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2021.01.27

働き方とワークプレイスに関する首都圏企業調査 2020年12月

~刻々と変化する状況をデータで追う~

2020年春の新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受け、日本政府が企業に対して時差出勤やテレワーク等を推奨したことにより、多くの企業やオフィスワーカーは働き方の見直しを余儀なくされた。なるべく自宅から出ず、人に会わずに働くという制約は、在宅勤務をはじめとするテレワークの推進を半ば強制的に促したとみられ、今日まで働き方改革の文脈において行われてきたワークプレイスに関する議論を活発化させる契機ともなっている。

ザイマックス不動産総合研究所(以下、ザイマックス総研)では、2016年より年2回、企業のオフィス需要を可視化するために、全国レベルの「大都市圏オフィス需要調査」を実施している(*1)。加えて昨年8月には、コロナ危機で状況が変わっていくなか、タイムリーに情報を発信していくため、首都圏の企業を対象に、コロナ危機下の働き方の現状や課題、施策についてのアンケート調査(以下、8月調査)を行い、その結果を公表した(*2)。

今回は、昨年12月9日~21日にかけて行った首都圏の企業を対象とした第2回のアンケート調査(以下、12月調査)について、その集計結果を公表する。なお、本調査は1月7日に発出された緊急事態宣言より前に実施されており、この影響は反映されていないことに留意されたい。

*1 2020年12月2日公表「大都市圏オフィス需要調査2020秋

主な調査結果
  • 1.オフィスの利用状況
  • ・ 7割以上の企業が、コロナ危機以前よりも出社率が低くなるように制御している。
  • ・ 目標出社率と現在の出社率は、50%未満と回答した企業がどちらも4割近くとなっている一方、将来的な意向は出社率50%以上と回答した企業が8割以上となっている。
  • ・ 出社に関するルールは、「時差出勤を推奨」(56.7%)が最も多く、次いで「部署・職種など、業務内容により判断」(51.8%)、「部署ごとに運用ルールを任せている」(45.5%)となった。

  • 2.テレワークの実施状況
  • ・ 在宅勤務は、約9割の企業が導入している。そのうち4割以上の企業で、全従業員が利用可能である。
  • ・ サテライトオフィスは、約4割の企業が導入している。

  • 3.働き方およびワークプレイスの運用
  • ・ 「換気や消毒などの感染対策の徹底」(68.9%)が最も多かった。8月調査と比較すると「時差出勤の奨励」(72.2%→67.6%)や「オフィスのソーシャルディスタンス確保(座席間隔や会議室利用者数の制限等)」(52.4%→45.0%)は減少した。
  • ・ ワークプレイス運用の課題としては、「テレワーク時のマネジメント(業務、勤怠、評価等)が難しい」(39.7%)が最も多かった。一方で、8月調査で上位であった「ペーパーレス対応が不十分」(39.1%→32.8%)や「決済等の電子化対応が不十分(ハンコ文化)」(41.8%→31.4%)は大幅に減っていた。

  • 4.コロナ危機収束後の働き方
  • ・ コロナ危機収束後は、出社派(46.9%)がテレワーク派(23.4%)を大きく上回った。
  • ・ オフィスの面積は、「縮小したい」(28.5%)が「拡張したい」(5.4%)を大幅に上回った。
  • ・ 働き方とワークプレイスの方向性としては、8月調査同様に「メインオフィスとテレワークの両方を使い分ける」(54.1%→55.0%)と回答した企業が最も多かった。

1.オフィスの利用状況

現在の従業員のオフィス出社率をたずねたところ、「極力オフィスが無人になるよう制御している」(10.2%)、「出社しつつもコロナ危機発生以前より少なくなるよう制御している」(62.0%)と、7割以上がコロナ危機以前よりも出社率が低くなるように制御していた【図表1】。一方で、「特に制限していない」(19.2%)は5.4ポイント伸びており、出社率制限が緩くなっている傾向がみられた。

【図表1】オフィス出社率の制御状況

次に、【図表1】で「極力オフィスが無人になるよう制御している」または「出社しつつもコロナ危機発生以前より少なくなるよう制御している」と回答した企業に対して、ルール・目標として設定している出社率(目標出社率)をたずねた。さらに、すべての企業に対して、現在の出社率(現在出社率)、コロナ危機収束後に目標としたい出社率(将来意向)を、全員が出社した場合を100%としてたずね、「0%」、「0%超50%未満」「50%以上100%未満」「100%」の4つに分類した【図表2】。目標出社率、現在出社率は、50%未満と回答した企業がともに4割近く(「0%」と「0%超50%未満」の合計)となっているものの、将来意向は「50%以上100%未満」(62.0%)が最も多く、「100%」(21.2%)とあわせるとコロナ危機収束後には8割以上の企業が、出社率を50%以上にしたい意向を示した。

【図表2】オフィス出社率

さらに内訳を10%単位で細かくみたところ、目標出社率は「30%以上40%未満」(15.5%)と「50%以上60%未満」(35.0%)が突出しているものの、どの区分でも現在出社率と差がみられ、目標と実態に乖離があることがわかった【図表3】。将来意向は「50%以上60%未満」(25.8%)が最も多く、全体の約1/4がコロナ危機収束後は出社率を半分にしたいと考えていることがわかった【図表4】。一方で、「100%」(21.2%)と、完全出社に戻す意向を示した企業もあった。

【図表3】目標出社率と現在出社率のヒストグラム

【図表4】出社率の将来意向のヒストグラム(n=411)

出社に関するルールについてたずねたところ、「時差出勤を推奨」(56.7%)が最も多いものの、8月調査と比較すると10ポイント近く減少していた【図表5】。次いで「部署・職種など、業務内容により判断」(51.8%)、「部署ごとに運用ルールを任せている」(45.5%)となっており、柔軟な運用を行っている企業が多いことがわかった。

【図表5】出社に関するルール(複数回答)

このような状況のなか、「どちらかというとオフィスに出社している割合が高い(テレワーク利用が少ない)職種」をたずねたところ、「総務・人事・経理」(56.7%)が突出して多く、次いで「一般事務・受付・秘書」(24.9%)、「経営・企画」(21.9%)となった【図表6】。多くの企業で、職種による出社の割合に差があることがわかった。

【図表6】オフィスに出社している割合の高い職種(複数回答、n=365)
※出社率100%の企業を除く

2.テレワークの実施状況

1.在宅勤務

在宅勤務の状況についてたずねたところ、「コロナ危機発生以前から導入していた」(11.7%)、「コロナ危機発生以前から導入しており、コロナを機に強化・拡大」(31.4%)、「コロナを機に導入し、現在も継続中(一時休止したが再開した場合も含む)」(44.3%)と、9割近くが在宅勤務を現在に至るまで継続して行っている【図表7】。8月調査と比較しても大きな差はみられず、引き続き在宅勤務が行われている様子がみてとれる。また、「コロナを機に導入し、現在は廃止」(7.1%)と回答した企業に対し、在宅勤務を廃止した理由をたずねたところ、「業務効率が悪化した」、「生産性の低下」、「業務管理が困難」などの理由が挙げられた。

【図表7】在宅勤務の状況

在宅勤務を導入している企業に対して、全従業員に占める在宅勤務を利用できる人(対象者)と在宅勤務を実際に利用している人(利用者)の割合をたずね、「100%」「50%以上100%未満」「0%超50%未満」「0%」の4つに分類した【図表8】。在宅勤務の対象者については、4割以上の企業が「100%」(43.5%)と回答し、「50%以上100%未満」(40.7%)と合わせると、従業員の50%以上を在宅勤務の対象者としている企業は、全体の8割にのぼった。在宅勤務の利用者も、従業員の50%以上が利用している企業が7割近く(「100%」(21.4%)と「50%以上100%未満」(46.2%)の合計)と、制度があるだけではなく実際に利用もされている実態が明らかとなった。

【図表8】全従業員中の在宅勤務の対象者と利用者の割合

10%単位で区切った内訳をみると、対象者、利用者ともに「100%」が最も多かった【図表9】。

【図表9】在宅勤務の対象者と利用者の割合(ヒストグラム)

2.サテライトオフィス

サテライトオフィス(*3)の導入状況をたずねたところ、「コロナ危機発生以前から導入していた」(22.9%)、「コロナ危機発生以前から導入しており、コロナを機に強化・拡大」(6.6%)、「コロナを機に導入し、現在も継続中(一時休止したが再開した場合や、一時的に利用制限している場合を含む)」(12.2%)と、導入している企業が全体の約4割を占めた【図表10】。

*3 サテライトオフィス…メインオフィスや自宅とは別に、テレワークのために設けるワークプレイスの総称。専門事業者がサービス提供するものや企業が自前で設置するものがある。

【図表10】サテライトオフィスの導入状況

サテライトオフィスを導入している企業に対して、全従業員に占めるサテライトオフィスを利用できる人(対象者)の割合と、実際に利用している人(利用者)の割合をたずねた結果が【図表11】である。従業員の50%以上がサテライトオフィスの対象者と回答した企業が約半数(「100%」(28.7%)と「50%以上100%未満」(25.1%)の合計)を占めていた。一方、サテライトオフィスの利用者については、従業員の50%以上と回答した企業は8.7%(「100%」(2.3%)と「50%以上100%未満」(6.4%))に留まり、対象者の割合とギャップがみられた。サテライトオフィスは多くの場合、働く場所の選択肢の一つとして整備されており、対象者に対して座席数が少ないことや、コロナ危機下において不特定多数と接触するサテライトオフィスではなく、在宅勤務を選択する従業員が多いことが理由として考えられる。

【図表11】全従業員中のサテライトオフィスの対象者と利用者の割合

10%単位で区切った内訳をみると、対象者は「100%」(28.7%)が最も多く、利用者は「0%以上10%未満」(42.7%)が最も多かった【図表12】。

【図表12】サテライトオフィスの対象者と利用者の割合(ヒストグラム)

3.働き方およびワークプレイスの運用

現在の働き方およびワークプレイスについて、取り組んでいるものをたずねたところ、「換気や消毒などの感染対策の徹底」(68.9%)が最も多く、次いで「時差出勤の奨励」(67.6%)、「テレワークを想定したネットワーク強化やIT機器配布の増加」(55.7%)となった【図表13】。

8月調査と比較すると、「時差出勤の奨励」(67.6%)や「オフィスのソーシャルディスタンス確保(座席間隔や会議室利用者数の制限等)」(45.0%)は取り組んでいる割合が減少していた一方で、「通勤手当支給の廃止・ルール変更」(42.3%)や「在宅勤務に関する費用(光熱費や備品購入等)の補助や手当の支給」(33.3%)など、制度面に関する項目は増加していた。

【図表13】働き方およびワークプレイスについての取り組み(複数回答)

さらに、【図表13】で「オフィス面積拡張(増床、移転、分室開設等)の検討」(4.1%)や「オフィス面積縮小(減床、移転、分室解約等)の検討」(21.4%)と回答した企業に対して、その理由・目的をたずねた【図表14・15】。拡張の理由・目的としては、「ソーシャルディスタンス確保」(70.6%)が最も多く、次いで「会議室不足」(47.1%)、「人員増加への対応」(29.4%)となった。縮小の理由・目的としては、「テレワークによる必要面積の減少」(89.8%)が最も多く、全体の約9割が挙げていた。次いで「オフィスコスト削減」(71.6%)、「レイアウトの見直し(オフィススペース効率化)」(50.0%)となった。

【図表14】オフィス面積拡張の理由・目的(複数回答)

【図表15】オフィス面積縮小の理由・目的(複数回答)

ワークプレイス運用について、困っていることや課題をたずねた結果が【図表16】である。「テレワーク時のマネジメント(業務、勤怠、評価等)が難しい」(39.7%)が最も多く、次いで「テレワーク時の従業員の生産性・業務効率の低下」(34.3%)、「職種等によりテレワークできる人とできない人の不公平感がある」(33.3%)となった。前回上位であった「ペーパーレス対応が不十分」(32.8%)や「決裁等の電子化対応が不十分(ハンコ文化)」(31.4%)はどちらも大幅に減少していた。

【図表16】ワークプレイス運用の課題・困りごと(複数回答)

4.コロナ危機収束後の働き方

企業のコロナ危機収束後の働き方として、オフィス出社とテレワークのどちらを重視しそうかたずねたところ、出社派が46.9%(「出社を重視」+「どちらかといえば出社を重視」)、テレワーク派が23.4%(「テレワークを重視」+「どちらかといえばテレワークを重視」)と、出社派がテレワーク派を大きく上回る結果となった【図表17】。8月調査と比較すると、出社派は7.8ポイント増加し、テレワーク派は9.6ポイント減少した。

【図表17】コロナ危機収束後の出社とテレワークの重視度

コロナ危機収束後のオフィス面積の意向についてたずねたところ、「縮小したい」(28.5%)が「拡張したい」(5.4%)を大幅に上回った【図表18】。

【図表18】コロナ危機収束後の面積の意向

最後に、コロナ危機収束後の働き方とワークプレイスの方向性についてたずねた【図表19】。「メインオフィスとテレワークの両方を使い分ける」(55.0%)が最も多く、次いで「在宅勤務を推進し、出社を減らす」(27.7%)、「オフィスをフレキシブルなレイアウト(フリーアドレス等)に変える」(25.5%)となった。8月調査と比較すると、「在宅勤務を推進し、出社を減らす」(27.7%)、「テレワークの対象者や頻度を増やす方向で制度を変更する」(8.0%)などは減少した一方で、「基本は出社とし、テレワークは緊急対応的な利用にとどめる」(21.4%)は増加していることから、コロナ危機収束後は以前同様に出社する働き方に戻そうとする企業が増えていることがうかがえる。

【図表19】コロナ危機収束後の働き方とワークプレイスの方向性(複数回答)

5.おわりに

2020年春以降、新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、出社の制限やテレワークの導入、時差出勤の実施など、企業は様々な対応を行ってきた。結果的に、これまで漸進的であった働き方改革の歩みは加速した。

今回の調査では、8月調査に引き続き、12月時点でのコロナ危機下における働き方と企業が抱える課題、そしてコロナ危機収束後の意向について明らかにした。8月調査と比較すると出社率は上昇し、コロナ危機収束後は「出社を重視する」と回答した企業の割合が増えるなど、働き方の揺り戻しの兆候がみられた。実際にテレワークを経験し、そのメリット・デメリットを鑑みて今後の働き方とワークプレイス運用を検討するなかで、集まる場の価値を見直す企業も少なくないと推察される。一方で、在宅勤務やサテライトオフィスの導入状況は8月調査と大きな差はなく、今後の方向性として「メインオフィスとテレワークの両方を使い分ける」と考えている企業も引き続き過半数を占めている。

さらに、2021年1月7日には首都圏の一都三県を対象に再度緊急事態宣言が発出され、政府が出社人数の7割削減を企業に求めていることなどから、企業のテレワーク導入がますます加速する可能性もある。もっとも、状況は刻一刻と変化しており、働き方とワークプレイスがどのように変化していくのか、今後も動向を注視する必要があるだろう。

ザイマックス総研は引き続き、有益な調査結果を公表していく予定である。

調査概要

調査期間

2020年12月9日~21日

調査対象

    ・ザイマックスインフォニスタの取引先企業

    ・ZXY 会員企業

    上記合計 41,758社

有効回答数

411社  回答率:1.0%

調査地域

首都圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)

調査方法

メール配信による

調査内容

  • オフィスの利用状況について
  • ・ オフィスの出社制限の有無
  • ・ 出社率(現在の目標・実態・将来の意向)
  • ・ 出社のルール、出社している職種
  • テレワークの利用状況について
  • ・ 在宅勤務の状況
  • ・ 在宅勤務の対象者、利用者
  • ・ サテライトオフィスの状況
  • ・ サテライトオフィスの対象者、利用者
  • ・ 具体的な運用ルール
  • 働き方およびワークプレイスの運用
  • ・ 現在取り組んでいるもの
  • ・ 拡張、縮小の理由・目的
  • ・ ワークプレイス運用の課題・困りごと
  • コロナ危機収束後の働き方
  • ・ 出社とテレワークの重視度
  • ・ オフィスの面積意向
  • ・ 働き方とワークプレイスの方向性
  • 入居中オフィスについて
  • ・ 所在地/契約面積/利用人数
  • 企業属性
  • ・ 業種/従業員数


回答企業属性(上段:%、下段:n)



レポート内のグラフに関して
・構成比(%)は、小数点第2位を四捨五入しているため内訳の合計が100%にならない場合がある。
※当レポート記載の内容等は作成時点のものであり、正確性、完全性を保証するものではありません。
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参考:働き方×オフィス 特設サイト

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