マーケット指標

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2015.05.20

オフィス賃貸マーケット指標2015年第1四半期(空室率、新規成約賃料インデックス、成約賃料DI、フリーレント)

~マーケット全体に回復が浸透。これまで長期間空室だった物件でも成約がみられるように~

ザイマックス不動産総合研究所は、オフィス賃貸マーケットの動向を示す指標である「空室率」、「新規成約賃料インデックス」、「成約賃料DI」、「フリーレント付与率・平均フリーレント月数」の2015年第1四半期の結果を発表する。以下に、東京23区のオフィス賃貸マーケットの概況を示す。

マーケットの概況

東京23区オフィス賃貸マーケットは、企業における事業拡大、人員増を受けた堅調なオフィス需要、および限定的な新規供給を背景に、引き続き緩やかな回復の途上にある。人気のエリア、値ごろ感のある物件での空室在庫は逼迫しつつあり、大規模物件を中心に成約賃料上昇の傾向が見られる。また、これまで成約が難しかった物件においても、適切な賃料設定によっては成約が見られるようになるなど、回復の恩恵はマーケット全体に広がりつつある。

各指標の動向(東京23区)

  1. 空室率は5.62%
    前期と比べ0.11ポイント減少。11四半期連続の減少。一部人気エリアでは空室在庫が逼迫しつつある。これまで長期間空室だった物件でも成約が見られるようになってきた。
  2. 成約賃料の水準を示す新規成約賃料インデックスは92(2010年第1四半期を100として)
    マーケット全体でみると、前期と比べ2ポイントの減少だが、延床5,000坪以上の大規模物件では+5ポイントと上昇。
  3. 賃料上昇物件と下落物件の数を比較した成約賃料DIは0
    賃料が下落した物件と上昇した物件がほぼ同数存在する状態。
  4. 平均フリーレント月数は2.7か月
    前期と比べ0.4か月の減少。6か月以上の長期フリーレントを付与する割合が20.4%と、前期に比べ4.7%減少するなど短縮化傾向が進んでいる。

※ 以降に各指標の結果について解説
※「6.各指標の概要」に、各指標について整理した表を掲載
※「7.全期間の数値データ」に、過去からの四半期ごとの数値データを掲載

1.空室率

図表1は、直近4年間の東京23区の空室率の推移を示したものである。2015年第1四半期は5.62%、前期5.73%から0.11ポイント下降し、11四半期連続の下降となった。堅調なテナントの床需要を背景に、引き続きマーケット全体としては好調が継続しているが、丸の内や渋谷など一部人気エリアでの空室在庫が逼迫しつつあることを受け空室率の減少幅はやや鈍化した。

[図表1] 空室率(東京23区)

[図表1] 空室率(東京23区)

図表2は、成約した物件における空室期間(ダウンタイム)について調査したものである。2014年に成約した物件のうち、空室期間が6か月以上だった物件(黒太枠)は57.7%と、過去5年間で最大となった。長期間空室が続いていた物件でも、成約が見られるようになってきていることがわかる。堅調なテナントニーズおよび値ごろ感のある物件が少なくなってきていることが背景にあると考えられる。

[図表2] 空室期間(ダウンタイム)の長さ(東京23区)

[図表2] 空室期間(ダウンタイム)の長さ(東京23区)

2.新規成約賃料インデックス

図表3は、新規成約賃料インデックスの推移を示したものである。2015年第1四半期は92、前期94と比べ2ポイント減少、前年同期94と比べ2ポイント減少となった。マーケット全体でみると、上昇傾向は一段落した状況にある。

[図表3] 新規成約賃料インデックス(東京23区)

[図表3] 新規成約賃料インデックス(東京23区)

図表4は規模別の新規成約賃料インデックスの推移を示している。延床面積5,000坪未満の中小規模物件では94と、前期と比べ3ポイント減少する一方で、延床面積5,000坪以上の大規模物件では103と、前期と比べ5ポイント上昇している。

[図表4] 規模別の新規成約賃料インデックス(東京23区)

[図表4] 規模別の新規成約賃料インデックス(東京23区)

3.成約賃料DI

図表5、図表6は、成約賃料DI(東京23区、都心3区)の推移である。2015年第1四半期は、東京23区で「0」、都心3区で「0」と、上昇した物件と下落した物件がほぼ同数存在する状態となった。前期(2014年第4四半期)の「-2」(東京23区)、「-4」(都心3区)から若干上昇した。

人気エリアの周辺および坪単価1万円台前半の物件でも上昇した物件もある一方で、マーケット好調を期待し一度上昇させた賃料を、成約を優先して再び下落させた物件も一定数見られた。

[図表5] 成約賃料DI(東京23区)

[図表5] 成約賃料DI(東京23区)

[図表6] 成約賃料DI(都心3区)

[図表6] 成約賃料DI(都心3区)

4.フリーレント

図表7は、新規契約のうちフリーレントを付与した割合(付与率)と、フリーレント期間の平均値(平均フリーレント月数)の推移を表したものである。

2015年第1四半期のフリーレント付与率は、①1日以上56.0%(前期と比べ8.5ポイント減少)、②2か月以上53.2%(同6.5ポイント減少)、③6か月以上20.4%(同4.7ポイント減少)と、いずれの区分においても減少している。平均フリーレント月数は、④全契約平均2.7か月(同0.4か月減少)、⑤フリーレントあり契約平均4.7か月(同0.1か月減少)と前期と比べ短くなった。

6か月以上の長期フリーレントの付与は限定的になり、フリーレント自体付与しないケースも増えつつある。マーケットの状況が厳しく賃料水準の下落余地が限られている時期は、フリーレント期間の長さがポイントとなったが、マーケットの改善を受け、賃料水準で交渉が可能な状況にシフトしつつあるものと考えられる。

[図表7] 新規契約におけるフリーレントの推移(東京23区)

[図表7] 新規契約におけるフリーレントの推移(東京23区)
  2012Q1 2013Q1 2014Q1 2014Q2 2014Q3 2014Q4 2015Q1
フリーレント
付与率
①1日以上 86.20% 64.50% 69.90% 68.60% 70.00% 64.50% 56.00%
②2ヶ月以上 77.80% 60.60% 61.70% 60.30% 63.80% 59.70% 53.20%
③6ヶ月以上 56.30% 36.00% 34.70% 28.90% 31.00% 25.10% 20.40%
平均
フリーレント
月数
④全契約 5 3.8 3.7 3.3 3.5 3.1 2.7
⑤FRあり契約 5.8 5.8 5.3 4.8 5 4.8 4.7

5.マーケットの循環から見る現在の位置

図表8は、横軸に空室率、縦軸に新規成約賃料インデックスをとって、四半期ごとにプロットしたものである。

図上では、2001年以降右下方向(空室率上昇・賃料下落)に移動し、2003年から2004年の停滞期を経て、2005年以降左上方向(空室率低下・賃料上昇)へ移動し、2008年以降再び右下(空室率上昇・賃料下落)方向へ移動、とマーケットが循環しながら推移する様子が観察できる。

2015年現在オフィス賃貸マーケットは、2010年以降の停滞を脱し、空室率低下・賃料の緩やかな上昇を受け、回復期に移行していることがわかる。

[図表8] オフィス賃貸マーケットの循環(東京23区)

[図表8] オフィス賃貸マーケットの循環(東京23区)

※同様のプロットを成約賃料ではなく募集賃料でおこなったのが図表9である。成約賃料を用いた図表8と比較すると、賃料が上昇(図で上方向に移動)し始めるタイミングが、数年遅い傾向にあることがわかる。マーケットの実態を捉える上では、募集賃料ではなく成約賃料に基づいた指標を用いることが適切であると考えられる。

[図表9] オフィス賃貸マーケットの循環(東京23区) ※賃料を平均募集賃料にしたもの

[図表9] オフィス賃貸マーケットの循環(東京23区) ※賃料を平均募集賃料にしたもの

6.各指標の概要

空室率 新規成約賃料
インデックス
成約賃料DI フリーレント付与率
・平均月数
概要 マーケットにおける賃貸面積のうち空室面積の占める割合 延床面積や築年数など賃料に影響を与える要因を統計的手法により品質調整した、成約賃料に基づくオフィス賃料指数 成約賃料が上昇した物件と下落した物件の数を比べることで、成約賃料の変動を示す指標 契約開始日と賃料発生日のタイムラグの分布状況と平均
意味・意義 マーケットの需要と供給のバランス 成約賃料の水準 成約賃料の変動の方向性 成約賃料単価には表れないマーケットの状況
用途 オフィスビル オフィスビル オフィスビル オフィスビル
地域 東京23区 東京23区 東京23区/3区 東京23区
規模 全規模 全規模/大規模(延床5,000坪以上)/中小規模(延床5,000坪未満) 全規模 全規模
公表頻度 四半期 四半期 四半期 四半期
期間 2011年第1四半期から 2001年第1四半期から 2001年第1四半期から 2002年第1四半期から
データ元 ザイマックスが独自に収集した空室募集区画と物件データ ザイマックスが独自に収集した成約ベースの賃料(共益費込) ザイマックスが独自に収集した成約ベースの賃料(共益費込) ザイマックス受託物件における成約データ
直近四半期の使用データ数 26,562棟 1,248件 877件 216件
算出方法
  • ・空室率
    =空室面積÷賃貸面積
  • ・空室面積:
    調査時点において、竣工済物件で募集中空室区画の面積の合計
  • ・賃貸面積:
    調査時点において、竣工済の物件の賃貸対象となる面積
  • ※賃貸面積が公表されていない物件は、京都大学大学院工学研究科建築学専攻加藤直樹研究室との共同研究結果から導き出された計算式を使用し、延床面積より推計
  • ① 収集した成約データを基に、立地・延床面積・築年数・設備・成約時点などを変数とした、成約賃料を説明する「接続型ヘドニックモデル(重複推定期間=5四半期)」を構築。
  • ② ①で構築したモデルに、標準的なビルの属性値を代入することで、四半期ごとの成約賃料を推定。
  • ③ ②で推定した成約賃料の、基準時点(2010年第1四半期)を100としたときの値を、新規成約賃料インデックスとしている。
  • ※これにより、立地・規模・築年数・設備など各変数の影響を調整した、成約賃料の時間的変化を表すことができる。
  • ①ビルごとに半年前の成約賃料単価と比較し、「上昇」「据置」「下落」についてそれぞれ棟数をカウント。
  • ② ①から「上昇」の割合、「下落」の割合を計算。
  • ③ ②で求めた「上昇」の割合から「下落」の割合を引いた数値を成約賃料DI(ディフュージョン・インデックス)としている。
  • ・フリーレント期間:
    契約開始日と賃料発生日の間の日数
  • ・フリーレント付与率:
    新規契約(館内拡張・再契約などを除く新規入居契約)のうち、賃料免除期間のある契約の割合
  • ・平均フリーレント月数(全契約):
    賃料免除期間がないものも含む、すべての契約におけるその期間の単純平均
  • ・平均フリーレント月数(FRあり契約):
    賃料免除期間があるものにおけるその期間の単純平均
  • ※共益費込賃料を設定した上で、一定期間、賃料を共益費相当額あるいはそれに近い額に減額する措置を取っている契約もあるが、これらは本調査に含まれない。

※各指標の詳細は、以下リンク参照
成約賃料DI:2013年12月13日公表「成約賃料DI、四半期ごとの公表へ。2013年第1四半期以降、プラス続く
新規成約賃料インデックス:2014年9月19日公表「ザイマックス新規成約賃料インデックスを公表
フリーレント:2014年9月19日公表「ザイマックスフリーレント調査 四半期版を公表
各指標間の関係:2014年11月5日公表「オフィス賃貸マーケット指標 2014年第3四半期

7.全期間の数値データ

  空室率 新規成約賃料インデックス 成約賃料DI フリーレント
全 体 ⼤規模
中⼩規模 東京
23区
都⼼
3区
1⽇以上
付与率
2ヶ⽉以上
付与率
6ヶ⽉以上
付与率
すべての契約
平均⽉数
FRのある契約
平均⽉数
2001Q1 - 117 118 118 4 50 - - - - -
2001Q2 - 115 110 116 29 43 - - - - -
2001Q3 - 123 114 121 7 17 - - - - -
2001Q4 - 115 114 114 -10 -9 - - - - -
2002Q1 - 127 106 123 -9 -20 44.4% 7.4% 0.0% 0.6 1.4
2002Q2 - 120 103 115 -23 -33 40.4% 8.8% 0.0% 0.7 1.6
2002Q3 - 109 102 105 -21 -17 37.5% 10.9% 0.0% 0.7 1.8
2002Q4 - 105 93 103 -37 -55 38.3% 15.0% 0.0% 0.8 2.0
2003Q1 - 105 101 105 -37 -27 45.2% 25.8% 0.0% 1.1 2.3
2003Q2 - 99 92 100 -29 -29 61.9% 41.3% 1.6% 1.6 2.6
2003Q3 - 98 87 100 -33 -36 72.9% 45.8% 4.2% 2.0 2.8
2003Q4 - 96 104 98 -34 -34 74.5% 53.6% 7.3% 2.3 3.1
2004Q1 - 97 93 99 -14 -19 78.5% 57.9% 10.7% 2.6 3.3
2004Q2 - 100 105 102 -8 -10 74.6% 54.1% 10.7% 2.4 3.2
2004Q3 - 102 96 103 -7 -9 78.3% 55.7% 11.3% 2.5 3.2
2004Q4 - 95 94 97 -11 -14 78.8% 52.2% 9.7% 2.3 2.9
2005Q1 - 99 106 101 4 6 77.3% 48.7% 6.7% 2.1 2.7
2005Q2 - 101 111 101 19 20 81.7% 51.7% 5.8% 2.1 2.6
2005Q3 - 101 108 101 23 22 80.0% 50.4% 3.5% 2.0 2.5
2005Q4 - 105 113 104 38 49 78.6% 48.2% 1.8% 1.9 2.4
2006Q1 - 116 125 113 38 42 71.6% 40.5% 0.0% 1.6 2.2
2006Q2 - 118 124 114 46 43 66.7% 34.1% 0.0% 1.3 2.0
2006Q3 - 120 135 115 50 49 62.2% 27.9% 0.0% 1.1 1.8
2006Q4 - 129 138 120 45 43 54.5% 23.2% 0.0% 0.9 1.7
2007Q1 - 135 137 127 40 39 52.9% 20.2% 0.0% 0.8 1.5
2007Q2 - 139 161 129 46 44 50.0% 17.6% 0.0% 0.8 1.5
2007Q3 - 150 165 137 51 56 43.6% 14.5% 0.0% 0.6 1.5
2007Q4 - 147 164 134 34 39 46.0% 11.3% 0.0% 0.6 1.3
2008Q1 - 146 187 134 29 24 44.4% 8.9% 0.0% 0.6 1.3
2008Q2 - 161 190 146 -1 6 36.2% 8.6% 0.0% 0.5 1.3
2008Q3 - 148 143 137 -35 -28 40.4% 14.6% 0.0% 0.7 1.6
2008Q4 - 145 169 137 -41 -35 42.0% 16.5% 0.5% 0.8 1.8
2009Q1 - 129 124 125 -64 -58 44.1% 22.3% 1.1% 0.9 2.1
2009Q2 - 117 134 116 -75 -78 61.4% 37.0% 2.6% 1.6 2.6
2009Q3 - 111 110 111 -65 -62 70.2% 50.5% 5.9% 2.1 3.1
2009Q4 - 109 107 108 -66 -67 79.4% 65.6% 9.0% 2.7 3.4
2010Q1 - 100 100 100 -57 -56 84.5% 72.5% 13.0% 3.2 3.7
2010Q2 - 96 95 96 -61 -58 83.4% 74.3% 18.2% 3.4 4.0
2010Q3 - 100 96 100 -52 -56 85.9% 76.5% 25.3% 3.8 4.4
2010Q4 - 94 93 96 -31 -29 86.0% 76.2% 34.9% 4.3 5.0
2011Q1 9.50% 93 92 94 -19 -21 84.4% 74.9% 35.9% 4.2 5.0
2011Q2 8.55% 91 91 94 -34 -42 85.1% 76.4% 43.5% 4.5 5.3
2011Q3 8.46% 93 93 96 -28 -31 88.2% 78.2% 48.8% 4.8 5.4
2011Q4 8.22% 90 87 93 -15 -16 87.9% 79.6% 52.2% 4.8 5.4
2012Q1 8.47% 85 96 88 -24 -26 86.2% 77.8% 56.3% 5.0 5.8
2012Q2 9.27% 76 76 79 -29 -28 77.5% 69.8% 48.4% 4.4 5.7
2012Q3 8.96% 82 89 86 -36 -39 70.7% 66.3% 42.0% 4.1 5.7
2012Q4 8.88% 83 88 87 -14 -10 67.0% 60.8% 37.1% 3.8 5.7
2013Q1 8.16% 93 96 97 2 8 64.5% 60.6% 36.0% 3.8 5.8
2013Q2 7.89% 81 82 84 11 5 67.2% 63.6% 38.4% 4.1 6.1
2013Q3 7.47% 87 90 91 6 3 64.6% 59.6% 38.4% 3.9 6.0
2013Q4 7.18% 87 88 90 0 -3 66.1% 61.4% 37.6% 3.8 5.8
2014Q1 6.63% 94 97 97 9 8 69.9% 61.7% 34.7% 3.7 5.3
2014Q2 6.29% 91 97 94 19 19 68.6% 60.3% 28.9% 3.3 4.8
2014Q3 5.95% 94 94 97 11 8 70.0% 63.8% 31.0% 3.5 5.0
2014Q4 5.73% 94 98 97 -2 -4 64.5% 59.7% 25.1% 3.1 4.8
2015Q1 5.62% 92 103 94 0 0 56.0% 53.2% 20.4% 2.7 4.7
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