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2013.09.19

東京23 区 1人あたりオフィス面積調査(2012 年)

~1人あたりオフィス面積は約4坪、業種により幅~

ザイマックスは、企業のオフィス利用実態を把握するため、東京23区に所在するオフィスビルに入居するテナント企業を対象に、賃借面積と利用人数について調査を行った。 本調査で得られたデータを用い、一般的なオフィスにおける利用者1人あたりの賃借面積(以下「1人あたりオフィス面積」)について分析した。また、業種別の1人あたりオフィス面積の違いについても比較した。
調査結果

対象:東京23区所在のオフィスビルに入居するテナント企業延べ3,503社(2009~2012年)

1人あたりオフィス面積は約4坪でここ数年横ばい

  • ・2009年3.91坪
  • ・2010年3.95坪
  • ・2011年4.00坪
  • ・2012年3.96坪

テナントの業種により、1人あたりオフィス面積は異なる

  • ・金融・保険業4.36坪
  • ・学術研究、専門・技術サービス業4.41坪
  • ・製造業4.16坪
  • ・情報通信業3.36坪
  • ・サービス業(他に分類されないもの)3.48坪
  • (※2012年)

テナントは、拡張・縮小により狭すぎる、広すぎる状況を改善している

  • ・【拡張】 前3.05坪 → 後3.72坪
  • ・【縮小】 前4.24坪 → 後3.38坪
  • (※ビル内での拡張・縮小の場合。ビル外へ退去したケースは含まない)

昨今、経営資源の最適配分および企業価値最大化を目的とした「企業不動産の最適・最有効活用(CREマネジメント)」の重要性が指摘されているが、本調査で提示した「1人あたりオフィス面積」は、企業がオフィスという不動産を効率的に利用する上での目安となることが期待される。

今後、ザイマックスは、本調査の対象範囲を広げ、さらなるデータ分析を進めるほか、調査結果を活用し、オフィスを賃借する企業へのコンサルティングやオフィスビルの収益維持・向上、オフィス市況の動向分析に役立てていく。
調査の概要

調査期間

2009年から2012年(年に1度)

調査対象

東京23区のオフィスビルに入居する一般事務所用途テナント

有効データ数

3,503テナント(調査期間延べ) 2009年:829 2010年:871 2011年:894 2012年:909

備考

面積は賃借面積(実効面積ベース)。執務室の他、エントランス(受付)、会議室、休憩室、書庫、倉庫、専用部内廊下などが含まれている
人数はテナントから「利用人数」として回答のあった数字

1人あたりオフィス面積の計算方法

図表1は、各調査対象テナントの賃借面積を利用人数で割った数値の分布である(2012年909テナント)。横軸は面積÷人数の階級、縦軸は階級内のテナント数の割合である。 2坪から4坪の間にテナントのほぼ半分が集まる一方で、7坪を超えるテナントが1割程度あることから平均値は4.48坪となった。これはオフィスビル経営の実感値に比べてやや大きく感じられる。 そこで本調査では、中央値(※1)を採用して「1人あたりオフィス面積」とした。2012年は3.96坪であった(半分の454テナントは3.96坪より小さく、もう半分の454テナントは3.96坪より大きい)。

※1 中央値

データを小さい順にならべたときに中央に位置する値。中央値では、ちょうど半分のデータが中央値より小さく、もう半分が中央値より大きい。平均値に比べ外れ値の影響を受けにくく、年収など左右非対称の分布の代表値として用いられる(左右対称の分布の場合、平均値=中央値となる)。

[図表1] 1人あたりオフィス面積の分布(2012年)

[図表1] 1人あたりオフィス面積の分布(2012年)

「1人あたりオフィス面積」の年別推移を示したものが図表2である。2009年から2012年にかけて、4坪程度で横ばいに推移しており大きな変化は見られない。

[図表2] 1人あたりオフィス面積の推移(2009~2012年、東京23区)

[図表2] 1人あたりオフィス面積の推移(2009~2012年、東京23区)

業種による1人あたりオフィス面積の違い

図表1で示したように、1人あたりオフィス面積には大きなばらつきがある。そこで、ビジネスモデルやワークスタイルに差があると思われる「業種」別に、1人あたりオフィス面積の違いをみた。 調査対象テナントを経済産業省の日本標準産業分類(大分類)に基づいて分類し、うち5業種(「金融業・保険業」、「学術研究、専門・技術サービス業(※2)」、「製造業」、「情報通信業」、「サービス業他に分類されないもの(※3)」)について、1人あたりオフィス面積を比較している(図表3)。

[図表3] 業種別の1人あたりオフィス面積の比較(2012年、東京23区)

[図表3] 業種別の1人あたりオフィス面積の比較(2012年、東京23区)

※2 学術研究、専門・技術サービス業

弁護士事務所、会計事務所、広告代理業、経営コンサルタント業など

※3 サービス業(他に分類されないもの)

職業紹介・労働者派遣業、政治・経済・文化団体、警備業・ビルメンテナンス業など
金融業・保険業 学術研究、 専門・技術サービス業 製造業 情報通信業 サービス業 (他に分類されないもの) 東京23区 全体
2009 4.11 3.96 4.30 3.29 3.99 3.91
2010 4.52 4.16 4.23 3.10 3.66 3.95
2011 4.38 4.41 4.13 3.20 3.51 4.00
2012 4.36 4.41 4.16 3.36 3.48 3.96
東京23区全体(2012年:3.96坪。以下同じ)と比べ、「金融・保険業(4.36坪)」「学術研究、専門・技術サービス業(4.41坪)」「製造業(4.16坪)」は大きく、「情報通信業(3.36坪)」「サービス業(他に分類されないもの)(3.48坪)」は小さい傾向にあり、業種により違いがあることがわかる。 「金融・保険業」や、経営コンサルタント、弁護士、会計士といった「学術研究、専門・技術サービス業」は、顧客や取引先がオフィスを訪れたときの印象を重視して、エントランスや応接室などをゆったりとしたレイアウトにすることが多い。また、「製造業」は製品関連のスペースを必要とするため1人あたりのオフィス面積が比較的大きいと考えられる。 一方で「情報通信業」や職業紹介・労働者派遣といった「サービス業(他に分類されないもの)」は、業務のIT化が進んでいることもあり机も小さく、資料や商品の占めるスペースが少なくてすむため、1人あたりオフィス面積が小さいと考えられる。 東京都心5区(千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区)ごとにみても、東京23区全体に比べ、千代田区が10%程度大きく、新宿区が15%程度小さく、渋谷区が11%程度小さいという結果となった(図表4)。これは、区によって集積している業種に特徴があるためと考えられる。千代田区の「金融業・保険業」「学術研究・専門技術サービス業」(経営コンサルタント、弁護士、会計士など)、新宿区の「サービス業(他に分類されないもの)」(職業紹介・労働派遣業など)、渋谷区の情報通信業などである。

[図表4] オフィスビルの立地別(都心5区)の1人あたりオフィス面積の比較(2012年、東京23区)

[図表4] オフィスビルの立地別(都心5区)の1人あたりオフィス面積の比較(2012年、東京23区)
千代田区 中央区 港区 新宿区 渋谷区 東京23区 全体
2009 4.25 3.95 3.93 3.77 3.53 3.91
2010 4.25 4.14 4.02 3.42 3.45 3.95
2011 4.00 4.28 4.04 3.20 3.85 4.00
2012 4.39 4.00 4.02 3.40 3.52 3.96

拡張前後、縮小前後の1人あたりオフィス面積の変化

2009年から2012年にかけて、入居しているビル内で賃借面積を拡張または縮小したテナントを抽出し、その前後の1人あたりオフィス面積を比較した(図表5)。 拡張前の1人あたりオフィス面積は3.05坪と小さかったが、拡張後は3.72坪と2割程度増えている。一方で、縮小前は4.24坪と大きかったが、縮小後3.38坪と2割程度減っている。 テナントは「狭すぎる」、「広すぎる」状況を拡張・縮小によって改善している様子が見て取れる。

[図表5] 拡張前後、縮小前後の1人あたりオフィス面積の比較(2009~2012年、東京23区)

[図表5] 拡張前後、縮小前後の1人あたりオフィス面積の比較(2009~2012年、東京23区)
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