2015.10.20
1人あたりオフィス面積調査(2015年)
~1人あたりオフィス面積は過去最小、1人あたりオフィス賃料は上昇へ~
ザイマックス不動産総合研究所は、企業におけるオフィスの利用実態を把握するため、オフィスビルに入居するテナント企業を対象に継続した調査を行っている。 本調査は、一般的な事務所に入居している企業における利用者1人あたりの賃借面積(以下「1人あたりオフィス面積」)について毎年分析しているものである。昨年から1人あたりオフィス賃料(共益費込み)も加え、コスト視点を含めて分析を行っている。
※前回調査は2014年12月1日付けニュースリリース「1人あたりオフィス面積調査(2014年)」を参照
- ・ 2015年東京23区の1人あたりオフィス面積は3.87坪、調査開始以来の最小値となった
- ・ 雇用情勢の改善による企業の人員増員の影響が大きいと見られる
- ・ 2015年東京23区の1人あたりオフィス賃料(共益費込み)は月額65,192円、過去の減少トレンドから上昇に転じた
調査期間
2009年から2015年(年に1度)調査対象
東京23区のオフィスビルに入居する一般事務所用途テナント有効データ数
6,000テナント(調査期間延べ) 2009年:829 2010年:871 2011年:894 2012年:909 2013年:987 2014年:873 2015年:637計算方法
調査対象テナントの賃借面積及び月額賃料をそれぞれの利用人数で割った値の中央値備考
- ・面積は契約上の賃借面積。執務室の他、エントランス(受付)、会議室、休憩室、書庫、倉庫、専用部内廊下などが含まれている。
- ・賃料は共益費を含める。
- ・人数はテナントから「利用人数」として回答のあった数字
1人あたりオフィス面積の推移
2015年4月時点における各企業テナントの賃借面積と利用人数を集計し、1人あたりオフィス面積を計算した結果、中央値は3.87坪であった(半数のテナントは3.87坪より小さく、残りの半数のテナントは3.87坪より大きい)。
図表1は、1人あたりオフィス面積の年別推移を示したものである。2009年から2014年にかけて、東京23区の1人あたりオフィス面積は3.9坪~4.0坪の間で推移したが、2015年は調査開始から初めて3.9坪を割り込み、過去最小の3.87坪となった。
図表1 1人あたりオフィス面積の推移(2009~2015年、東京23区)
1人あたりオフィス面積が縮小傾向にある背景として、雇用情勢の改善による企業の人員増員が考えられる。総務省と厚生労働省の調査(※)によると、今年4月の完全失業率は18年ぶりの3.3%、有効求人倍率は23年ぶりの1.17倍であり、雇用情勢が確実に改善している。
※総務省統計局:労働力調査 http://www.stat.go.jp/data/roudou/index.htm 厚生労働省:一般職業紹介状況(職業安定業務統計) http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/114-1.html
図表2は今回調査対象となった企業のうち、2年連続データがとれ、比較可能な企業(2年連続で入居しているテナント)における利用人数の変化の分布を示している。昨年よりオフィスの利用人数が増えた企業の割合と減った企業の割合を比較すると、増えた企業の割合(45%)の方が減った企業(34%)より多い。テナント個別に分析しても、前述の1人あたりオフィス面積の減少には企業の人員増が背景にあることがわかる。
図表2 企業の人数変化の分布(2014~2015)
1人あたりオフィス賃料の推移
2015年4月時点における各テナント企業の支払う月額賃料総額をそれぞれの利用人数で割り、中央値を採用した結果、2015年の1人あたりオフィス賃料は65,192円/月(月額賃料について、半数のテナントは従業員1人あたり65,192円より少なく、残りの半数のテナントは65,192円より多い)となり、昨年より約3.9%(2,546円)上昇した(図表3)。なお、1人あたり賃料の上昇は調査開始以来初めてである。
1人あたりオフィス面積が減少している一方で1人あたり賃料は上昇していることから、オフィス賃貸マーケットの回復を受けて新規テナントはもちろん、既存テナントにおいても契約条件見直しによる賃料上昇のスピードが人員増のペースより早いことがうかがえる。
図表3 1人あたりオフィス賃料の推移(2009年~2015年、東京23区)
所見
雇用情勢が改善し、多数の企業が増員しているのが現状である。例えば今までの1人あたり面積を維持するとしたら、オフィスの増床が必要となってくる。しかし、賃料コストの上昇は企業にとっては決して無視できない問題である。従って、同じスペースにより多い従業員を入れるため、会議室を執務スペースに変えた企業や、座席を効率的に使うためフリーアドレスを導入した企業が見られる。
近年ICT(情報通信技術)の急速な発展により、モバイルワークの導入やサテライトオフィスの利用など、ワークスタイルのイノベーションが世の中に起こっている。こういったワークスタイルの変化は、1人あたりに必要とされるオフィス面積の減少、および賃料コストの削減に繋がる可能性がある。
生産性の向上、多様な人材の確保、コストの削減等、様々な課題に対応するため、オフィスが変化しつつある。今後も、ザイマックス不動産総合研究所は、本調査を通じて、オフィスの利用実態を把握し、参考材料を提供し続けていく予定である。
※本リリースの英語、中国語、韓国語版をザイマックスのホームページにて公開している 英語 https://www.xymax.co.jp/english/ 中国語 https://www.xymax.co.jp/cn/index.html 韓国語 https://www.xymax.co.jp/ko/index.html