トピックレポート

PDF版ダウンロード

2025.11.12

オフィス運用に関する実態調査

~レイアウト・体制・戦略からみるオフィスのいま~

新しい働き方の定着やデジタル化の進展、そして人材獲得をめぐる競争の激化など、企業を取り巻く環境は大きく変化している。こうしたなかで、オフィスの役割は単なる執務空間から、従業員の生産性やエンゲージメントを高める場、組織の価値を体現する場へと進化しつつある。

そこで、ザイマックス総研では、早稲田大学建築学科石田航星研究室と共同でオフィス運用に関する調査を行った。調査では、働き方、オフィス運用の実態、今後のワークプレイス戦略について企業にたずねた。本ページは、その結果をまとめたレポートの一部を<概要版>として抜粋したものである。

※<概要版>PDFはこちら

※<詳細版>PDFはこちら

主な調査結果
  • ・ 「カフェ・リフレッシュスペース」は過半数の企業で導入が進んでいる【図表1】。従業員が休憩や気分転換のために利用できる空間は、近年ではオフィスの標準的な要素として定着しつつある。
  • ・ 現在のオフィス利用状況については、約3分の1の企業が「最適化されていない」と認識している【図表2-1】。また、自社ビルにオフィスを構える企業ではその割合が46.0%にのぼり、最適化の余地がより大きい傾向がみられる【図表2-2】。
  • ・ 「従業員満足度・エンゲージメント調査の実施・活用」や「環境負荷低減の推進」など、従来の施設管理を超えた業務が定着し、オフィス運営業務の領域が拡大している【図表3】。
  • ・ オフィスレイアウト設計の際には、明確な基準を設けず、経験や感覚に基づいて決定している企業が多い【図表4-1】【図表4-2】。
  • ・ オフィス運用における重視項目と現状評価をみると、人的資本に関する領域では取り組みが進展している一方、DXやイノベーション分野は課題として残っている【図表5】。

<調査概要>

調査期間:2025年8月~9月

調査対象:首都圏及び大阪市に本社を置く

     ・東証市場に上場している企業

     ・従業員300人以上の企業

     合計8,712社

有効回答数:355件(回答率:4.1%)

調査方法:Web回答による


topic 1

オフィス内各スペースの整備状況をみると、「カフェ・リフレッシュスペース」は「十分整備されている」(22.0%)と「ある程度整備されている」(29.3%)を合わせて51.3%となり、過半数の企業で導入が進んでいる【図表1】。従業員の休憩や気分転換のための空間が、近年ではオフィスの標準的な要素として定着しつつあるといえる。

また、「1人用個室(オンライン会議など用)」も43.6%が整備済みと回答しており、オンライン会議の普及に対応した個室環境が一定程度整っていることがうかがえる。

【図表1】オフィス内各スペースの整備状況(n=355)

topic 2

現在のオフィス利用状況に対する評価をたずねると、「あまり最適化されていない」「全く最適化されていない」と回答した企業が33.2%であり、約3分の1の企業で改善の余地が残されている【図表2-1】。

【図表2-1】オフィス利用状況に対する評価(n=355)

自社ビルでオフィスを構える企業に限定してみると、最適化されていないと回答した割合は46.0%にのぼる【図表2-2】。自社ビルの場合、レイアウト変更やスペース再構成などの自由度が高いと考えられるが、実際には十分に活かされていない企業が多い。

【図表2-2】自社ビルのオフィス利用状況に対する評価
(n=63 集計対象:自社ビルでオフィスを構える企業)

topic 3

オフィス運営業務の実施範囲をたずねたところ、「内装工事・レイアウト変更」や「賃貸借契約管理」などの基本業務に加え、従業員体験の向上や働く環境の質を高める取り組みも広がっている。

たとえば、従業員満足度・エンゲージメント調査は35.8%の企業で実施されており、オフィスを通じて従業員の意識やエンゲージメントを把握・改善しようとする動きがみられる【図表3】。

また、「オフィスにおける環境負荷低減の推進」(32.1%)、「コミュニケーション活性化の企画・運営」(31.8%)、「カフェ・リフレッシュスペースなどの企画・運営」(28.7%)、「従業員のウェルビーイング向上施策の企画・実施」(25.4%)など、従来の施設管理の枠を超えた業務も一定数みられる。オフィスの役割の変化に伴い、運営業務の幅が拡大していることがうかがえる。

【図表3】オフィス運営業務の実施範囲(n=355/複数回答)

topic 4

オフィスレイアウトを設計する際の基準についてたずねたところ、約7割の企業が「設定していない」と回答した【図表4-1】。経験や感覚に基づいてレイアウトを決定している企業が多いことがうかがえる。

【図表4-1】ガイドライン・ルール設定の有無
(n=327 集計対象:「わからない」を除く)

具体的な基準をみると、スペース構成やゾーニングの基準から必要面積の算出基準まで、いずれの項目もガイドライン・ルールとして明確に設定している企業は1割台にとどまった【図表4-2】。一方で、「明確なガイドラインとしては設定していないが重視している」とする企業も一定数みられるものの、両者を合わせても半数には達しておらず、基準に基づくレイアウト設計はまだ浸透していないことがわかる。

【図表4-2】ガイドライン・ルール設定の有無(n=355)

topic 5

オフィス運用における重視項目と現状の評価についてたずねた。【図表5】は、現状評価の高い(「重視しており、現状に満足している」と「重視しているが、改善の余地がある」を合わせた割合)順に並べたものである。

最も整っているのは「法規制遵守とリスク管理」で、安全・コンプライアンス意識の高さがうかがえる。次いで、「従業員の生産性向上への貢献」、「従業員が『行きたい』と感じる魅力的なオフィス体験の提供」、「従業員エンゲージメント向上への貢献」、「人材の獲得・定着への貢献」など、人的資本に関わる項目が上位に挙がった。企業がオフィスを「従業員のパフォーマンスを支える場」として位置づけていることがうかがえる。

一方で、「オフィス運用業務のデジタル化と自動化による運営効率向上」、「イノベーションの促進」、「データに基づいた意思決定能力の強化」といったDXやイノベーション分野の取り組みは下位にとどまっている。

【図表5】オフィス運用における重視項目と現状評価(n=355)

レポート内のグラフに関して
・構成比(%)は、小数点第2位を四捨五入しているため内訳の合計が100%にならない場合がある。
※当レポート記載の内容等は作成時点のものであり、正確性、完全性を保証するものではありません。
※当社の事前の了承なく、複製、引用、転送、配布、転載等を行わないようにお願いします。
レポートに関するお問い合わせ

ザイマックスグループホームページへ
レポートの一覧へ