マーケット指標

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2023.04.25

オフィスマーケットレポート 東京2023Q1

まとめ
  • ・ 今期(2023年1~3月期)の東京23区オフィスマーケットは、空室率は前期から下落し、賃料は微増する動きがみられた。
  • ・ 空室率は前期から0.2ポイント減少して3.68%となった。解約予告済み・募集中の面積を加えた募集面積率は前期から0.17ポイント減少して5.64%となった。空室増減量は増加が16.1万坪、減少が19.1万坪と、空室の減少が増加を上回った。空室在庫の減少割合を示す空室消化率は前期から5.7ポイント増加して32.5%となった。
  • ・ 新規賃料の水準を示す新規成約賃料インデックスは前期から3ポイント上昇の90となった。新規賃料が上昇した物件の割合から下落した物件の割合を引いた成約賃料DIは-8と前期から3ポイント上昇したものの、10四半期連続でマイナス圏となった。
  • ・ 新規賃料と継続賃料の両方を含む支払賃料インデックスは前期と同じ103となった。
  • ・ FRあり契約の平均FR月数は3.6ヶ月、2ヶ月以上付与率は39.0%、6ヶ月以上付与率は12.2%となった。

空室

図表1は、空室率と募集面積率(*1)の推移である(*2)。今期の東京23区の空室率は前期から0.2ポイント減少して3.68%、募集面積率は前期から0.17ポイント減少して5.64%となった。空室率は2四半期連続して減少している。募集面積率も3四半期連続して減少しており、解約予告を上回る新規入居の増加が継続していることがわかる。背景には、出社制限をかけていた企業で出社頻度をコロナ前に戻す動きもみられるなか、人員を増やしている企業を中心に床需要が強まっており、拡張移転の動きも一部顕在化してきていることがあげられる。人気のエリアでは空室が少なくなってきているものの、全体としては引き続き空室は多い状況は続いている。2023年の新規供給量は昨年の3倍近くあることから、今後の供給による影響にも注意が必要だ(*3)

*1 募集面積率:退去済みで即入居可能な空室(現空)面積と解約予告済み・募集中(テナント退去前)の面積の合計を
  分子に、貸室面積を分母とした指標。
*2 規模別・エリア別については2023年4月5日公表「オフィス空室マンスリーレポート東京2023年3月」参照
 

図表1:空室率・募集面積率(全規模)

 

図表2は、空室の増加面積と減少面積(空室増減量)の推移である。今期の空室増加面積は16.1万坪、空室減少面積は19.1万坪と、前四半期同様減少面積が増加面積を上回った。新年度が始まる4月を前に移転を行う企業が多くみられ、今期は空室増加面積、空室減少面積ともに前期から増加している。

図表2:空室増減量(23区・全規模)

 

図表3は、空室在庫(期初の空室在庫+期間中に発生した空室の総量)に対して、期間中に空室がどれだけ減少したかを割合で示す空室消化率の推移である。今期の空室消化率は32.5%と、前期から5.7ポイント増加した。

図表3:空室消化率

 

新規成約賃料

図表4は、新規賃料の水準を示す新規成約賃料インデックスの推移である。今期は90と、前期比3ポイント上昇、前年同期比で4ポイント上昇となった。2020Q3以降続いた下落傾向が一服し、足元では横這いで推移している。コロナ禍が落ち着きつつあり、賃料を大きく下げてテナントを誘致するケースは減少し、賃料水準は横這い傾向で推移している。

図表4:新規成約賃料インデックス

 

図表5は、規模別の新規成約賃料インデックスの推移である。延床面積5,000坪以上の大規模ビルは88と前期から3ポイント上昇、延床面積300坪以上5,000坪未満の中小規模ビルは93と前期から4ポイント上昇となった。規模別にみても、足元では横這いで推移している。

図表5:新規成約賃料インデックス(規模別)

 

図表6は、新規成約賃料の変化の方向性を示す成約賃料DI(新規成約賃料が半年前と比べて上昇した物件の割合-下落した物件の割合)の推移である。今期は「-8」と前期から3ポイント上昇し、10四半期連続で上昇した物件より下落した物件が多いマイナス圏であった。徐々にマイナス幅は縮小しており、賃料の下落傾向が落ち着きつつある様子がうかがえる。

図表6:成約賃料DI

 

支払賃料

図表7は、新規賃料と継続賃料の両方を含む支払賃料インデックスの推移であり、新規成約賃料に比べると遅れて変化し、変動幅は小さくなる性質をもつ。今期は103と、前期と同値であった。

図表7:支払賃料インデックス

 

フリーレント

図表8は、新規契約のうちフリーレント(FR)を付与した割合(付与率)と、フリーレント期間の平均値(平均FR月数)の推移である(*4)。今期は1日以上付与率は48.0%と前期から0.5ポイント下落、2ヶ月以上が39.0%と1.3ポイント下落、6ヶ月以上付与率は12.2%と4.5ポイント下落した。FRあり契約の平均FR月数は3.6ヶ月とやや短くなっている。一部のエリアや大企業が抜けた後の区画では引き続きフリーレント12ヶ月という募集も依然としてみられるものの、やや動きを取り戻したマーケットを背景に、好立地の物件オーナーを中心に長期フリーレントを敬遠する動きがみられた。

*4 今期より集計方法の変更を行っている。これを受けて2021Q1から2022Q4の値を更新した。

図表8:フリーレント

 

マーケット循環

図表9は、横軸に空室率、縦軸に新規成約賃料インデックスをとって四半期ごとにプロットしたものである。2005年以降左上方向(空室率低下・賃料上昇)に移動し、2008年以降右下方向(空室率上昇・賃料下落)へ移動、2010年以降再び左上方向(空室率低下・賃料上昇)へ移動、とマーケットが循環しながら推移する様子が観察できる。今期は空室率が下落し、新規成約賃料インデックスが上昇したため、左上方向に移動した。2020Q3以降の賃貸マーケットの下降局面から、直近1年間はもみあいの状況が続いている。

図表9:マーケット循環

 










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