マーケット指標

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2014.01.06

オフィスビルのダウンタイム(空室期間)調査

~入居が決まった区画のダウンタイム(空室期間)は何日あったか。ザイマックスにて調査~

オフィスビルにおいて収益のロスとなる「ダウンタイム(空室期間)」はビルオーナーを始め、投資家など様々な不動産プレーヤーの関心事であるものの、その実態を表したデータや指標は見当たらない。そこで、ザイマックス不動産総合研究所では、オフィスビルにおけるダウンタイムの実態を捉えるべく、その調査を行った。 今回の調査では、2012年度に入居が決まった区画において、前テナントの契約が終了した後、新規契約が開始するまで何日かかったのかを調査するとともに、ダウンタイムの特徴などを分析した。
主な調査結果
  • ・2012年度中に契約が開始した区画のダウンタイム
  • 東京23区:98.5日(約3.3ヶ月)
  • その他地域:196.0日(約6.5ヶ月)
  • →東京23区のうち、都心5区は「90.5日(約3.0ヶ月)」、5区以外は「121.5日(約4.0ヶ月)」
  • ・東京23区においてダウンタイム「0(なし)」は約17%また、約5割の区画においてダウンタイムは「3ヶ月以内」
  • ・ダウンタイムの特徴
  • →新耐震ビルは旧耐震ビルと比較してダウンタイムが短い
  • →契約面積の大小とダウンタイムの長短には特に関連性は認められない

※本レポートに関して、以下の誤りがございましたので訂正いたします(2017年12月8日)。
 【図表3】1年-2年の割合 東京23区(20.1%→13.4%)その他(28.2%→10.8%)
 【図表4】1年-2年の割合 都心5区(22.4%→14.7%)5区以外(14.6%→10.4%)
 【図表5】1年-2年の割合 新耐震(15.8%→10.1%)旧耐震(44%→32%)

ダウンタイム(空室期間)とは、前テナントの契約終了から新テナントの契約が開始するまでの期間であり、いわば賃貸借契約の空白期間である。この期間中は収益がない状況であり、その実態を把握することは、不動産投資や不動産鑑定において、収益性や価値に対するインパクトを考察する上での重要な指標となる。なお、契約開始後も当初数ヶ月はフリーレントが付与されるケースもあるため、当該区画の未収入期間としては、ダウンタイムとフリーレントの合計期間となる。また、通常、オフィスの場合には、解約予告が6ヶ月前に提出され、その後、準備期間を経て募集されることとなるので、テナントが決まるまでのマーケティング期間としては、募集を開始してから成約までの期間となる。

現在、ザイマックス不動産総合研究所ではダウンタイムに関する発展的調査を継続中であり、今後とも不動産マーケットを多面的に把握する一助となるデータを提供したいと考えている。

「ダウンタイム(空室期間)」調査概要

ザイマックスグループが運営する全国のオフィスビルにおいて、2012年度内に新規入居が開始した区画のみ対象。したがって、2012年度末時点で空室のものは含まれていない(図表1)。

[図表1] 2012年度のダウンタイム算出方法

[図表1] 2012年度のダウンタイム算出方法

同一の区画に直近で入居していたテナントの契約を遡って調査し、空室期間(前契約の契約終了日と最新契約の契約開始日の間の日数)を算出した(図表1参照)。対象となる事例は360件で、そのうち東京23区は164件。本調査ではそれらの中央値を採用したものをダウンタイムとした。※フリーレント期間は、新規契約開始後のものであるため、当該ダウンタイムには含まれない。

(参考)中央値と平均値

図表2は2012年度におけるダウンタイム(全国)の分布を表したものであるが、データの7割が「1年以内」に偏っている一方で、長いものは「3年」「4年」となっている。平均値はこれらダウンタイムの長いデータによって引き上げられている。そのため、本調査では中央値を用いてダウンタイムの実態を捉えることとした。

[図表2] 2012年度におけるダウンタイムの分布(全国)

[図表2] 2012年度におけるダウンタイムの分布(全国)

2012年度、東京23区のダウンタイムは98.5日(約3.3ヶ月)

2012年度における全国のダウンタイムを調査した結果、地域別に見ると東京23区は中央値が98.5日(約3.3ヶ月)、その他の地域では196日(約6.5ヶ月)であった(図表3)。 分布を見ると東京23区では16.5%の区画においてダウンタイムが「なし」、つまり前テナントの契約終了前までに次のテナントが決まっていることがわかる。さらに、ダウンタイムが発生している場合においても32.9%の区画は3ヶ月以内に次の契約が開始しており、約半数の区画において空室が比較的短期間のうちに解消されていることがわかる。 一方で東京23区以外の地域においてはダウンタイムが長期に渡るケースが少なくなく、地域差が認められた。

[図表3] 2012年度ダウンタイム(東京23区・その他地域)

東京23区 その他
中央値 98.5 196.0
ダウンタイムなし 16.5% 11.3%
ダウンタイムあり 3ヵ月以内 32.9% 22.1%
3〜6ヵ月 16.5% 14.4%
6ヵ月〜1年 14.0% 24.1%
1年〜2年 13.4% 10.8%
2年以上 6.7% 17.4%

立地によるダウンタイムの違い-都心5区/5区以外-

東京23区のオフィスビルを都心5区/5区以外に分類して比較したところ、都心5区のダウンタイムは90.5日(約3.0ヶ月)と、5区以外の121.5日(約4.0ヶ月)より短い結果となった(図表4)。但し、内訳を見ると5区以外の物件においても「ダウンタイムなし」のケースは多いことが分かる。

[図表4] 2012年度ダウンタイム(都心5区・5区以外)

都心5区 5区以外
中央値 90.5 121.5
ダウンタイムなし 14.7% 20.8%
ダウンタイムあり 3ヵ月以内 37.1% 22.9%
3〜6ヵ月 13.8% 22.9%
6ヵ月〜1年 12.1% 18.8%
1年〜2年 14.7% 10.4%
2年以上 7.8% 4.2%

新耐震/旧耐震ビルにおけるダウンタイムの違い

次に、東京23区の事例を用いて特徴を調査した。まず、対象のオフィスビルを竣工年より、新耐震基準/旧耐震基準に分類して比較を行った結果が図表5である。ダウンタイムが1年以内であった事例は新耐震ビルである割合が高く、逆に1年を超えるものについては旧耐震ビルである割合が高いことがわかる。

[図表5] 新耐震、旧耐震(東京23区/2012年度)

契約面積によるダウンタイムの違い

契約区画の賃貸借面積とダウンタイムには何らかの傾向が見られるのか。その相関関係を表したものが図表6の散布図である。契約面積の大小とダウンタイムの長短には特に関連性が認められなかった。

[図表6] 契約面積とダウンタイム(東京23区/2012年度)

[図表6] 契約面積とダウンタイム(東京23区/2012年度)
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