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2024.08.22

ビルメンテナンス業の人手不足に関する実態調査

~人手不足問題の解決に向けて(第4回)~

ビルメンテナンス業(清掃業・警備業・設備管理業)を担うノンデスクワーカーの人手不足は、オフィスビルの所有者や投資家にとって事業継続の面で大きな課題の一つとなっている。

ザイマックス不動産総合研究所では、早稲田大学建築学科石田航星研究室と共同で、2024年6月にビルメンテナンス業を営む事業者(以下、ビルメン事業者)を対象に人手不足に関するアンケートを実施し、その結果をまとめたレポートを公表した。本ページはその<概要版>として一部を抜粋したものである。

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主な調査結果
  • ・ ビルメン事業者の92%が、現場で働く従業員について人手不足(「とても不足」「やや不足」)であると回答している【図表1-1】。
  • ・ 清掃業の人手不足対策は、「業務の外注・再委託の強化」(40%)が最も多い【図表2-1】。
  • ・ 警備業の人手不足対策は、「警備空調服(空冷グッズ)導入などによる快適・安全な装備品の充実」(49%)が最も多い【図表2-2】。
  • ・ 設備管理業の人手不足対策は、「資格取得の奨励・技術大会の開催、参加」(40%)が最も多い【図表2-3】。
  • ・ 人手不足対策の一つとしてDXを推進していくうえでの課題は、DX人材の不足に次いで、「現場への教育が難しい」(40%)が高くなっている【図表3】。
  • ・ 業務発注者の直近の動向・変化として、ビルメン事業者の63%が「値上げ要請を受け入れるようになった」と回答した【図表4】。

<調査概要>

調査期間:2024年6月3日~6月30日

調査対象:東京商工リサーチ(TSR)データより抽出した計5,461社

     【売上】1,000万円以上

     【業種】ビルメンテナンス業・その他建物サービス業・警備業を「主」(1位登記)とする企業

有効回答数:369社(回答率:6.8%)

調査地域:全国

調査方法:Web回答による


topic 1

ビルメン事業者の現場で働く従業員について、人手不足の状況をたずねたものが【図表1-1,1-2】である。

清掃業、警備業、設備管理業のうち、いずれか一つでも人手が「とても不足」「やや不足」と回答した事業者の割合は、全体の9割を超えた【図表1-1】。

業務別でみると、もっとも「不足」の割合が高いのは清掃業(88%)であるが、警備業(83%)、設備管理業(77%)においても大部分が人手不足を感じているようだ【図表1-2】。

【図表1-1】人手不足の状況(n=369)

【図表1-2】人手不足の状況(単一回答)

topic 2

①清掃業務を行うビルメン事業者に人手不足対策の取り組み(検討中含む)をたずねたものが【図表2-1】である。

清掃業では「業務の外注・再委託の強化」(40%)が最も高く、清掃業務を自社の人員だけでは対処しきれない場合に外注・再委託で対応していることがうかがえる。また、これまで専門的な業務などを外注・再委託していた先でも人手不足が起こり、外注・再委託先のネットワークを増やしているケースもあるだろう。

次いで、「個人の適性にあわせた柔軟な運用体制(チーム清掃・単独清掃など)の導入」(36%)、「昼間・夜間・深夜の時間帯など清掃時間の分散」(24%)、「長時間勤務を望む従業員のニーズに合わせた業務の創出」(22%)と回答した事業者が多い。

働く人のニーズに合わせた就業時間や業務内容の設計を行い、多様な人材の確保に努める事業者が多いようだ。

【図表2-1】清掃業の人手不足対策の取り組み(検討中含む)(複数回答、n=265)

②警備業務を行う事業者に人手不足対策の取り組み(検討中含む)をたずねたものが【図表2-2】である。

警備業では、「警備空調服(空冷グッズ)導入などによる快適・安全な装備品の充実」(49%)が最も高く、警備員の負担軽減に取り組んでいることがわかる。そのほか、「現場の休憩室・仮眠室などの環境改善の働きかけ(または自社で対応)」(19%)、「座哨(ざしょう)警備(※)導入などによる身体的負荷の軽減」(12%)といった施策にも一部の事業者は取り組んでいる。※座ったままで行う警備

また、多様な人材を確保するための施策として、「短時間を望む従業員のニーズに合わせた業務の創出」(27%)、「女性が働きやすい環境整備・業務の調整」(23%)、「職住接近の人員配置」(17%)などに取り組んでいるようだ。

【図表2-2】警備業の人手不足対策の取り組み(検討中含む)(複数回答、n=208)

③設備管理業務を行う事業者に人手不足対策の取り組み(検討中含む)をたずねたものが【図表2-3】である。

設備管理業では、「資格取得の奨励・技術大会の開催、参加」(40%)が最も多く、次いで「業務の外注・再委託の強化」(35%)が続いている。一部ではあるが「研修センターなどでのOFF-JTによる人材の早期戦力化」(10%)にも取り組んでおり、従業員のスキルアップに注力している様子がうかがえる。

設備管理業では資格を取得していないとできない業務が多く、受託規模の維持・拡大のためには資格取得が重要であることがあげられる。

【図表2-3】設備管理業の人手不足対策の取り組み(検討中含む)(複数回答、n=192)

topic 3

多くの産業・企業では人手不足の対策としてDXの推進が一つの大きなソリューションであると考えられる。そこで、ビルメン事業者がDXを推進していくうえでの課題をたずねたものが【図表3】である。

「ITやDXに詳しい人材がいない(不足している)」が47%と最も高く、ビルメン事業においてもデジタル人材不足が課題となっていることがわかった。

次いで、「現場への教育が難しい」が40%となっている。ビルメン事業は高齢者・女性・外国人など様々な属性の従業員が多いことから、DXについては現場環境で使いやすい、現場で働く人が理解しやすいことを考慮した推進が必要であると考えられる。

【図表3】DXを推進していくうえでの課題(複数回答、n=369)

topic 4

業務発注者(ビルオーナーや元請事業者など)の直近の動向・変化をたずねたものが【図表4】である。

「値上げ要請を受け入れるようになった」は63%(「あてはまる」「ややあてはまる」の合計)であり、半数以上のビルメン事業者で値上げが実現できていることがわかった。

昨今の物価上昇などの影響を受け、業務発注者が値上げ要請を受け入れる流れはある程度浸透してきているようだ。

【図表4】業務発注者(ビルオーナーや元請事業者など)の直近の動向・変化
(単一回答、n=369)


レポート内のグラフに関して
・構成比(%)は、小数点第2位を四捨五入しているため内訳の合計が100%にならない場合がある。
※当レポート記載の内容等は作成時点のものであり、正確性、完全性を保証するものではありません。
※当社の事前の了承なく、複製、引用、転送、配布、転載等を行わないようにお願いします。

参考:働き方×オフィス 特設サイト

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