生成AIとロボットによる職業の代替可能性の推計

人手不足問題の解決に向けて(第12回)

はじめに

人手不足問題について、ザイマックス総研ではこれまで、ノンデスクワーク人材の不足が問題の核心であることを指摘してきた。ノンデスクワークに注目してきた理由の一つは、生成AIの進展によりデスクワークの需要が減少する可能性が以前から指摘されてきた一方で、ノンデスクワーク領域の職業は自動化が難しく、将来にわたって人間の労働需要が維持されると考えられてきたためである。

しかし近年では、技術の進展は生成AIというデジタル領域にとどまらず、ロボティクス分野にも波及している。ロボット技術自体は以前から存在していたものの、近年はAI技術との組み合わせによって適用範囲が広がるとともに、現業系の人手不足や人件費上昇を背景に、自動化の経済性も高まりつつある。こうした動きは、これまで自動化が困難とされてきた領域にも変化をもたらす可能性がある。

生成AIが仕事や雇用に与える影響については、国内外で多くの研究が蓄積されている。一方で、ロボティクスの影響を同様の枠組みで捉えた分析はまだ限られている。そこで本レポートでは、生成AIとロボティクスそれぞれが、人間の仕事をどの程度代替・自動化しうるのかを検証する。

第1章では、分析に用いたデータの説明と分析手法について解説する。

第2章では、生成AI(*1)およびロボットについて、現在の技術水準を前提に、対象とする427職業の各タスクにおける代替可能性を推計する。生成AIまたはロボットがタスクの大部分を担いうる職業については、将来的に人間の労働需要が減少する可能性がある。

さらに第3章では、各職業の有効求人倍率(=現在の人手不足の度合い)と、生成AI・ロボットによる代替可能性(=将来的な労働需要の代替余地)を組み合わせることで、現在だけでなく将来にわたって労働需給が逼迫しうる職業を分析する。現在人手不足が深刻な職業であっても、技術による代替が進めば需給の緩和が期待される一方、代替が進まない場合には需給の逼迫が一層強まり、賃金水準の上昇などにつながる可能性がある。

現在と将来で人手不足の状況が変化しうるなか、代替可能性を定量的に把握することは、将来的に需給が逼迫する可能性の高い職業を特定し、それに対する先行的な対応策を検討するうえで有効であると考えられる。

*1 本レポートでは便宜上「生成AI」としているが、分析ではLLM(大規模言語モデル)の代替可能性を算出している。

1. 分析手法

本分析では、大和総研の先行研究(*2)を参考に、各職業を構成するタスクごとに、生成AIやロボットによってどの程度そのタスクを代替できるか(=人が行っている作業のうち、どの程度を技術で置き換えられるか)をGoogle社の生成AI「Gemini 2.5 Flash」を用いて評価した。

手順はまず、各タスクの代替可能性の評価を3段階で行い(以下枠内参照)、低位を0、中位を0.5、高位を1に置き換えて数値化した。さらに、各職業における各タスクの重要度と実施率(*3)を考慮して重み付けを行い、タスク単位の影響度を算出した。これらを職業単位で集約し、加重平均により各職業の「代替可能性」指標を導出した。すなわち本指標は、「その職業の業務のうち、技術で代替できる割合の大きさ」を示すものである。

*2 大和総研,2023「生成AIが日本の労働市場に与える影響②」

*3 実施率とは、その職業に就いている者のうち一般的にそのタスクを実施している人の割合を示す指標。本分析では、労働時間のうちそのタスクを実施する時間の割合は考慮していない。

たとえば「商社営業」では、職業を構成する15のタスクのうち、「マーケティング活動の報告書作成」はE2(生成AIで代替可能)と評価された一方、「仕入れ先との交渉」や「債権保全措置をとる」などはE0(代替困難)とされた。また、「在庫管理」はR2(ロボットで自動化可能)、「商品の運搬や引渡しの手配」はR1(ロボットで一部支援可能)とされ、その他のタスクはR0(自動化困難)と評価された。このように、職業全体ではなく、タスクごとの代替可能性の違いを積み上げて指標を算出している。

データは独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)作成「職業情報データベース 簡易版数値系ダウンロードデータ ver.6.01」を使用した。より詳細な分析手法は末尾参照。

なお、本指標はあくまで「技術的にどこまで代替可能か」という観点から評価したものであり、実際の導入可否や普及時期を直接示すものではない。実際の導入には、コスト、制度、安全性、職場環境などの要因が影響する可能性がある。

2. 生成AIおよびロボットによる各職業の代替可能性

本章では、各職業の推計結果を概観する。分析対象とした427職業の平均値は、生成AI代替可能性が0.3452、ロボット代替可能性が0.2582であった。

【図表1】は、横軸に生成AI代替可能性、縦軸にロボット代替可能性をとり、各職業をプロットしたうえで、デスクワーク、デスクワーク兼ノンデスクワーク、ノンデスクワークの3区分に分類したものである。各区分の分布を比較すると、ノンデスクワークではロボット代替可能性が相対的に高い職業が多くみられる一方、生成AI代替可能性は0.5以下の範囲に集中している。これに対し、デスクワークおよびデスクワーク兼ノンデスクワークでは、生成AI代替可能性が相対的に高く、0.2以上の領域に広く分布している。

このように、生成AIとロボットはそれぞれ異なる業務特性に対応しており、代替可能性は補完的な関係にあることが示唆される。また、両者の代替可能性が同時に高い職業は限定的であり、現時点では情報処理と物理作業の双方を一体的に代替できるテクノロジーは限られているといえる。

【図表1】<職業別>ロボット代替可能性と生成AI代替可能性の分布

※末尾にて動的グラフ(Tableau)の閲覧可能

職業単位でみると、生成AI代替可能性が高い職業は「データ入力」「通訳者」「国家公務員(行政事務)」などであった【図表2】。

上位20職業の多くは定型的・反復的な業務を中心とするデスクワークであるものの、「社会学研究者」や「ITコンサルタント」、「ファイナンシャル・プランナー」などの高度専門職でも一定の代替可能性が示された。情報処理・分析・文書作成を含む職種は、生成AIの影響を受けやすい傾向がみられる。

また、従来は自動化が限定的と考えられていた対人サービス職(「旅行会社カウンター係」「栄養士」など)やノンデスクワーク(「遊園地スタッフ」「船舶機関士」など)の一部にも影響が及んでおり、生成AIの適用範囲の広さが示唆される。

【図表2】生成AI代替可能性の高い職業ランキング

ロボット代替可能性が高い職業は「清酒製造」「タイヤ製造」「製品包装作業員」などであり、上位20職業の多くをノンデスクワーク、特に食品・素材・製造業などの加工・生産工程に従事する職種が占めた【図表3】。

これらの職業は標準化しやすい反復的なタスクを多く含み、すでに自動化・機械化が進んでいることが評価の理由となった。一方で、検査やオペレーター職も上位となっており、単純作業に限らず工程管理や品質管理の一部にも自動化の波が及んでいることが示唆される。全体として、ロボットは物理的作業を伴う領域で強く作用し、製造業における労働需要の構造を変化させる可能性がある。

なお、上位20職業には入らないものの、デスクワークでも「キッティング作業員(ロボット代替可能性0.6928)」や「出荷・受荷事務(同0.5632)」などはロボット代替可能性が高いことがわかった。

【図表3】ロボット代替可能性の高い職業ランキング

3. 有効求人倍率からみる将来の労働需要

第3章では、各職業の有効求人倍率(=現在の人手不足の度合い)と、生成AIおよびロボットによる代替可能性(=将来的に労働需要がどの程度変化しうるか)を組み合わせることで、現在だけでなく将来にわたっても労働需給が逼迫しうる職業を分析した。

【図表4、5】は、縦軸に各職業の2026年1月時点の有効求人倍率、横軸に生成AIおよびロボットによる代替可能性をとり、職業ごとにプロットした散布図である。なお、427職業の有効求人倍率の単純平均は1.99倍(*4)であった。

*4 2026年1月の有効求人倍率(全国計)は1.18倍であるが、これは全国の有効求人数を有効求職者数で除して算出された値であり、ここで示した職業別の単純平均とは異なる点に留意されたい。

散布図からは、生成AI・ロボットいずれの場合も、右上(有効求人倍率が高く、かつ代替可能性も高い)に位置する職業は限定的であることが確認できる。すなわち、「現在人手不足が深刻である一方、テクノロジーによる代替が進みやすい」職業は、本分析では多くは見出されなかった。例外的に、「土木設計技術者」「型枠大工」「鉄筋工」の3職種は代替可能性が0.5を超えており、テクノロジーの活用による人手不足の緩和が期待される。

一方で、左上(有効求人倍率が高く、かつ代替可能性が低い)に位置する職業も一定数存在しており、これらは現時点および将来においても人手への依存度が高く、労働需給の逼迫が継続する可能性が高いと考えられる。

【図表4】<職業別>有効求人倍率(縦軸)と生成AI代替可能性(横軸)の分布

※末尾にて動的グラフ(Tableau)の閲覧可能

【図表5】<職業別>有効求人倍率(縦軸)とロボット代替可能性(横軸)の分布

※末尾にて動的グラフ(Tableau)の閲覧可能

【図表6・7】には具体的な職業を抜粋した。有効求人倍率が高く、かつ生成AI・ロボットのいずれによる代替可能性も低い職業(図表では黄色ハイライトで示す)として、警察官、海上自衛官、麻薬取締官、消防官、陸上自衛官といった保安系職種のほか、解体工、とび、雑踏・交通誘導警備員などが挙げられる。

これらの職業は、将来的にも技術による代替が進みづらく、労働需給の逼迫が一層強まる可能性が高い。さらに、これらの多くは社会基盤の維持に関わるエッセンシャルワークであり、人材不足が生じた場合の社会的影響は大きい。そのためこれらの職業においては、待遇改善などを通じた人材確保策を講じるとともに、タスクの一部でも自動化・省人化が可能な領域を見極め、テクノロジーの活用を段階的に進めていくことが求められる。

【図表6】<職業別>有効求人倍率と生成AI代替可能性の分布(抜粋)

【図表7】<職業別>有効求人倍率とロボット代替可能性の分布(抜粋)

【図表8】は、今回の推計に基づき、生成AI代替可能性とロボット代替可能性の合計値が0.4以下(全体分布の中で相対的に代替可能性が低い水準)の職業を抽出し、有効求人倍率が高い順に並べたランキングである。有効求人倍率が同値の職業は代替可能性の合計値が低い順とし、参考値として現在の年収を併記している。これは、現時点の技術では代替が難しく、かつ人手不足の度合いが高い職業を示すものであり、需給逼迫を背景とした賃金上昇圧力の高さを推量するための参考材料となる。

その結果、とびや解体工などの技能職に加え、警察官や消防官、介護職といった対人・現場対応型の職種が上位に位置した。これらは非定型性や身体性、判断業務を多く含み、技術による代替が難しい構造にある点で共通している。

もっとも、賃金への影響は職種の属する領域によって異なる。民間の技能職については、労働需給の逼迫が直接的な待遇改善の圧力となり、人材確保につながる可能性が高い。一方で、警察・消防や介護といった公共性の高い職種では、賃金水準が制度や報酬体系に強く制約されるため、需給逼迫が直ちに賃金に反映されにくい。こうした公共領域においては今後、制度の見直しなどを通じた処遇改善の取り組みが求められるだろう。

【図表8】賃金上昇圧力が高まりうる職業ランキング

おわりに:人間とテクノロジーとの役割分担の再構築を

本分析から得られた示唆は大きく2点に整理できる。

第一に、生成AIとロボットは、それぞれ異なる業務特性に対応しており、代替可能性は補完的な関係にある。生成AIは事務・分析・設計などの知的業務に、ロボットは物理的・反復的作業に強く影響しており、現時点では、両者の代替可能性が同時に高い職業は限定的である。ただし、将来的には両者が組み合わさったフィジカルAIなどの技術進展により、この構図が変化する可能性にも留意が必要である。

第二に、人手不足が深刻でありながらテクノロジーによる代替可能性が高い職業は現時点ではほとんど確認されなかった。これは、人手不足が技術導入によって自動的に解消されるという、単純な構造にはないことを示している。したがって、人手不足への対応は、技術導入だけに依存するのではなく、処遇改善などの従来型の施策と組み合わせて進める必要がある。

また、今回の分析の過程では、同一職業内でもタスクごとに代替可能性が大きく異なることが確認された。このことは、人手不足対策を職業単位ではなくタスク単位で再設計する必要性を示唆している。すなわち、各タスクについて「人が担う」「テクノロジーで代替する」「他者へ分配する」といった形で再配分を行うことで、限られた労働力をより効率的に活用できる可能性がある。スポットワークなどの新たな労働供給の仕組みも広がりつつあるが、現時点では一部の業界にとどまり、人手不足の深刻な分野での活用は十分とはいえない。今後は、こうした仕組みを含め、タスクの分解と再配分を前提とした働き方の再設計が重要となるだろう。

以上を踏まえると、本分析は「テクノロジーが仕事を奪うか否か」という単純な議論ではなく、むしろ人手不足が進行するなかで、テクノロジーと人間の役割分担をどのように再構築するかという課題に対する示唆を提供するものである。加えて、今後は各タスクの「他者への分配しやすさ」に着目した分析を行い、タスク再配分による人手不足緩和の可能性についても検討する予定である。

分析手法の詳細

本推計は、大和総研による「生成AIが日本の労働市場に与える影響②」(大和総研,2023)の推計手法を参考に以下の手順で実施した。

①タスク単位での評価:今回分析対象とした各職業についてタスク記述を抽出し、タスクごとに生成AIによる代替可能性およびロボットによる代替可能性をGoogle社の生成AI「Gemini 2.5 Flash」により評価した。評価はカテゴリ値で付与し、分析では低位を0、中位を0.5、高位を1に置き換えて数値化した。

②タスクの重み付け:各タスクに対して、そのタスクが職業全体の中で占める比重を反映させるため、タスクの重要度および実施率の情報を結合した。タスク単位の影響度は、生成AI評価およびロボット評価に対して、タスクの重要度と実施率を乗じることで算出した。これにより、単に代替可能な業務が存在するかではなく、そのタスクが職業全体においてどの程度の比重を持つかを考慮した評価を行った。

③職業単位への集約:タスク単位で算出した影響度を職業単位で合計し、タスク全体のウェイト合計で除することで、職業ごとの生成AI代替可能性およびロボット代替可能性を算出した。これらの指標は0から1の範囲をとり、値が高いほど当該職業において生成AIまたはロボットが担いうるタスク比率が高いことを示す。なお、本指標は「評価値 × タスクの重要度 × タスクの実施率」の加重平均として算出している。

データ出典:独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)作成「職業情報データベース 簡易版数値系ダウンロードデータ ver.6.01」を、職業情報提供サイト(job tag)より2026年3月13日にダウンロード(https://shigoto.mhlw.go.jp/User/download)、ザイマックス総研にて加工して作成

使用データ:本分析では職業情報提供サイト「job tag」に公開されている職業データ(各職業に紐づくタスク内容の記述、タスクの重要度、タスクの実施率)の情報を利用した。タスクの重要度は当該業務が職業の中でどの程度重要であるかを示す指標であり、実施率はその職業に就いている者のうち、一般的にそのタスクを実施している人の割合を示す指標である。

付録(14クラスタ別の代替可能性分布)

現在の仕事を分類する~人手不足問題の解決に向けて(第9回)~」(ザイマックス総研,2025)では、本レポートと同様に職業情報提供サイト(job tag)のデータを用い、職業を14のクラスタに分類している。

以下に掲載するインタラクティブなグラフ(Tableau)は、今回推計した生成AI代替可能性およびロボット代替可能性の分布を、これらのクラスタ別に可視化したものである。画面右側のフィルターでクラスタを選択できる。各プロットにカーソルを合わせることで、職業名や代替可能性の値を確認することができる。各クラスタの詳細な定義や特徴については、上記レポートを参照されたい。

なお、上部メニューを切り替えることで、本レポートの【図表1,4,5】も閲覧、同様の操作が可能である。