2021.05.19
オフィスビルエネルギー消費量及びコスト調査 (2020年12月まで)
~エネルギー単価、エネルギー消費量、コストともに減少~
ザイマックス不動産総合研究所は、首都圏オフィスビルを対象に、「オフィスビルエネルギー消費量及びコスト調査」を2010年1月から継続的に実施しており、昨年5月に2019年12月までの結果を発表した。今回は、2020年12月までのオフィスビルエネルギー消費量及びコストについて調査した。また、エネルギー消費量の前年比変化が大きいオフィスビルに対しヒアリングも行ったのでその結果に関しても公表する。
なお、2010年12月時点の数値を100としてエネルギー消費量及びコストを指数化し表記している。
- ■エネルギー消費量:
- 前回調査(2019年12月まで)から4pt減
- ■エネルギー単価:
- 前回調査(2019年12月まで)から13pt減
- ■エネルギーコスト:
- 前回調査(2019年12月まで)から14pt減
1. オフィスビルエネルギー及びコストの12ヶ月平均値の推移
【図表1】はエネルギー消費量・単価・コストの12ヶ月移動平均の推移である。エネルギー消費量(破線)は前回から4pt減、エネルギー単価(点線)は前回から13pt減、エネルギーコスト(実線)は14pt減であった。
【図表1】エネルギー消費量・単価・コストの過去12ヶ月平均値の推移
2. エネルギー消費量・単価・コストの年平均の推移
【図表2】はエネルギー消費量の推移を示している。2020年平均は118.5MJ/㎡・月(1,422MJ/㎡・年)と、2010年比で約29%減少しており、ここ10年で最低値であった。また、2019年比では約5%(78MJ/㎡・年)の減少である。
【図表2】エネルギー消費量(MJ/㎡・月)の推移
【図表3】はエネルギー単価の推移を示している。単価は2017年以降上昇を続けていたが、2020年の平均単価は1.83円/MJと前年に比べ0.22円下落した。エネルギー単価が下落した要因としては、原油価格の下落に伴う電力会社の燃料調整費及びガス会社の原料調整費が低下したことがあげられる。
【図表3】エネルギー単価(円/MJ)の推移
【図表4】はエネルギーコストの推移を示している。2011年の東日本大震災以降、増加傾向にあったコストは2015年に下落に転じた。2018年に一時上昇がみられたものの、2019年以降は再び下落し、2020年は214.2円/㎡・月であった。
【図表4】エネルギーコスト(円/㎡・月)の推移
3. TOPIC
前述のとおり、全体のエネルギー消費量に関しては前年比で減少しており、2010年以来、最低値になっていることがあきらかとなった。しかしながら、なかには消費量が増加したビルもあるなど、消費量の増減やその変化の大きさについては、ビルごとに違いがあった。そこで、その変化の要因について、個別にヒアリングを行い、TOPICとしてまとめた。
● テナント企業が出社率を抑えた働き方をしていたためエネルギー消費量が減少した。主に、IT企業や外資系企業では出社率をほぼ0%近くまでに落としていた。出社率が下がるに伴い残業も減り、空調の時間外利用のエネルギー消費量も減少した。
● 最低限の空調や電灯は必要であるため、エネルギー消費量は出社率に比例して減少しなかった。
● 特段の省エネの施策は行っていないが、テナントの出社率が下がったため、エネルギー消費量は減少した。
● 出社人数に応じ、使用するオフィスフロアを制限するテナントもあったためエネルギー消費量は減少した。
● 業種によっては、出社率を抑えられず、換気を十分に行うことで感染予防をしているテナントもいた。そのため空調を前年より多く使用し、エネルギー消費量が増加した。
- 2009年4月~2020年12月(141ヶ月)
- ザイマックスグループが運営する首都圏の一般的な賃貸オフィスビルのうち、
- 有効なデータが得られた約100棟
- A 各月のエネルギー消費量・エネルギー単価・エネルギーコスト
- ① ビル毎に電気・ガス・熱の消費量及び支払金額(税抜)を集計
- ② ①の各エネルギー消費量をMJ(一次エネルギー量)に換算し、合計する
- (換算係数は下記を使用)
- 電気:9.76MJ/kWh、都市ガス:45MJ/m3、冷水・温水・蒸気:1.36MJ/MJ
- ③ エネルギー消費量( MJ / ㎡・月 )
- ⇒②で求めた消費量合計を、空室を除いた延床面積で除す
- エネルギー単価( 円 / MJ )
- ⇒①で求めた支払金額合計を、②で求めた消費量合計で除す
- エネルギーコスト( 円 / ㎡・月 )
- ⇒①で求めた支払金額合計を、空室を除いた延床面積で除す
- ④ ③で求めたそれぞれについて、調査対象の平均値を求める
- B 12ヶ月平均値
- ① 各月について、Aで求めた消費量・単価・コストの過去12ヶ月間の平均値を算出
- ② 2010年12月時点の数値を100として指数化
- ・ 本データの「月」はエネルギー供給会社の検針作業上の月で、ビル毎・供給会社毎に異なる
- ・ 本調査では、継続性・正確性を期すため、空室を除いた延床面積を用いている
調査期間
調査対象
算出方法
備考
- ザイマックス不動産総合研究所
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