2018.07.03
大都市圏オフィス需要調査2018春
変わりゆくオフィス需要の潮流を捉える
近年、企業は業績の拡大とともに採用を増やしており、これがオフィス需要の増加の一因となっている。さらに、生産年齢人口の減少による労働力不足の懸念などを背景に、多様な人材確保と生産性の向上を喫緊の課題とし、場所や時間に捉われない柔軟な働き方を導入する企業が増えてきた。この潮流は、企業のオフィス選びにおいて必要とされる面積、立地選びや利用のスタイルなどに影響を与えるものと思われる。
ザイマックス不動産総合研究所では2016年秋より、企業のオフィス利用の実態や働き方に関して定期的(年2回)にアンケート調査を実施し、オフィス需要について継続的に分析・発表している。本レポートはその第4回調査の結果を公表するものである。
(関連調査)2016年秋調査(第1回)「大都市圏オフィス需要調査2016 <需要動向編>」…2017年1月12日公開
2016年秋調査(第1回)「大都市圏オフィス需要調査2016 <働き方の変化とオフィス編>」…2017年1月30日公開
2017年春調査(第2回)「大都市圏オフィス需要調査2017 <需要動向編>」…2017年8月2日公開
2017年秋調査(第3回)「大都市圏オフィス需要調査2017秋」…2017年12月7日公開
- 1.オフィス需要の変化(2017年4月〜2018年3月)
- ・賃料単価(共益費込)が「上昇した」企業(16.6%)も、「下落した」企業(1.1%)を上回った。
- ・オフィスの所在地別では東京23区において、オフィス面積を拡張した割合と賃料単価が上昇した割合がともに高かった。企業規模別では100人以上1,000人未満の企業において、オフィス面積を拡張した割合が高かった。
- ・38.3%の企業が依然、現在入居中のオフィスを手狭だと感じている。
過去1年におけるオフィスの利用人数が「増えた」企業の割合は40.0%で、「減った」企業(13.3%)を上回った。また、オフィス面積を「拡張した」企業の割合は9.1%で、「縮小した」企業(2.7%)を上回り、オフィス需要は堅調であった。【図表1・2】
- 2.働く場所の多様化
- ・大企業(従業員数1000人以上)ほど、テレワーク支援策として働く場所を多様化させている。ただし、2017年春調査と比較すると100人以上1,000人未満の企業の伸び率が高かった。
- ・所在地別では東京23区、業種別では情報通信業において、テレワーク支援策として働く場所を多様化させる取り組みが進んでいる傾向にある。
「在宅勤務制度」(20.6%)のほか、サテライトオフィスやレンタルオフィスの利用など、働く場所を多様化させる取り組みに伸びが見られる。【図表14】
- 3.今後のオフィス需要の見通し
- ・オフィス施策を実施する上での重視項目は「生産性の向上」が1位(65.8%)で、コスト意識よりも従業員の満足度に関わる項目を重視する傾向がみられた。
- ・懸念事項/阻害要因では、4割以上の企業が「コスト負担が重い」を選んでおり、2017年春調査と比較すると、社内調整に関わる項目が伸びていた。
- ・テレワークする場所を整備していない企業に比べ、整備済みの企業はオフィスの1人あたり面積が小さかった。
利用人数が「増える」と答えた企業の割合(41.1%)が、「減る」と答えた企業(5.2%)を上回った。オフィス面積を「拡張したい」と答えた割合(23.5%)も、「縮小したい」と答えた割合(4.6%)を上回り、今後も引き続きオフィス需要は堅調に推移する見通し。【図表18・19】
1.オフィス需要の変化(2017年4月〜2018年3月)
1-1.利用人数、面積、賃料単価(共益費込)の変化
過去1年(2017年4月〜2018年3月)におけるオフィスの利用人数、オフィス面積および賃料単価(共益費込。以下同様)の変化は以下の通りとなった。
利用人数は、「増えた」と答えた企業の割合が、「減った」と答えた企業の割合を26.7ポイントと大きく上回った【図表1(下段)】。また、オフィス面積が「拡張した」と答えた企業の割合も、「縮小した」と答えた企業の割合を6.4ポイント上回った【図表2(下段)】。賃料単価が「上昇した」と答えた企業の割合は、「下落した」と答えた企業の割合を15.5ポイント上回った【図表3(下段)】。
こうした企業の需要の伸びが、大都市圏におけるオフィス需給のひっ迫につながっていると考えられる。また、オフィスの利用人数が増えた企業に比べ、オフィス面積を拡張した企業が少ないことから、面積を拡張することなく、人を増員している企業が一定数存在することがわかる。こうした状況が、後述の「手狭感」(【図表 11】)の結果にもつながっていると思われる。
【図表1】オフィスの利用人数の変化
【図表2】オフィス面積の変化
【図表3】賃料単価の変化
1-2.オフィス面積の変化について(詳細)
オフィス面積拡張の内容は、「拡張移転」が「館内増床」の割合を上回り、縮小した場合も「縮小移転」が「館内減床」の割合を上回っている【図表4・5】。オフィス需給がひっ迫した状況下では、現在入居しているビル内で拡張したくても空きフロアがないため、移転や分室開設で対応したケースや、契約更新にあたり値上げを要求されて仕方なく移転した、という状況もあるのかもしれない。
面積拡張の理由としては、「人数が増え手狭になった」(72.1%)、「今後の採用強化による人数増加に対応するため」(41.4%)が上位に並び、人材確保に対する企業の前向きな姿勢がうかがえる。次いで「オフィス環境の快適性アップのため」(33.3%)がランクインしており、オフィスが働く人に与える影響についての関心が高まっているといえるだろう【図表6】。
一方、縮小の理由は「オフィスコストを削減するため」(56.3%)が昨年同様1位となったが、「人員減のため」(18.8%)と「オフィススペースを効率化するため」(40.6%)の順位が逆転している【図表7】。オフィス面積を縮小する背景に変化が現れてきているようだ。
【図表4・5】(左)面積拡張の内容、(右)面積縮小の内容
【図表6・7】(左)面積拡張の理由、(右)面積縮小の理由
(*1) 分室 … 本社などの主たるオフィスの一部機能を、その近くの立地に分けて設けられたオフィス
(*2) 新規開設 … 入居中の同じビル内に、新たにオフィスを開設したことを指す
(*3) 2018年春調査から選択肢を追加
1-3.オフィス面積変化の実績と可能性
過去1年間のオフィス面積について「変化なし」と回答した企業でも、「拡張を検討している」企業と「拡張を検討したが、中止/中断した」企業は合わせて7.9%おり、潜在的に拡張する可能性があったといえる。実際にオフィス面積を「拡張した」と答えた割合と合わせると、17.0%に上った【図表8】。
また、1.8%が「縮小を検討している」、0.6%が「縮小を検討したが、中止/中断した」と回答。実際にオフィス面積を「縮小した」と答えた割合と潜在的に縮小する可能性があった割合の合計は5.1%となった【図表8】。
【図表8】過去1年のオフィス面積変化の実績+可能性
1-4.賃料単価の変化について(詳細)
オフィス面積を拡張した企業では、賃料単価が「上昇した」と答えた割合が「下落した」を上回った。また、面積に変化がなかった企業においても、「上昇した」割合が「下落した」割合を13.2ポイント上回った【図表9】。空室率が低水準で推移するなか、新規成約賃料だけでなく、入居中テナントの継続賃料を含む賃料全体が上昇傾向にあることがうかがえる。
【図表9】面積の変化と賃料単価の変化
<PICK UP>企業属性別にみるオフィス面積・賃料単価の変化
企業規模や業種、オフィスの所在地別では、オフィス面積の増減と賃料単価の上下幅に差がみられた。
過去1年間(2017年4月〜2018年3月)におけるオフィス面積の変化「オフィス面積DI」(「拡張した」割合から「縮小した」割合を引いた値)と賃料単価の変化「賃料単価DI」(「上昇した」割合から「下落した」割合を引いた値)の結果が【図表10】である。2017年春調査と比較すると、全体的に右上に移動しており、オフィス面積と賃料の水準が底上げされているといえるかもしれない。
<▲企業規模(従業員数)別>
賃料単価は企業規模(従業員数)による大きな差は見られなかったが、オフィス面積については100人以上1,000人未満の企業が最も伸びていた。
<◆業種別>
サービス業、情報通信業は、オフィス面積を拡張した割合と賃料単価が上昇した割合がともに高かった一方、製造業や不動産業,物品賃貸業は比較的低調であったことがわかる。
<●オフィスの所在地別>
東京23区は、オフィス面積を拡張した割合と賃料単価が上昇した割合がともに2017年春調査と同様に高かった。また、前回低調だった大阪市は賃料単価が大きく伸び、名古屋市では面積需要の伸びがみられた。
【図表10】オフィス面積DI(過去)と賃料DI(過去)
1-5.手狭感、景況感
入居中のオフィスの面積についてどのように感じているかを聞いたところ、合計で38.3%の企業が「かなり狭い」「やや狭い」と回答した。これは「かなり広い」「やや広い」と答えた企業の割合(13.1%)を上回っており、潜在的な拡張ニーズがあるとみることができる【図表11】。過去3回の調査と比較しても、手狭だと感じている企業の割合が増えている。
また、景況感については「良い」「やや良い」と回答した企業が3割を超え、「悪い」「やや悪い」と答えた割合(20.7%)を上回った【図表12】。ただし、2017年春調査と比較すると、「良い」「やや良い」だけでなく、「悪い」「やや悪い」の合計も微増している。前述した過去1年間のオフィス面積・利用人数の変化(【図表1・2】)についても同様に、「増えた」だけでなく「減った」も微増しており、景況感とその影響を受けるオフィス需要について、多くの企業が景気上昇の波に乗っていた状況から変化が生じつつあるのかもしれない。
【図表11】手狭感
【図表12】景況感
2.働く場所の多様化
2-1.オフィスレイアウトの実態
入居中のオフィスについて、何があるかを聞いた結果が【図表13(下段)】である。
2017年春調査(【図表13(上段)】)と比較して大きな変化は見られないものの、「オープンミーティングスペース」や「リフレッシュスペース」、「フリーアドレス席」など、ユーザーのニーズに合わせて柔軟な使い方のできるスペースが微増傾向にあるといえる。「ロッカー」についても3.5ポイント増えており、オフィス利用人数や「フリーアドレス席」の増加が影響している可能性がある。
【図表13】入居中オフィスのレイアウト
*ABW(Activity Based Working)… 集中するためのブース、チームで作業するためのスペースなど、オフィス内に多様なワークエリアを設けるレイアウト
2-2.テレワーク支援のための取り組み
テレワーク支援のための取り組みについて、対象者の一部・全部を問わず、少しでも整備・用意しているものがあるかどうかを聞いた。
内容としては、「在宅勤務制度の整備・活用」が20.6%で最多となり、2017年春の調査結果と比較して8ポイント増と大幅な伸びがみられた。「自社が所有・賃借するサテライトオフィス(*1)等」(8.1%)や「専門事業者等が提供するレンタルオフィス、シェアオフィス等の利用(*2)」(8.2%)は、2017年春と比べて各2~3ポイント伸びていた【図表14】。昨今の働き方改革の盛り上がりを受け、働く場所の多様化が少しずつ進んでいる様子がうかがえる。
【図表14】テレワークする場所や制度
(*1) サテライトオフィス…主に従業員の移動時間等を考慮してターミナル駅至近や郊外などに設置する、主たるオフィスと同様の環境を整えたオフィス
(*2) 月極め/時間貸しといった契約内容の別は問わない
こうした取り組みには、企業規模やオフィスの所在地による差がみられた。
企業規模別では、大企業ほど整備率が高い傾向がみられる。また、2017年春調査と比べると全体的に伸びており、特に100人以上1,000人未満の企業では、在宅勤務制度(前回8.9%)が11.7ポイント、「レンタルオフィス、シェアオフィス等の利用」(同4.8%)が5.1ポイントの伸びをみせている【図表15】。
また、オフィスの所在地別でみると、ほぼ全ての取り組みについて、主要3エリア(東京23区、大阪市、名古屋市)の中で東京23区の導入率が最も高く、多様な働き方への取り組みに地域差があることがわかった【図表16】。
【図表15】企業規模別に見た、従業員がテレワークする場所の整備状況
(カッコ内%:2017年春調査)
【図表16】オフィスの所在地別に見た、従業員がテレワークする場所の整備状況
(カッコ内%:2017年春調査)
業種別にみると、情報通信業は全ての取り組みにおいて比較的導入率が高かった。2017年春調査と比較すると、どの取り組みについても全体的に伸びており、「レンタルオフィス、シェアオフィス等の利用」では、情報通信業とサービス業が10%を超えている【図表17】。
【図表17】業種別に見た、従業員がテレワークする場所の整備状況
(カッコ内%:2017年春調査)
3.今後のオフィス需要の見通し
3-1. 利用人数、面積の見通し
現在入居中のオフィスの利用人数について、1~2年程度先までにどうなりそうかを聞いたところ、「増える」(41.1%)と答えた企業の割合が「減る」(5.2%)を大きく上回った【図表18】。2~3年程度先までのオフィス面積に関する意向も、「拡張したい」(23.5%)が「縮小したい」(4.6%)を上回っており【図表19】、オフィス需要は2017年春調査同様、引き続き堅調に推移すると予想される。また、利用人数、オフィス面積ともに、前回調査と比べると「増える/拡張したい」「減る/縮小したい」がそれぞれ増えていることがわかる。
【図表18】今後のオフィス利用人数の変化
【図表19】今後の面積の意向
また、オフィス面積を「拡張したい」と答えた企業のうち約4割は、その内容として「拡張移転」を希望していた【図表20】。[1-2. オフィス面積の変化について(詳細)]で触れた通り、実際にも移転によってオフィス面積を拡張した企業が多いようだ。なお、2017年春調査では、「館内増床」が1位となっており、順位が逆転している。拡張を希望する理由としては、すでに拡張した企業の理由と同じく「人数が増え手狭になったため」(69.4%)、「今後の採用強化による人数増加に対応するため」(41.9%)に続き、「オフィス環境の快適性アップのため」(39.5%)が3位となった【図表22】。
オフィス面積縮小の内容については、2017年春調査同様「縮小移転」が「館内減床」を上回って1位となっている【図表21】。縮小を希望する理由としては、「人員減のため」が11.5ポイント増加しており、【図表18】で見た通り、今後のオフィス利用人数が「減る」と回答した企業の割合が増えていることとも関連しているとみられる【図表23】。
【図表20・21】(左)拡張意向の内容、(右)縮小意向の内容
【図表22・23】(左)拡張意向の理由、(右)縮小意向の理由
(*1) 分室 … 本社などの主たるオフィスの一部機能を、その近くの立地に分けて設けられたオフィス
(*2) 新規開設 … 入居中の同じビル内に、新たにオフィスを開設したことを指す
<PICK UP>企業属性別にみる、過去と今後のオフィス面積変化
過去1年間(2017年4月〜2018年3月)におけるオフィス面積DI(「拡張した」割合から「縮小した」割合を引いた値)と今後のオフィス面積意向DI(「拡張したい」割合から「縮小したい」割合を引いた値)の結果が【図表24】である。
<▲企業規模(従業員数)別>
100人以上1,000人未満の企業では今後の拡張意向が高く、2017年春調査と比較しても大幅に伸びている。一方、1,000人以上の企業では、1,000人未満の企業に比べて今後の拡張意向が低い。
<◆業種別>
情報通信業は、過去においても今後の見通しについてもオフィス需要が好調であることがわかる。学術研究,専門・技術サービス業は拡張意向が高くなっており、サービス業では実際の拡張が進んでいる。一方、製造業と卸売業、小売業は過去も今後も比較的低調となった。
<●オフィスの所在地別>
東京23区は、過去・今後ともにオフィス需要が比較的好調であることがわかる。大阪市について、過去は比較的低調だが、2017年春調査と比較して今後の拡張意向が伸びている。
【図表24】オフィス面積DI(過去と今後)
3-2.オフィス施策を実施する上での重視項目、懸念事項/阻害要因
オフィス施策を実施する上で重視する項目は、以下のような結果となった【図表25(下段)】。2017年春調査と順位はほとんど変わらないものの、ほぼ全ての項目において伸びており、より働きやすいオフィス環境の整備に対する意識が高まっているのかもしれない。また、「オフィスコストの削減」の回答割合が下がった一方、「従業員のモチベーション向上」が7.1ポイント、「オフィス環境の快適性向上」が5.0ポイント伸びており、コスト意識よりも従業員の満足度に関わる項目を重視する傾向がみられた。
【図表25】オフィス施策を実施する上での重視項目
「オフィス施策を実施する上での懸念事項/阻害要因」を聞いたところ、4割以上の企業が「コスト負担が重い」を選び、2017年春調査(41.8%)と同じく最多となった【図表26】。また、大都市圏におけるオフィス需給のひっ迫が続いていることから、「賃料水準の上昇リスク」に対する懸念が伸びていると思われる。
今回の調査では、「情報システム部門との調整」や「社内で横断的に推進する部署・担当者がいない」など、社内調整にかかわる項目が伸びていることに注目したい。人員増に対応するための拡張など、従来の面積を理由にしたオフィス施策ではなく、働き方改革を意識したオフィス施策を実施するにあたり、社内調整や推進役の不在など、進め方に苦労を感じているケースが増えているのかもしれない。
【図表26】オフィス施策を実施する上での懸念事項/阻害要因
<PICK UP>テレワークする場所の整備状況別にみる、
オフィスの1人あたり面積
従業員がテレワークする場所を整備している企業としていない企業で比較すると、オフィスの1人あたり面積に差がみられた【図表27】。
代表的な4つの取り組み全てについて、未導入の企業に比べ、導入済みの企業は1人あたり面積が小さいという結果になった。それぞれの取り組みによって従業員の働く場所が分散し、オフィススペースの効率化に影響を与えている可能性があると考えられる。
【図表27】テレワークする場所の整備状況別にみる、オフィスの1人あたり面積
(*1) サテライトオフィス … 主に従業員の移動時間等を考慮してターミナル駅至近や郊外などに設置する、主たるオフィスと同様の環境を整えたオフィス
(*2) 月極め/時間貸しといった契約内容の別は問わない
4.まとめ
[1-1. 利用人数、面積、賃料単価(共益費込)の変化]でもみてきた通り、過去1年における利用人数、面積、賃料単価、どの変化についても、企業の景況感に対応するように増え幅が減り幅を上回っており、堅調なオフィス需要が続いている。また、[3-1. 利用人数、面積の見通し]でも、今後の利用人数の変化と面積の意向ともに、「増える/拡張したい」が過去調査と比較してそれぞれ増えており、需要は今後も引き続き堅調に推移するものと考えられる。ただし、景況感に不安を感じている企業や、今後面積を「縮小したい」とする企業の割合がわずかながら増えているなど、一部対照的な動きもみられるため、今後の動向を注視したい。
【図表14】が示す通り、在宅勤務制度の整備は大幅に進んでおり、サードプレイスオフィス(*)の導入・活用も少しずつ進んでいる。テレワークする場所の整備状況を企業規模別にみた場合、大企業による取り組みが比較的進んでいるが、今回調査では、100人以上1,000人未満の中規模の企業による取り組みが、過去調査と比較して伸びていたことに着目したい【図表15】。政府としても働き方改革の実現に向け、テレワークを促進する施策を進めており、テレワークする場所の整備は今後も引き続き増えていく可能性がある。
一方、【図表26】をみると、オフィス施策を実施する上での懸念事項/阻害要因として、複数部署にまたがる社内調整や担当者の不在などの回答割合が増えており、従来よりもオフィス施策における課題が複雑化していることを示唆している。よりよい働き方を意識したオフィス施策は、その難易度が増し、かつ企業にとっても重要な経営戦略の1つになってきている。
【図表27】でみたような、働き方の多様化に伴う1人あたり面積の縮小も、オフィス需要に変化を与える材料となりうるだろう。オフィスで働く人員の増加が引き続き見込まれるなか、オフィス面積の需要も堅調に伸びが続くと想定される。その一方、固定的なオフィスに縛られない柔軟な働き方への移行は今後も加速していくと予想され、在宅勤務やレンタルオフィス、シェアオフィスなどの導入・活用が進めば、働く場所があらゆる場所に分散し、本社など従来のオフィススペースが縮小することになるかもしれない。人数などの量的変化に加えて、働き方改革といった社会的要因による、オフィス需要の質的変化にも注視していく必要があるだろう。
(*) サードプレイスオフィス … 会社のオフィスでも自宅でもなく、主に事業者がサービス提供するオフィススペース。サテライトオフィス、レンタルオフィス、シェアオフィス、モバイルワークオフィス、コワーキングスペースなどを含む。契約主体が会社か個人かは問わない。
調査時期
2018年4月
調査対象
・ザイマックスグループの管理運営物件のオフィスビルに入居中のテナント企業
・ザイマックスインフォニスタの取引先企業
上記合計 3,935社
有効回答数
1,250社 回答率:32%
調査地域
全国(東京都、大阪府、愛知県、福岡県、神奈川県、埼玉県、千葉県、その他)
調査方法
メール配信およびアンケート用紙配布による
調査内容
- 入居中オフィスについて
・ オフィス種類/所在地/契約面積/利用人数/手狭感/賃料単価(共益費込み) - オフィス利用の実態と変化(2017年4月〜2018年3月)
・ 居室内レイアウトの実態と変化
・ 働く場所の実態と変化、その理由
・ 利用人数の変化
・ 面積の変化とその内容・理由
・ 賃料単価の変化 - 今後のオフィス需要の見通し
・ 景況感
・ 利用人数の変化の見通し
・ 面積変化の意向とその内容・理由
・ 理想的なオフィスのあり方
・ オフィス施策の重視項目/懸念事項・阻害要因 - 会社属性
・ 業種/本社所在地/従業員数/設立年 - 回答者属性
・ 部署/役職/年代
回答企業属性(上段:%、下段:n)
レポート内のグラフに関して
・構成比(%)は、小数点第2位を四捨五入しているため内訳の合計が100%にならない場合がある。
・図表6・7・14・15・16・17は、回答数の多かった上位項目及び2017年春調査・今回調査での共通項目を抜粋して掲載している。
英語版:News & Research
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