィスワーカーについては「首都圏オフィスワーカー調査」を2016年末から計5回実施してきた。本レポートは2021年9月に実施した第6回目のオフィスワーカー調査の結果を踏まえ、首都圏勤務者の働き方の実態や価値観について最新の潮流をまとめたものである。

主な調査結果

    1. コロナ危機における働き方の実態

  • ・ テレワーカーは全体の約7割を占めた。そのうち「完全テレワーク」であるのは一割未満にとどまり、多くのテレワーカーは状況に応じオフィス出社との使い分けをしている。「完全出社」のワーカーもあわせると、9割以上のワーカーがオフィスに出社する機会がある。
  • ・ 働き方に関する施策について、2020年調査と比較すると全ての施策で実施率は増加した。特に「在宅手当(備品や光熱費等)」(16.7%)は倍近くに増加した。
  • ・ ワーカーは、平均で6割程度の時間を「在籍するオフィス」で働いていた。それ以外のテレワークしている時間のほとんどを在宅勤務が占めていた。
  • ・ 在籍するオフィスに出社するメリットは「働きやすい環境が整っている(通信、什器、執務スペース等)」(53.4%)がトップであった。そのほか、コミュニケーションについての評価が高かった。
  • 2. コロナ危機におけるテレワークの状況

  • ・ テレワーカーのテレワーク実施割合を日数単位でみると、最も多いのは「~週5日(81~100%)」で30.2%、次いで「~週1日(~20%)」が23.8%であった。また、週4~5日(61~100%)の頻度でテレワークをしているテレワーカーは約半数にのぼった。
  • ・ テレワークのメリットとして「移動時間・通勤時間の削減」(80.0%)を挙げる人が最も多かった。
  • ・ テレワークの不満は、「テレワークはコミュニケーションがとりづらい」(40.3%)が最も多かった。
  • ・ 在宅勤務の不満は「運動不足・不健康になりやすい」(56.5%)が最も多かった。そのほか、在宅勤務が定着し始めている今もなお、什器やモニター、コピー機、ネット回線などの業務環境が整っていない様子が明らかになった。
  • ・ サテライトオフィスの印象としては「在宅勤務より集中しやすい」(51.6%)が最も多かった。
  • 3. テレワークの評価

  • ・ テレワーカーに現在の働き方におけるパフォーマンス、エンゲージメントの評価を聞いたところ、それぞれ過半数が週5日の完全出社より「向上した」または「変わらない」と評価している。ストレスについては「軽減した」が約6割であり、「変わらない」もあわせると8割超にのぼる。
  • ・ 業務タイプごとのやりやすさをオフィス出社とテレワークで比較した結果について、パフォーマンスの評価別にみてみると、テレワークでパフォーマンスが向上したグループは、一人での業務だけでなくコミュニケーションを伴う業務もオフィス出社とテレワークでのやりやすさが変わらない、またはテレワークの方がやりやすいと回答している割合が低下したグループより高かった。
  • ・ 在宅勤務の不満をパフォーマンスの評価別に比較すると、「コミュニケーションがとりづらい、減る」のほかに「仕事のオン・オフが切り替えづらい」、「集中しづらい・気が散る」、「業務に適したスペースや什器が揃っていない」といった項目でパフォーマンスが向上したグループを低下したグループが大きく上回った。
  • 4. コロナ危機収束後の働き方

  • ・ 今後の働き方としてテレワーク希望者は全体の76.1%と、現在のテレワーカーの割合(67.7%)よりも高かった。
  • ・ テレワークの頻度としては「~週1日(~20%)」「~週5日(81~100%)」といった極端な配分を希望する割合はテレワーカーの実態より減り、「週2~4日(21~80%)」と回答した割合が増加していた。
  • ・ コロナ危機収束後、どのようなオフィスなら出社したいと思うかを聞いたところ、最も多かったのは「業務に集中できる個室がある」(44.6%)であった。ほかには、「雑談や偶発的なコミュニケーションがしやすい環境である」(27.3%)といった、人と会う・集まる機能についての回答率が増加していた。
  • ・ サテライトオフィスに重視することは、「自宅から近い」(57.5%)が最も多かった。

関連調査
・2017年4月13日公表「働き方改革と多様化するオフィス
・2018年6月6日公表「首都圏オフィスワーカー調査2018
・2019年12月19日公表「首都圏オフィスワーカー調査 2019
・2020年11月24日公表「首都圏オフィスワーカー調査 2020


1. コロナ危機における働き方の実態

1.1. テレワーカーの割合

今回の調査では、職業が「会社・団体の役員、会社員・団体職員」、職種が「管理的職業、専門的・技術的職業、事務的職業、営業職業」、在籍するオフィスが「首都圏(1都3県)」、コロナ危機発生以前および現在の主に働いている場所が「オフィス(事務所)、自宅」と回答した18歳以上の男女2,060人から有効回答を得た。これらのアンケート回答者は現状どのような働き方をしているのか、実態をみていく。

まず、コロナ危機におけるワーカーの出社状況を確認したい。調査時点でテレワークを少しでも行っている「テレワーカー」は67.7%、テレワークを実施していない「完全出社」のワーカーは全体の32.3%であった【図表1】。完全テレワークであると回答したのは全体の8.5%と一割にも満たず、テレワークとオフィス出社を使い分けているテレワーカーが多数であることがわかった。完全出社であるワーカーも含め、9割以上のワーカーがオフィスに出社する機会があるといえる。

【図表1】オフィス出社とテレワークの状況

【図表1】のオフィス出社とテレワークの状況について、現在「完全出社」であると回答したワーカーを、コロナ危機発生以前または発生後に一時的にテレワークしたことがある「一時的テレワーク経験者」と、今までテレワークしたことがない「テレワーク未経験者」に分けたうえで、2020年調査と比較した【図表2】。その結果、2020年調査よりも「テレワーカー」の割合が5.0ポイント増加し、「一時的テレワーク経験者」は5.9ポイント減少した。情勢を鑑み、企業の指示や個人の判断によりテレワークを行ったり完全出社に戻したりするワーカーが一部いるようだ。実際、感染が落ち着いていた2020年調査時(2020年9月)とは異なり、2021年の調査は4回目の緊急事態宣言下であり、テレワークが強化されていた可能性が高い。また、情勢に関わらずテレワークをしない・できない「テレワーク未経験者」が一定数いることも明らかになった。

【図表2】テレワークの実施状況

テレワーカーの割合を職種別にみてみると、「技術系専門職」(82.2%)や「経営企画」(81.0%)、「事務系専門職」(80.4%)では8割を超えた。特に「技術系専門職」のテレワーカーの割合は2020年調査に比べて9.0ポイント、「経営企画」のテレワーカーの割合は10.3ポイント増加している。一方、「一般事務・受付・秘書」(52.2%)は比較的低いことがわかった【図表3】。

【図表3】<職種別>テレワーカーの割合

また、役職別でみると、最もテレワーカーの割合が高いのは「管理職」(77.6%)だった。一方、「非正規の社員・職員」は55.5%と最も低く、唯一2020年調査から増加していない【図表4】。

【図表4】<役職別>テレワーカーの割合

次に、テレワークする場所(在宅勤務/サテライトオフィス勤務/その他の場所(喫茶店など))ごとに現在のテレワーク実施状況と実施開始時期をみてみた【図表5】。なお、サテライトオフィスについては、専門事業者が提供するものと、自社が所有・賃借するものを分けて聞いている。現在実施している割合が最も高い在宅勤務は、46.3%が「新型コロナ発生前は実施しておらず、新型コロナ発生後から実施している」と回答しており、コロナ危機による影響の大きさが確認できた。

【図表5】テレワークする場所ごとの実施状況と実施開始時期

【図表5】のテレワークする場所のほか、働き方に関する施策について現在利用・実施しているものを経年で比較した【図表6】。各施策の実施率はコロナ危機発生後の2020年調査で大きく伸び、今回調査でも引き続き全ての項目で実施率は増加した。特に「在宅手当(備品や光熱費等)」(8.5%→16.7%)は2020年調査から倍近くに増加しており、テレワークが急速に拡大した昨年には対応できていなかった二次的な取り組みが徐々に普及し始めていることがうかがえる。

【図表6】働き方に関する施策の実施率

1.2. オフィス出社とテレワークの使い分け

前節で、ワーカー全体の7割はテレワークをしているものの、多くのワーカーはオフィスも利用していることがわかった。そこで、「在籍するオフィス」「自宅(在宅勤務)」「サテライトオフィス」「その他の場所」といった、働く場所ごとの時間配分をみたところ、全体平均では6割程度の時間を在籍するオフィスで働いていることがわかった【図表7】。また、在籍するオフィスで働く以外の時間、つまりテレワークする時間のなかでは、ほとんどの時間を在宅勤務が占めており、ワーカーにとって現状は「テレワーク=在宅勤務」であることがうかがえる。

【図表7】働く場所ごとの時間配分

在籍するオフィスに出社するメリットとしては、「働きやすい環境が整っている(通信、什器、執務スペース等)」(53.4%)がトップであった【図表8】。また、「業務上のコミュニケーションがとりやすい(交渉等)」(49.7%)、「コミュニケーションがとりやすい(雑談等)」(43.2%)が続き、コミュニケーションについての評価が高いことがわかった。そのほか、「情報収集しやすい(資料など)」(34.3%)はテレワークでは対応しにくい点といえるかもしれない。

【図表8】出社のメリット

次に、いくつかのタイプの業務について、オフィス出社とテレワークのどちらがやりやすいかを聞いた【図表9】。「一人で事務処理業務」と「一人でアイディア創出、発想」はテレワークがオフィス出社を上回る結果となり、テレワークは個人ワークをしやすいと考えるワーカーが多いことがわかった。一方で、「社内打ち合わせ」など複数人で行う業務については、約6~7割がオフィス出社の方がやりやすいと回答した。特に「新人、若手教育研修」は、オフィス出社の方がやりやすいと回答した割合が今回聞いた業務タイプのなかで最も高かった。しかし、いずれの業務タイプも、テレワークでもオフィス出社と変わりない、もしくはテレワークのほうがやりやすいと回答するワーカーが一定数確認できた。

【図表9】業務タイプごとの働きやすさ(テレワーク/オフィス)

2. コロナ危機におけるテレワークの状況

2.1. テレワーク頻度

ここからはテレワーカーの働き方に着目したい。テレワーカーに対して、1週間のうちオフィス出社とテレワークをそれぞれどの程度実施しているか、平均的な時間配分を聞いた。週5日勤務で考え、テレワークの実施割合を日数単位で区切った分布をみると、「~週5日(81~100%)」が30.2%と最も多く、次に「~週1日(~20%)」(23.8%)が続いた【図表10】。このことから、テレワーカーのなかでも、ほぼ毎日テレワークする、あるいはたまにしかテレワークしない、といった極端な配分でテレワークをしている人が多いことが分かる。また、週4~5日(61~100%)の頻度でテレワークをしているテレワーカーは約半数にのぼった。

【図表10】テレワーカーのテレワーク頻度

この結果を職種別にみると、「事務系専門職」(64.8%)、「技術系専門職」(61.7%)、「クリエイティブ系専門職」(59.5%)、「経営企画」(54.7%)は週4~5日(61~100%)の頻度でテレワークしている割合が半数を超えた【図表11】。一方、「総務・人事・経理」は「~週5日(81~100%)」の頻度でテレワークしている割合は16.2%にとどまり、週1~2日(~40%)の頻度のテレワークが約半数を占めた。

【図表11】<職種別>テレワーカーのテレワーク頻度

2.2. テレワークのメリットと不満

次に、テレワーク経験者(「テレワーカー」と「一時的テレワーク経験者」)がテレワークにどのようなメリットを感じているのかをみてみた【図表12】。最も多かったのは「移動時間・通勤時間の削減」(80.0%)、次いで「感染症の感染リスク低減」(50.7%)となった。【図表5・7】で確認した通り、テレワークの内訳の大半を占める在宅勤務は、コロナ危機を機に実施しているワーカーが多く、実際に感染症対策として効果を感じている様子がうかがえる。さらに「ストレス軽減」(30.8%)、「肉体的な負担軽減(健康増進、疲労軽減)」(30.5%)と続き、オフィスへの通勤がなくなることによる肉体的・精神的な負担軽減が主なメリットとして挙げられている。一方で、「特にメリットは感じない」(10.4%)は1割程度にとどまり、テレワーク経験者の多くは何かしらのメリットを感じていることもわかった。

【図表12】テレワークのメリット

同じくテレワーク経験者のテレワークの不満をみてみたところ、「テレワークはコミュニケーションがとりづらい」(40.3%)が最も多かった【図表13】。【図表8】で出社のメリットとしてコミュニケーションが上位に挙がり、【図表9】ではコミュニケーションが必要な業務はテレワークよりオフィス出社のほうがやりやすいという結果が得られたことからも、テレワークの一番の課題はコミュニケーションであることがうかがえる。そのほか「テレワークに対する会社の補助支援が足りない」(26.3%)、「テレワークできる人とできない人の不公平感(職種、部署による差)を感じる」(20.3%)が上位に並んだ。一方、「特になし」と回答した割合は27.7%にのぼった。

【図表13】テレワークの不満

続いて、在宅勤務の経験者かつ何かしらの不満を感じているワーカーが、在宅勤務にどのような不満を感じているかを【図表14】で示した。【図表13】でコミュニケーションがテレワークの不満として挙げられていたのと同様に、在宅勤務の不満としても「コミュニケーションがとりづらい、減る」(44.8%)は上位に挙がっている。しかしそれ以上に「運動不足・不健康になりやすい」(56.5%)、「仕事のオン・オフが切り替えづらい」(50.3%)と回答した割合が高く、通勤時間削減による負担軽減といったテレワークのメリットは、在宅勤務の場合、自宅にこもりがちになることでデメリットにもなることがわかった。また、1回目の緊急事態宣言から1年半ほど経ち、在宅勤務は普及・定着してきたが、什器やモニター、コピー機、ネット回線などの業務環境がいまだに整っていない様子も明らかとなった。個人で用意するのが難しい場合もあるため、業務環境を整えるための補助支援や、自宅以外の働く場所の整備等の必要性がうかがえる。

【図表14】在宅勤務の不満

サテライトオフィスに対する印象を聞いたところ、「在宅勤務より集中しやすい」(51.6%)が最も多かった【図表15】。次いで「自宅近くでメインオフィスの代わりとして使える」(47.3%)、「在宅勤務でやりづらい業務に適している(オンラインミーティング等)」(36.2%)が多かった。これらの上位3項目から、コロナ危機発生以前は主流だったタッチダウン利用よりも自宅やオフィスに代わる場所としてのイメージが強いことがうかがえる。【図表14】でみた在宅勤務の不満をカバーし、テレワークのメリットを享受できる場としてサテライトオフィスが有効であるといえるだろう。また、「対面の打ち合わせ、接客などがしやすい」(18.5%)、「人と会って気分転換できる」(16.8%)という印象を持つワーカーは2割未満にとどまり、複数人の会議室ではなく個室を使うイメージを持つワーカーが多いことが推測される。

【図表15】サテライトオフィスに対する印象

3. テレワークの評価

ここからは、テレワークの評価についてみていきたい。テレワーカー(*1)に対し、パフォーマンス、エンゲージメント、ストレスの3つの観点について、週5日オフィスに出社する場合を100としたときの現在の働き方の評価(テレワーク時だけでなく出社時も含めた総合評価)を聞いたところ、平均でパフォーマンスは96.7、エンゲージメントは87.4、ストレスは83.7であった。

*1 現在働く場所の時間配分として在籍するオフィスが100%であるワーカーを除く。

それぞれの観点ごとに評価を3分類し(*2)その割合を【図表16】に示した。週5日出社で働く場合に比べて現在の働き方でパフォーマンスが「向上する」と回答した割合は23.4%であった。パフォーマンスやエンゲージメントはテレワークによる低下が懸念されることもあるが、「向上した」と「変わらない」の合計はいずれも半数を超えた。また、ストレスについては「軽減した」が約6割であり、「変わらない」もあわせると8割超にのぼる。

*2 パフォーマンスおよびエンゲージメントは101以上を「向上した」、100を「変わらない」、99以下を「低下した」と分類した。ストレスは99以下を「軽減した」、100を「変わらない」、101以上を「増加した」と分類した。

【図表16】テレワーカーのパフォーマンス、エンゲージメント、ストレスの評価
(週5日出社との比較)

【図表16】をテレワークの頻度別にみると、パフォーマンスはテレワークの頻度が高いほど「向上した」割合が高い傾向にあった【図表17】。

【図表17】<テレワーク頻度別>パフォーマンスの評価

エンゲージメントは、テレワークの頻度による傾向は特には見られなかった【図表18】。

【図表18】<テレワーク頻度別>エンゲージメントの評価

ストレスは「~週1日(~20%)」と「~週2日(21~40%)」の間に差があるものの、それ以降は頻度によらず約6割が「軽減した」と感じていることがわかった【図表19】。

【図表19】<テレワーク頻度別>ストレスの評価

これらの評価のうち、パフォーマンスの評価に影響する要因を探っていきたい。まず、業務タイプごとにオフィス出社とテレワークどちらでやりやすいかを聞いた結果をパフォーマンスの評価別に比較した【図表20】。この結果をみると、すべての業務タイプで、パフォーマンスが向上したグループは低下したグループよりテレワークのほうがやりやすいと回答した割合が高かった。パフォーマンスが向上したグループではコミュニケーションが伴う業務についても、テレワークはオフィス出社と同等、あるいはそれ以上にやりやすいと回答している割合が、低下したグループを大きく上回っている。特に、「社内打ち合わせ」や「取引先や社外との商談・面談」については、向上したグループの半数以上がテレワークとオフィス出社で変わらない、またはテレワークのほうがやりやすいと回答していた。

【図表20】<パフォーマンスの評価別>業務タイプごとの働きやすさ
(テレワーク/オフィス)

実際、テレワークの不満をパフォーマンスの評価別にみると、ほとんど差のない項目が多いなか、「コミュニケーションがとりづらい」と感じている割合は低下したグループのほうが向上したグループより27.7ポイント高く、大きな差があることがわかった【図表21】。【図表13】でテレワークの不満としてコミュニケーションに関する項目が最も高かったことからも、コミュニケーションがうまく取れているかどうかがパフォーマンスに影響している可能性がある。

【図表21】<パフォーマンスの評価別>テレワークの不満

さらに、テレワークの大半の時間を占める在宅勤務(【図表7】)についての不満をパフォーマンスの評価別に比較した【図表22】。ここまでパフォーマンスの評価を左右する要因として着目していたコミュニケーションに関する項目である、「コミュニケーションがとりづらい、減る」(低下した-向上したの差、以下同:21.3ポイント)のほかに、「仕事のオン・オフが切り替えづらい」(25.0ポイント)、「集中しづらい・気が散る」(22.6ポイント)、「業務に適したスペースや什器が揃っていない」(15.1ポイント)といった項目でパフォーマンスの評価別のギャップが大きいことがわかった。このことから、パフォーマンスが低下したワーカーは、自宅の中に働く環境を整備することが難しく生活の場と働く場が一緒になってしまうことで、気持ちの切り替えや集中することができないワーカーが一定数おり、それがパフォーマンスの低下につながっていると考えられる。現状は「テレワーク=在宅勤務」だが、働くための場として整備されたサテライトオフィスを利用することで、パフォーマンス高くテレワークできるワーカーが増えると推測できる。

【図表22】<パフォーマンスの評価別>在宅勤務の不満

4. コロナ危機収束後の働き方

4.1. コロナ危機収束後のテレワーク意向

最後に、今後の働き方についてどのようなニーズがあるかをみてみた。

働き方に関する施策について、コロナ危機収束後に利用・実施したいものを聞いた結果、テレワークする場所に関する施策は全てニーズが現状を上回っており、今後も拡大が続きそうだ【図表23】。また、「在宅手当(備品や光熱費等)」(37.5%)や、「勤務先の許可を得た副業・兼業」(22.4%)、「勤務先の許可を得たワーケーション」(14.9%)、「二拠点居住で働く、郊外・地方へ移住して働く」(11.6%)など、より先進的な施策へのニーズの高さも目立った。

【図表23】働き方に関する施策のニーズ

現在テレワークを利用している人(テレワーカー)の割合(【図表1】)と、テレワークする場所に関する施策のうち1つでも利用を希望する人(テレワーク希望者)の割合をみたのが【図表24】である。今後の働き方として、テレワーク希望者の割合は76.1%と現在のテレワーカーの割合よりも高い結果となった。テレワークが急速に拡大した今もなお、さらなる普及が望まれているといえよう。

【図表24】テレワークの現在の利用率と利用ニーズ

テレワーク希望者にオフィス出社とテレワークをどの程度の割合で使い分けたいか意向を聞いたところ「~週1日(~20%)」「~週5日(81~100%)」といった極端な配分を希望する割合はテレワーカーの実態より減り、「週2~4日(21~80%)」と回答した割合が増加している【図表25】。

なお、「~週5日(81~100%)」と回答したなかでも「100%」の完全テレワークの働き方を希望するワーカーはテレワーク希望者全体の1割程度にとどまる。テレワークが今後さらに普及しても、働く場所としてオフィスの必要性は依然なくならないと考えられる。

【図表25】テレワーク頻度(実態と意向)

4.2. コロナ危機収束後の働く場所

ここまでみてきた通り、コロナ危機収束後も多くのワーカーはテレワークとあわせてオフィスにも出社すると考えられる。そこで、テレワークの選択肢があるうえでどのようなオフィスなら出社したいと思うかを聞いたところ、最も希望が多かったのは「業務に集中できる個室がある」(44.6%)で約半数の回答者が選択した【図表26】。次に「安心・安全に配慮されている(感染症対策など)」(37.0%)や、「リラックス・休憩スペースがある」(36.7%)、「飲食・カフェスペース(ミーティングなどにも利用可能)がある」(34.3%)、「心身ともに健康的に働ける空間(ウェルネスオフィス)」(29.5%)などが続いたが、いずれも2020年調査よりも回答割合が減少していた。一方で、「雑談や偶発的なコミュニケーションがしやすい環境である」(27.3%)が7.5ポイント増加しているように、人と会う・集まる機能を希望する割合が増加している。依然、集中個室は求められているものの、オフィスの役割としてテレワークの課題を補うコミュニケーションの場としての価値が見出され始めたようだ。

【図表26】出社したいと思うオフィスの条件

一方、コロナ危機収束後にサテライトオフィスを利用すると想定した場合に重視することを聞いた結果、「自宅から近い」(57.5%)が最も重視され、2位に大きく差をつけた【図表27】。【図表12】でも確認した通り、通勤・移動時間の削減はワーカーにとって大きなメリットとなるようだ。また、オフィスに求める条件同様に、「業務に集中できる個室がある」(28.3%)が上位だったほか、様々な機能が期待されていることがうかがえた。

【図表27】サテライトオフィスを利用する際に重視する条件

5. おわりに

本レポートでは、コロナ危機発生から1年半ほどが経過し、首都圏オフィスワーカーの働き方がどのように変化したのか実態を探るとともに、今後のニーズを把握しこれからの働き方を考察した。

2020年のコロナ危機発生を機に急速に拡大したテレワークは、今回の調査時点(2021年9月)でも引き続き実施されており、テレワーカーは全体の約7割にのぼった。特に調査当時は緊急事態宣言下であったこともあり、その割合は高まっていたと推測される。また、「在宅手当」の実施率の倍増など、昨年には対応できていなかった二次的な取り組みも徐々に普及し、テレワークが本格的に定着しつつある状況がうかがえる結果となった。

一方で、現在の主なテレワーク場所である在宅勤務に対しては「運動不足・不健康になりやすい」「仕事のオン・オフが切り替えづらい」といった不満を感じているワーカーが多いこともわかった。また、コロナ危機発生により在宅勤務は一気に拡大したものの、自宅はあくまで生活の場であるため、いまだに業務環境が整っていない様子もみられた。業務環境に関する不満をはじめとした在宅勤務の不満は、サテライトオフィスの利用によって解消されるものもあるが、現状は「テレワーク=在宅勤務」であり、不満を抱えたまま在宅勤務を強いられているワーカーも少なくないと思われる。現在のパフォーマンスを完全出社と比べて低く評価したテレワーカーは、自宅の業務環境に不満をもつ割合が高いため、多くのワーカーが「在宅勤務より集中しやすい」という印象を持つサテライトオフィスを利用することで、パフォーマンスの向上が期待できるだろう。

また、テレワークの実施割合をみると、現状は「~週1日」や「~週5日」といった極端な配分でテレワークを実施している割合が多かったが、今後の意向としては「週2~4日」の割合が増えており、現状と今後の意向にギャップがみえた。

テレワークが拡大・普及し始めてからしばらく経ち、慣れてきたとはいえ、コロナ危機という特殊な状況下で最適な働き方を見極めるのは困難である。刻一刻と変化する状況のなかで、働き方や働く場所の潮流の変化を捉えるためにも、ザイマックス総研では引き続き、企業調査とワーカー調査を並行して実施していく予定である。

調査概要

調査期間

2021年9月

調査対象

①スクリーニング調査…18歳以上の男女5,000人を対象に実施

②本調査…スクリーニング調査で職業が「会社・団体の役員、会社員・団体職員」、職種が「管理的職業、専門的・技術的職業、事務的職業、営業職業」、在籍するオフィスが「首都圏(1都3県)」、コロナ危機発生以前および現在の主に働いている場所が「オフィス(事務所)、自宅」と回答した人

有効回答数

2,060人

調査地域

首都圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)

調査方法

インターネット調査



《回答者属性》

レポート内のグラフに関して
・構成比(%)は、小数点第2位を四捨五入しているため内訳の合計が100%にならない場合がある。
※当レポート記載の内容等は作成時点のものであり、正確性、完全性を保証するものではありません。
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参考:働き方×オフィス 特設サイト

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