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2018.07.20

オフィスの募集期間と募集賃料

東京23区のオフィス区画の募集期間と募集賃料に関する分析

ザイマックス不動産総合研究所(以下、ザイマックス総研)は、これまで空室に着目した様々な分析を継続的に行ってきた。定期的に発表している空室率・空室増減量調査のほか、今年の2月にはテナント募集中の空室が募集を開始してから終了するまでの期間「募集期間(*1)」を発表した。

今回はさらに、募集期間と募集賃料の関係について分析を行った。

(*1) 2018年2月1日公表「オフィスの平均的な募集期間
主な調査結果
  • ・ 募集期間中の賃料の変化について調査したところ、変更なしが82.6%、当初募集賃料から値下げしたものが12.8%、値上げしたものが4.6%であった。
  • ・ そのうち、オフィスの平均的募集期間(5ヶ月)以内のものについては9割以上が募集賃料の変更をしないまま成約に至っていた。
  • ・ 募集期間が長くなるほど、当初募集賃料を変更せずに決まった区画の割合が少なくなる。


前回の調査にて、オフィスの平均的募集期間は5ヶ月であることが明らかとなった。また、募集期間は、ビルスペックや時期によって左右されないこともわかった。それでは、オフィスの募集期間はどのようなものに影響を受けるのだろうか。

テナントがオフィスを選ぶ際に重視する項目としては、「賃料」「面積」「最寄駅からの近さ」が上位を占める(*2)。このうち「面積」と「最寄駅からの近さ」については、物件ごとに決まっているのに対し、「賃料」は、募集する側(貸主)で決めることができる項目である。

そこで、募集期間中における募集賃料の水準やその変化が募集期間に与える影響について、ザイマックスが独自に収集した東京23区のオフィス空室データベースを用いて分析を行った。集計は区画単位で行い、募集期間の算出には中央値を用いた。募集賃料に関しては、募集開始時と募集終了時の募集賃料の差を調査し、変更なし、値下げした、値上げした、の三つに分類した。

【分析結果】

募集が終了した区画について、募集賃料の変化を調査したところ、全体のうち約83%は募集中に募集賃料が変わらなかった、つまり一度マーケットに出した募集賃料を変更しておらず、当初募集賃料でテナントが決まっていた。一方で、一度出した募集賃料を引き下げた区画は約13%、引き上げた区画は約5%であった【図表1】。

【図表1】成約までの募集賃料の変化


募集期間の長さによって、募集賃料の変化は異なるのだろうか。募集期間が平均的募集期間(5ヶ月)以内のものとそれ以上のものに分けて募集賃料の変更割合をみてみた【図表2】。募集期間が5ヶ月以内の区画は9割以上が賃料変更なしで決まっていた。一方で、5ヶ月を超えていた区画では賃料変更なしは7割弱であり、募集賃料を変更した割合が募集期間5ヶ月以内と比較して高かった。

【図表2】募集期間別の募集賃料の変化①


さらに細かく募集期間を分けてみた結果が【図表3】である。募集期間が長くなるほど、当初募集賃料を変更せずにテナントが決まった区画の割合は減少し、2年超だと5割を切っていた。賃料変更した区画については、値下げをした区画、値上げをした区画の両方とも増えており、特に値下げをした区画の伸びが大きい。

【図表3】募集期間別の募集賃料の変化②

【考察】

今回の調査で、募集期間が5ヶ月以内と早くに決まったものは、募集賃料が変わらなかったものが殆どであったことがわかった。これは当初の募集賃料が適正であったために、テナント側の候補に挙がりやすく、決まりやすかったと考えられる。一方、募集期間5ヶ月超の区画は値下げした区画の割合が2割を超えていた。賃料値下げをしたものの中には、【図表4】のように、当初の募集賃料が高すぎたために余計に募集に時間がかかっていたものもあるだろう。

【図表4】賃料水準と募集期間(イメージ)


テナントはオフィスを探す際に、希望エリアにおける相場賃料を調べたうえで、ある程度予算を決め、その予算内に収まるように候補を選定していく。募集賃料がテナントにとって納得感のある賃料よりも高ければ、候補として検討されにくく、募集期間が長期化する。ある程度の期間決まらなければ、値下げが行われるケースも増えるだろう。【図表3】からも、募集期間が長かった区画では、当初の募集賃料から引き下げが行われた割合が高かったことがわかる。もちろん、値下げをせずに募集し続けてテナントが決まることもある。周辺空室率や空室を探すテナントのニーズは様々であるため、タイミングによってマッチすることも少なくはない。

また、募集期間が長くなると、値上げした区画の割合も高くなっているが、これは値下げとは異なるメカニズムであると考えられる。個別の事情が絡むため一概には言えないが、同一ビルで複数の区画が空いていた場合、いくつかの区画が予想より高い賃料で決まったため残りの区画の募集賃料を引き上げることや、早期に決めることにこだわらず募集賃料を変化させることなどが要因としてあげられるだろう。

賃料変更をせずにテナントが決まった区画を、当初募集賃料が適正な賃料設定であった区画と考えると、早期に空室を埋める(募集期間を短くする)ためには、日頃からマーケットの動向や周辺の動きを把握し、適切な賃料を設定することが重要となるだろう。それには、調査研究機関やオフィス仲介会社が定期的に発表している募集賃料や成約賃料に関する指標が有用である。

なお、本調査では一般向けにテナント募集している空室のみが対象となっているため、館内増床などは含まれない。空室率が3 %を切り、在庫が少なくなってきている状況では、市場に出る前に次のテナントが決まってしまうケースも多い。弊社が行ったオフィス定期需要調査(*3)でも、オフィスを「拡張したい」と答えた企業の約4割が「館内増床」を希望しており、オーナーはこのようなテナントのニーズを把握することも、空室を埋めるうえで重要だろう。

(*3) 2018年7月3日公表「大都市圏オフィス需要調査2018春

ザイマックス総研では、テナントの需要にフォーカスしたアンケート調査や、供給面では新規供給量調査などを発表しており、それらと組み合わせてみることでより多面的に需給をとらえることができるだろう。

調査概要

    調査対象

  • 東京23区に所在する竣工済み物件のオフィス用途の区画
  • 集計単位

  • 区画単位(3坪以上2000坪未満)
  • 集計期間

  • 2012年~2017年
  • データソース

  • ザイマックスが独自に収集した空室区画データおよび物件データ
  • データ数

  • 78,884区画

レポート内のグラフに関して
・構成比(%)は、小数点第 2 位を四捨五入しているため内訳の合計が 100%にならない場合がある。
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