2021.03.10
働き方とワークプレイスに関する首都圏企業調査 2021年1月
~刻々と変化する状況をデータで追う~
2020年春の新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受け、日本政府が時差出勤やテレワーク等を推奨したことにより、多くの企業やオフィスワーカーは働き方の見直しを余儀なくされた。なるべく自宅から出ず、人に会わずに働くという制約は、在宅勤務をはじめとするテレワークの推進を半ば強制的に促したとみられ、今日まで働き方改革の文脈において行われてきたワークプレイスに関する議論を活発化させる契機ともなっている。
ザイマックス不動産総合研究所(以下、ザイマックス総研)では、2016年より年2回、企業のオフィス需要を可視化するために、全国レベルの「大都市圏オフィス需要調査」を継続的に実施している(*1)。また昨年8月と12月には、首都圏の企業を対象に、コロナ危機下の働き方の現状や課題、施策についてのアンケート調査(以下、8月調査、12月調査)を行った。コロナ危機で状況が日々変化していくなか、多くの企業が出社率を制限し、出社とテレワークのバランスを試行錯誤している様子が明らかになった(*2)。
今回は、2021年1月7日に発出された緊急事態宣言を受け、1月27日~2月5日にかけて首都圏の企業を対象に行った調査(以下、1月調査)の結果を公表する。この調査では、現在の出社率やテレワーク実施状況に加え、コロナ禍における価値観の変化、今後の働き方とワークプレイスのニューノーマルに対する考えについてたずねた。
- ・ 8割以上の企業が、コロナ危機以前よりも出社率が低くなるように制御している。
- ・ 6割以上の企業で、目標出社率を50%未満と回答していた。また、現在出社率についても、およそ半数の企業が50%未満と回答していた。
- ・ 在宅勤務は、約9割の企業が導入している。そのうち約4割の企業で、全従業員が利用可能である。
- ・ サテライトオフィスは、約4割の企業が導入している。
- ・ サテライトオフィスの利用に関する現在の状況をたずねたところ、「より利用を促進したい」(41.3%)が最も多く、次いで「コロナ禍だから今は使わせていない、利用が減った」(30.5%)となった。
- ・ 8割以上の企業が、ワークプレイス戦略の重要性や見直しの必要性を感じている。
- ・ 約3割の企業がワークプレイス戦略の見直しに着手しており、今後着手予定を含めると全体の約8割の企業が、ワークプレイス戦略の見直しを行う。
- ・ 在宅勤務とサテライトオフィスを併用している企業は、どちらも導入していない企業や在宅勤務のみの企業と比べ、テレワークを導入することによって「生産性の向上」などのメリットを得られると感じている割合が高い。
- ・ オフィス運用の課題としては、「オフィスの安心安全な環境をどう整備するか」(33.8%)、「オフィスの最適なレイアウトをどう考えるか」(31.1%)、「出社させる場合のルール設定が難しい」(29.9%)が上位だったほか、「特になし」(26.8%)も一定数いた。
- ・ テレワーク運用の課題としては、「コミュニケーションが難しい」(60.1%)が最も多く、「マネジメント(業務、勤怠、評価等)が難しい」(53.3%)、「従業員の生産性・業務効率の低下」(42.5%)と続いた。
- ・ コロナ危機収束後の出社率を50%未満にしたい企業の割合(「0%」と「0%以上50%未満」の合計)は26.6%と、12月調査の15.4%と比較すると10ポイント以上増加した。
- ・ 将来意向で出社の比重が大きい(出社率60%以上)理由としては、「オフィス出社して働いた方が生産性が高いから」(49.5%)が最も多く、「テレワークできない職種の従業員が多いから」(43.5%)、「テレワークできる従業員とできない従業員の間に不公平感があるから」(32.3%)と続いた。
- ・ テレワークを行う理由としては、「従業員のワークライフバランス向上に有効だから」(74.7%)が最も多く、次いで「オフィスコスト効率化のため」(40.1%)、「出社でもテレワークでも生産性は変わらないから」(26.3%)となった。
- ・ 出社とテレワークの使い分けの判断基準としては「業務内容により」(83.6%)が突出して高かった。
- ・ オフィスの面積は、「縮小したい」(30.0%)が「拡張したい」(4.1%)を大幅に上回った。テレワークの導入状況別にみると、在宅勤務やサテライトオフィスを導入しているほうが「縮小したい」と回答した企業が多く、その傾向は在宅勤務のみの企業よりもサテライトオフィスを併用している企業のほうが強い。
- ・ 働く場所の立地としては「本社機能は都心に置き、郊外に働く場所を分散させる(在宅勤務を含む)」(43.6%)が最も多く、分散型の働き方が進む可能性が示唆された。
- ・ コロナ危機収束後のサテライトオフィスの利用については、「利用したい派」は52.5%、「利用したくない派」は24.2%であった。
- ・ サテライトオフィスを利用したい理由としては、「従業員の通勤・移動時間の短縮のため」(74.6%)が最も多く、次いで「在宅勤務のデメリット(集中しづらい、同居家族、家が狭い等)をカバーするため」(62.5%)、「従業員のワークライフバランス向上」(47.5%)となった。
- ・ サテライトオフィスを利用したくない理由としては、「在宅勤務で十分だから」(59.0%)が最も多く、次いで「コストがかかるから」(39.3%)、「サテライトオフィスを利用するメリットがわからないから」(26.2%)となった。
1.オフィスの利用状況
2.テレワークの実施状況
3.ワークプレイス戦略と運用
4.コロナ危機収束後の働き方とワークプレイス
1.オフィスの利用状況
現在の従業員のオフィス出社率をたずねたところ、「極力オフィスが無人になるよう制御している」(19.4%)、「出社しつつもコロナ危機発生以前より少なくなるよう制御している」(66.7%)と、8割以上がコロナ危機以前よりも出社率が低くなるように制御していた【図表1】。12月調査と比較すると、出社率を制御している企業の割合が増えた一方で、「特に制限していない」(8.5%)と回答した企業の割合は半分以下と大きく減少していた。2021年1月7日に発出された緊急事態宣言を受け、再度出社率の制御を行った企業が多いと考えられる。
【図表1】オフィス出社率の制御状況
次に、【図表1】で「極力オフィスが無人になるよう制御している」または「出社しつつもコロナ危機発生以前より少なくなるよう制御している」と回答した企業に対し、全員が出社した場合を100%として、ルール・目標として設定している出社率(目標出社率)をたずねた。さらに、すべての企業に対して現在の出社率(現在出社率)をたずね、「0%」、「0%超50%未満」「50%以上100%未満」「100%」の4つに分類した【図表2】。6割以上の企業が、目標出社率は50%未満(「0%」と「0%超50%未満」の合計)と回答していた。また、現在出社率についてもおよそ半数の企業が50%未満と回答していた。
【図表2】オフィス出社率
さらに内訳を細かくみたところ、目標出社率は「30%~」(30.8%)が突出して高く、緊急事態宣言発出に伴い政府が企業に出社人数7割減を要請している影響がうかがえた。しかしながら、目標出社率と現在出社率との間では差がみられ、目標と実態に乖離があることがわかった【図表3】。
【図表3】目標出社率と現在出社率のヒストグラム
2.テレワークの実施状況
2.1. 在宅勤務
在宅勤務の状況についてたずねたところ、「コロナ危機発生以前から導入していた」(10.7%)、「コロナ危機発生以前から導入しており、コロナを機に強化・拡大」(28.0%)、「コロナを機に導入し、現在も継続中(一時休止したが再開した場合も含む)」(51.8%)と、9割以上が在宅勤務を現在に至るまで継続して行っている【図表4】。過去の調査と比較しても大きな差はみられず、引き続き在宅勤務が行われている様子がみてとれる。また、「コロナを機に導入し、現在は廃止」(3.5%)と回答した企業に対し、在宅勤務を廃止した理由をたずねたところ、「非効率と感じた」、「管理が難しい」、「環境が整っていない」などの理由があげられた。
【図表4】在宅勤務の状況
在宅勤務を導入している企業に対して、全従業員に占める在宅勤務を利用できる人(対象者)と在宅勤務を実際に利用している人(利用者)の割合をたずね、「100%」「50%以上100%未満」「0%超50%未満」「0%」の4つに分類した【図表5】。在宅勤務の対象者については、約4割の企業が「100%」(39.2%)と回答し、「50%以上100%未満」(45.3%)と合わせると、従業員の50%以上を在宅勤務の対象者としている企業は、全体の8割にのぼった。在宅勤務の利用者も、従業員の50%以上が利用している企業が7割以上(「100%」(21.4%)と「50%以上100%未満」(55.5%)の合計)と、制度があるだけではなく実際に利用もされている実態が明らかとなった。
【図表5】全従業員中の在宅勤務の対象者と利用者の割合
10%単位で区切った内訳をみると、対象者、利用者ともに「100%」が最も多かった【図表6】。
【図表6】在宅勤務の対象者と利用者の割合(ヒストグラム)
2.2. サテライトオフィス
サテライトオフィス(*3)の導入状況をたずねたところ、「コロナ危機発生以前から導入していた」(23.3%)、「コロナ危機発生以前から導入しており、コロナを機に強化・拡大」(6.1%)、「コロナを機に導入し、現在も継続中(一時休止したが再開した場合や、一時的に利用制限している場合を含む)」(13.3%)と、導入している企業が全体の約4割を占めた【図表7】。
【図表7】サテライトオフィスの導入状況
サテライトオフィスを導入している企業に対して、全従業員に占めるサテライトオフィスを利用できる人(対象者)の割合と、実際に利用している人(利用者)の割合をたずねた結果が【図表8】である。従業員の50%以上がサテライトオフィスの対象者と回答した企業が約半数(「100%」(28.7%)と「50%以上100%未満」(26.6%)の合計)を占めていた。一方、サテライトオフィスの利用者については、従業員の50%以上と回答した企業は15.0%(「100%」(4.7%)と「50%以上100%未満」(9.3%))に留まり、対象者の割合とギャップがみられた。その理由として、サテライトオフィスは多くの場合、働く場所の選択肢の一つとして整備されており、対象者に対して座席数が少ないことや、コロナ危機下において不特定多数と接触するサテライトオフィスではなく、在宅勤務を選択する従業員が多いことが考えられる。
【図表8】全従業員中のサテライトオフィスの対象者と利用者の割合
10%単位で区切った内訳をみると、対象者は「100%」(28.7%)が最も多く、利用者は「0%以上10%未満」(45.9%)が最も多かった【図表9】。
【図表9】サテライトオフィスの対象者と利用者の割合(ヒストグラム)
さらに、サテライトオフィスを導入している企業に対して、サテライトオフィスの利用に関する現在の状況をたずねた【図表10】。「より利用を促進したい」(41.3%)が最も多く、次いで「コロナ禍だから今は使わせていない、利用が減った」(30.5%)となった。【図表8・9】でみた通り、対象者と利用者の割合にはギャップがあるものの、企業側としてはサテライトオフィスの利用を推し進めたいと考えていることが示唆された。
【図表10】サテライトオフィスの利用に関する現在の状況(複数回答、n=429)
3.ワークプレイス戦略と運用
3.1. ワークプレイス戦略
ワークプレイス戦略について、コロナを機に重要性や見直す必要性を感じたかどうかたずねたところ、8割以上の企業が「感じた」(「非常に感じた」「やや感じた」の合計)と回答した【図表11】。
【図表11】ワークプレイス戦略の重要性や見直す必要性(n=1,005)
続けて、ワークプレイス戦略の重要性や見直す必要性を感じているか否かにかかわらず、見直しに着手しているかどうかをたずねたところ、「すでに着手している」(33.7%)が最も多かった【図表12】。また、将来的に着手する意志がある企業まで含めると、全体の約8割がワークプレイス戦略の見直しに着手することがわかった。
【図表12】ワークプレイス戦略の見直しの着手状況(n=1,005)
さらに、ワークプレイス戦略のひとつに位置づけられるテレワークについて、導入することにより「オフィスコスト効率化」「人事採用面の優位性」「生産性向上」「離職率の低下(育休女性の復職率アップ等)」といったメリットを得られると思うかをたずねた【図表13】。「(メリットを得られると)思う」(「非常に思う」「やや思う」の合計)割合が最も高かったのは「オフィスコストの効率化」(67.7%)であった。
【図表13】テレワークによって得られるメリット(n=1,005)
この結果を、テレワーク(在宅勤務・サテライトオフィス)の導入状況別にみたのが【図表14】である。どの項目においても、在宅勤務とサテライトオフィスを併用している企業において、「(メリットを得られると)思う」と回答した割合が高い。特に「生産性向上」については、在宅勤務とサテライトオフィスを併用している企業は57.6%と過半数が「思う」と回答しているのに対し、在宅勤務のみの企業では32.5%、どちらも導入していない企業では22.1%と、大きな差がみられた。テレワークを導入している企業とひとくちにいっても、在宅勤務のみなのか、サテライトオフィスを併用しているのかにより、テレワークのメリットの感じ方は異なることが明らかとなった。
【図表14】テレワークによって得られるメリット(テレワーク導入状況別)
3.2. ワークプレイス運用の課題
ワークプレイスの運用について、オフィス運用とテレワーク運用に分け、それぞれの課題をたずねた。
まず、オフィス運用について困ったことや課題をたずねたところ、「オフィスの安心安全な環境をどう整備するか」(33.8%)が最も多く、コロナ危機下において、多くの企業でオフィスの安心安全が求められていることがわかる。次いで「オフィスの最適なレイアウトをどう考えるか」(31.1%)、「出社させる場合のルール設定が難しい」(29.9%)となった【図表15】。一方で、「特になし」(26.8%)と回答した企業も一定数いた。
【図表15】オフィス運用の課題・困りごと(複数回答、n=1,005)
次に、テレワーク運用について困ったことや課題をたずねたところ、「コミュニケーションが難しい」(60.1%)が最も多く、次いで「マネジメント(業務、勤怠、評価等)が難しい」(53.3%)、「従業員の生産性・業務効率の低下」(42.5%)となった【図表16】。多くの企業がテレワーク時のコミュニケーションを課題に感じており、このことが生産性や業務効率の低下につながっていることも考えられる。
【図表16】テレワーク運用の課題・困りごと(複数回答、n=1,005)
4.コロナ危機収束後の働き方とワークプレイス
4.1. 出社とテレワーク
コロナ危機収束後に目標としたい出社率(将来意向)を、全員が出社した場合を100%としてたずね、「0%」、「0%超50%未満」「50%以上100%未満」「100%」の4つに分類した【図表17】。コロナ危機収束後に出社率を50%未満にしたい企業の割合(「0%」と「0%以上50%未満」の合計)は26.6%と、12月調査の15.4%と比較すると10ポイント以上増加した。一方で、出社率を50%以上にしたい企業(「50%以上100%未満」と「100%」の合計)は62.2%と過半数を占めているものの、12月調査の83.2%と比較すると20ポイント以上の大幅な減少となった。
【図表17】コロナ危機収束後の出社率の将来意向(n=1,005)
さらに内訳を細かくみたところ「50%~」(22.2%)が最も多く、全体の約1/5は将来的に出社率を半分程度にしたいと考えていることがわかった【図表18】。また、少しでもテレワークを行う意向がある企業は75.7%と、全体の約3/4を占めていた。
【図表18】コロナ危機収束後の出社率の将来意向のヒストグラム(n=1,005)
【図表18】を業種別にみたものが【図表19】である。ほとんどの業種で「50%~」の割合が最も高いものの、「卸売業,小売業」、「建設業」、「金融業,保険業」においては「100%(完全出社)」の割合も高い。一方で、「情報通信業」や「学術研究,専門・技術サービス業」では「0%」の割合が比較的高いなど、業種ごとに出社率に対する意向に差があることも明らかになった。
【図表19】コロナ危機収束後の出社率の将来意向のヒストグラム(業種別)
また、従業員数別にみると、「50%~」が最も高いのは全体傾向と変わらないものの、「100人未満」の企業では「100%(完全出社)」が2番目に高く、「1,000人以上」の企業では「30%~」が2番目に高いなど、企業規模によって差がみられた【図表20】。
【図表20】コロナ危機収束後の出社率の将来意向のヒストグラム(従業員数別)
【図表18】の出社率の将来意向について、60%以上(「60%~」から「100%(完全出社)」)と回答した企業に対して、出社の比重が大きい理由をたずねた【図表21】。「オフィス出社して働いた方が生産性が高いから」(49.5%)が最も多く、次いで「テレワークできない職種の従業員が多いから」(43.5%)、「テレワークできる従業員とできない従業員の間に不公平感があるから」(32.3%)となった。
「オフィス出社して働いた方が生産性が高いから」と回答した企業に対し、そう考える理由をたずねたところ、「コミュニケーションがとりやすい」、「仕事する環境が整っている」、「紙ベースの資料が多い」などがあげられた。
【図表21】出社の比重が大きい理由(複数回答、n=402)
次に、【図表18】で少しでもテレワークをする(「0%(完全テレワーク)」から「90%~」)と回答した企業に対し、テレワークを行う理由をたずねた【図表22】。「従業員のワークライフバランス向上に有効だから」(74.7%)が最も多く、全体の7割以上が選択した。次いで「オフィスコスト効率化のため」(40.1%)、「出社でもテレワークでも生産性は変わらないから」(26.3%)となった。
【図表22】テレワークを行う理由(複数回答、n=758)
さらに、【図表18】で出社とテレワークを使い分ける(「1%~」から「90%~」)と回答した企業に対し、使い分けの判断基準をたずねたところ、「業務内容により」(83.6%)が突出して多く、ほとんどの企業で業務内容を判断基準にすることが明らかとなった【図表23】。
【図表23】出社とテレワークの使い分けの判断基準(複数回答、n=731)
また、業務内容ごとに出社とテレワークをどのように使い分けるとよいと思うかをたずねた【図表24】。ほとんどの業務に関して3~4割の企業が「(どちらかといえば)テレワーク中心」と回答しており、テレワークでできる業務の幅が広いことがうかがえる。一方で「ラボなど特殊な物理環境が必要な業務」に関しては、「(どちらかといえば)出社中心」が過半数を占めているものの、一部「テレワーク中心」との回答もあった。
【図表24】業務内容ごとの出社とテレワークの使い分け
4.2. ワークプレイスの運用
コロナ危機収束後、企業はオフィスをどのように運用・利用していこうと考えているのだろうか。
まず、コロナ危機収束後のオフィス面積の意向についてたずねたところ、「縮小したい」(30.0%)が「拡張したい」(4.1%)を大きく上回った【図表25】。この傾向は8月調査、12月調査から大きな変化はみられない。
【図表25】コロナ危機収束後の面積の意向
【図表25】をテレワーク(在宅勤務・サテライトオフィス)の導入状況別にみたものが【図表26】である。在宅勤務とサテライトオフィスを併用している企業は約4割が「縮小したい」(40.7%)と回答しているのに対し、在宅勤務のみの企業は24.5%、どちらも導入していない企業は8.1%となった。在宅勤務やサテライトオフィスを導入している企業ほど、縮小したい意向を持つ割合が高く、さらにその傾向は在宅勤務のみの企業よりもサテライトオフィスを併用している企業のほうが強いことがわかった。
【図表26】コロナ危機収束後の面積の意向(テレワーク導入状況別)
【図表25】をワークプレイス戦略の重要性や見直す必要性を感じたかどうか(【図表11】)で分けてみると、重要性や見直す必要性を感じている企業ほど、「縮小したい」の割合が高い傾向がみられた【図表27】。
【図表27】コロナ危機収束後の面積の意向
(ワークプレイス戦略の重要性・見直しの必要性別)
従業員数別では、人数が多い企業ほど面積を「縮小したい」と回答した割合が高いことがわかった【図表28】。
【図表28】コロナ危機収束後の面積の意向(従業員数別)
次に、メインオフィスの施策について、関心があるものをたずねた【図表29】。最も多かったのは「リモート会議用に個室やブースを増やす」(40.8%)であった。昨今のテレワークの普及を受け、メインオフィスにおいても在宅勤務やサテライトオフィス勤務をしている従業員とリモート会議ができるように整備する必要性を感じている企業が多いのだろう。また、「コミュニケーションのための場づくり、集まるための機能を重視する」(38.3%)も4割近くの企業が関心を持っており、テレワークが浸透していくことであらためて集まる場としてのメインオフィスの価値を見直す機会が訪れているのかもしれない。一方で「現状維持」(24.0%)と回答した企業も一定数存在した。
【図表29】コロナ危機収束後、メインオフィスの施策で関心があるもの
(複数回答、n=1,005)
コロナ危機収束後の働く場所の立地については、4割以上の企業が「本社機能は都心に置き、郊外に働く場所を分散させる(在宅勤務を含む)」(43.6%)と回答しており、分散型の働き方が進む可能性が示唆された【図表30】。一方で、「わからない」(43.2%)と回答した企業も多く、未だに半数弱の企業で働く場所の立地について決め切れていない様子がみてとれた。
【図表30】コロナ危機収束後の働く場所の立地(複数回答、n=1,005)
コロナ危機収束後、現在までの利用の有無にかかわらず、サテライトオフィスを利用したいかをたずねたところ、「利用したい派」(「利用したい」と「どちらかといえば利用したい」の合計)が52.5%と過半数を占めた【図表31】。「利用したくない派」(「利用したくない」と「どちらかといえば利用したくない」の合計)は24.2%であった。
【図表31】コロナ危機収束後のサテライトオフィスの利用意向(n=1,005)
「利用したい派」に対して、サテライトオフィスを利用したい理由をたずねたところ、「従業員の通勤・移動時間の短縮のため」(74.6%)が最も多く、次いで「在宅勤務のデメリット(集中しづらい、同居家族、家が狭い等)をカバーするため」(62.5%)、「従業員のワークライフバランス向上」(47.5%)となった【図表32】。サテライトオフィスには、従業員の働きやすさ向上や福利厚生としての役割と、在宅勤務のデメリットをカバーする役割が期待されているようだ。
【図表32】コロナ危機収束後、サテライトオフィスを利用したい理由
(複数回答、n=528)
次に、「利用したくない派」に対して、サテライトオフィスを利用したくない理由をたずねた【図表33】。「在宅勤務で十分だから」(59.0%)が最も多く、次いで「コストがかかるから」(39.3%)、「サテライトオフィスを利用するメリットがわからないから」(26.2%)となった。その他の理由としては、セキュリティ面の不安や感染症対策の不安があげられていた。
【図表33】コロナ危機収束後、サテライトオフィスを利用したくない理由
(複数回答、n=244)
5.おわりに
2020年春以降、新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、出社の制限やテレワークの導入、時差出勤の実施など、企業は様々な対応を行ってきた。結果的に、これまで漸進的であった働き方改革の歩みは加速した。
今回の調査では、2021年1月7日に発出された緊急事態宣言を受け、現在の企業の出社率およびテレワークの導入状況、そしてワークプレイス戦略の考え方やコロナ危機収束後の意向について明らかにした。12月調査と比較すると、出社率を制御している企業の割合は増加し、制御していない企業の割合が大きく減少した。一方で、在宅勤務やサテライトオフィスの導入状況に大きな変化はなく、引き続きテレワークを行っている様子がみてとれた。また、コロナ禍を機にワークプレイス戦略の重要性や見直しの必要性を感じている企業は8割を超えていることから、今後も働き方改革は進んでいくことだろう。
コロナ危機収束後は、業種や従業員数によって多少の差はあるものの、出社率を50%以上60%未満にしたいと考える企業が最も多かった。出社の比重が大きい企業は、出社した方が生産性が高いと考える企業が多かった一方で、テレワークを行う企業のなかでは出社もテレワークも生産性は変わらない、あるいはテレワークのほうが高いと回答する企業も一定数存在した。在宅勤務とサテライトオフィスの導入状況によって「生産性向上」の感じ方が異なることや、ほとんどの企業が出社とテレワークを「業務内容」により使い分けることから、企業のテレワークの導入状況や業務内容によって、従業員にとって生産性高く働ける場所は変わると考えられる。生産性の高い働き方は唯一絶対の回答があるわけではなく、企業ごと、業務ごと、個人ごとに異なるものだという認識を持つことが大切だ。
働く場所については、4割以上の企業が「本社機能は都心に置き、郊外に働く場所を分散させる(在宅勤務を含む)」と考えており、分散型の働き方が進む可能性が示唆された。本社機能を持つメインオフィスは、テレワークする従業員とリモート会議するための個室やブースを増やすことに加え、集まるための場としての価値を見直す動きがみられた。サテライトオフィスについては、コロナ危機収束後も半数以上の企業が利用したいと回答している一方で、利用したくないと回答した企業も全体の約1/4を占める。利用したくない理由として過半数が「在宅勤務で十分だから」と回答したものの、利用したい理由として「在宅勤務のデメリットをカバーするため」が上位に挙がっていることから、在宅勤務があるからサテライトオフィスは不要、と考えるのではなく、双方のメリット・デメリットを鑑みて、目的や場面に応じて両方を使い分けるのがよいのではないだろうか。
コロナ禍で世の中が大きく変わっていくなかで、働き方とワークプレイスがどのように変化していくのか、今後も動向を注視する必要がある。ザイマックス総研は引き続き、有益な調査結果を公表していく予定である。
調査期間
2021年1月27日~2月5日
調査対象
・ザイマックスインフォニスタの取引先企業
・ZXY 会員企業
上記合計 41,117社
有効回答数
1,005社 回答率:2.4%
調査地域
首都圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)
調査方法
メール配信による
調査内容
- オフィスの利用状況について
- ・ オフィスの出社制限の有無
- ・ 出社率(現在の目標・実態)
- テレワークの利用状況について
- ・ 在宅勤務の状況
- ・ 在宅勤務の対象者、利用者
- ・ サテライトオフィスの状況
- ・ サテライトオフィスの対象者、利用者
- ・ サテライトオフィスの利用状況
- ワークプレイス戦略と運用
- ・ ワークプレイス戦略の重要性や見直す必要性/着手の有無
- ・ テレワークで得られるメリット
- ・ オフィス運用/テレワーク運用の課題・困りごと
- コロナ危機収束後の働き方
- ・ 出社率の意向と理由
- ・ オフィスの面積意向
- ・ メインオフィスの方向性
- ・ サテライトオフィスの利用意向とその理由
- 入居中オフィスについて
- ・ 所在地/契約面積/利用人数
- 企業属性
- ・ 業種/従業員数
回答企業属性(上段:%、下段:n)
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