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2021.08.13

働き方とワークプレイスに関する首都圏企業調査 2021年7月

~刻々と変化する状況をデータで追う~

2020年春の新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受け、日本政府が時差出勤やテレワーク等を推奨したことにより、多くの企業やオフィスワーカーは働き方の見直しを余儀なくされた。なるべく自宅から出ず、人に会わずに働くという制約は、在宅勤務をはじめとするテレワークの推進を半ば強制的に促したとみられ、今日まで働き方改革の文脈において行われてきたワークプレイスに関する議論を活発化させる契機ともなっている。

ザイマックス不動産総合研究所(以下、ザイマックス総研)では、2016年より年2回、企業のオフィス需要を可視化するために、全国レベルの「大都市圏オフィス需要調査」を継続的に実施している(*1)。また2020年8月、12月、2021年1月には、首都圏の企業を対象に、コロナ危機下の働き方の現状や課題、施策についてのアンケート調査(以下、8月調査、12月調査、1月調査)を行った。コロナ危機で状況が日々変化していくなか、多くの企業が出社率を制限し、出社とテレワークのバランスを試行錯誤している様子が明らかになった(*2)。

今回は、2021年7月6日~7月18日にかけて首都圏の企業を対象に行った調査(以下、7月調査)の結果を公表する。この調査では、現在の出社率やテレワーク実施状況に加え、今後の働き方とワークプレイスのニューノーマルに対する考えについてたずねた。

*1 2021年6月9日公表「大都市圏オフィス需要調査 2021春
主な調査結果

    1. オフィスの利用状況

  • ・ 約8割の企業が、目標出社率を設定している。
  • ・ 47.0%の企業が、目標出社率を50%未満と回答した。また、現在出社率については、40.8%の企業が50%未満と回答した。

  • 2. テレワークの実施状況

  • ・ 在宅勤務は、約9割の企業が導入している。そのうち約4割の企業で、全従業員が利用可能である。
  • ・ サテライトオフィスは、約4割の企業が導入している。
  • ・ サテライトオフィスの利用方針としては、「タッチダウン(移動の合間など、短時間利用)で働く場所として」(67.0%)利用する企業が最も多く、次いで「自宅近くで本社同様の業務(長時間利用)をする場所として」(53.1%)となった。
  • ・ サテライトオフィスの利用に関する状況をたずねたところ、「今まで通り利用継続したい」(35.8%)が最も多く、次いで「より利用を促進したい」(33.2%)となった。

  • 3. ワークプレイス戦略と運用

  • ・ 約3割の企業がワークプレイス戦略の見直しにすでに着手しており、今後着手予定を含めると65.2%の企業が、ワークプレイス戦略の見直しを行うことがわかった。
  • ・ テレワーク運用の課題としては、「コミュニケーションが難しい」(60.5%)が最も多く、「マネジメント(業務、勤怠、評価等)が難しい」(46.3%)、「従業員の生産性・業務効率の低下」(37.6%)と続いた。
  • ・ コロナ前と比較した従業員のパフォーマンスは、「変わらない」(55.6%)が最も多く、「上がった」(「非常に上がった」と「やや上がった」の合計)は13.8%、「下がった」(「非常に下がった」と「やや下がった」の合計)は22.4%であった。

  • 4. コロナ危機収束後の働き方とワークプレイス

  • ・ コロナ危機収束後に向け注力したいテーマは「従業員満足度、ウェルビーイング」(37.5%)が最も高く、次いで「イノベーションの促進・新規事業の創出」(35.7%)、「DX推進」(33.3%)となった。
  • ・ コロナ危機収束後の出社率を50%未満にしたい企業の割合(「0%」と「0%以上50%未満」の合計)は24.8%であった。
  • ・ 従業員がテレワークをする際の場所について、24.8%の企業が「制限なくどこでも働いてよい」としている。
  • ・ 出社に対して、「コミュニケーションがとりやすい」(78.4%)と考える企業が全体の約8割を占めた。
  • ・ テレワークに対する考えとして、「従業員満足度向上に有効だと思う」(46.1%)と回答した企業が最も多く、次いで「テレワークできない職種の従業員がいる」(42.9%)、「オフィスコストが効率化できる」(36.3%)となった。
  • ・ オフィスの面積は、「縮小したい」(24.3%)が「拡張したい」(5.1%)を上回った。テレワークの導入状況別にみると、テレワークを導入しているほうが「縮小したい」と回答した企業が多く、その傾向は在宅勤務のみの企業よりもサテライトオフィスを併用している企業のほうが強い。
  • ・ メインオフィスにおいて関心のある施策としては「コミュニケーションのための場づくり、集まるための機能を重視する」(43.1%)が最も多く、次いで「リモート会議用に個室やブースを増やす」(38.9%)、オフィスをフレキシブルなレイアウト(フリーアドレス等)に変える」(37.3%)となった。
  • ・ コロナ危機収束後の本社機能の立地については66.6%が「都心に置く」と回答した。また、本社機能以外の働く場所については、約4割が「郊外で働けるようにする(サテライトオフィス、在宅勤務等)」と回答した。
  • ・ コロナ危機収束後の在宅勤務については、「利用したい派」が78.0%と全体の約8割にのぼった。
  • ・ コロナ危機収束後のサテライトオフィスについては、「利用したい派」は52.1%、「利用したくない派」は26.0%であった。また、「利用したい派」に利用したいサテライトオフィスのタイプをたずねたところ、7割以上が「個人作業のための個室・ブース等を他社とシェアするタイプ」と回答した。

1. オフィスの利用状況

現在のオフィス出社率の制御状況をたずねたところ、「目標出社率がある」(77.9%)、「目標出社率がない・わからない」(22.1%)と、8割近くが目標出社率を設けていることがわかった【図表1】。

【図表1】オフィス出社率の制御状況(n=926)

次に、【図表1】で「目標出社率がある」と回答した企業に対し、ルール・目標として設定している出社率(目標出社率)をたずねた。さらに、すべての企業に対して現在の出社率(現在出社率)をたずね、「0%」「0%超50%未満」「50%以上100%未満」「100%」の4つに分類した【図表2】。目標出社率については47.0%の企業が50%未満(「0%」と「0%超50%未満」の合計)と回答し、現在出社率については40.8%の企業が50%未満と回答した。

【図表2】目標出社率と現在出社率

さらに内訳を細かくみたところ、目標出社率は「30%~」(24.1%)と「50%~」(21.2%)が突出して高いものの、目標出社率と現在出社率との間では差がみられ、目標と実態に乖離があることがわかった【図表3】。また、目標出社率の平均値は50.9%、現在出社率の平均値は57.1%であった(*3)。

*3 平均値は、各選択肢が示す範囲の中央の数値を採用して算出した。「1%~」は5%、「10%~」は14.5%、「20%~」は24.5%…以下同様。

【図表3】目標出社率と現在出社率(ヒストグラム)

2. テレワークの実施状況

2.1. 在宅勤務

在宅勤務の状況についてたずねたところ、「コロナ危機発生以前から導入していた」(11.6%)、「コロナ危機発生以前から導入しており、コロナを機に強化・拡大」(21.9%)、「コロナを機に導入し、現在も継続中(一時休止したが再開した場合も含む)」(54.5%)と、9割近くが在宅勤務を現在に至るまで継続して行っている【図表4】。過去の調査と比較しても大きな差はみられず、引き続き在宅勤務が行われている様子がみてとれる。

【図表4】在宅勤務の状況

在宅勤務を導入している企業に対して、全従業員に占める在宅勤務を利用できる人(対象者)と在宅勤務を実際に利用している人(利用者)の割合をたずね、「100%」「50%以上100%未満」「0%超50%未満」「0%」の4つに分類した【図表5】。在宅勤務の対象者については、約4割の企業が「100%」(38.8%)と回答し、「50%以上100%未満」(42.6%)と合わせると、従業員の50%以上を在宅勤務の対象者としている企業は、全体の8割にのぼった。在宅勤務の利用者も、従業員の50%以上が利用している企業が約7割(「100%」(20.0%)と「50%以上100%未満」(48.2%)の合計)と、制度があるだけではなく実際に利用もされている実態が明らかとなった。

【図表5】全従業員に占める在宅勤務の対象者と利用者の割合

10%単位で区切った内訳をみると、対象者、利用者ともに「100%」が最も多かった【図表6】。

【図表6】全従業員に占める在宅勤務の対象者と利用者の割合(ヒストグラム)

2.2. サテライトオフィス

サテライトオフィス(*4)の導入状況をたずねたところ、「コロナ危機発生以前から導入していた」(18.5%)、「コロナ危機発生以前から導入しており、コロナを機に強化・拡大」(6.4%)、「コロナを機に導入し、現在も継続中(一時休止したが再開した場合や、一時的に利用制限している場合を含む)」(13.8%)と、導入している企業が全体の約4割を占めた【図表7】。

*4 サテライトオフィス…メインオフィスや自宅とは別に、テレワークのために設けるワークプレイスの総称。専門事業者がサービス提供するものや企業が自前で設置するものがある。

【図表7】サテライトオフィスの導入状況

サテライトオフィスを導入している企業に対して、全従業員に占めるサテライトオフィスを利用できる人(対象者)の割合と、実際に利用している人(利用者)の割合をたずねた結果が【図表8】である。従業員の50%以上がサテライトオフィスの対象者であると回答した企業が約半数(「100%」(27.7%)と「50%以上100%未満」(28.5%)の合計)を占めていた。一方、サテライトオフィスの利用者については、従業員の50%以上と回答した企業は16.5%(「100%」(7.8%)と「50%以上100%未満」(8.7%)の合計)にとどまり、対象者の割合とギャップがみられた。その理由として、サテライトオフィスは多くの場合、働く場所の選択肢の一つとして整備されており、対象者に対して座席数が少ないことや、コロナ危機下において不特定多数と接触するサテライトオフィスではなく、在宅勤務を選択する従業員が多いことなどが想定される。

【図表8】全従業員に占めるサテライトオフィスの対象者と利用者の割合

10%単位で区切った内訳をみると、対象者は「100%」(27.7%)が最も多く、利用者は「0%以上10%未満」(37.2%)が最も多かった【図表9】。

【図表9】全従業員に占めるサテライトオフィスの対象者と利用者の割合(ヒストグラム)

さらに、サテライトオフィスを導入している企業に対して、サテライトオフィスの利用方針をたずねたところ、「タッチダウン(移動の合間など、短時間利用)で働く場所として」(67.0%)利用している企業が約7割と最も多かった【図表10】。次いで、「自宅近くで本社同様の業務(長時間利用)をする場所として」(53.1%)となっており、本社の代わりに出社する場所としての利用を想定している企業も半数以上いることがわかった。

【図表10】サテライトオフィスの利用方針(複数回答、n=358)

サテライトオフィスの利用に関する状況については、「今まで通り利用継続したい」(35.8%)が最も多く、次いで「より利用を促進したい」(33.2%)となった【図表11】。【図表8・9】でみた通り、対象者と利用者の割合にはギャップがあるものの、企業側としてはサテライトオフィスの利用を推し進めたいと考えていることが示唆された。

【図表11】サテライトオフィスの利用に関する状況(複数回答、n=358)

在宅勤務とサテライトオフィスの導入状況について、「在宅勤務とサテライトオフィス併用」「在宅勤務のみ」「サテライトオフィスのみ」「どちらも導入していない」に分けた結果が【図表12】である。「在宅勤務とサテライトオフィス併用」が37.7%、「在宅勤務のみ」が50.3%、「サテライトオフィスのみ」が1.0%と、全体の約9割が在宅勤務かサテライトオフィスの少なくとも一方を導入していた。

【図表12】在宅勤務とサテライトオフィスの導入状況(n=926)

3. ワークプレイス戦略と運用

3.1. ワークプレイス戦略

ワークプレイス戦略の見直しに着手しているかどうかをたずねたところ、「着手していないし、する予定もない」(34.8%)が最も多く、次いで「すでに着手している」(31.2%)となった【図表13】。将来的に着手する意志がある企業まで含めると、6割以上の企業がワークプレイス戦略の見直しに着手することがわかった。

【図表13】ワークプレイス戦略の見直しの着手状況(n=926)

3.2. テレワーク運用の課題

テレワーク運用について困ったことや課題をたずねたところ、「コミュニケーションが難しい」(60.5%)が最も多く、次いで「マネジメント(業務、勤怠、評価等)が難しい」(46.3%)、「従業員の生産性・業務効率の低下」(37.6%)となった【図表14】。1月調査と比較すると減少している項目が多いものの、依然として「コミュニケーションが難しい」ことを多くの企業が挙げており、テレワークにおける最大の課題がコミュニケーションであることがうかがえる。

【図表14】テレワーク運用の課題・困りごと(複数回答)

次に、コロナ前と比べ、従業員のパフォーマンスがどうなったかをたずねた結果が【図表15】である。「変わらない」と回答した企業が55.6%と半数を占めている一方で、13.8%が「上がった」(「非常に上がった」と「やや上がった」の合計)、22.4%が「下がった」(「非常に下がった」と「やや下がった」の合計)と回答した。

【図表15】コロナ前と比較した従業員のパフォーマンス(n=926)

4. コロナ危機収束後の働き方とワークプレイス

4.1. 注力テーマ

コロナ危機収束後に向けて、全社的に注力していきたいテーマをたずねたところ、「従業員満足度、ウェルビーイング」(37.5%)が最も多く、次いで「イノベーションの促進・新規事業の創出」(35.7%)、「DX推進」(33.3%)となった【図表16】。

【図表16】ポストコロナに向けて注力したいテーマ(3つまで回答、n=926)

4.2. 出社とテレワーク

コロナ危機収束後に目標としたい出社率(将来意向)を、全員が出社した場合を100%としてたずね、「0%」「0%超50%未満」「50%以上100%未満」「100%」の4つに分類した【図表17】。コロナ危機収束後に出社率を50%未満にしたい企業の割合(「0%」と「0%超50%未満」の合計)は24.8%、50%以上にしたい企業(「50%以上100%未満」と「100%」の合計)は62.1%と、1月調査と変わらない傾向を示した。

【図表17】コロナ危機収束後の出社率の将来意向

さらに内訳を細かくみたところ「50%~」(18.1%)が最も多く、全体の約2割は将来的に出社率を半分程度にしたいと考えていることがわかった【図表18】。また、少しでもテレワークを行う意向がある企業は70.9%と、全体の約7割を占めていた。出社率の将来意向の平均値は63.2%となった。

【図表18】コロナ危機収束後の出社率の将来意向(ヒストグラム、n=926)

【図表18】を業種別にみたものが【図表19】である。ほとんどの業種で「50%~」の割合が最も高いものの、「卸売業,小売業」、「建設業」、「金融業,保険業」においては「100%(完全出社)」の割合も高く、特に「建築業」は「100%(完全出社)」が31.3%と突出して高い。一方で、「情報通信業」は「100%(完全出社)」の割合が5.0%と他の業種と比べて低く、業種ごとに出社率に対する意向に差があることが明らかになった。

【図表19】コロナ危機収束後の出社率の将来意向(ヒストグラム、業種別)

また、従業員数別にみると、「100人未満」の企業では「100%(完全出社)」が最も高く、「100人以上1,000人未満」と「1,000人以上」の企業では「50%~」が最も高いなど、企業規模によって出社率の意向に差がみられた【図表20】。

【図表20】コロナ危機収束後の出社率の将来意向(ヒストグラム、従業員数別)

【図表18】で少しでもテレワークをする意向がある(出社率「0%~」から「90%~」)と回答した企業に対し、テレワークをする際の場所の制限についてたずねたところ、24.8%が「制限なくどこでも働いてよい」と回答した【図表21】。「会社で認めた場所の中から都度好きに選んで働いてよい」(42.5%)まで含めると、7割近くの企業が従業員が自ら働く場所を選べるようにしたいと考えていることがわかった。

【図表21】テレワークをする際の場所の制限(n=657)

次に、出社とテレワークそれぞれについて、企業の考えをたずねた。

出社に対する考えとしてあてはまるものをたずねたところ、「コミュニケーションがとりやすい」(78.4%)が最も多かった【図表22】。【図表14】ではテレワークの課題として「コミュニケーションが難しい」が挙げられており、コミュニケーションのとりやすさに関しては対面がリモートを大きく上回っていることがうかがえる。一方で、「出社するのが当然である」(3.6%)と考える企業は少なく、ほとんどの企業でオフィスに出社して働くことだけでなく、テレワークで働くことも当たり前として受け入れられるようになってきているのかもしれない。

【図表22】出社に対する考え(複数回答、n=926)

テレワークに対する考えとしてあてはまるものをたずねたところ、「従業員満足度向上に有効だと思う」(46.1%)、「テレワークできない職種の従業員がいる」(42.9%)、「オフィスコストが効率化できる」(36.3%)などが上位となった【図表23】。また、コロナ危機をきっかけにテレワークを始めた企業も多いと思われるが、「感染リスクがなくなればテレワークする必要がないと思う」(11.7%)は約1割にとどまり、9割近くの企業で感染リスクに関係なくテレワークを評価している様子がみてとれる。

【図表23】テレワークに対する考え(複数回答、n=926)

【図表23】のうち、テレワークのメリットと考えられる選択肢をテレワーク(在宅勤務・サテライトオフィス)の導入状況別にみたものが【図表24】である。すべての項目で、「在宅勤務とサテライトオフィス併用」の企業の回答率が高い。テレワークを導入している企業ほど、またテレワークの場が多いほど、テレワークに対してメリットを感じていることがわかる。

【図表24】テレワークに対する考え(テレワーク導入状況別、一部抜粋)

4.3. ワークプレイスの運用

コロナ危機収束後、企業はオフィスをどのように運用・利用していこうと考えているのだろうか。

まず、コロナ危機収束後のオフィス面積の意向についてたずねたところ、「縮小したい」(24.3%)が「拡張したい」(5.1%)を大きく上回った【図表25】。この傾向は過去3回の調査とおおむね同様である。しかしながら、「縮小したい」の割合は前回調査と比較して5.7ポイント下落しており、今後の動向に注視が必要である。

【図表25】コロナ危機収束後の面積の意向

【図表25】をテレワーク(在宅勤務・サテライトオフィス)の導入状況別にみたものが【図表26】である。在宅勤務とサテライトオフィスを併用している企業は約3割が「縮小したい」(31.8%)と回答しているのに対し、在宅勤務のみの企業は24.0%、テレワークを導入していない企業は2.0%と、テレワークを導入している企業ほど、縮小したい意向を持つ割合が高く、さらにその傾向は在宅勤務のみの企業よりもサテライトオフィスを併用している企業のほうが強いことがわかった。

【図表26】コロナ危機収束後の面積の意向(テレワーク導入状況別)

従業員数別では、人数が多い企業ほど面積を「縮小したい」と回答した割合が高いことがわかった【図表27】。

【図表27】コロナ危機収束後の面積の意向(従業員数別)

次に、メインオフィスの施策について、関心があるものをたずねた【図表28】。最も多かったのは「コミュニケーションのための場づくり、集まるための機能を重視する」(43.1%)であった。前回調査から4.8ポイント伸びており、出社とテレワークの使い分けを考えるなかで、集まる場としてのメインオフィスの価値を見直す企業が増えてきているのかもしれない。さらに「リモート会議用に個室やブースを増やす」(38.9%)、「オフィスをフレキシブルなレイアウト(フリーアドレス等)に変える」(37.3%)、「座席数を見直す」(29.0%)といった企業も多く、コロナ危機収束後に向けたオフィスのあり方を考え始めている様子がうかがえる。

【図表28】コロナ危機収束後、メインオフィスの施策で関心があるもの(複数回答)

コロナ危機収束後の働く場所の立地について、本社機能とそれ以外の場所に分けてたずねた。

本社機能の立地については、6割以上の企業が「都心に置く」(66.6%)と回答した【図表29】。

【図表29】コロナ危機収束後の本社機能の立地(n=926)

本社機能以外の働く場所の立地についてたずねると、「郊外で働けるようにする(サテライトオフィス、在宅勤務等)」(39.4%)が最も多く、4割近くの企業で都心だけでなく郊外にも働く場所を整える意向があることがわかった【図表30】。一方で、「わからない」も32.3%と、本社機能以外の働く場所の立地について未だ決めかねている様子もうかがえた。

【図表30】コロナ危機収束後の本社機能以外の働く場所の立地(複数回答、n=926)

【図表30】を【図表25】のオフィス面積意向(「縮小したい」「拡張したい」)別にみたのが【図表31】である。これをみると、「郊外で働けるようにする(サテライトオフィス、在宅勤務等)」と回答した企業は、「縮小したい」企業で60.4%と、「拡張したい」企業の34.0%を26.4ポイント上回っている。オフィスを縮小する代わりに、郊外にサテライトオフィスや在宅勤務を整備しようと考える企業が多いことが示唆される。また、「本社のみに集約する」に関しては、「拡張したい」企業で23.4%と、「縮小したい」企業の7.1%を大きく上回っていた。

【図表31】コロナ危機収束後の本社機能以外の働く場所の立地(面積意向別)

コロナ危機収束後、現在までの利用の有無にかかわらず、在宅勤務を利用したいか(導入/継続したいか)をたずねたところ、「利用したい派」(「導入したい/継続したい」と「どちらかといえば導入したい/継続したい」の合計)が78.0%と約8割を占めた【図表32】。現在在宅勤務を導入している企業は88.0%である(【図表4】)ことから、今後在宅勤務の導入率は低下していく可能性がある。

【図表32】コロナ危機収束後の在宅勤務の利用意向(n=926)

次に、コロナ危機収束後、現在までの利用の有無にかかわらず、サテライトオフィスを利用したいかをたずねたところ、「利用したい派」(「導入したい/継続したい」と「どちらかといえば導入したい/継続したい」の合計)が52.1%と過半数を占めた【図表33】。これは現在の導入率(【図表7】)より13.4ポイント高く、サテライトオフィスの需要が伸びることが示唆されている。

【図表33】コロナ危機収束後のサテライトオフィスの利用意向(n=926)

【図表33】で「利用したい派」と回答した企業に対し、どのようなタイプのサテライトオフィスを利用したいかたずねた【図表34】。「個人作業のための個室・ブース等を他社とシェアするタイプ」(70.4%)が最も多く、次いで「自社の社員のみで専用的に利用するタイプ」(46.6%)、「他社社員とオープンな空間を共有するコワーキングタイプ」(27.5%)となった。

【図表34】利用したいサテライトオフィスのタイプ(複数回答、n=483)

5. おわりに

2020年春以降、新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、出社の制限やテレワークの導入、時差出勤の実施など、企業はさまざまな対応を行ってきた。結果的に、これまで漸進的であった働き方改革の歩みは加速した。

今回の調査では、現在の企業の出社率およびテレワークの導入状況、そしてワークプレイス戦略の考え方やコロナ危機収束後の意向について明らかにした。在宅勤務やサテライトオフィスの導入率は1月調査と比較して大きな差はみられず、引き続きテレワークが行われている様子がみてとれた。

コロナ危機収束後は、出社率を50%以上60%未満にしたいと考える企業が最も多かったものの、業種や企業規模によって差がみられた。少しでもテレワークをする意向がある企業のうち、7割近くの企業が従業員が働く場所を自由に選べるようにしたいと考えており、働く場所の柔軟性が高まっていくことが期待される。業務内容によって、ワーカーが出社とテレワークを主体的に使い分けることが、生産性の高い働き方につながっていくことだろう。特に、コミュニケーションについては出社が適していると考えている企業が多く、テレワークの課題としても挙げられていることから、メインオフィスをコミュニケーションのための場として整備する企業が増えていくかもしれない。

在宅勤務やサテライトオフィスは、コロナ危機収束後も一定数の企業が利用を続ける意向を示している。また、コロナ危機収束後の注力テーマとして「従業員満足度、ウェルビーイング」を挙げた企業が最も多いこと、テレワークが「従業員満足度向上に有効だと思う」と考える企業が多いことからも、テレワークが引き続き行われることが示唆される。

コロナ危機によって世の中が大きく変わっていくなかで、働き方とワークプレイスがどのように変化していくのか、今後も動向を注視する必要がある。ザイマックス総研は引き続き、有益な調査結果を公表していく予定である。

調査概要

調査期間

2021年7月6日~7月18日

調査対象

・ザイマックスインフォニスタの取引先企業

・ZXY 会員企業

上記合計 40,688社

有効回答数

926社  回答率:2.3%

調査地域

首都圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)

調査方法

メール配信による

調査内容

  • 貴社について
  • ・ ポストコロナに向けた注力テーマオフィスの利用状況について
  • オフィスの利用状況について
  • ・ 出社率(現在の目標・実態)
  • テレワークの利用状況について
  • ・ 在宅勤務の状況
  • ・ 在宅勤務の対象者、利用者
  • ・ サテライトオフィス勤務の状況
  • ・ サテライトオフィス勤務の対象者、利用者
  • ・ サテライトオフィスの利用方針、利用状況
  • ワークプレイス戦略と運用
  • ・ ワークプレイス戦略の見直しの着手状況
  • ・ テレワーク運用の課題・困りごと
  • ・ コロナ前と比較した従業員のパフォーマンス
  • コロナ危機収束後の働き方
  • ・ 出社率の意向
  • ・ 出社とテレワークに対する考え
  • ・ テレワーク場所の意向
  • ・ オフィスの面積意向
  • ・ メインオフィスの方向性
  • ・ 本社機能とそれ以外の場所の立地意向
  • ・ サテライトオフィスと在宅勤務の利用意向
  • 入居中オフィスについて
  • ・ 所在地/契約面積/在籍人数
  • 企業属性
  • ・ 業種/従業員数


回答企業属性(上段:%、下段:n)



レポート内のグラフに関して
・構成比(%)は、小数点第2位を四捨五入しているため内訳の合計が100%にならない場合がある。


※当レポート記載の内容等は作成時点のものであり、正確性、完全性を保証するものではありません。
※当社の事前の了承なく、複製、引用、転送、配布、転載等を行わないようにお願いします。

参考:働き方×オフィス 特設サイト

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