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2023.02.07

フレキシブルオフィス市場調査2023

~東京23区におけるフレキシブルオフィスの供給拡大~

これまでの働き方改革の取り組みにより企業がワーカーに働く場所の選択肢を与えることの重要性が増してきた。加えて、2020年初頭からコロナ禍が本格化したことにより、多くの企業は働き方と働く場所の見直しを迫られた。また、テレワークの普及にともない、必要に応じて時間や場所をフレキシブルに利用できるワークプレイス(フレキシブルオフィス)に注目が集まり、その市場は急速に成長している。

そこで、ザイマックス不動産総合研究所(以下、ザイマックス総研)では、2020年より毎年フレキシブルオフィス市場の成長傾向を定量的に把握するため、東京23区内におけるフレキシブルオフィスの拠点数や面積、事業者数を集計・分析している。本レポートはその第4回調査として、2022年12月時点までに収集したデータの集計結果を公表する。

フレキシブルオフィス市場は提供されるサービスタイプの多様化・細分化が進んでおり、事業者によって「レンタルオフィス」「シェアオフィス」「サービスオフィス」「サテライトオフィス」「コワーキングオフィス」など、さまざまな呼称が使用されている。本レポートでは、今回の調査対象である「フレキシブルオフィス」を「一般的なオフィスの賃貸借契約によらず、利用契約・定期建物賃貸借契約などさまざまな契約形態で、事業者が主に法人および個人事業主に提供するワークプレイスサービス」の総称として用いた。

主な調査結果

    1. フレキシブルオフィス市場の拡大

  • ・ 東京23区内のフレキシブルオフィスは1,260拠点、総面積は約23.9万坪であり、年々増加していることがわかる。
  • ・ 東京23区内のフレキシブルオフィスの総面積はオフィスストック(1,311万坪)の約1.8%である。
  • ・ フレキシブルオフィスを展開する事業者数は116社である。
  • 2. エリアの特徴

  • ・ 東京23区内にあるフレキシブルオフィスのうち、総拠点数の66.3%、総面積の84.1%が都心5区に集中している。
  • ・ 過去調査からの推移をみると、拠点数、面積ともに周辺18区の割合が増加している。
  • 3. 考察

  • ・ 市場拡大の背景としては、オフィスの専用部以外にも、オフィスの共用部や駅、宿泊施設、商業施設、金融機関など様々な場所にフレキシブルオフィスが浸透していることや、拠点タイプが多様化していることが考えられる。

1. フレキシブルオフィス市場の拡大

まず、フレキシブルオフィスの拡大傾向をみてみる。東京23区内のフレキシブルオフィスについて各年に開業していることが確認できたストック量(拠点数、面積)および事業者数を示した(推計含む)ものが【図表1〜3】である。

2022年10〜12月の調査で開業していることが確認できた東京23区内のフレキシブルオフィスの総拠点数は1,260拠点であり、年々増加していることがわかる【図表1】。

【図表1】フレキシブルオフィスの拠点数(東京23区)

東京23区内のフレキシブルオフィスの総面積についても年々増加しており約23.9万坪となった。これは東京23区オフィスストック(1,311万坪)(*1)の約1.8%にあたる【図表2】。

*1 2023年1月18日公表「オフィスピラミッド 2023」参照

【図表2】フレキシブルオフィスの面積(東京23区)

東京23区内のフレキシブルオフィスの総事業者数は116社であった【図表3】。

【図表3】フレキシブルオフィスの事業者数(東京23区)

2. エリアの特徴

次にエリアの特徴として、フレキシブルオフィスの分布を都心5区(千代田区、中央区、港区、渋谷区、新宿区)と周辺18区とで比較した。

【図表4】に、東京23区のフレキシブルオフィス1,260拠点に占める都心5区と周辺18区の拠点数および面積の割合を示した。拠点数割合は都心5区が66.3%、周辺18区が33.7%、面積割合は都心5区が84.1%、周辺18区が15.9%であった。なお、都心5区および周辺18区それぞれ1拠点あたりの平均面積を算出すると、都心5区は240.0坪、周辺18区は89.8坪となった。

【図表4】フレキシブルオフィスの分布割合(都心5区/周辺18区)


都心5区と周辺18区の拠点数および面積の割合の推移をみると、拠点数では周辺18区の割合が過去3年間で26.1%から33.7%へ増加しており、フレキシブルオフィスの分布が郊外へ広がっていることがみてとれる【図表5】。

【図表5】フレキシブルオフィスの拠点数(都心5区/周辺18区)
(カッコ内は当該年のストック量における都心5区および周辺18区それぞれの割合)

一方、面積も周辺18区の割合は過去3年間で9.9%から15.9%と増加してはいるが、依然8割以上を都心5区が占めている【図表6】。

【図表6】フレキシブルオフィスの面積(都心5区/周辺18区)
(カッコ内は当該年のストック量における都心5区および周辺18区それぞれの割合)

3. 考察

本調査により、東京23区のフレキシブルオフィス市場は、拠点数、面積ともに増加傾向が続いていることがわかった。市場拡大の背景として、オフィスビルの専用部だけでなく、宿泊施設、商業施設、金融機関などへもフレキシブルオフィスが浸透していることが挙げられる。特に駅やオフィスビルの共用部を中心に一人用の個室ボックスの供給が進んでいる。事業者数も増加が続くものの、拠点数や面積と比べて増加ペースは緩やかであり、新規参入業者の増加ではなく既存の事業者による増床や出店が市場規模を拡大させていることがわかる。事業者については、より利便性の高いサービスを提供するため、事業者同士で連携し、利用可能な拠点数の拡大や拠点タイプの多様化を図る動きなどもみられはじめている。

また、都心5区と周辺18区の拠点数および面積の推移では、周辺18区のストック割合が増加しており展開エリアの郊外への広がりがみられた。コロナ禍でテレワークが定着するなか、ワーカーが多く居住するエリアに供給が分散していると推測できる。しかし、面積割合をみると依然8割超が都心5区に集中していた。都心5区と周辺18区では1拠点あたりの面積に2.5倍以上の差がみられたことからも、エリアによって供給されるフレキシブルオフィスのタイプが異なることが想像される。

フレキシブルオフィス市場は今後も、進出するアセットタイプ、サービスやファシリティ、展開するエリアを多様化させながら、ワークプレイスのプラットフォームのひとつとして定着し、成長していくだろう。ザイマックス総研は本レポートで取り上げたフレキシブルオフィス市場の量的な変化と併せて、サービスやファシリティ、エリア、事業者の動向などの質的な変化にも注目し、引き続き有益な調査結果を公表していく予定である。


関連調査

2020年1月31日公表「フレキシブルオフィス市場調査2020

2021年2月17日公表「フレキシブルオフィス市場調査2021

2022年2月25日公表「フレキシブルオフィス市場調査2022

調査概要

調査期間

2022年10月~12月

調査対象

一般的なオフィスの賃貸借契約によらず、利用契約・定期建物賃貸借契約などさまざまな契約形態で、事業者が主に法人および個人事業主に提供するワークプレイスサービス


* 調査時点で閉鎖したものや開業前の拠点はストック量の対象外である。
* 2020年以前は、確認できた開業年を参考に当該年の拠点データとしている(一部推計含む)。
* 原則、カラオケ・ホテル・飲食店などのテレワークプランなどは調査対象から除外している。
* 一人用の個室ボックスを含む。
* 端数処理のため、合計が一致しない場合がある。
* 本レポートの内容は調査時点での集計値であり、日々情報が追加、更新される。
* 各拠点の面積について、公表されている場合は当該面積を採用し、非公表の場合は以下のいずれかを推計値として採用した。
∙ 1棟利用の場合:ビルの延床面積から推計した賃貸面積
∙ フロア数が判明している場合:そのビルの基準階面積とフロア数の積
∙ 同ブランドで面積が公表されている他拠点の平均面積
∙ 大型拠点(平均面積1,000坪以上)および一人用の個室ボックスなどの小型拠点(平均面積10坪未満)を除いた拠点の平均面積

調査地域

東京23区

調査方法

インターネット調査、事業者への問い合わせ・ヒアリング等

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参考:働き方×オフィス 特設サイト

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