2023.01.25
オフィスマーケットレポート 東京2022Q4
- ・ 今期(2022年10~12月期)の東京23区オフィスマーケットは、空室率は前期から下落し、賃料は下落する動きがみられた。
- ・ 空室率は前期から0.14ポイント減少して3.88%となった。解約予告済み・募集中の面積を加えた募集面積率は前期から0.3ポイント減少して5.81%となった。空室増減量は増加が12.8万坪、減少が15.5万坪と、空室の減少が増加を上回った。空室在庫の減少割合を示す空室消化率は前期から1.4ポイント減少して26.8%となった。
- ・ 新規賃料の水準を示す新規成約賃料インデックスは前期から4ポイント下落の87となった。新規賃料が上昇した物件の割合から下落した物件の割合を引いた成約賃料DIは-11と前期から10ポイント上昇したものの、9四半期連続でマイナス圏となった。
- ・ 新規賃料と継続賃料の両方を含む支払賃料インデックスは前期から1ポイント上昇し103となった。
- ・ FRあり契約の平均FR月数は3.9ヶ月、2ヶ月以上付与率は50.9%、6ヶ月以上付与率は19.5%となった。
空室
図表1は、空室率と募集面積率(*1)の推移である(*2)。今期の東京23区の空室率は前期から0.14ポイント減少して3.88%、募集面積率は前期から0.3ポイント減少して5.81%となった。空室率が減少したのは2020Q1以来、実に11四半期ぶりである。一般的に、企業の景況感が改善してオフィス需要が活発化すると空室率は減少する傾向にあるが、日銀の政策変更や為替動向、インフレ懸念など日本経済を取り巻く環境は不透明であり、空室率が継続して下落に転じるかの判断は難しい。
分子に、貸室面積を分母とした指標。
図表1:空室率・募集面積率(全規模)
図表2は、空室の増加面積と減少面積(空室増減量)の推移である。今期の空室増加面積は12.8万坪、空室減少面積は15.5万坪と、2020Q1以来、11四半期ぶりに減少面積が増加面積を上回った。今期は前期に比べて新規竣工が少なかった影響などもあり、空室増加面積、空室減少面積ともに前期から減少している。
図表2:空室増減量(23区・全規模)
図表3は、、空室在庫(期初の空室在庫+期間中に発生した空室の総量)に対して、期間中に空室がどれだけ減少したかを割合で示す空室消化率の推移である。今期の空室消化率は26.8%と、前期からやや下落した。空室率が減少する中で空室消化率が減少しているが、これは前期に増加した空室が消化しきれず今期に多く持ち越され、今期の空室減少が少なかった影響と考えられる。
図表3:空室消化率
新規成約賃料
図表4は、新規賃料の水準を示す新規成約賃料インデックスの推移である。今期は87と、前期比で4ポイント下落、前年同期比で1ポイント下落となった。足元では、2020Q3以降続いた下落傾向が一服し、横這いで推移しているといえる。
図表4:新規成約賃料インデックス
図表5は、規模別の新規成約賃料インデックスの推移である。延床面積5,000坪以上の大規模ビルは85と前期から6ポイント下落、延床面積300坪以上5,000坪未満の中小規模ビルは89と前期から3ポイント下落となった。規模別にみても、足元では横這いで推移している。
図表5:新規成約賃料インデックス(規模別)
図表6は、新規成約賃料の変化の方向性を示す成約賃料DI(賃料が上昇した物件の割合-下落した物件の割合)の推移である。今期は「-11」と前期から10ポイント上昇し、9四半期連続で新規成約賃料が半年前と比べて上昇した物件より下落した物件が多いマイナス圏であった。賃料が上昇した物件と下落した物件はともに少なく、賃料変動の動きが落ち着きつつある様子がうかがえる。
図表6:成約賃料DI
支払賃料
図表7は、新規賃料と継続賃料の両方を含む支払賃料インデックスの推移であり、新規成約賃料に比べると遅れて変化し、変動幅は小さくなる性質をもつ。今期は103と、前期から1ポイント上昇した。
図表7:支払賃料インデックス
フリーレント
図表8は、新規契約のうちフリーレント(FR)を付与した割合(付与率)と、フリーレント期間の平均値(平均FR月数)の推移である。今期の1日以上付与率は61.5%と前期から4.0ポイント下落、2ヶ月以上が50.9%とほぼ横ばい、6ヶ月以上付与率は19.5%と1.2ポイント下落した。FRあり契約の平均FR月数は3.9ヶ月と微増した。フリーレントを付与していない契約が増えつつあるなか、6ヶ月以上付与率は徐々に増加し、現在では2割近くになっている。このようなフリーレントの付与率の変化は、物件の競争力やビルオーナーの方針などの違いが反映されたためと考えられる。
図表8:フリーレント
マーケット循環
図表9は、横軸に空室率、縦軸に新規成約賃料インデックスをとって四半期ごとにプロットしたものである。2005年以降左上方向(空室率低下・賃料上昇)に移動し、2008年以降右下方向(空室率上昇・賃料下落)へ移動、2010年以降再び左上方向(空室率低下・賃料上昇)へ移動、とマーケットが循環しながら推移する様子が観察できる。今期は空室率、新規成約賃料インデックスともに下落したため、左下方向に移動した。2020Q3以降の賃貸マーケットの下降局面の中で前期からもみあいの状況にあり、今後の方向に注視が必要だ。
図表9:マーケット循環
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