2022.07.27
オフィスマーケットレポート 東京2022Q2
- ・ 今期(2022年4~6月期)の東京23区オフィスマーケットは、空室率は緩やかに上昇し、賃料は微減するなど、前期と同様の動きがみられた。
- ・ 空室率は前期から0.31ポイント上昇して3.91%となった。解約予告済み・募集中の面積を加えた募集面積率は前期から0.22ポイント上昇して6.31%となった。空室増減量は増加が17.5万坪、減少が14.4万坪と、9四半期連続で空室の増加が減少を上回った。空室在庫の減少割合を示す空室消化率は前期から1.9ポイント減少して24.8%と、2012Q2以来10年ぶりに25%を下回った。
- ・ 新規賃料の水準を示す新規成約賃料インデックスは前期から1ポイント下落の85となった。新規賃料が上昇した物件の割合から下落した物件の割合を引いた成約賃料DIは-3と、7四半期連続でマイナス圏となったものの、前期からは23ポイント上昇した。
- ・ 新規賃料と継続賃料の両方を含む支払賃料インデックスは前期から横ばいの100となった。
- ・ FRあり契約の平均FR月数は3.7ヶ月、2ヶ月以上付与率は56.1%、6ヶ月以上付与率は18.3%となった。
空室
図表1は、空室率と募集面積率(*1)の推移である(*2)。今期の東京23区の空室率は前期から0.31ポイント上昇して3.91%、募集面積率は前期から0.22ポイント上昇して6.31%となった。オフィス拡張の動きも出てきつつあるが、解約も増えており空室率・募集面積率ともに上昇している。
図表1:空室率・募集面積率(全規模)
図表2は、空室の増加面積と減少面積(空室増減量)の推移である。今期の空室増加面積は17.5万坪、空室減少面積は14.4万坪と、9四半期連続で増加面積が減少面積を上回った。人員増強に伴ってのオフィスの拡張移転や、今借りているビルよりもよいスペックのビルやZEB等の環境認証を受けたビルへの移転ニーズも増えてきているものの、それを上回るペースで空室が増加している。
図表2:空室増減量(23区・全規模)
図表3は、空室在庫(期初の空室在庫+期間中に発生した空室の総量)に対して、期間中に空室がどれだけ減少したかを割合で示す空室消化率の推移である。今期の空室消化率は24.8%と2012Q2以来10年ぶりに25%を下回った。昨年から移転に伴う一定の空室消化はされているものの、空室の増加が減少を上回り、在庫が積みあがっているため消化率は低水準となっている。
図表3:空室消化率
新規成約賃料
図表4は、新規賃料の水準を示す新規成約賃料インデックスの推移である。今期は85と、前期比で1ポイント下落、前年同期比で4ポイント下落となった。空室率が上昇しているため、契約交渉をするなかで賃料の値下げを受け入れる貸主もいるようだ。また、新規成約賃料インデックスの先行指標である (*3)成約賃料DI(図表6参照)が前期から23ポイント上昇しているため、今後賃料がどのような動きをするのか注視が必 要である。
図表4:新規成約賃料インデックス
図表5は、規模別の新規成約賃料インデックスの推移である。延床面積5,000坪以上の大規模ビルは83と前期から1ポイント上昇、延床面積300坪以上5,000坪未満の中小規模ビルは88と前期から4ポイント下落となった。
図表5:新規成約賃料インデックス(規模別)
図表6は、新規成約賃料の変化の方向性を示す成約賃料DI(賃料が上昇した物件の割合-下落した物件の割合)の推移である。今期は「-3」と7四半期連続で新規成約賃料が半年前と比べて上昇した物件より下落した物件が多いマイナス圏であったものの、前期からは23ポイントと大幅に増加した。
図表6:成約賃料DI
支払賃料
図表7は、新規賃料と継続賃料の両方を含む支払賃料インデックスの推移であり、新規成約賃料に比べると遅れて変化する性質をもつ。新規賃料が低下しているなか、今期は100と、前期から横ばいで推移した。
図表7:支払賃料インデックス
フリーレント
図表8は、新規契約のうちフリーレント(FR)を付与した割合(付与率)と、フリーレント期間の平均値(平均FR月数)の推移である。今期は、2ヶ月以上付与率が56.1%、6ヶ月以上付与率が18.3%と、2ヶ月以上のFRが増加した。また、「FRあり契約の平均FR月数」は3.7ヶ月と2021Q1以降、増加が続いている。2~3ヶ月のFRを付与するのが定番となってきているなか、6ヶ月以上のFRを付与する契約も増えており、FRを付与することがオフィスマーケットのなかで広く浸透しているようだ。
図表8:フリーレント
マーケット循環
図表9は、横軸に空室率、縦軸に新規成約賃料インデックスをとって四半期ごとにプロットしたものである。2005年以降左上方向(空室率低下・賃料上昇)に移動し、2008年以降右下方向(空室率上昇・賃料下落)へ移動、2010年以降再び左上方向(空室率低下・賃料上昇)へ移動、とマーケットが循環しながら推移する様子が観察できる。2013 年以降オフィス賃貸マーケットは回復期に あったが、2020Q2 に転換したとみられる。今期、空室率は上昇し、新規成約賃料インデックスは下落したため、右下方向に移動した。
図表9:マーケット循環
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