2022.01.26
オフィスマーケットレポート東京2021Q4
- ・ 今期(2021年10~12月期)の東京23区オフィスマーケットは、空室率の上昇は緩やかになり、賃料は微増するなど、前期まで続いた傾向と異なる変化がみられた。
- ・ 空室率は前期と比べ0.17ポイント増加して3.58%となった。解約予告済み・募集中の面積を加えた募集面積率は5.80%と、前期から0.11ポイント減少した。空室増減量は増加が16.2万坪、減少が14.6万坪と、7四半期連続で空室の増加が減少を上回った。空室在庫の減少割合を示す空室消化率は前期から0.6ポイント減少して26.5%であった。
- ・ 新規賃料の水準を示す新規成約賃料インデックスは前期から2ポイント上昇の88となった。新規賃料が上昇した物件の割合から下落した物件の割合を引いた成約賃料DIは前期から横ばいで-31となり、5四半期連続でマイナス圏となった。
- ・ 新規賃料と継続賃料の両方を含む支払賃料インデックスは前期から3ポイント下落の100となった。
- ・ 全契約の平均フリーレント月数は2.1ヶ月、フリーレント付与率は72.8%となった。
空室
図表1は、2011年からの東京23区、都心5区(中央区、千代田区、港区、渋谷区、新宿区)、周辺18区の空室率の推移である。今期の空室率は23区で前期から0.17ポイント増加して3.58%、都心5区で0.16ポイント増加して3.57%、周辺18区で0.20ポイント増加して3.60%であった。23区、都心5区、周辺18区のすべてのエリアで7四半期連続して空室率は上昇した。都心5区と周辺18区の空室率の差は前期同様ほぼない水準まで縮小している。空室率は前期から微増であったが、上昇の度合いは緩やかになってきており、今後の動向に注目する必要がある。
図表1:空室率(エリア別)
図表2は、2011年からの東京23区の全規模ビル、大規模ビル(延床5,000坪以上)、中小規模ビル(延床300坪以上5,000坪未満)の空室率の推移である。今期は大規模ビルで0.17ポイント増加して3.54%、中小規模ビルで0.17ポイント増加して3.62%であった。
図表2:空室率(規模別)
図表3は、募集面積率と空室率の推移である。募集面積率とは、退去済みで即入居可能な空室(現空)面積と解約予告済み・募集中(テナント退去前)の面積の合計を分子に、貸室面積を分母とした指標である。今期の募集面積率は5.80%と、前期から0.11ポイント減少した。空室率が上昇する一方で、募集面積率が減少している背景としては、解約が減っていることや、テナントの解約予告から後続テナントが決まるまでの期間が短くなってきていることなどが考えられる。
図表3:募集面積率(23区・全規模)
図表4は、空室の増加面積と減少面積(空室増減量)の推移である。今期の空室増加面積は16.2万坪、空室減少面積は14.6万坪と、7四半期連続で増加面積が減少面積を上回った。今期は前期に比べ新規竣工したオフィス面積が少なかったため、空室の増加面積は前期より減った。一方で、前年同期と比較すると空室の減少面積は約2倍に増加している。一部では、コロナ後を見据えた本社オフィスの見直しを目的とした移転もみられており、コロナ禍で停滞していたオフィス移転が動き始めているようだ。
図表4:空室増減量(23区・全規模)
図表5は、空室在庫(期初の空室在庫+期間中に発生した空室の総量)に対して、期間中に空室がどれだけ減少したかを割合で示す空室消化率の推移である。今期の空室消化率は26.5%と引き続き低水準で推移しているものの、前期からの減少幅は0.6ポイントと緩やかである。
図表5:空室消化率
新規成約賃料
図表6は、新規賃料の水準を示す新規成約賃料インデックスの推移である。今期は88と、前期比で2ポイント上昇、前年同期比で4ポイント下落となった。6四半期ぶりの上昇であるものの上昇幅は小さく、年単位でみると依然として下落している。空室を埋めたい貸主が賃料を下げて提示するケースもいまだ多く、成約賃料DIがマイナス圏であることに加え、フリーレントが増加していることからも、賃料上昇トレンドに転じたと判断するのは早計だろう。
図表6:新規成約賃料インデックス
図表7は、規模別の新規成約賃料インデックスの推移である。延床面積5,000坪以上の大規模ビルは87と前期から4ポイント上昇、延床面積300坪以上5,000坪未満の中小規模ビルは90と前期から1ポイント下落となった。
図表7:新規成約賃料インデックス(規模別)
図表8は、新規成約賃料の変化の方向性を示す成約賃料DI(賃料が上昇した物件の割合-下落した物件の割合)の推移である。今期は「-31」と前期から横ばいで推移しており、5四半期連続で新規成約賃料が半年前と比べて上昇した物件より下落した物件が多いマイナス圏となった。
図表8:成約賃料DI
支払賃料
図表9は、新規賃料と継続賃料の両方を含む支払賃料インデックスの推移であり、新規成約賃料に比べると遅れて変化する性質をもつ。契約更新時の継続賃料の減額や最近の新規賃料の低下などにより、今期は100と、前期比で3ポイント下落した。
図表9:支払賃料インデックス
フリーレント
図表10は、新規契約のうちフリーレント(FR)を付与した割合(付与率)と、フリーレント期間の平均値(平均FR月数)の推移である。今期は1日以上付与率が72.8%、6ヶ月以上付与率は12.9%であった。また、「FRあり契約の平均FR月数」は2.9ヶ月、「全契約の平均FR月数」は2.1ヶ月であった。付与率、平均FR月数ともに伸びており、空室率上昇による危機感からフリーレントを付与することでテナントを誘致しようとする動きが広まっているようだ。
図表10:フリーレント
マーケット循環
図表11は、横軸に空室率、縦軸に新規成約賃料インデックスをとって四半期ごとにプロットしたものである。2005年以降左上方向(空室率低下・賃料上昇)に移動し、2008年以降右下方向(空室率上昇・賃料下落)へ移動、2010年以降再び左上方向(空室率低下・賃料上昇)へ移動、とマーケットが循環しながら推移する様子が観察できる。
図表11:マーケット循環
2013年以降オフィス賃貸マーケットは回復期にあったが、2020年第2四半期に転換したとみられる。今期、空室率、新規成約賃料インデックスはともに上昇したため、右上方向に移動した。
<TOPIC>エリア別・規模別の募集面積率
TOPICとしてエリア別、規模別の募集面積率の推移をみてみる。図表12は、2011年からの東京23区、都心5区、周辺18区の募集面積率の推移である。今期の募集面積率は都心5区で0.07ポイント減少して5.96%、周辺18区で0.20ポイント減少して5.32%であった。エリアに関わらず、募集面積率は減少した。
図表12:募集面積率(エリア別)
図表13は、2011年からの東京23区の全規模ビル、大規模ビル(延床5,000坪以上)、中小規模ビル(延床300坪以上5,000坪未満)の募集面積率の推移である。今期は大規模ビルで0.18ポイント減少し6.30%、中小規模ビルで0.02ポイント減少して5.24%であった。
図表13:募集面積率(規模別)
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