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2019.10.04

都心部以外に働く場所を設けることの有効性

~オフィスワーカーの通勤実態調査より~

企業は働き方改革への取り組みを加速し、時間や場所に捉われない多様な働き方を推進しつつある。そうした新しい働き方はワーカー個人にとっても、生産性向上やワークライフバランス向上の点で重要なトピックとなっている。そこで、ザイマックス不動産総合研究所では、オフィスワーカーの視点から働き方と働く場所の変化を捉えるため、首都圏勤務のオフィスワーカーを対象にアンケート調査を実施し、その結果を公表してきた。2019年2月に行った第3回調査では、首都圏通勤者の通勤実態にフォーカスし、長時間通勤による通勤ストレスが仕事満足度や生産性、組織へのエンゲージメントに与える影響について分析した(※)。

さらに同年3月には、近年テレワークの手段として注目され、市場が拡大しているフレキシブルオフィスサービスについて深掘りするため、ザイマックスが提供する法人向けシェアオフィスサービス「ZXY(ジザイ)」の利用登録者を対象にアンケートを行った。本レポートは、上記2つの調査結果について、主に都心部/周辺部というエリアの観点から、働く場所の選択肢を持つことの有効性を検証するものである。

主な調査結果
  • 1.通勤がオフィスワーカーに与える影響
  • ・ 片道通勤時間が45分以上であることは、ワーカーが「毎日楽しく働けている」と感じる確率にマイナスの影響を与える。
  • ・ 周辺部から都心部への通勤は、通勤時間の長さを問わず、逆方向と比べてストレスがより強くなる可能性がある。

  • 2.シェアオフィスの立地別にみる利用ニーズと効果の違い
  • ・ アンケート回答者を、最も利用するシェアオフィス拠点の立地別に「都心型/周辺型」の2グループに分けて特徴をみた結果、都心型ユーザーは営業職の割合が高く、周辺型ユーザーは配偶者・子どもなど家族と同居している割合が高いことがわかった。
  • ・ 1回あたりの利用時間の平均は、都心型ユーザーの2.3時間に対して周辺型ユーザーが3.6時間と長く、周辺型ユーザーでは「8時間以上」と回答した人も約16%に上った。
  • ・ 「ZXYを利用することによって1回あたりに短縮できる時間」を聞いたところ、都心型ユーザーの平均51.0分に対し、周辺型ユーザーは平均64.1分と、より時間短縮効果が大きかった。
  • ・ 具体的な利用効果を聞いた結果も、全体的に周辺型ユーザーの方がスコアが高く、都心型ユーザーと比べてより効果を感じていることがわかった。
  • ・ 自宅近くのZXYに出勤する場合の通勤時間と通勤ストレスを、在籍オフィスへ出勤する場合と比較したところ、通勤時間は都心型ユーザーが23.1分、周辺型ユーザーが39.3分削減され、通勤ストレスは都心型ユーザーが2.3ポイント、周辺型ユーザーが4.2ポイント軽減されており、いずれも周辺型ユーザーの方が削減・軽減効果が大きいことがわかった。

1.通勤がオフィスワーカーに与える影響


  • 片道通勤時間が45分以上であることは、ワーカーが「毎日楽しく働けている」と感じる確率にマイナスの影響を与える。
  • 周辺部から都心部への通勤は、通勤時間の長さを問わず、逆方向と比べてストレスがより強くなる可能性がある。

第1章では、首都圏に勤務するオフィスワーカーを対象とした「首都圏オフィスワーカー調査2019」の結果について分析していく。本調査では、「職業が会社・団体の役員、会社員・団体職員、自営業主(飲食店・小売店・対人サービス業以外)で、主たる仕事場(オフィス、事務所)が首都圏(1都3県)」と回答した20~69歳の男女2,009人から有効回答を得た。基礎的な分析結果については、前述の既出レポートをご参照いただきたい。

今回はまず、通勤時間の長さがワーカーのモチベーションやエンゲージメントにどのような影響を与えるのかを調べた。「仕事満足度」や「毎日楽しく働けているか」、「勤務先に対して帰属意識を感じるか」など複数の項目に対する通勤時間の影響を統計的手法により分析したところ、「毎日楽しく働けている」という回答への有意な影響がみられた。

【図表1】は、自宅から勤務先への通勤時間(※1)と、「毎日楽しく働けている」と感じる確率の関係を示したものである。*の数が多いほど統計的に有意な(信憑性のある)影響があり、数値が0より小さければ、「毎日楽しく働けている」と感じる確率にマイナスの影響を与えるといえる。今回の調査結果では、通勤時間35分からマイナスの影響がみられ始め、45分以上になるとより有意な影響があることが確認された。

※1 回答者が通常使用している通勤手段(電車、バス、自動車、自転車、徒歩など)による、自宅からのドア・ツー・ドアの所要時間(片道)。

【図表1】通勤時間が「毎日楽しく働けている」と感じる確率に与える影響

次に、通勤時間の長さだけでなく、居住地と勤務地の組み合わせ、つまり「通勤する方向」と通勤ストレス(※2)の関係に着目した。今回の調査では、通勤ストレスが通勤時間に比例する傾向が確認されている(※3)が、通勤する方向によっては、ストレスの表れ方に異なる傾向がみられた。

※2 通勤ストレスを0(最低)~10(最高)の11段階で聞いた値

【図表2】は、首都圏を①都心5区(千代田・中央・港・新宿・渋谷)、②18区(都心5区を除く東京23区)、③郊外(東京23区を除く首都圏全域)の3エリアに分け、居住地と勤務地の組み合わせごとに平均通勤時間と平均通勤ストレスを示したものである。

【図表2】居住地・勤務地エリア別の平均通勤時間(上段)と平均通勤ストレス(下段)


18区居住と郊外居住のグループでは、同じエリア内への通勤時間が最も短く、通勤ストレスも最も低くなっており、職住近接が通勤ストレス軽減に有効であることが示唆されている。また、どちらも通勤時間は45分以内と、前述の「毎日楽しく働けている」と感じる確率が損なわれない範囲にも収まっている。

しかし都心5区居住のグループだけは、最も通勤時間の短くなる同エリア内への通勤よりも、より時間のかかる18区への通勤の方がストレスが低くなる傾向がみられた。さらに18区居住グループでは、都心5区へ向かう場合と比べて郊外へ向かう通勤時間は23分も長くなるにもかかわらず、ストレス差は0.2に留まり、時間とストレスが比例しない結果となった。

これらのことより、周辺部から都心部への通勤は、逆方向と比べてストレスがより大きくなる可能性があると考えられる。現状、首都圏にあるオフィスの大部分は都心部へ集中しているため、周辺部から都心部へ向かう上り電車が一様に混雑しており、その状況が所要時間に関わらずより強いストレスを感じる原因となっているのかもしれない。

2.シェアオフィスの立地別にみる利用ニーズと効果の違い

2-1.最多利用拠点の立地別(都心部/周辺部)にみる利用ニーズの差

  • アンケート回答者を、最も利用するシェアオフィス拠点の立地別に「都心型/周辺型」の2グループに分けて特徴をみた結果、都心型ユーザーは営業職の割合が高く、周辺型ユーザーは配偶者・子どもなど家族と同居している割合が高いことがわかった。
  • 1回あたりの利用時間の平均は、都心型ユーザーの2.3時間に対して周辺型ユーザーが3.6時間と長く、周辺型ユーザーでは「8時間以上」と回答した人も約16%に上った。

前項では、通勤時間を削減するだけでなく、都心部へ向かう通勤を避けることが通勤ストレス軽減につながる可能性が示唆された。そこで第2章では、ザイマックスが提供する法人向けシェアオフィスサービス「ZXY(ジザイ)」の利用登録者を対象としたアンケート調査の結果について、「都心部/周辺部」というエリアを軸に分析を行うことで、都心部以外に働く場所を設けることの有効性を検証していく。

今回は、ZXY利用登録者アンケートにて「ZXYを利用している」と回答した1,068人を対象に、「最も利用する拠点」として選択した拠点の所在地が都心5区内であれば「都心型ユーザー」、都心5区を除く首都圏全域であれば「周辺型ユーザー」として回答者を2グループに分け、それぞれの特徴を比較した。

まず、各グループの属性の違いから、立地別に利用ニーズの特徴をみていきたい。

【図表3】は各グループの職種の割合を示したものである。どちらも最も多いのは「営業・販売」だが、都心型ユーザーは45.5%と周辺型ユーザーよりも多く、都心の営業先回りなどの際に立ち寄るニーズがあるのかもしれない。一方、周辺型ユーザーは「調査分析・特許法務などの事務系専門職」や「一般事務・受付・秘書」などの内勤系職種の割合が比較的高い傾向がみられた。

【図表3】<最多利用拠点の立地別>職種


【図表4】は、同居家族の有無を聞いた結果を比較したものである。大半の項目で周辺型ユーザーの方がスコアが高く、特に「配偶者」(78.2%)と「未就学児」(26.6%)では都心型ユーザーとの有意な差がみられた。未就学児を持つユーザーは、自宅に近い周辺部のZXYをテレワーク拠点として利用することで通勤時間を削減し、仕事と育児の両立に役立てているのかもしれない。一方、「上記にあてはまる同居家族はいない」を選択した割合は都心型ユーザーの方が高く(23.5%)、単身者が多い可能性があると考えられる。

【図表4】<最多利用拠点の立地別>同居家族 (複数回答)

ZXYの1回あたりの利用時間を聞いた結果(【図表5】)にも、各グループの利用ニーズの差がみられた。

都心型ユーザーは3時間未満(「2時間未満」と「2時間以上」の合計)の回答が7割を占め、平均は2.3時間と、短時間利用が中心であることがわかる。

一方、周辺型ユーザーでは3時間以上の回答が過半数を占め(平均3.6時間)、「8時間以上」と回答したユーザーも15.9%に上った。つまり、シェアオフィスであるZXYでほぼ終日勤務することが常態化しているユーザーが一定数存在するということを示しており、働き方の多様性がうかがえる。

【図表5】<最多利用拠点の立地別>ZXYの1回あたり利用時間


2-2.最多利用拠点の立地別(都心部/周辺部)にみる利用効果の差

  • 「ZXYを利用することによって1回あたりに短縮できる時間」を聞いたところ、周辺型ユーザーは平均64.1分と、都心型ユーザーの平均51.0分に対して時間短縮効果が大きかった。
  • 具体的な利用効果を聞いた結果も、全体的に周辺型ユーザーの方がスコアが高く、都心型ユーザーと比べてより効果を感じていることがわかった。
  • 自宅近くのZXYに出勤する場合の通勤時間と通勤ストレスを、在籍オフィスへ出勤する場合と比較したところ、通勤時間は都心型ユーザーが23.1分、周辺型ユーザーが39.3分削減され、通勤ストレスは都心型ユーザーが2.3ポイント、周辺型ユーザーが4.2ポイント軽減されており、いずれも周辺型ユーザーの方が削減・軽減効果が大きいことがわかった。

続いて、各グループで感じている利用効果の差を調べた。まず、「ZXYを利用することによって1回あたりに短縮できる時間」を聞いたところ、都心型ユーザーの平均は51.0分、周辺型ユーザーの平均は64.1分と、周辺型ユーザーの方がより時間短縮効果が大きいことがわかった。

また、具体的に感じている利用効果についても、全体的に周辺型ユーザーの方がスコアが高く、特に「ストレスが減った」「家族との時間が増えた」の2項目は都心型ユーザーとの差が大きい【図表6】。対して、都心型ユーザーの方がスコアが高かったのは「残業時間が減った」「顧客対応時間が増えた」「顧客訪問回数が増えた」の3項目であった。

【図表6】<最多利用拠点の立地別>ZXYの利用により感じる効果 (複数回答)

2-1では、朝からZXYで終日勤務するユーザーがいることが示された(【図表5】)。そこで、自身が本来在籍するオフィスの代わりに、朝の出勤先としてZXYを利用する場合の利用効果について、都心型ユーザーと周辺型ユーザーを比較してみた。

【図表7】は、朝の出勤先として、在籍オフィスに出勤する場合と自宅近くのZXYに出勤する場合(※4)の通勤時間および通勤ストレスを比較した表である。自宅近くのZXYに出勤する場合の通勤時間とストレスを、在籍オフィスへ出勤する場合と比較したところ、通勤時間は都心型ユーザーが23.1分、周辺型ユーザーが39.3分削減され、通勤ストレスは都心型ユーザーが2.3ポイント、周辺型ユーザーが4.2ポイント軽減されており、いずれも周辺型ユーザーの方が削減・軽減効果が大きいことがわかった。

※4 「朝の出勤先として自宅近くのZXYをサテライトオフィス的に利用することがある」と回答した393人が対象。

【図表7】在籍オフィスに出勤する場合とZXYへ出勤する場合の差

3.まとめ

第1章では、二つの分析結果から、オフィスワーカーが通勤ストレスを軽減して楽しく働くために「所要時間45分未満」かつ「都心部から周辺部へ向かう方向」の通勤が有効である可能性が示唆された。

さらに第2章では、実際に周辺部に拠点を持つシェアオフィスサービス「ZXY」の利用者アンケートの結果によって、都心部以外に働く場所を設けることの有効性が示された。周辺部の拠点をよく利用するユーザーは未就学児と同居している割合が高く、自身が本来在籍するオフィスの代わりにZXYに終日勤務する場合もあるなどの傾向から、都心部の拠点とは異なるニーズに対応していると考えられる。ZXYに終日勤務する場合、在籍オフィスへ出勤する場合と比較した通勤時間や通勤ストレスの軽減効果は周辺型ユーザーの方がより大きく、具体的な利用効果としても「ストレスが減った」「家族との時間が増えた」など、職住近接によるメリットを強く感じていることがわかった。

以上の結果から、都心部のオフィスとは別に、居住エリアに近い周辺部に多様な働く場所の選択肢を用意することは、オフィスワーカーのストレス軽減やエンゲージメント向上、生産性向上につながり、ひいては離職防止や採用力強化など、人材確保の効果も期待できると考えられる。

ワーカー個人にとっても、仕事と生活の場が近づくことの意義は大きい。場所と時間に縛られない柔軟な働き方が可能となれば、出産や育児、介護、闘病などのライフイベントに直面した際の仕事と人生の選択肢はより広がり、安心して働き続けることが可能となる。時間的・身体的制約により都心オフィスへの長距離通勤が困難になり、休職や退職するしかなかった時代と違い、自律的に長く働くワーカーが増えることがまた、企業活動にも還元されていくだろう。

一方、不動産ビジネスの観点からみると、周辺部はオフィスビルが乏しいエリアでもある。そこで、周辺部にワークプレイスを用意する方法として、オフィス物件だけでなく商業施設や生活利便施設(例:金融機関店舗、郵便局、駅舎)などの余剰床を活用する事例がみられ始めている。仕事と生活の場を統合する「ワーク・ライフ・ミックス」の進展は、労働力確保とワーカー一人ひとりの生産性向上という経営課題に立ち向かう企業にとって有益な潮流であるとともに、今後本格化する、様々な事情を抱えたワーカーが共に働き続ける時代の後押しとなるはずだ。

ザイマックス総研では今後も、企業やオフィスワーカーへの調査を継続することで、こうした動きが働き方やオフィスのあり方に与える影響を捉えていきたい。



「首都圏オフィスワーカー調査2019」詳細

《調査概要》

調査時期:2019年2月/調査地域:首都圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)/調査方法:インターネット調査

調査対象:①スクリーニング調査…15~69歳の男女20,000人を対象に実施。②本調査…スクリーニング調査で「職業が会社・団体の役員、会社員・団体職員、自営業主(飲食店・小売店・対人サービス業以外)で、主たる仕事場(オフィス、事務所)が首都圏(1都3県)」と回答した20~69歳の男女2,144人を対象に実施し、2,009人から有効回答を得た。

《回答者属性》


「ZXY利用登録者調査2019」詳細

《調査概要》

調査時期:2019年3月/調査方法:インターネット調査/調査対象:法人向けシェアオフィスサービス「ZXY(ジザイ)」の利用登録者を対象に実施し、2,039人から有効回答を得た。本レポートでは、そのうち「ZXYを利用している」と回答した1,068人を分析対象としている。

《回答者属性》

レポート内のグラフに関して
・構成比(%)は、小数点第2位を四捨五入しているため内訳の合計が100%にならない場合がある。
※当レポート記載の内容等は作成時点のものであり、正確性、完全性を保証するものではありません。
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参考:働き方×オフィス 特設サイト

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