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2025.10.01

変化に適応する企業のワークプレイス戦略の方向性を読み解く

~クラスター分析による5つの企業タイプ~

近年、ハイブリッドワークやABW(*仕事の内容や目的に合わせて働く場所や時間を自由に選択できる働き方)、サテライトオフィスの活用など多様な働き方が進展する一方で、オフィスへの出社を前提とした働き方へ回帰する動きも見られるようになってきた。このような状況のなか、企業のワークプレイス戦略は一様ではなくなり、経営方針や事業特性、人材戦略などに応じて、企業間でその方向性の違いが一層際立つようになっている。

こうした多様性を定量的に捉えるために、2025年6月に実施した企業調査(*1)の結果をもとにクラスター分析を行い、ワークプレイス戦略の違いから企業を5つのタイプに類型化した。分析には、オフィス施策を実施するうえで重視すること、オフィス施策の実態、働き方やワークプレイス施策の実態に関する回答データを用いた。

*1 2025年7月30日公表「大都市圏オフィス需要調査2025春

本レポートでは、これら5タイプを軸に、それぞれ異なる価値観や方針を持つ企業が、働き方の変化にどう適応し、どのようなワークプレイス戦略を進めているのかを考察した。あわせて、各タイプが直面している実務上の課題を明らかにし、今後のワークプレイス施策の検討に向けた参考材料を提示することを目的としている。本ページはその一部を抜粋したものである。

※詳細はPDFでご確認ください

topic 1

ワークプレイス戦略のありかたは一様ではなく、その方向性によって企業は5つのタイプに分類される。【図表1】は各タイプの企業の割合を示したものである。

①ワークプレイス変革推進型(8%):柔軟な働き方の実現に向け、働く場所や時間の選択肢を積極的に広げているタイプ。多様なワークプレイスの整備・活用を推進する一方で、メインオフィスでの働き方も重視しており、ハイブリッドワークの高度な最適化を目指している。

②オフィス機能強化型(20%):オフィスを主たる働く場所とする前提のもと、人間中心で高機能かつ持続可能なオフィスづくりへの志向が強くみられる。メインオフィスを重視した働き方を基本としながらも、在宅勤務やサテライトオフィスなどテレワークする場所の整備にも積極的に取り組んでいる。

③在宅勤務併用型(21%):出社と在宅勤務を組み合わせるハイブリッドワークを基本方針とし、その定着に向けてオフィスや制度の見直しを進めているが、まだ慎重な姿勢が続く段階である。

④分散ワークプレイス型(14%):メインオフィスへの投資意識は低い一方、サテライトオフィスやフレキシブルオフィスサービスの積極的な活用により、分散型のワークプレイスモデルを模索している。

⑤現状維持型(36%):オフィスや働き方施策に対する関心が相対的に低く、従来の出社型運用を維持している。完全出社が主流で、新たな働き方の導入よりも現状維持の志向が強い。

【図表1】5つの企業タイプの割合

<参考>5つの企業タイプの主な特徴

topic 2

メインオフィスの課題について、物理的快適性の面では「快適な温度調整が難しい」、機能的な快適性の面では「会議室が不足している」が5タイプに共通して上位に挙げられる。一方で、企業タイプごとに特徴的な課題もみられる【図表2-1】。

①ワークプレイス変革推進型では、リアル・リモート会議用のスペースや執務席の不足が際立ち、柔軟な働き方の浸透に伴う利用ニーズとオフィス環境とのギャップ解消やレイアウト最適化が大きな課題となっている(①)。

②オフィス機能強化型では「フリーアドレスやABWの運用が難しい」が他タイプと比べて相対的に高く、従来型レイアウトや固定席運用からの転換に課題を抱えることがうかがえる(②)。

③在宅勤務併用型は会議室スペースの不足感がやや高い(③)。

④分散ワークプレイス型では、柔軟な働き方に適応したレイアウト設計が課題となっている(④)。

⑤現状維持型は、「特になし」と回答した割合が目立って高く、現状に大きな不満がないか、または潜在的な課題がまだ顕在化していない可能性がある(⑤)。

【図表2-1】入居中のメインオフィスについて課題に感じていること

次に、ワークプレイス戦略に関して困ったことや課題を聞いた結果【図表2-2】、①ワークプレイス変革推進型では、出社率のコントロールや面積の最適化、コスト効率化など柔軟な働き方に対応したワークプレイス運用面での課題意識が目立つ(①)。

②オフィス機能強化型では、出社率のコントロールや、オフィス改革を進めるうえでの人材不足や体制に関する懸念がうかがえる(②)。

③在宅勤務併用型では、ハイブリッドワークへの適応を見据えたオフィス環境づくりや、ワークプレイスのDX化を推進する人材の不足が他タイプに比べて相対的に重要な課題となっている(③)。

また、①~③タイプでは「チームワークやコミュニケーションを活性化できていない」「従業員のエンゲージメント向上に寄与できていない」「ウェルビーイングなオフィスづくりができていない」の3つの回答割合が高く、従業員の体験を高めるオフィスづくりに対する課題意識が強いことがうかがえる。

④分散ワークプレイス型は、分散型ワークプレイスを推進するうえで、ポートフォリオの設計・運用・意思決定に対する課題意識が比較的高い(④)。

⑤現状維持型は、「特になし」の回答が過半数を占め、現状に不満がないことや現状維持志向が示唆される(⑤)。

【図表2-2】ワークプレイス戦略に関する課題

topic 3

各企業タイプの今後のワークプレイス戦略の方向性にも異なる傾向がうかがえる。これらの違いを把握するため、オフィス内の各スペースの新設・増設意向を【図表3-1】に整理した。

①ワークプレイス変革推進型は「会議室スペース」や「集中スペース」の拡充意向が高く、個人・共同作業スペースの双方を強化する志向がうかがえる。

②オフィス機能強化型は「会議室スペース」や「執務席スペース」「オープンなミーティングスペース」などリアルなコミュニケーションの場の拡充を重視している。

③在宅勤務併用型は多くの項目で中位水準にとどまる。

④分散ワークプレイス型は「リフレッシュスペース・カフェ等」や「業務支援スペース」の拡充意向が他タイプに比べて高く、オフィス環境の快適性改善の意向がうかがえる。

⑤現状維持型は全般的に拡充意向が低い。

【図表3-1】オフィス内の各スペースの新設・増設意向

また、各種フレキシブルオフィスの利用関心度を聞いた結果では、①ワークプレイス変革推進型、②オフィス機能強化型、④分散ワークプレイス型は「テレワーク支援型ワークプレイス」「シェア型会議室(小規模・短時間)」などオフィス機能を柔軟に補完・活用できるフレキシブルオフィスに対する関心が非常に高い【図表3-2】。

さらに①ワークプレイス変革推進型と④分散ワークプレイス型では「ワーケーション施設」への関心も高く、引き続き多様な働く場所を推進する志向がうかがえる。

一方、③在宅勤務併用型と⑤現状維持型は全体として関心度が低めであるが、「シェア型会議室」や「オフィスビル内共用スペース」などの選択肢への一定のニーズを示している。

【図表3-2】各種フレキシブルオフィスの利用関心度

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