生成AIが変える就活生の仕事選びの基準
人手不足問題の解決に向けて(第11回)
はじめに
ザイマックス総研は、労働市場の人手不足に問題意識を持ち、2023年より「人手不足問題の解決に向けて」シリーズを公表してきた。本シリーズでは職業を「デスクワーク」と「ノンデスクワーク」に区分し、今後は特にノンデスクワークの労働需給ギャップが拡大し、社会維持に深刻な影響を及ぼす可能性を指摘してきた。
ノンデスクワークの人材不足には、人口減少や高齢化といった構造的要因が存在する。一方で、デスクワーク領域では生成AIをはじめとするデジタル技術の進展により、定型・非定型を問わず業務の自動化が急速に進みつつある。すでにDX(デジタルトランスフォーメーション)化が先行する米国のIT企業等では、将来の労働需要をシビアに見極めた雇用調整や採用抑制の動きが顕在化している。日本国内においても、深刻な人手不足を背景に、自動車整備士や建設従事者といった現業系職種の賃金水準が一般的な事務職を上回る「逆転現象」が一部で起き始めており(*1)、職種間の相対的な価値に変化が生じている。
これまで日本の雇用慣行は、メンバーシップ型雇用と新卒一括採用を基盤とし、大学卒業者の多くを事実上デスクワーク前提のキャリアパスへと誘導してきた。しかし、デスクワークの将来的な需要に不透明感が漂い、相対的にデジタル代替が困難なノンデスクワークの社会的・経済的価値が見直されるのであれば、若年層の職業選択行動にも変化が生じるかもしれない。長らく日本社会で定着してきた「大卒=デスクワーク」というキャリアの前提が、今まさに揺らぎつつあるといえる。
実際、2025年9月に行ったオフィスワーカー意識調査では、社会変化を踏まえた現実的な選択肢として、ノンデスクワークを検討する層が一定程度存在することが判明した(*2)。特にこの傾向は、DX化の影響を肌身で感じている若年層において顕著であり、技術進展が個人のキャリア観やリスク認識を直接的に変容させている様子が示唆された。
本レポートでは、こうした構造変化の最前線に立つ「ワーカー予備軍」である就活生(大学生・大学院生)を対象としたアンケート調査(*3)を基に分析を行う。彼らがDX化による仕事への影響をどう認識し、ノンデスクワーク就業に対してどのような関心やハードルを感じているのかを明らかにすることは、持続可能な労働市場のあり方を検討するうえで重要な示唆を与えるであろう。
*1 出所:リクルートワークス研究所「『稼げる仕事』の変化―二極化するブルーカラーの賃金上昇」
*3 2026年3月12日公表「首都圏就活生の企業選びに関する意識調査2026」
1. DX(デジタルトランスフォーメーション)の影響
本章では、DXが個人に与える影響に注目した。
まず、普段の生成AIの利用状況を聞いた結果、「ほぼ毎日利用している」「週に数回程度利用している」「月に数回程度利用している」のいずれかと回答した割合は合計81.7%となった【図表1】。現代の就活生は、仕事に就く以前から生成AIを日常的に利用している世代であるといえる。
【図表1】生成AIの利用状況
次に、就職後、DX化(生成AI活用やロボット導入など)による自身の仕事やキャリアへの影響があると思うかを聞いた。その結果、「(やや)影響があると思う」と回答した割合は合計72.2%で、「(あまり)影響はないと思う」(合計9.3%)を大きく上回った【図表2】。就活生の大多数は、仕事に就く以前から、社会変化による自身のキャリアの予測困難さを感じているといえるだろう。
【図表2】DX化による自身の仕事やキャリアへの影響
DX化による自身の仕事やキャリアへの影響について、【図表1】でみた生成AIの利用状況別に比較すると、利用頻度が高い層ほど「(やや)影響があると思う」の回答割合が高いことがわかった【図表3】。生成AIを「ほぼ毎日利用している」と回答したグループでは合計87.4%に上り、「ほぼ利用していない/利用したことがない」グループ(46.8%)とは大きな差がみられた。
【図表3】<生成AIの利用状況別>DX化による自身の仕事やキャリアへの影響
【図表2】で「(やや)影響があると思う」と回答した人に対して、その具体的な内容を自由記述で聞いたところ、いくつかのタイプが確認された。最も件数が多かったのは、テクノロジーによる失業への懸念である。今回の調査では、就職活動における志望業界・職種は把握していないものの、日本の雇用慣行を踏まえると、調査対象者の多くはデスクワーク職に就くことを想定していると考えられる。そのため、デジタル技術の進展による将来の労働需要の変化に対し、強い危機感を抱いている様子がうかがえる。
以下に、タイプごとの代表的な回答例を記載する。

2. 仕事選びの変化と、ノンデスクワークへの興味
将来的にノンデスクワークに従事することへの興味度を聞いた結果、「(やや)興味がある」と回答した人は合計50.8%と過半数に達し、「(あまり)興味がない」(27.1%)を大きく上回った【図表4】。2025年にオフィスワーカーを対象として実施した調査では、「(やや)興味がある」の合計は35.3%であり、それよりも就活生の方が高い割合となっている。
【図表4】将来的にノンデスクワークに従事することへの興味度
この結果を、DX化による仕事やキャリアへの影響(【図表2】)別に比較すると、DX化の影響を強く感じている層ほど、ノンデスクワークに興味を示す割合が高い傾向がみられた【図表5】。
デジタル技術の進展は、知的業務の効率化や自動化を通じてデスクワークの労働需要の構造を変化させる可能性がある。その影響を強く認識している就活生ほど、従来のキャリア観にとらわれず、現場性や対人性を伴う仕事を将来の選択肢として検討していると考えられる。
【図表5】<DX化による仕事やキャリアへの影響別>将来的にノンデスクワークに従事することへの興味度
次に、ノンデスクワーク就業への興味の背景にある価値観を探るため、「ノンデスクワークへの興味度」の回答理由を自由記述で聞き、その内容を確認した。
回答をノンデスクワークへの興味の有無別にみると、「興味あり」のグループでは、もともとノンデスクワークを志望している、アルバイト経験があるといった理由から、ノンデスクワークで働くことに対して具体的なイメージを持っていることを示す回答が多くみられた。一方、「興味なし」のグループでは、ノンデスクワークの仕事内容や働き方のイメージが湧かないことを理由とする回答が最も多かった。すなわち、ノンデスクワークに対して具体的な働くイメージを持てるか否かが、興味の有無を左右する一因となっている可能性が示唆される。以下に、タイプごとの代表的な回答例を記載する。


おわりに
本レポートでは、DX化、なかでも生成AIの普及が、若年層の職業選択意識に与える影響を考察した。現在の就活生は、仕事に就く以前から生成AIを日常的に利用している世代であり、デジタル技術が仕事の在り方を変える可能性を抽象論ではなく実感として捉えていることが、今回の調査から明らかになった。自由回答には、仕事が代替される不安や、スキルの陳腐化への懸念、あるいはAIを使いこなせるかどうかが将来を左右するという認識が数多くみられ、「大卒で企業に就職すれば安定的なキャリアが約束される」という従来型の前提は、もはや自明ではなくなりつつあることがうかがえる。
こうした意識の変化は、ノンデスクワークへの関心にもつながっている。デスクワーク需要の先行きが不透明になるなか、これまで想定してきたキャリアパスが揺らぎ、相対的に代替されにくい現場性・専門性を伴う仕事が現実的な選択肢として浮上している。若年層の間でみられたノンデスクワークへの関心は、技術進展に対するリスク認識と雇用の安定性を重視する姿勢の表れと解釈できる。
「はじめに」で述べたとおり、日本の雇用慣行は長年にわたり大卒者をデスクワークへと組み込む構造を前提としてきた。しかし、デジタル技術の進展が労働需要の構成そのものを変えつつある現在、その前提は再検討を迫られるかもしれない。一部の現業系職種と事務職との間で賃金水準の逆転がみられることも含め、労働市場は構造的な転換点に差しかかっている可能性がある。今回確認された若年層のキャリア観の変化は、その兆候の一端といえよう。
ザイマックス総研では、こうした構造変化をより定量的に把握するため、現在、職業ごとに生成AIおよびロボティクスによる代替可能性を算出し、ノンデスクワーク領域の人手不足解消に向けた方向性を検討している。今後も、労働市場の将来像を見通すための材料を提示していく予定である。
《調査概要》
首都圏就活生の企業選びに関する意識調査2026
2025年12月26日~2026年1月6日
就活の状況が「就職先が決定して、就職活動を終了した」か「現在、就職活動中」または「これから就職活動を始める予定」である、首都圏在住の大学3年生から大学院生
※対象大学:首都圏所在の大学(慶應義塾大学、上智大学、東京大学、東京外国語大学、東京科学大学、筑波大学、一橋大学、横浜国立大学、早稲田大学、その他)計39校と、首都圏所在の大学院
実回収数300件、ウェイトバック後の回答者数300件
※ウェイトバック集計の詳細は、2026年3月12日公表「首都圏就活生の企業選びに関する意識調査2026」を参照
インターネット調査
レポート内のグラフに関して
・構成比(%)は、小数点第2位を四捨五入しているため内訳の合計が100%にならない場合がある。
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