テナント

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2014.12.02

オフィスの利用に関するアンケート調査2014

~テナント企業によるオフィスの利用実態とオフィスビルに対するニーズ~

ザイマックス不動産総合研究所(以下、ザイマックス総研)では、ザイマックスグループが運営するオフィスビルに入居しているテナント企業を対象にヒアリングやアンケート調査を継続的に実施している。今年度は、企業におけるオフィスの利用実態とオフィスビルに対するニーズに関するアンケート調査を実施した。本リリースでは、その結果について集計、とりまとめたものを報告する。 なお、今回のアンケート結果を基に今後も更なる分析を続け、企業の利用実態やニーズ、オフィスに対する考え方などについて、より発展した情報提供を行っていく予定である。
オフィスの利用実態
■オフィスのレイアウト: オフィスにおける執務スペース以外の利用では、会議室として利用している企業が約9割と最も多く、受付スペースが7割、書庫・倉庫が6割弱と続く。オフィス面積全体に占める執務スペースの割合は7割と答えた企業が最も多かった ■入居人数の増減: 2013年以降、入居人数が増加したと答えた企業は4割、減ったと答えた企業は1割。オフィス面積が適当でないと感じている企業が一定数みられる ■オフィス環境(ワークスタイルの多様化やICTの導入): モバイルワーク、無線LANを導入している企業が7割、WEB・TV会議の導入が5割など、ICTの活用が進んでいる ■防災対策: 水の備蓄をしている企業は6割、食糧は5割。そのほかの防災対策の実施率は半数に満たない ■省エネ・節電対策: クールビズ・ウォームビズを実施している企業が7割と最も高い。無理をしない省エネ・節電の実態がみえる

オフィスビルに対するニーズ

■ビルを選択する際に重視する項目: 賃料の安さ、最寄駅からの近さ、ビルの耐震性、ビルの清掃衛生・維持管理状態と続く ■賃料が上がってもビル側で備えてほしい設備・機能: 免震・制震、停電時の電力供給、防災用の備蓄品など安心・安全に関する項目のほか、駐輪場や貸会議室など、利便性に関する項目があげられた
調査の概要

調査期間

2014年9月~同年10月

調査対象

ザイマックスグループが管理するオフィスビルに入居中のオフィステナント企業のうち 2,379社

回答結果

1,107社(回答率:46.5%)

調査地域

首都圏(東京都、川崎市、横浜市、さいたま市)、名古屋市、大阪市、福岡市

調査方法

WEBおよびアンケート用紙配布による

調査内容

・主な利用形態(内勤型・外勤型・来客型) ・オフィスのレイアウト ・執務スペースの割合と入居人数 ・2013年以降の入居人数の増減とその理由 ・オフィスの手狭感 ・レイアウトの課題 ・ワークスタイルに影響するオフィス環境への取り組み、 その目的、課題、賃借面積の変化の有無 ・オフィスの防災対策 ・省エネ・節電を含む環境対策 ・標準内装の変更の有無 ・ビルを選ぶ際の重視項目と入居中のビルにおいて充足していない項目 ・賃料が上がってもビル側で備えてほしい設備・機能 ・企業不動産専任部署・担当者の有無

アンケート回答企業の基本データ・属性

エリア 首都圏617社(56%)、名古屋市173社(15%)、 大阪市162社(15%)、福岡市155社(14%)
入居面積規模 110坪(中央値)
オフィスの 利用形態 内勤型(外出が少なく、社内で仕事をする内勤者が多い) 518社(47%)
外勤型(主に現場や取引先などに外出することが多く、内勤者が少ない) 474社(43%)
来客型(お客様の来社が多い) 112社(10%)

オフィスの利用実態

レイアウト

オフィスにおける執務スペース以外の利用では、会議室として利用している企業が9割と最も多く、受付スペースが7割、書庫・倉庫が6割弱と続く。 オフィス面積全体に占める執務スペースの割合は7割と答えた企業が最も多かった

オフィスにおける執務スペース以外の利用では、会議室・応接室を設置していると答えた企業の割合が9割と最も高く、次いで受付スペースが7割、書庫・倉庫が6割弱であった。その他、更衣室、サーバールーム、リフレッシュスペース、社長・役員室と続く(図表1)。喫煙室は約1割と低いが、これは設置にコストがかかり、費用のハードルが高いことによるところが大きいと思われる。

また、オフィス全体の面積に占める執務スペースの割合は7割程度と答えた企業が最も多かった(図表2)。

[図表1] 執務スペース以外に利用しているスペース(複数回答)

[図表1] 執務スペース以外に利用しているスペース(複数回答)

[図表2] オフィス面積全体に占める執務スペース割合

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入居人数の増減

2013年以降、人数が増加したと答えた企業は4割で、減ったと答えた企業は1割であった。オフィス面積が適当でないと感じている企業が一定数みられる

一般的にオフィスで働く人数の増減にあわせ、必要とするオフィスの面積も増減する。2013年1月以降における入居人数の増減について聞いたところ、増えたと答えた企業が4割で、減ったと答えた企業は1割であった。(図表3)。

人数が変化したと答えた企業のうち、その理由として、中途採用を挙げた企業が5割と最も多かった(図表4)。新規事業や業務量の増加に伴い、新規・中途採用のほか、派遣社員を増やしたという答えも複数見られた。また、現在のオフィス面積については、ちょうど良いと感じている企業が5割強あったのに対し、狭い広いなど、面積が適当でないと感じている企業が4割強あった。入居人数の増減と賃借面積の増減のタイミングを完全に一致させることは難しいためだと考えられる(図表5)。 エリア別にみると、首都圏、名古屋市、大阪市、福岡市全てのエリアで人数が増えたと答えた企業の割合が多く、減ったと答えた企業の割合を上回った。エリアにかかわらず、オフィスで働く人数が増えている実態がうかがえる。

[図表3] 入居人数の変化(2013年1月以降)

[図表3] 入居人数の変化(2013年1月以降)

[図表4] 入居人数の変化の理由(複数回答)

[図表4] 入居人数の変化の理由(複数回答)

[図表5] オフィスの手狭感

[図表5] オフィスの手狭感

オフィス環境(ワークスタイルの多様化やICTの導入)

モバイルワーク、無線LANを導入している企業が7割、WEB・TV会議の導入が5割など、ICTの活用が進んでいる

雇用形態の多様化やICT(情報通信技術)などの急速な技術革新により、オフィスでのワークスタイルが様々に変化している。そんな中、企業のオフィス環境は、人材・採用戦略や生産性向上の観点からも重要であることから、その実態について調査した。

企業で導入、提供する様々な設備、仕組、制度などについて聞いたところ、導入、あるいは導入検討している割合(している、していないが検討しているの合計、以下同様)が最も高いものは独自のセキュリティシステム(69%)であった。そのほか、オフィス以外の場所で仕事ができるモバイルワークオフィス内での無線LAN会議資料のペーパーレス化業務システムのクラウド化などは半数以上が取り組んでおり、ICTの活用が進んでいる(図表6)。一方、働き方が大きく変わるようなフリーアドレス在宅勤務の導入率は低く、今後の導入意欲も低い。 なお、導入目的は、業務効率化が約9割、次にコスト削減が約5割と続き、業績アップコミュニケーションの向上といった項目を上回った。取り組みの実態と合わせると、現実的な効果が見込めるような項目に優先的に取り組んでいる姿が浮かび上がる。また、各取り組みの結果、2割の企業がオフィスの面積や使い方に変化があったと答えた。

[図表6] オフィス環境(ワークスタイルの多様化やICTの導入)の取り組み

[図表6] オフィス環境(ワークスタイルの多様化やICTの導入)の取り組み

(注) ICT関連としたものに*を付けた

防災対策

水を備蓄している企業は6割、食糧の備蓄は5割、そのほかの防災対策の実施率は半数に満たない

オフィスでの防災対策について聞いたところ、水の備蓄をしている企業は63%、食糧を備蓄している企業は54%となり(図表7)、比較的対策が進んでいる様子がうかがえる。一方で、災害発生前の事前対策として従業員にヘルメットを配布している企業、家具や什器の固定をしている企業などは4割程度と、半数に満たない。オフィスに留まる際に必要性が高い簡易トイレの備蓄なども実施率が3割程度と低く、水・食糧の備蓄以外の実施率は低いことが分かった。また、BCP(事業継続計画)は災害後の復旧対策の一環となるが、その策定をしている企業は23%に留まった。

なお、2013年にザイマックス総研で実施したオフィスの防災アンケート調査2013*1においても同様の調査を行ったが、今回の調査結果は当時と同水準であり、防災に関する取り組みは大きく進んでいるとはいえない。

[図表7] オフィスでの防災対策(複数回答)

[図表7] オフィスでの防災対策(複数回答)

*1 2013年10月24日公表「オフィスの防災アンケート調査2013」参照

省エネ・節電対策

クールビズ・ウォームビズの実施が7割と最も高い。無理をしない省エネ・節電実態がみえる

オフィスの省エネ・節電対策について、以下図表8の項目について実施の有無を聞いたところ、省電力化されたPCやOA機器への買い替え、LEDの導入など、コストを伴う対策の実施率は低く、逆にクールビズ・ウォームビズや扇風機の併用、残業時間の削減、照明の間引き、昼休みの消灯、エアコンの運転時間などのルールを決めているといった、コストのかからない対策の実施率は高かった。無理をしない省エネ・節電行動が定着している実態がみえる。

なお、テナントが使用する電力量については、ザイマックス総研が公表するオフィステナント電力量調査*2で四半期毎にまとめている。これによると、テナントの電力使用量については震災前の2010年と比べ、約10~20%減の傾向が継続していることが分かっている。

[図表8] オフィスでの省エネ・節電対策(複数回答)

[図表8] オフィスでの省エネ・節電対策(複数回答)

*2オフィステナント電力量調査(2014年9月まで) 2014年12月リリース予定

ビルを選択する際に重視する項目

賃料が安いこと、最寄駅からの近さ、ビルの耐震性、ビルの清掃衛生・維持管理状態などが重視される

今後、オフィスビルを選ぶ際の重視項目については、1.賃料が安いこと(大変重視する、ある程度重視するの合計、以下同様)が98%、2.最寄駅からの近さが96%、3.ビルの耐震性が95%のほか、4.ビルの清掃衛生・維持管理状態95%、5.貸室内のレイアウトのしやすさ94%などが非常に高い結果となった(図表9)。一般的にビルは「近・新・大」がまず評価されるというが、15.ビルの築年数21.ビル全体の規模(大規模であること)大変重視すると答えた企業は少なく、より優先して重視される項目は多岐にわたることが分かった。

[図表9] 入居中テナントによるビル選択の際、重視する項目

[図表9] 入居中テナントによるビル選択の際、重視する項目

賃料が上がってもビル側で備えてほしい設備・機能

免震・制震、停電時の電力供給、防災用の備蓄品など安心・安全に関する項目のほか、駐輪場や貸会議室など、利便性に関する項目があげられた

ビル選択時においてほぼすべての企業が賃料が安いことを重視する一方で、多少、賃料が上がったとしてもビル側で備えてほしい設備や機能として、免震・制震46%、停電時の電力供給(自家用発電機の設置等)32%、防災用の備蓄品26%など、安心・安全に関する項目が挙げられた(図表10)。上記項目に次いで、トイレのグレード感のほか、駐輪場や貸会議室といった利便性に係わる項目など、多岐にわたる。

[図表10] 賃料が上がってもビル側で備えてほしい設備・機能(複数選択)

[図表10] 賃料が上がってもビル側で備えてほしい設備・機能(複数選択)
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