供給・ストック

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2015.07.10

大阪市:オフィス新規供給量調査とオフィスピラミッド2015

ザイマックス不動産総合研究所(以下、ザイマックス総研)は、大阪市のオフィス新規供給量とオフィスピラミッドを公表する。新規供給量は今後新築されるビルの賃貸面積を集計したもので、オフィスピラミッドはマーケットに存在するオフィス賃貸面積の合計面積を集計したものである。前者がオフィス市場のフローを示すのに対し、後者はストックを示している。また、新規供給量がオフィスストックに占める割合(新規供給率)を計算した。これは、新規供給の市場全体に対する影響を示すものである。これらは、今後の大阪市オフィスマーケットの需給バランスをみる上で重要なデータとなる。 なお、ザイマックス総研は、東京23区の新規供給量*およびオフィスピラミッド**を公表しており、今後は東京23区と大阪市をあわせて定期的にデータを更新し、公表していく予定である。
主な調査結果

新規供給量

  • ・大阪市2015~2018年までの新規供給量(賃貸面積ベース)は年平均約1.5万坪で、過去10年平均の約3.1万坪の半分程度となる見込み
  • ・現状予定されている新規供給量の90%が延床面積1万坪以上の大規模物件

オフィスピラミッド

  • ・2014年末時点におけるオフィスピラミッド全体の賃貸面積は約270万坪、棟数は1571棟
  • ・大規模ビルと中小規模ビルの内訳は、
賃貸面積割合 大規模ビル 52% 中小規模ビル 48%
棟数割合 大規模ビル 12% 中小規模ビル 88%
  • ・大規模ビルは、バブル期以降も供給が続き、平均築年数23.3年
  • ・中小規模ビルは、バブル期に大量供給、以降低水準が続き、平均築年数27.0年 今後、大規模ビルに比べ、中小規模ビルの高齢化(築古化)の進展が懸念される
  • ・オフィスピラミッドに対する新規供給量(2015~18年合計)の割合である新規供給率は、2.2%(年平均0.5%)程度に抑えられる見込み

参考:東京23区との比較

新規供給量(延床面積 3,000坪以上):大阪市の年平均1.5万坪は、東京23区の年平均約18万坪の1/10以下オフィスピラミッド(延床面積300坪以上):

賃貸面積合計約270万坪は、東京23区の1125万坪の約1/4 規模別にみた賃貸面積および棟数の割合は、東京23区と類似 中小規模ビルが大規模ビルに比べて、高齢化(築古化)していることも類似 大阪市の方が東京23区よりも平均築年数が若干古く、築20年以上の割合も高い

※ 2015年2月2日公表「オフィス新規供給量調査2015(東京23区)」参照
※ 2014年4月18日公表「オフィスピラミッド2014」参照

新規供給量

大阪市で 2015年から2018年までに竣工する主要オフィスビル(延床面積3,000坪以上)のオフィス賃貸面積(原則、自社ビルを除く)は、年平均1.5万坪となった【図表1】。今後4年間の年平均供給量は、2005年から2014年までの年平均3.1万坪の半分程度になる見込みである。延床面積3,000坪から1万坪未満の物件は、今後、供給が新たに計画される可能性があるが、現状では2016年以降の供給予定は見られず、供給量の90%が延床面積1万坪以上の大規模物件となっている。

[図表1]大阪市オフィス新規供給量(賃貸面積)

[図表1]大阪市オフィス新規供給量(賃貸面積)

オフィスピラミッド

オフィスピラミッドとは、オフィスビルを大規模(延床面積5,000坪以上)と中小規模(延床面積300坪~5000坪未満)に分け、築年ごとにストック量(賃貸面積、棟数)を比較したもので、大規模と中小規模ビルのバランスや築年構成などをみることができる。大阪市の2014年末時点におけるオフィス賃貸面積の合計は約270万坪【図表2】【図表3】、棟数は1571棟となった【図表4】。 規模別にみた賃貸面積割合は、大規模ビルが 52%、中小規模ビルが 48%となった。 大規模ビルは、バブル期以降も供給が続き、平均築年数 23.3 年となっているのに対し、中小規模ビルは、バブル期に大量供給された以降、低水準が続いており、平均築年数 27.0 年となっている。なお、大規模及び中小規模を合わせた全体の平均築年数は 26.6 年である。

[図表2]大阪市オフィスピラミッド(賃貸面積ベース)

[図表2]大阪市オフィスピラミッド(賃貸面積ベース)

[図表3]大阪市オフィスピラミッド(賃貸面積ベース・築年区分割合)

[図表3]大阪市オフィスピラミッド(賃貸面積ベース・築年区分割合)

さらに【図表3】で、規模別に築年区分の割合をみると、大規模ビルの築20年未満が56万坪と40%であるのに対し、中小規模ビルは、築20年未満が21万坪と16%に過ぎず、築20年以上のビルが8割を超える「高齢化」傾向にあるといえる。さらに3割強は旧耐震ビルと想定される。 棟数によると、大規模ビルが12%、中小規模ビルが88%と中小規模ビルがほとんどを占めている【図表4】。また、中小規模ビルでは、バブル期の棟数が突出していることが分かる。

[図表4]大阪市オフィスピラミッド(棟数ベース)

[図表4]大阪市オフィスピラミッド(棟数ベース)

新規供給率

オフィスピラミッドのストック量に対する新規供給量(2015年~2018年まで)の割合(「新規供給率」)は2.2%程度で、年平均にすると0.5%程度に抑えられる見通しとなる。

参考

大阪市と東京23区を比較すると、以下のとおり。東京23区の概要については、各リリース参照
  • ・新規供給量(2015~2018年):大阪市年平均1.5万坪に対し、東京23区年平均18万坪で、東京の1/10以下(延床面積3,000坪以上を対象とした比較であることに留意)
  • ・ストック(2014年):大阪市270万坪(約1600棟)/東京23区1125万坪(約7100棟)で東京の約1/4、規模別にみた賃貸面積割合、棟数割合ともに東京23区と類似。さらに、中小規模ビルについての高齢化は、東京23区同様に課題だといえる。
  • ・築年区分別にみた賃貸面積割合は、大阪市の築20年以上が約70%であるのに対し、東京23区が約60%と、大阪市が東京23区に比べてやや築古化の傾向といえる。

※ 2015年2月2日公表「オフィス新規供給量調査2015(東京23区)」参照
※ 2014年4月18日公表「オフィスピラミッド2014」参照

所見

2015年から2018年までの新規供給量は比較的低水準のため、一定の新規オフィス需要の発生を前提とした場合、大阪市のオフィスマーケット全体の需給バランスは改善していくと見込まれる。一方で、今後も一定量の供給が続く大規模ビルと、供給が少なく築古化が進む中小規模ビルとの競争力格差が明らかとなろう。さらには、規模にかかわらず、最新の機能を備える新築、築浅ビルと陳腐化が進む築古ビル間の競争力格差が拡大することが懸念される。マーケットを見据えた適切な機能更新や改修により現用途での競争力を維持するか、オフィスから他の用途への転換や建替えなどを行うか、といったオフィスストックの更新が今後大きな課題となるであろう。

「大阪市オフィス新規供給量調査」概要(調査時点 2015.5)

対象エリア 大阪市
対象物件 延床面積3,000坪以上、主な用途がオフィス
集計対象 オフィス賃貸面積(坪)
  • *収集データについては、新聞記事など、一般的に公開されている情報を基に、一部現地調査を実施。原則、自社ビルを除く。 なお、本調査は新たに供給される建物の面積を対象としている。また、全数調査ではないことに留意。
  • *賃貸面積が公表等されている場合は当該賃貸面積、公表されていない場合は、京都大学大学院工学研究科建築学専攻加藤直樹研究室との共同研究結果から導き出された計算式を使用し、延床面積より推計。
  • *なお、本供給量は調査時点期間での推計値であり、日々情報が追加、更新されるため、供給量の数値は変動する。

「大阪市オフィスピラミッド」概要(調査時点 2015.5)

対象エリア 大阪市
対象物件 2014年時点における延床面積300坪以上、法定耐用年数である築50年未満の主な用途が事務所のオフィスビル
集計対象 大規模:延床面積 5,000 坪以上 中小規模:延床面積300~5,000坪未満のオフィス賃貸面積(坪)および棟数
  • *収集データについては、新聞記事など一般に公開されている情報のほか、賃貸募集(過去を含む)された情報などをもとに築年が判明している物件を対象として集計した。なお、原則自社ビルを除いている。
  • *建替えや滅失したケースは把握できたものは集計に反映しているが、必ずしも全てでは無い。
  • *一般的にバブル期は 1985 年~1991 年とされるが、本稿では、ビルの計画から供給(竣工)までの期間を考慮し、1987 年~1993 年を「バブル期の大量供給」とした。
  • *旧耐震ビルとは、1981 年新耐震設計法が施行される前の設計法に基づき建てられたビル。本稿では 1981 年以前に竣工のビルを旧耐震ビルとした。
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