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2023.01.20

1人あたりオフィス面積調査(2022年)

~コロナ禍で変わる「1人あたりオフィス面積」~

ザイマックス不動産総合研究所(以下、ザイマックス総研)は、企業におけるオフィスの利用実態を把握するため、オフィスビルに入居するテナント企業を対象に継続した調査を行っている。本調査は、一般的な事務所に入居している企業における利用者1人あたりの賃借面積(以下「1人あたりオフィス面積」)について分析し、企業の出社率を加味したオフィス面積を検討する材料を提示するものである。

調査結果
  • ・ コロナ禍でテレワークが普及し、オフィス利用人数と在籍人数が急激に乖離しつつある状況で、「1人あたりオフィス面積」の捉え方を見直す必要に迫られた。本レポートでは、「出社率」といった新たな要素も考慮して、従来のオフィス利用者1人あたりオフィス面積ではなく、「<在籍>1人あたりオフィス面積」および「<出社>1人あたりオフィス面積」それぞれについて分析した【図表1】。
  • 【図表1】1人あたりオフィス面積の捉え方の変化



  • ・ 2022年東京23区の<在籍>1人あたりオフィス面積は3.66坪、<出社>1人あたりオフィス面積は4.88坪となった。

1. はじめに

ザイマックス総研では「1人あたりオフィス面積調査」(*1)を通じ、2013年から2019年まで毎年、一般的なオフィスにおける利用者1人あたりの賃借面積の実態を分析・発表してきた。


コロナ禍発生以前から、フリーアドレスやテレワークの導入など働き方改革を推進するテナントの増加により、1人あたりオフィス面積は緩やかに縮小し、2019年の1人あたりオフィス面積は3.71坪となった。

2020年にコロナ禍が発生し、初の緊急事態宣言が出されて以来、企業はオフィスに出社する従業員数をコントロールする必要に迫られた。ザイマックス総研が2020年8月に行った首都圏企業調査(*2)によると、約8割の企業がコロナ禍以前よりも出社率が低くなるように制御しており、実際に4割以上の企業が、出社率を50%未満に抑えていた。こうした状況において、オフィス利用人数と在籍人数(*3)は急激に乖離していると予想されたため、1人あたりオフィス面積の捉え方を見直す必要があった。

*3 在籍人数とは当該オフィスに籍を置いている人数。なお、「在籍人数」に出社率を掛け合わせることによって「オフィス利用人数」が算出されるため、完全出社(出社率が100%)が前提であったコロナ禍以前では、「在籍人数」「出社人数」「オフィス利用人数」はほぼ同値であった。しかし、テレワークが普及し出社率が必ずしも100%ではなくなった今、オフィス利用人数は在籍人数ではない場合がある。

その後、ザイマックス総研が継続的に実施した企業調査(*4)においては、出社率は2020秋調査以降、実態・コロナ禍収束後の意向ともに平均65%前後で安定して推移している。つまり、今後コロナ禍が収束してもテレワークが一定程度定着するとみられ、オフィス利用人数と在籍人数は異なる可能性が高い。そこで、2021年から、従来のオフィス利用人数に代わって、「在籍人数」と「出社人数」を調査し、それぞれの1人あたりオフィス面積を算出した。

2. 1人あたりオフィス面積

【図表2】は、各企業テナントの賃借面積、在籍人数と出社人数から、<在籍>1人あたりオフィス面積と<出社>1人あたりオフィス面積を計算し、その年別推移を示したものである。

2022年の<在籍>1人あたりオフィス面積の中央値は3.66坪と過去最少となった。また、<出社>1人あたりオフィス面積は4.88坪と、昨年度から大きく減少した。

<在籍>1人あたりオフィス面積と比べ、<出社>1人あたりオフィス面積が大きい背景としては、コロナ禍による出社制限やテレワークにより、出社率が低下したことが挙げられる。

【図表2】<在籍/出社>1人あたりオフィス面積の推移(2008~2022、東京23区)


【図表3】は、1人あたりオフィス面積を変化させる要因をまとめたものである。

2021年から2022年にかけて、1人あたりオフィス面積は在籍、出社ともに減少しており、要因としては人数増・面積減が考えられる。

まず、<在籍>1人あたりオフィス面積の減少の背景としては、ハイブリッドワークを推進する一環としてフリーアドレスの導入やメインオフィスを縮小し(面積減)、メインオフィス以外に働く場所を分散させようとした動きがあったほか、企業の景況感の改善などを背景に新規採用の強化による人員増が挙げられる。

一方で、<出社>1人あたりオフィス面積を減少させる背景としては、緊急事態宣言の終了や、出社制限の緩和などにより、従業員がオフィスに戻る動きが強まり、出社人数が増加したことが考えられる。

【図表3】<在籍/出社>1人あたりオフィス面積を変化させる要因

3. おわりに

本レポートでは、在籍人数および出社人数それぞれの1人あたりオフィス面積について公表した。

<出社>1人あたりオフィス面積と<在籍>1人あたりオフィス面積に大きな差があったことから、従来の在籍人数に基づいて整備されたオフィスでは出社率の低下に伴いオフィススペースに余剰が生じている可能性が明らかとなった。

今後も企業の出社施策やオフィス面積の調整などにより、1人あたりオフィス面積は徐々に変化していくだろう。

なお、ザイマックス総研では、オフィスを利用する人数が流動的になったことを受け、「1人あたりオフィス面積」の指標に加え、「大都市圏オフィス需要調査」(*5)の結果をもとに「1席あたりオフィス面積」という「席」に関する分析も行い、2021年に「コロナ禍で変わるオフィス面積の捉え方」(*6)として公開している。こちらの指標に関しても、今後最新結果を公開する予定なので、本調査と併せて参考になれば幸いである。

*5 2021年6月9日公表「大都市圏オフィス需要調査2021春
調査概要

調査期間

2008年から2022年(年に1度)

調査対象

東京23区のオフィスビルに入居する一般事務所用途テナント

有効データ数

・<在籍>1人あたりオフィス面積

 9,865テナント(調査期間延べ)

 2008年:397 2009年:790 2010年:852 2011年:894 2012年:909

 2013年:987 2014年:872 2015年:637 2016年:524 2017年:523

 2018年:518 2019年:483 2020年:449 2021年:541 2022年:489

・<出社>1人あたりオフィス面積

 973テナント(調査期間延べ)

 2021年:497 2022年:476

計算方法

調査対象テナントの賃借面積を利用人数で割った値の中央値

備考

∙ 面積は契約上の賃借面積。執務室の他、エントランス(受付)、会議室、休憩室、書庫、倉庫、専用部内廊下などが含まれている。

∙ 在籍人数は、当該オフィスに籍を置いている人数。

∙ 出社人数は、調査時点で出社している平均的な人数。

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