2018.02.07
オフィスマーケットレポート 東京 2017Q4
- ・ 今期(2017年12月期)の東京23区オフィスマーケットは、空室率が3%を割り込み、2%台に突入し、需給のひっ迫感は依然続いている。新規成約賃料の一部指標に減速感がみられ、今後の動向が注目される。
- ・ 空室率は前期と比べ0.32ポイント下降して2.96%となった。空室増減量は減少が19.7万坪、増加が16.3万坪と空室の減少が増加を上回った。四半期ごとの空室在庫に対してどれだけ空室が減少したかを割合で示す空室消化率は右肩上がりの傾向で推移している。
- ・ 新規賃料の水準を示す新規成約賃料インデックスは前期から3 ポイント下落して106となった。新規賃料が上昇した物件の割合から下落した物件の割合を引いた成約賃料DIは前期と比べて4ポイント上昇して+17となった。
- ・ 新規賃料と継続賃料の両方を含む支払賃料インデックスは前期から3ポイント下落して89となった。
- ・ フリーレントあり契約の平均月数は3.6ヶ月と前期から0.3ヶ月増加した。フリーレント付与率は全区分で増加したものの、6ヶ月以上のフリーレント割合は低い水準となっている。
空室
図表1は、2011年から東京23区の空室率の推移である。2017年第4四半期の空室率は前期から0.32ポイント下降して2.96%となった。2012年第3四半期以降、空室率の下降傾向が続いており、ついに3%を切って2%台に突入した。
企業にとって手頃な区画サイズや価格帯の空室はすぐ埋まる状況が続いており、市場全体で空室が少なくなってきている。また、空室が発生しても館内増床で埋まるなど、外部に募集されないまま消化されることも多く、オフィス需要は引き続き堅調である。
【図表1】空室率
図表2は、四半期ごとの空室の増加面積と減少面積(空室増減量)の推移である。今期の空室増加は16.3万坪、空室減少は19.7万坪と2015年第1四半期以降12期連続して空室減少が増加を上回り、空室率の継続した低下につながっている。
今期は空室の増加量、減少量ともに前期よりもボリュームが減った。これは、市場に出回っている空室が少なくなっていることに起因すると考えられる。
【図表2】空室増減量
図表3は、四半期ごとの空室在庫(期初の空室在庫+期間中に発生した空室の総量)に対して、期間中に空室がどれだけ減少したかを割合で示す空室消化率(4四半期移動平均)である。
今期の空室消化率は前期からやや上昇し38.1%となった。緩やかな右肩上がりの推移が続いており、市場にある空室在庫の消化は依然順調であることがわかる。
【図表3】空室消化率(4四半期移動平均)
新規成約賃料
図表4は、新規賃料の水準を示す新規成約賃料インデックス(東京23区)の推移である。2017年第4四半期は106と前期の109から3ポイント下落した。新規成約賃料は2017年以降、上昇と下落を繰り返している。
【図表4】新規成約賃料インデックス
図表5は、規模別の新規成約賃料インデックスの推移である。延床面積5,000坪未満の中小規模ビルは106、延床面積5,000坪以上の大規模ビルは108と、どちらも3ポイント下落した。規模にかかわらず、新規成約賃料は伸び悩んでいる。
【図表5】規模別の新規成約賃料インデックス
図表6は、新規成約賃料の変化の方向性を示す成約賃料DI(東京23区)の推移である。今期は「+17」と、前期から4ポイント上昇した。新規賃料が上昇した物件が下落した物件より多い状態である成約賃料DIのプラス圏は11期連続となった。
【図表6】成約賃料DI
空室がほとんど見当たらないほど需給はひっ迫しているにもかかわらず、今期、新規成約賃料インデックスは下落した。賃料の上昇傾向は長く続いているものの、水準は低いまま推移し、高価格帯の空室はなかなかテナントがつかず、ファンドバブル時のような高騰はみられない。一方で、賃料単価の上昇・下落の件数を元にした成約賃料DIは未だプラス圏が継続していることから、市場全体での緩やかな賃料上昇は続いているといえる。テナントの中には今後の大量供給の影響を見極めてから移転したいといった動きもみられる。現時点では賃料が大きく下落する要素は少ないが、長く続いた賃料上昇局面がピークに近づいているのか、今後の動向が注目される。
支払賃料
図表7は、新規賃料と継続賃料の両方を含む支払賃料インデックス(東京23区)の推移である。
【図表7】支払賃料インデックス
2017年第4四半期は89となり、前期と比べ3ポイント下落した。2013年第3四半期以降、緩やかな上昇傾向を続けている。
フリーレント
図表8は、新規契約のうちフリーレントを付与した割合(付与率)と、フリーレント期間の平均値(平均フリーレント月数)の推移である。
【図表8】フリーレント
2017年第4四半期は、「全契約の平均フリーレント平均月数」が2.6ヶ月と前期から0.2ヶ月増加、「フリーレントあり契約の平均月数」が3.6ヶ月と0.3ヶ月増加した。
フリーレント付与率は全区分で増加したものの、6ヶ月以上のフリーレント割合は低い水準となっている。
マーケット循環
図表9は、横軸に空室率、縦軸に新規成約賃料インデックスをとって四半期ごとにプロットしたものである。
【図表9】マーケット循環
2001年以降右下方向(空室率上昇・賃料下落)に移動し、2003年から2004年の停滞期を経て、2005年以降左上方向(空室率低下・賃料上昇)へ移動し、2008年以降再び右下方向へ移動、とマーケットが循環しながら推移する様子が観察できる。
2013年以降オフィス賃貸マーケットは回復期に移行し、2017年時点でもその傾向は継続している。今期は空室率が低下、賃料が下落し、やや左下方向に移動した。
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