マーケット指標

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2020.11.04

オフィスマーケットレポート 東京 2020Q3

まとめ
  • ・ 今期(2020年7~9月期)の東京23区オフィスマーケットは、オフィススペースの需要が鈍くなり、空室率がさらに上昇するなど、市況変化の兆候がより鮮明になった。
  • ・ 空室率は前期と比べ0.33ポイント増加して1.34%となった。空室増減量は増加が10.2万坪、減少が6.5万坪と、2四半期連続で空室の増加が減少を上回った。空室在庫の減少割合を示す空室消化率は前期から14.0ポイント減少して32.4%であった。
  • ・ 新規賃料の水準を示す新規成約賃料インデックスは前期から+4の132となった。新規賃料が上昇した物件の割合から下落した物件の割合を引いた成約賃料DIは+13と、前期から5ポイント下落した。
  • ・ 新規賃料と継続賃料の両方を含む支払賃料インデックスは前期から+2の105となった。
  • ・ 全契約の平均フリーレント月数は前期から変わらず0.9ヶ月、フリーレント付与率は前期から0.5ポイント減少して33.8%となった。
  • ・ TOPIC 現空面積に解約予告済み・テナント退去前の募集面積を考慮した募集面積率はビルのエリア、規模を問わず、直近で大幅に上昇しており、23区の募集面積率は3.42%となった。

空室

図表1は、2011年からの東京23区、都心5区(中央区、千代田区、港区、渋谷区、新宿区)、周辺18区の空室率の推移である。今期の空室率は23区で前期から0.33ポイント増加して1.34%、都心5区で0.28ポイント増加して1.17%、周辺18区で0.53ポイント増加して1.90%であった。前期同様、企業のオフィス拡張ニーズに陰りがみられ23区、都心5区、周辺18区のすべてのエリアで2四半期連続して空室率は上昇した。
空室率が上昇した要因として、新型コロナウイルスの影響を受けて、採用計画を検討し直したことやテレワーク制度が浸透したことにより、オフィス面積を見直す動きが増え、市場の空室が消化されなかったことが挙げられる。

図表1:空室率(エリア別)

図表2は、2011年からの東京23区の全規模ビル、大規模ビル(延床5,000坪以上)、中小規模ビル(延床5,000坪未満)の空室率の推移である。今期は大規模ビルで0.11ポイント増加して0.93%、中小規模ビルで0.60ポイント増加して1.81%であった。

図表2:空室率(規模別)

図表3は、空室の増加面積と減少面積(空室増減量)の推移である。今期の空室増加面積は10.2万坪、空室減少面積は6.5万坪であった。増加面積と減少面積の差は広がり、2四半期連続で増加面積が減少面積を上回った。2020年第1四半期までの「コロナ以前」とは異なり、移転に伴う二次空室がすぐには埋まらないケースが増えてきているようだ。

図表3:空室増減量(23区・全規模)

図表4は、空室在庫(期初の空室在庫+期間中に発生した空室の総量)に対して、期間中に空室がどれだけ減少したかを割合で示す空室消化率の推移である。今期の空室消化率は32.4%と、前期から14.0ポイント、前々期からは38.0ポイントの大幅な減少となった。なお、これは2016年第3四半期(31.6%)と同水準であり、市況が大きく変化している様子がうかがえる。

図表4:空室消化率

新規成約賃料

図表5は、新規賃料の水準を示す新規成約賃料インデックスの推移である。今期は132と前期比4ポイント増加、前年同期比では3ポイント減少となった。2012年第2四半期以降継続してきた新規賃料の上昇傾向にピーク感がみられ、横ばい、あるいは下落に転じ始めている可能性がある。景気の先行きが不透明な状況が続いており、オフィスの移転や拡張に慎重な企業が増え始めているものの、依然として空室率は低水準であるため、賃料の大幅な下落には結びついていないとみられる。

図表5:新規成約賃料インデックス

図表6は、規模別の新規成約賃料インデックスの推移である。延床面積5,000坪以上の大規模ビルは120と前期から4ポイント減少、延床面積5,000坪未満の中小規模ビルは134と前期から5ポイント上昇したが、いずれもここ数年のピークである2020年第1四半期の数値を下回っている。

図表6:新規成約賃料インデックス(規模別)

図表7は、新規成約賃料の変化の方向性を示す成約賃料DI(賃料が上昇した物件の割合-下落した物件の割合)の推移である。今期は「+13」と、新規賃料が半年前と比べて下落した物件より上昇した物件が多いプラス圏を22四半期連続で維持しているものの、前期比では5ポイント減であった。賃料が下落した物件の割合は、2020年第1四半期以降徐々に増加している。

図表7:成約賃料DI

支払賃料

図表8は、新規賃料と継続賃料の両方を含む支払賃料インデックスの推移である。今期は105と、前期比2ポイント上昇、前年同期比7ポイント上昇しており、2013年第3四半期以降の上昇傾向は続いている。上昇要因のひとつとしては、賃料水準が低い時期に契約したテナントに対して、賃料の値上げ交渉が行われたことが挙げられる。ただし、支払賃料は新規成約賃料に比べると遅れて変化するため、今後の動向には注視が必要である。

図表8:支払賃料インデックス  

フリーレント

図表9は、新規契約のうちフリーレントを付与した割合(付与率)と、フリーレント期間の平均値(平均フリーレント月数)の推移である。今期は、「フリーレントあり契約の平均FR月数」が前期から0.2ヶ月減の2.6ヶ月、「全契約の平均FR月数」が前期と変わらず0.9ヶ月であった。

図表9:フリーレント  

2011年以降フリーレントの付与率は低下していたが、2016年頃から横ばいで推移しており、フリーレントを付与する慣習が市場に広く浸透してきた。今期、付与率は減少、平均FR月数は横ばいもしくは減少となった。

マーケット循環

図表10は、横軸に空室率、縦軸に新規成約賃料インデックスをとって四半期ごとにプロットしたものである。2001年以降右下方向(空室率上昇・賃料下落)に移動し、2003年から2004年の停滞期を経て、2005年以降左上方向(空室率低下・賃料上昇)へ移動し、2008年以降再び右下方向へ移動、とマーケットが循環しながら推移する様子が観察できる。

図表10:マーケット循環  

2013年以降オフィス賃貸マーケットは回復期にあったが、今期は空室率、新規賃料インデックスともに上昇したため、右上方向に移動した。

<TOPIC>募集ベースの空室率(募集面積率)

これまでみてきた空室率や空室増減量は、退去済みで即入居可能な空室(現空)を調査対象としている。今回、マーケットの変化をより詳しく分析するため、現空の面積に解約予告済み・募集中(テナント退去前)の面積を加えた募集面積率を作成した。

図表11は、2011年からの東京23区の募集面積率と空室率の推移である。二つの動きは概ね一致しているが、2020年第1四半期以降、募集面積率は急激に上昇している。今期の空室率は2018年第1四半期と同水準であるのに対して、募集面積率は2017年第3四半期と同水準となっている。
背景としては、テナントの解約予告から退去するまでの間に、館内増床や新規の後継テナントが決まらなくなってきたことが考えられる。

図表11:募集面積率と空室率

図表12は、東京23区、都心5区、周辺18区の募集面積率の推移である。周辺18区と比較すると、都心5区の募集面積率は低い水準を維持していたが、今期は同水準になっている。図表1の空室率(エリア別)では今期も都心5区の空室率は周辺18区よりも低いものの、今後は空室率もエリアの違いによる差が小さくなる可能性が示唆される。

図表12:募集面積率(エリア別)

図表13は、東京23区の全規模ビル、大規模ビル(延床5,000坪以上)、中小規模ビル(延床5,000坪未満)の募集面積率の推移である。2017年頃までは中小規模ビルと比較して、大規模ビルの募集面積率は低い傾向にあったが、2017年以降は規模の違いによる募集面積率の差は小さい。この傾向は2020年第1四半期に上昇に転じてからも続いている。募集面積率はビルの規模やエリアを問わず大幅に上昇しており、今後もその傾向は続くのか、他指標含め引き続き注視していきたい。

図表13:募集面積率(規模別)




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