2017.05.02
オフィスマーケットレポート 東京 2017Q1
- ・今期(2017年3月期)の東京23区オフィスマーケットは、空室率の低下と成約賃料の上昇が継続している。しかし、空室率は3%台と需給のひっ迫感は強いものの、賃料の上昇は緩やかである。
- ・空室率は前期と比べ0.09ポイント下降して3.76%となった。空室増減量は、減少が27.6万坪、増加が25.8万坪と、空室の減少が増加を上回った。四半期ごとの空室在庫に対してどれだけ空室が減少したかを割合で示す空室消化率は右肩上がりで推移している。
- ・新規賃料の水準を示す新規成約賃料インデックスは108と前期と比べ1ポイント上昇した。また、新規賃料が上昇した物件の割合から下落した物件の割合を引いた成約賃料DIは+6とプラス圏で推移している。しかし、前期から今期は12ポイントと比較的大きく下落しており、今後の動向を注視したい。
- ・新規賃料と継続賃料の両方を含む支払賃料インデックスは88と前期と比べ2ポイント上昇した。
- ・平均フリーレント月数は2.6ヶ月と前期と比べ0.2ヶ月減少した。付与率は2ヶ月以上と6ヶ月以上で減少した。
空室
図表1は、2011年から東京23区の空室率の推移である。2017年第1四半期の空室率は前期から0.09ポイント下降して3.76%となった。2012年第3四半期以降、空室率の下降傾向が続いている。
図表1:空室率
空室率は3%台まで低下し、需給のひっ迫感は増している。社員が増加してオフィスを拡張したい企業は多く、空室が発生しても内部テナントの増床で決まるケースも多い。都心部での適当な空きスペースが減り、オフィス需要は周辺18区に広がっている。
図表2は、四半期ごとの空室の増加面積と減少面積(空室増減量)の推移である。今期は新規竣工の影響で空室増加が25.8万坪と前期から5万坪近く増えたが、それを約2万坪上回る27.6万坪の空室減少があり、オフィス需要の強さがみられた。2015年第1四半期以降、9期連続して空室増加を超えるオフィス需要(空室減少)が続き、空室率の継続的な低下につながっている。
図表2:空室増減量
図表3は、四半期ごとの空室在庫(期初の空室在庫+期間中に発生した空室の総量)に対して、期間中に空室がどれだけ減少したかを割合で示す空室消化率(4四半期移動平均)である。この数値が高ければ空室があっても順調にテナント入居が進み、一方で低い場合はテナント誘致が進まず空室が滞留している状態にあるといえる。
図表3:空室消化率(4四半期移動平均)
図表3をみると、空室消化率は緩やかな右肩上がりで推移し、市場にある空室在庫の消化が徐々に早くなっている様子がみえる。
今後、市況の変化とともに空室消化率の水準自体がどのように推移するか、当指標についても定期的にみていくこととする。
新規成約賃料
図表4は、新規賃料の水準を示す新規成約賃料インデックス(東京23区)の推移である。2017年第1四半期は108と前期の107から1ポイント上昇し、新規成約賃料は2012年第2四半期の76をボトムに上昇傾向が続いている。需給がひっ迫する中で新規成約賃料の上昇傾向は続いているが、今期の上昇幅はわずかである。
図表4:新規成約賃料インデックス
図表5は規模別の新規成約賃料インデックスの推移である。延床面積5,000坪未満の中小規模ビルは107、延床面積5,000坪以上の大規模ビルは109とそれぞれ前期と同値であった。
図表5:規模別の新規成約賃料インデックス
大規模ビルでは、残りわずかとなった空室を高値で募集する動きがみられたが、成約ベースの賃料水準に大きな変化はみられない。中小規模ビルも横ばいであったが、内訳をみると周辺18区では比較的大きく上昇しており、需要の広がりに伴い賃料が徐々に切りあがっている様子がうかがえる。
図表6、図表7は、新規成約賃料の変化の方向性を示す成約賃料DI(東京23区、都心3区)の推移である。今期は、東京23区は「+6」と前期から12ポイント下落、都心3区は「+5」と前期から10ポイント下落した。成約賃料DIは8期連続してプラス圏にあり、新規賃料が上昇した物件が下落した物件より多い状況で推移している。
図表6:成約賃料DI(東京23区)
図表7:成約賃料DI(都心3区)
一般的に不動産市況は景気に遅行すると言われているが、成約賃料DIは景気を示す指標と連動性が高く、不動産市況を示す指標の中で先行指数として活用できる*。
そこで、成約賃料DI(23区)の過去の推移をみると、前期から10ポイント以上下落したのは2014年第4四半期(13ポイント下落)以来となる。この時のDIは「-2」と、賃料が下落した物件が多いマイナス圏となり、次期(2015年第1四半期)には新規成約賃料インデックスが94から92へ下落した。
今期のDIは「+6」と依然プラス圏で、全体として賃料単価が上がっている物件が多い状態にある。空室率も3%台と低く、DIがマイナスになった2014年第4四半期と状況は異なる。しかし、DIが12ポイントと比較的大きく下落して、転換点の0ラインに近づいてきたことから、今後のマーケット動向を注視したい。
支払賃料
図表8は新規賃料と継続賃料の両方を含む支払賃料インデックス(東京23区)の推移である。
図表8:支払賃料インデックス
2017年第1四半期は88となり、前期と比べ2ポイント上昇した。2013年第3四半期以降、緩やかな上昇傾向を続けている。入居時の新規賃料の上昇だけでなく入居しているテナントの賃料値上げが行われており、支払賃料の上昇につながっている。
フリーレント
図表9は、新規契約のうちフリーレントを付与した割合(付与率)と、フリーレント期間の平均値(平均フリーレント月数)の推移である。
図表9:フリーレント
2017年第1四半期の平均フリーレント月数は、全契約平均が2.6ヶ月、フリーレントあり契約平均が3.8ヶ月と、それぞれ0.2ヶ月、0.4ヶ月減少した。また、フリーレント付与率は2ヶ月以上、6ヶ月以上が減少した。
需給のひっ迫を反映したフリーレントの短期化や付与率の低下傾向は続き、特に「6ヶ月以上」の付与率が大きく減っている。
マーケットの循環
図表10は、横軸に空室率、縦軸に新規成約賃料インデックスをとって、四半期ごとにプロットしたものである。
図表10:マーケット循環
図上では、2001年以降右下方向(空室率上昇・賃料下落)に移動し、2003年から2004年の停滞期を経て、2005年以降左上方向(空室率低下・賃料上昇)へ移動し、2008年以降再び右下(空室率上昇・賃料下落)方向へ移動、とマーケットが循環しながら推移する様子が観察できる。
2013年以降オフィス賃貸マーケットは回復期に移行し、2017年時点でもその傾向は継続している。今期も新規成約賃料が上昇、空室率が低下したため、やや少し左上方へ移動した。
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