仕事と職場のグローバルトレンド2026「20のキーワード」(前編)

仕事とワークスペースをメインテーマとする世界的な知識ネットワーク「WORKTECH Academy(ワークテック・アカデミー)」では、グローバルトレンドを俯瞰する多彩な記事を発表している。今回はそのなかから、2026年1月に発表したトレンドレポート「The world of work in 2026」を紹介する。レポートでは、「人間のパフォーマンスの再設定」「壁のないワークプレイス」「持続可能な成長」「基本に立ち返る」という4つの切り口から、2026年の働き方とワークプレイスを形づくる20の主要トレンドを取り上げている。

「人間のパフォーマンスの再設定」に関するトレンド1から5では、オフィスが「生産性を演じる場」から「パフォーマンスを高める場」へと移行しつつある現状を探る。AIによるワークスロップ(見せかけの仕事)の危機、スキルギャップ、そして人間中心のデザインなどに焦点があてられている。

「壁のないワークプレイス」について述べるトレンド6から10では、ワークプレイスを「生きた、進化するシステム」として捉える。そこでは空間が互いに溶け合い、美観よりも適応性や機能性が重視される。デジタルはフィジカルと融合し、固定的な空間は急速に時代遅れとなる。また、空間がどのように機能しているかを理解するために新たな評価指標の必要性が示されている。

「持続可能な成長」に関するトレンド11から15では、活用されていない不動産資産から地域の生産エコシステムを生み出すマイクロイノベーション拠点、神経多様性を持つ従業員を支えるためのバイオフィリックデザインの再興、新たな職種としてスカイブルーカラー労働者の登場などが取り上げられる。

トレンド16から20は「基本に立ち返る」という考えが中心となっている。働き方に対する期待や生産性の新たな基準を見つけ、従業員の職場への帰属意識、オフィス回帰への反発、そして人々が職場におけるエクスペリエンスに何を求めているのかを探求する。

なお、AIは2026年の注目トレンドとして単独で取り上げられていない。これは、2025年にAIが大きな影響力を発揮し、すでにこれらのトレンドに組み込まれているためである。AIは、今年の議論を独占する単一の巨大な存在ではなく、働き方の基盤となる層として存在している。一見矛盾しているように思えるが、AIの支援は、人間であることの意味を浮き彫りにし、私たちの基本的なニーズと期待に光をあてる助けとなるだろう。

前編では、「人間のパフォーマンスの再設定」と「壁のないワークプレイス」に関する以下の10キーワードについて解説する。

1.ワークスロップ危機

AIのアウトプットが人間の監視能力を上回るとき

英国『エコノミスト』誌は2025年、「今年の単語」として「Slop(スロップ)」を選定した。この言葉は、デジタルコンテンツの質に対して高まりつつある不安を捉えている。本来「食べ物の残りかす」という意味を持つ「スロップ」は、フィードや受信箱、業務フローを埋め尽くす、差別化されていないAI生成コンテンツの氾濫を指す新造語となった。これは、デジタルシステムが生成するものの多くが、もはや編集も、文脈化も、チェックもされていないという広範な現実を反映している。

生成AIが日常業務に浸透するにつれ、組織は「過剰生産」という新たな運用リスクに直面している。AIシステムは、人間の監視が追いつかないペースで要約、草案、企画書を生成する。この新たに出現した「ワークスロップ危機」は、判断力を蝕み、エラーを加速させ、スピードを「負債」へと変えてしまう。

この問題は構造的なものである。AIは立ち止まることも優先順位をつけることもしない。適切に設計されたチェック機能がなければ、AIはチームが有意義にレビューできる以上の量のアウトプットを生み出し、意思決定を阻害し、説明責任を弱めるノイズをつくり出す。アウトプットが人間の監視能力を上回ると、エラーは偶発的なものから、組織全体に広がる常態的なものへと変化する。

こうした状況への対応もすでに現れ始めている。AIが事実と異なる回答を生成する「ハルシネーション(幻覚)」や誤出力によって生じる損失を補償する保険会社アーミラ・アシュアランスの商品など、「AI保険」という新たなカテゴリーが登場した。一方で、AIG、グレート・アメリカン、WRバーグレーといった大手保険会社は、AI導入の加速に伴い数十億ドル規模のリスクが生じることを見越し、AI関連の賠償責任を保険対象から除外しようとしている。

組織はAIの展開を急速に進めている一方で、品質、信頼、説明責任を担保するための仕組みは遅れている。その結果、自動化と保証の間のギャップは拡大している。「ワークスロップ危機」を管理するには、人間が判断に関与する前提でワークフローを再設計し、エスカレーション基準を明確に定義し、責任の境界を強化する必要がある。保険は短期的な保護にはなりうるが、長期的な安定性は、判断力を組織の中核能力として取り戻せるかどうかにかかっている。AIが基盤技術となる時代において、「センスメイキング(意味づけ)」が組織のレジリエンスを決定づけるだろう。

2.定着のパラドックス

安定した定着率の裏に潜む、労働力の脆弱性

多くの業界において従業員の定着率は比較的安定しているように見える。しかしこの表面的な安定は、労働力の内部に潜む脆弱性を覆い隠している可能性がある。経済の不確実性、AI主導のリストラ、そして求められるスキルの変化によって特徴づけられる労働市場において、従業員が現在の仕事にとどまる理由は、仕事にやりがいを感じているからではなく、転職に伴うリスクの高まりによるケースが増えている。

HRテック企業リープソムの「2026 Workforce Trends(2026年の雇用トレンド)」レポートによると、従業員の4人に1人は主にリスクを回避するために現職にとどまっており、半数以上が「仕事を楽しんでいるから残っているわけではない」と回答している。英国、米国、ドイツ、オランダでは、柔軟性の低下、契約期間の短期化、急速に進化するスキル要件が、転職への障壁として挙げられている。

これが組織のパフォーマンスや文化に与える影響は甚大である。不確実性によって定着がもたらされている場合、日々の業務は次第に限定的で内向きなものになる。従業員は、問題解決やコラボレーション、イノベーションに対して自発的なエネルギーを投入する可能性が低くなる。調査によると、HRリーダーの60%はすでにエンゲージメントの低下がパフォーマンスを損なっていると認識しており、約半数は士気の低下が燃え尽き症候群の増加につながっていると考えている。

こうした状況は、職場全体にわたる広範な組織再編を反映している。ジュニア層の役割は自動化または廃止されるケースが増え、キャリア初期における成長経路は狭まりつつある。一方で、HRリーダーの半数以上が退職者の補充を行っていないと報告している。キャリアパスが見えにくくなるなかで、従業員は不確実な未来を追求するよりも、現在の安定を維持する方向へと志向を強めている。

このような環境下では、ワークプレイスは組織の将来性を示す重要な兆しとなる。明確な成長機会や信頼できる将来像を提示できる組織では、ワークプレイスは関与や帰属意識を強化する。そうでない場合、安定は停滞へと転じるリスクがある。

企業にとっての課題は、組織の前進力をいかに維持するかである。これからの労働力の健全性は、昇進や成長を可視化し、学習を日常業務に組み込み、受動的な出社ではなく目的のあるコラボレーションを支えるワークプレイスを実現できるかどうかにかかっている。AIによって形づくられる労働市場においては、安定性だけではもはや組織の健全性を示す意味のある指標とはならない。

3.ソフトスキルの時代

仕事は「実行すること」から「理解すること」へと移行する

2026年には、生成AIがほとんどの職場ツールに統合され、草案の作成を即座に行い、定型的な認知タスクの多くを担うようになるだろう。実行プロセスが自動化されるにつれ、人間の優位性はソフトスキルへ移行する。ソフトスキルとはすなわち、判断力、創造性、センスメイキング(意味づけ)、そして意味のあるアイデアを生み出す能力である。AIが代替案を無限に生成できる時代において、アウトプットの量はもはや価値の指標ではなくなる。

この変化は、組織における「人材」の捉え方を変える。定型的な認知作業はもはや差別化要因ではなく、複雑さをどのように解釈し、前提を問い直し、情報を洞察へと変換できるかが差別化の鍵となる。

創造性は、個人の特性ではなく、業務上の能力として位置づけられるようになる。それは、問題の捉え方、情報の統合、そして前進するための道筋を見出す能力として発揮される。

企業には、創造的思考が許容され、期待され、さらに構造的に支えられる環境を構築することが求められる。心理的安全性は生産性を高める重要なレバーとなり、チームがアイデアを試し、共通理解を深めることを可能にする。偶発的な出会いを生み出すオフィス空間や、コラボレーションを促す習慣は、洞察が計画的にではなく、自然に生まれるための条件としてますます重要になるだろう。

AIに生成できるものが増えるにつれ、人間の仕事は「なぜそれが重要なのか」に焦点が当てられるようになる。文脈を読み取り、曖昧さのなかで意思決定を行い、物語を形づくり、そして意図を共有してチームをまとめるといったソフトスキルが、主要な差別化要因となる。これらの能力は、結束力、イノベーション、レジリエンスを推進する原動力であり、AIでは再現できない資質である。

ソフトスキルの時代は、仕事を「実行すること」から「理解すること」へと変革する。AIが実行を加速させるなかで、人間の優位性は「何が重要で、なぜ重要なのか」を解釈する力へと移っていく。

4.バイオパフォーマンス

人間のパフォーマンスを「組織の能力」として捉える

2026年には、人間のパフォーマンスは個人の責任ではなく、組織として備えるべき能力として扱われるようになるだろう。自動化による生産性の向上が頭打ちになるにつれ、人間の可能性を、集中力、レジリエンス、長期的に働き続ける力を支える生物学的条件という観点から捉え直すことに関心が移りつつある。

これは、従来の画一的で汎用的な企業向けウェルネス施策からの明確な転換を意味する。専門デザイン会社エリアは、ウェルビーイングは今後「福利厚生」ではなく、パフォーマンスを高めるうえでの不可欠な要素として扱われるようになると予測している。

バイオパフォーマンスは、ウェルビーイングを精密な実践として再定義する概念であり、パフォーマンス、医学、神経科学、予防的健康管理を融合させ、持続的な組織的優位性の源泉とするものである。

エリートスポーツに触発され、一部の組織ではすでに、社内の医療専門家の配置、座りっぱなしやVR関連身体負荷に対処する理学療法、認知レジリエンスを高める神経科学的アプローチ、データを活用した燃え尽き症候群予防などの取り組みが進められている。バイオマーカー、個別の栄養管理、回復サイクル、認知負荷管理が、画一的な施策に取って代わり、ウェルビーイングはプログラム主導ではなく個別最適化されたものへと変化しつつある。

こうした環境下では、ワークプレイスもハイパフォーマンス環境へと進化する。空間やスケジュール、ツールは、人間の限界を前提に設計されるようになり、短期的な生産性ではなく、集中、回復、持続的に働き続ける力の向上が重視される。そして、人事部門は、研究開発チームに近い役割を持ち、人材管理だけでなく、継続的な人間の成長とパフォーマンスの最適化を担うようになる。

この変化をさらに後押しするのが、長寿化という長期的圧力である。平均寿命が95〜100歳へと延びるにつれ、40年間働いて引退するという直線的なキャリアモデルは崩れつつある。組織は、より長く非線形な働き方を前提とした「エイジ・レディワーク(年齢対応型仕事)」のため、役割、環境、ウェルビーイングの仕組みを設計する必要がある。エリア社が述べるように、「ハイブリッドワークやスマートビル、デジタルツインについて語られることは多いが、本当の革命は生物学的な領域で起こるだろう」。

5.人間工学的完全性

不快感への対処はもはや妥協できない課題となる

ハイブリッドワークが定着するなか、組織は「どこで働くのか」を改めて問い直すようになっている。しかし環境が変わっても、人間の身体の仕組みは変わらない。これは現代のワークプレイスにおけるパフォーマンスの盲点のなかでも、最も高いコストを伴うものの一つといえる。しかし、状況は変わりつつある。

2026年には、「人間工学的完全性」がワークプレイスの質を測る重要な指標として浮上するとみられている。これは、単に人を守るだけでなく、人間の能力を高め、健康的な姿勢を維持し、不快感に起因する見えない生産性の損失を最小限に抑える環境を設計できているかどうかという、組織の能力を示す概念である。

現在、従業員の半数以上が筋骨格系の不快感を報告しており、特にハイブリッドワーカーは体に適合していない自宅の設備や慣れないオフィス環境のために、毎週何時間もの生産的な時間を失っている。こうした問題は、記録される労災として表面化することはほとんどなく、疲労、注意散漫、認知能力の低下といった形で気づかないうちに蓄積されていく。不快感による1日10分の集中力低下は、従業員1人あたり年間数千ドルもの損失につながる。しかしこのコストを測定または管理している組織はほとんどない。

より深刻な問題は、ワークスペースのインフラの多くが、実際に使用する人々のために設計されていないことである。従業員は手元にあるツールの調整方法を十分に理解していないことが多く、オフィスチェアの調整機能を正しく把握している人は15%未満にとどまる。環境が中立的な姿勢(*身体への負担が少ない姿勢)を支えられない場合、不快感は「常態」となり、結果としてパフォーマンスは低下する。

オフィス家具メーカーであるヒューマンスケール社によると、人間工学的完全性はこれらの課題を健康促進の福利厚生としてではなく、中核的なパフォーマンスリスクとして捉え直すべきものである。その焦点は、個々の怪我予防から、人間のパフォーマンス全体を支えるシステムへと広がる。強力な人間工学戦略を導入している組織では、生産性、離職率、欠勤率、そして全体的な業務効率において大きな成果が報告されている。

今後、人間工学的完全性は、コラボレーション、持続可能性、エクスペリエンスと並ぶワークプレイス指標となるだろうか。2026年に企業がこの課題にどう向き合うかは、その答えを示す重要な手がかりとなるだろう。

6.意味のある瞬間

新しいタイプのエクスペリエンス指標をつくる

ワークプレイスエクスペリエンス(職場での体験)は、人材の獲得、エンゲージメント、そして定着に影響を与える決定的な要素として2026年も議論の中心であり続けるだろう。現在の働き方は、場所、テクノロジー、文化がダイナミックに交差する地点に存在している。しかし企業が用いている指標の多くは、依然として不動産の効率や稼働率に焦点を当てており、「なぜ」という要素を十分に捉えきれていない。

組織が通常測定しているものと従業員が真に重視するものとの間にギャップが生じており、それが新しい評価手法の必要性を浮かび上がらせている。こうした課題に対し、アンワーク社やワークテック・アカデミーらが共同で、従業員にとって本当に重要なことを測定するための「ワークテックインデックス(WORKTECH Index)」を開発した。この指標は、短く標準化されたアンケート形式を採用し、従業員のエクスペリエンス全体における6つの「意味のある瞬間」を捉える。これらの「意味のある瞬間」は、職場の内外での人々の感情、パフォーマンス、つながりを形づくるもので、ワークプレイス環境、デジタルツール、そして文化的な体験の相互作用を探求する。

企業が変革を続けるなかで、「ワークテックインデックス」はタイムリーな示唆を与える。「意味のあることを測定する」ことは、もはや選択肢ではなく、ワークプレイスの未来にとって不可欠な要素である。そこには複雑な力学が働いている。JLL社の調査によると、従来のオフィスは「戦略的なキャリア形成プラットフォーム」へと変化しており、従業員は関係構築のために物理的な存在を調整しながら、プロフェッショナルとしての影響力を発揮するためにデジタルでの可視性を維持しているという。

つまり2026年には、複数の「プレゼンス(存在)」のチャネルを使いこなすことが成功の鍵になるだろう。物理的空間は、質の高い相互作用を生み出す戦略的な接点を備えた「ネットワーク育成のインフラ」として機能するようになる。測定すべきなのは、単にオフィスの人数を数えることではなく、まさにこうした価値なのである。

7.アウトドア・ワーク

自然の中にいることは、認知機能とウェルビーイングを高める

屋外のワークエリアは、カリフォルニアの職場では当たり前とされてきた。しかし2026年には、日差しの少ない気候の地域でも、プライベートテラスや中庭、都市部の屋上、建物内の庭園など屋外空間で働くことが流行し始める見込みである。アウトドア・ワークはカリフォルニアだけでなく、オフィス回帰の世界で「最も人気の高い席」の一つとして注目されるようになる。

アウトドアで働くことへの関心が高まる背景にはいくつかの要因がある。第一に、コロナ禍で屋内の会議が制限されるなか、人々は屋外でも質の高い仕事ができることを学んだ。

第二に、自然を見ることや自然の中にいることが認知パフォーマンスに有益な影響を与えることが、多くの研究で示され、一般メディアでも大いに注目を集めている。テック企業は以前からこの流れを取り入れてきたが、いまでは他の業界でもアウトドア・ワークの導入が進み始めている。たとえばメタ社のメンローパーク・キャンパスには、ある建物の屋上から隣の建物へと続く、広々とした魅力的な庭園が設けられている。

第三に、企業と従業員の「持ちつ持たれつ」の前提が揺らぐなかで、人々は自分が楽しめることを重視するようになっている。レポートを書いたりコードを書いたりする仕事でも、広くて騒がしいオフィスフロアで黙々と作業するより、屋外で働くほうがはるかに快適である。もちろん、雨や雪、湿度、虫、日差しのまぶしさなどの不便さはある。それでも屋外ワークエリアのなかには、ウォーキング・ミーティングができるほどの広さを備えたものもあり、創造性を促進し、周囲のより広いコミュニティとつながる場として機能することもある。

建築事務所パーキンス&ウィルによると、かつてはあるとうれしい特典と見なされていたテラスなどの屋外アメニティは、いまや人材の採用や定着に不可欠な武器となっている。こうした変化は建物の設計にも影響を及ぼしており、商業用不動産開発業者はテナント獲得競争のために屋外空間を積極的に活用するようになっている。共有の屋外スペースもまた価値が高く、テナントが賃貸スペースをコラボレーションの場として活用する機会を提供する。

より多くの地域でテラス付きオフィスの賃料が上昇するにつれ、2026年にはアウトドア・ワークはさらに勢いを増していくだろう。

8.エクスペリエンスの原動力

AI搭載アプリがワークプレイス体験の基盤層になる

AIは、職場アプリを単なる自動化ツールから従業員体験全体を形づくる知的で能動的なエージェントへと変えつつある。2026年には、Microsoft Places、Cisco Webex、Zoomなどのコラボレーションツールから、より包括的な従業員体験プラットフォームに至るまで、AI主導のソリューションが進化し、ニーズを予測し、ワークフローを個別最適化し、エンプロイージャーニーを端から端まで統合的に調整するプロアクティブなシステムへと変貌していくだろう。

こうしたAI駆動の仕事体験は、オンボーディング、学習、パフォーマンス管理、ウェルビーイング、人事評価、さらには物理的なワークプレイス空間の案内まで、従業員を導くようになる。ユーザーが検索、スケジュール調整、設定を行う代わりに、プラットフォームに組み込まれたAIエージェントが洞察を提示し、行動を提案し、日常的な意思決定をリアルタイムで自動化する。これにより、受動的なデジタルツールから、集中とエンゲージメントを能動的に支援する環境への移行が加速する。

2026年にはパフォーマンスが「効率性」と「体験の質」の組み合わせによって定義されるようになるなか、こうした変化はますます重要になっている。摩擦を減らし、意思決定を加速させ、シームレスなコラボレーションを可能にするためにAIを活用する組織は、生産性と従業員満足度において目に見える成果を上げ始めるだろう。このシナリオでは、AI搭載アプリが、シームレスな体験を生み出す原動力となる。

しかし、真に自律的なエージェント型AIへの移行は段階的に進むだろう。2026年において、ほとんどのAIエージェントは定められた制約のなかで動作し、人間の監視が必要となるまでの一定期間のみ自律的に実行できるだろう。モデル性能は大幅に向上しており、およそ7ヶ月ごとに能力が倍増しているものの、1日中エラーなく自律稼働できる段階に到達するのは18〜24ヶ月先になると見込まれる。

その結果、先進的な組織は、AIエージェントを活用したデジタル組織構造と、判断力、創造性、そして関係構築に重点を置いた人間の労働力という、2つの未来を並行して計画し始めるだろう。2026年の戦略的課題は、エージェントと人間がどのように協働し、責任を分かち合い、「良い仕事」の定義を再設計することになるだろう。

9.組立式ワークプレイス

モジュラー型オフィスは、リアルタイムに適応するよう設計される

2026年には、固定的で変化しにくいワークプレイスは次第に衰退していくだろう。そこで行われる仕事と同じくらい流動的でダイナミックな空間が期待されるようになる。ハイブリッドワークの定着、流動的なチーム編成、そして個別最適化の台頭により、オフィスはリアルタイムで適応し、応答することが必要になる。「組立式ワークプレイス」は、オフィスを固定資産ではなく、モジュール化された「生きたシステム」として捉えることで、このニーズに応える。

物理的な空間は繰り返し組み立て、分解し、再構成することが可能である。環境を刷新するために不定期の改修やリース契約の解除を待つのではなく、組織はワークプレイス設計の中核に「適応性」を組み込むようになるだろう。そのために、デザイナーや不動産チームはモジュラー製品デザインの原則を取り入れ始めている。

家具メーカーAISの戦略・マーケティング責任者であるリーソン・メドハースト氏によると、組立式設計に着想を得たアプローチは、恒久的な設備よりも機能性・品質・持続可能性を優先する。機能性とは、ワークプレイスのあらゆる要素が複数の目的に対応でき、チームが迅速かつ自律的に空間を組み替えられることを意味する。品質は、使い捨ての建具として扱われるのではなく、耐久性のある部材が繰り返しの変更に耐えられることを担保する。持続可能性は、大規模な改修ではなく、小さなモジュール調整によって設計を維持することで、長期的な利用を可能にすることに焦点をあてる。

こうした適応型環境を機能させるうえで、データは重要な役割を果たす。2026年には、継続的利用評価(POE)が標準的な実務として広まり始めるだろう。これにより組織は、スペースの実際の利用状況を監視し、長期間にわたってほぼリアルタイムで対応できるようになる。利用状況、人の動き、行動に関する洞察は、人々の働き方に合わせてワークプレイスを維持するための漸進的な改善へとつながる。

オフィスを完成された設計成果物ではなく、生きたシステムとして捉えるためには、考え方の転換が求められるだろう。2026年、最もレジリエンスの高いワークプレイスとは、引き渡し後も長期にわたり進化し続け、関連性・持続可能性・高いパフォーマンスを保ち続けられるよう設計されたものである。

10.自分のAIエージェントを持ち込む

プラットフォーム横断でマルチエージェントモデルを受け入れる

2026年には、企業は「Bring Your Own Agent(BYOA:自分のエージェントを持ち込む)」モデルへと舵を切るだろう。これは、承認されたAIエージェントを信頼できる職場プラットフォームに直接組み込んで活用する考え方である。CopilotやGeminiのような単一モデルに標準化するのではなく、役割や業務内容、または個人の好みに応じて選定された複数のAIエージェントのポートフォリオを運用できるよう支援する。BYOAは、BYOD(Bring Your Own Device:自分のデバイスを持ち込む)の発想をAI時代に拡張したものであり、AI戦略と従業員体験戦略が融合する超個人最適化された仕事環境への移行を示している。

企業はエージェントを「デジタル労働力」の一形態として扱う準備が整っており、業務プロセスをどこまで人間の介入なしに実行できるか、また複数のエージェントを複雑なシステム全体でどのように統合・調整すべきかなど、新たな意思決定を迫られている。一方、主要なプラットフォームはエージェント機能やローコードツールを組み込みつつあり、人事や顧客関係管理、サプライチェーン、サービス領域に接続できるカスタマイズされたエージェントをより容易に展開できるようになっている。

BYOAの中心にあるのは、セキュリティとガバナンスである。企業のID管理、コンプライアンス、データ保護の境界内でエージェントを実行することで、組織はやり取りを監査し、ポリシーを適用し、承認されていない一般向けAIツールへの依存を減らすことができる。さらに、特定のAIエージェントに依存しない統合管理の仕組み(オーケストレーション層)は「エージェントの乱立」を防ぎ、従業員が複数の断片的なボットを管理することなく、タスクごとに適切なエージェントを呼び出すことを可能にする。

BYOAという考え方は、SaaSベンダーや社内プラットフォームチームに対して「AIエージェントの活用を前提としたシステム設計」を促す。これにより、単一のモデル提供者への依存を減らし、機能の進化に合わせて組織が外部または内部のLLMエージェントを柔軟に組み合わせることが可能になる。

エージェントが日々の業務の中心に入り込んでいくにつれ、BYOAは企業のAIアーキテクチャにおける次の標準として位置づけられるだろう。