マーケット指標

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2014.09.19

ザイマックスフリーレント調査 四半期版を公表

~フリーレント付与率、平均月数ともに減少傾向が鮮明に~

ザイマックス不動産総合研究所は、2012年度より実施しているフリーレント調査について集計方法などを見直し、今後、四半期ごとにフリーレント付与率および平均フリーレント月数として公表する。

本調査はザイマックスグループが独自に収集した成約データを用いて、新規入居契約におけるフリーレントの実態を調査したものである。いままで年度版(2012年度、2013年度)として、フリーレント付与率(新規契約において2ヶ月以上のフリーレントが付与された割合)及びフリーレント指数(平均フリーレント期間を指数化した指標)を公表1してきたが、集計方法を見直し、四半期ごとに公表することとした。併せて、フリーレントの全体像をより鮮明に捉えるため、フリーレント付与率は新規契約において1日でもフリーレントが付与された契約から2か月以上、6か月以上のものまでその割合を、また平均フリーレント月数は集計された月数を公表する。

1:前回調査:2014年7月15日公表「2013年度のフリーレントは横ばい(東京23区)」参照

【図表1】新規契約におけるフリーレントの推移(東京23区)

【図表1】新規契約におけるフリーレントの推移(東京23区)

(直近4四半期の結果)

    2013 3Q 2013 4Q 2014 1Q 2014 2Q 前期比
フリーレント
付与率
1日以上 64.8% 66.0% 69.1% 61.1% ▲8.0pts
2ヶ月以上 59.8% 61.3% 60.8% 53.2% ▲7.6pts
6ヶ月以上 38.7% 37.7% 34.5% 25.0% ▲9.5pts
平均フリーレント
月数
全契約 3.9 3.8 3.7 2.9 ▲0.8
FRあり契約 6.0 5.8 5.3 4.7 ▲0.6

※全期間の数値データは最後尾に掲載

図表1は、2002年1Qから現在までのフリーレント付与率(山グラフ)及び平均月数(折れ線グラフ)の推移である。

薄緑の山の高さが示すのは賃料免除期間が1日でもあったものの割合(2014年2Qは61.1%・図表1 ①)である。つまり、白い部分は賃料免除期間が全くなかった契約の割合となる。これを見るとマーケットが好調な時期(2007年、2008年頃)であっても3~5割程度の契約にはフリーレントが発生していたことがわかる。このように、フリーレントはある程度慣行化しているといえよう。

また、薄緑の山のうち、2ヶ月以上の賃料免除期間がある契約の割合が緑の山の高さ(同53.2%・図表1 ②)、6ヶ月以上あるものがオレンジの山の高さ(同25.0%・図表1 ③)である。2ヶ月以上のフリーレントは値下げの意味合いが強く、市況が悪化している時期にはこれらの割合が大幅に増えている。

折れ線グラフは平均フリーレント月数を表す。赤の実線が賃料免除期間のない契約も含む、すべての契約を対象とした平均値(図表1 ④)であり、グレーの破線はフリーレントがある契約のみを対象とした平均値(図表1 ⑤)である。前者は全体の傾向を見ることに適している一方で、後者は付与されたフリーレントの特徴を掴むのに適している。

フリーレントの推移:足下の動き

2012年以降、マーケットの回復に伴いフリーレント付与率は大幅な減少傾向にあったが、2013年に入り一時停滞した。この背景には、オフィス需要が回復する局面において、一定期間のフリーレントをつけて割安感を出し、早期に稼働率アップを狙うオーナー心理があったと考えられる。

また、直近の特徴として、フリーレントがある契約の平均月数(図表1 ⑤)がないものも含めた全契約の平均月数(図表1 ④)に比して高水準で推移していることが挙げられる。これは、全体としてフリーレントを付与する割合は減ってきている一方で、1年から1年半という長期のフリーレントを付与する物件があるためだ。テナントを確保するために長期のフリーレントが必要な物件と、そうではない物件とのばらつきが広がっている(いわゆる「二極化」)と読み取れよう。空室率の高い物件の中には長期のフリーレントを付けて稼働率を大幅に上げた例もある。

しかし、足下の2014年2Qはフリーレント付与率、平均月数ともに大幅に下落している。空室率が低下し、需要が強まる中においても早期に入居率を高めるためにフリーレント付与をインセンティブとしてテナントを誘致する動きがひと段落したとみられる。

フリーレントの意義

多くの賃貸借契約において、契約開始日と賃料発生日にはタイムラグがあり、この差がフリーレントである。諸外国においてはインセンティブ(Insentive)やコンセッション(Concession)といった賃貸借慣行として認められる。日本においては、もともと新事務所へ移転する際に二重に発生してしまう賃料を、新事務所のほうで免除する意味合いが強い。フリーレントの付与は慣行的に行われており、マーケットの良し悪しに関わらず一定の割合で行われている。但し、事務所移転時における「賃料の二重払い」期間は概ね2か月程度であり、それを超えるフリーレントは実質的な賃料の「値下げ」要素が強く、市況を反映するものとなる。

一方で、フリーレントは賃料とともに成約条件を構成する要素の一つであり、そのため単体では正確にマーケットを掴むことができない。賃料とフリーレント、両方の側面から見ることで、マーケットの実態を的確に捉えることが可能となる。

ザイマックス新規成約賃料インデックスとフリーレント

フリーレントと弊社が公表した新規賃料指数(ザイマックス新規成約賃料インデックス2)を比較したものが図表2である。賃料水準を表す新規賃料インデックスと、その賃料における一定の免除を表すフリーレントとの間には関連性があることが読み取れる。関連性が際立つ3つの時期についてそれぞれ特徴を見てみる。

2:2014年9月19日公表「ザイマックス新規成約賃料インデックス」参照

【図表2】フリーレントと新規成約賃料インデックス

【図表2】フリーレントと新規成約賃料インデックス

I 2003年問題の終焉期

2003年問題が解消されるに従い、マーケットは回復傾向を見せ始めた。しかし賃料水準はすぐには好転せず、しばらく横ばいの状態が続く。一方でフリーレントの減少は顕著であり、実質の賃料は上がっていると言える。

II リーマンショック時

マーケットの下落時には賃料、フリーレントとも同時に悪化に転じている。

III アベノミクス

低迷期を脱し、マーケットは回復しはじめるが、やはり賃料水準の回復は当初緩やかであるのに対し、フリーレントは先行して減少傾向を見せている。市況が回復しても表面賃料を上げづらい空気感の中で、フリーレントが実質賃料を回復させる調整弁の役割を担っていると理解できる。

ザイマックス不動産総合研究所では、今後も成約賃料の動向とフリーレントを併せて見ていくことにより、より鮮明にマーケットの実態を把握する材料を世の中に提供していきたいと考える。

データの概要・分析方法

名称 ザイマックスフリーレント調査(フリーレント付与率・平均フリーレント月数)
対象物件 東京23区に所在するオフィスビル
対象時期 2001年4月1日~2014年6月末(以降、四半期毎に集計・公表)
データ数 毎期平均150件(直近の2014年2Qは252件)
集計方法 フリーレント期間 契約開始日と賃料発生日の間の日数
フリーレント付与率 新規契約(館内拡張・再契約などを除く新規入居契約)のうち、賃料免除期間のある契約の割合
平均フリーレント月数 全契約 賃料免除期間がないものも含む、すべての契約におけるその期間の単純平均
FRあり契約 賃料免除期間があるものにおけるその期間の単純平均

(参考)全期間の数値データ

時期 ①フリーレント付与率
(1日以上)
②フリーレント付与率
(2ヶ月以上)
③フリーレント付与率
(6ヶ月以上)
④平均フリーレント月数
(すべての契約)
⑤平均フリーレント月数
(FRのある契約)
2002Q1 46.1% 14.6% 0.0% 0.8 1.7
2002Q2 46.1% 18.0% 0.0% 0.9 1.9
2002Q3 44.8% 19.8% 0.0% 0.9 2.0
2002Q4 48.5% 22.2% 1.0% 1.0 2.1
2003Q1 48.5% 25.3% 1.0% 1.1 2.3
2003Q2 57.4% 31.9% 2.1% 1.4 2.5
2003Q3 68.9% 40.2% 5.7% 1.9 2.8
2003Q4 70.5% 49.6% 8.5% 2.3 3.3
2004Q1 78.0% 58.3% 12.9% 2.7 3.4
2004Q2 75.0% 55.3% 12.9% 2.6 3.4
2004Q3 77.2% 55.3% 12.2% 2.5 3.3
2004Q4 78.2% 52.1% 10.1% 2.3 2.9
2005Q1 76.2% 47.5% 6.6% 2.0 2.6
2005Q2 81.1% 50.8% 5.7% 2.1 2.6
2005Q3 80.0% 50.4% 3.5% 2.0 2.5
2005Q4 78.6% 48.2% 1.8% 1.9 2.4
2006Q1 71.6% 40.5% 0.0% 1.6 2.2
2006Q2 66.7% 34.1% 0.0% 1.3 2.0
2006Q3 62.5% 27.7% 0.0% 1.1 1.8
2006Q4 55.3% 22.8% 0.0% 0.9 1.7
2007Q1 53.8% 19.8% 0.0% 0.8 1.5
2007Q2 51.0% 17.3% 0.0% 0.8 1.5
2007Q3 44.1% 14.4% 0.0% 0.7 1.5
2007Q4 46.0% 11.3% 0.0% 0.6 1.3
2008Q1 44.4% 8.9% 0.0% 0.6 1.3
2008Q2 36.2% 8.6% 0.0% 0.5 1.3
2008Q3 40.4% 14.6% 0.0% 0.7 1.6
2008Q4 42.0% 16.5% 0.5% 0.8 1.8
2009Q1 44.1% 22.3% 1.1% 0.9 2.1
2009Q2 61.4% 37.0% 2.6% 1.6 2.6
2009Q3 70.2% 50.5% 5.9% 2.1 3.1
2009Q4 79.4% 65.6% 9.0% 2.7 3.4
2010Q1 84.5% 72.5% 13.0% 3.2 3.7
2010Q2 83.4% 74.3% 18.2% 3.4 4.0
2010Q3 85.9% 76.5% 25.3% 3.8 4.4
2010Q4 86.0% 76.2% 34.9% 4.3 5.0
2011Q1 84.4% 74.9% 35.9% 4.2 5.0
2011Q2 85.1% 76.4% 43.5% 4.5 5.3
2011Q3 88.2% 78.2% 48.8% 4.8 5.4
2011Q4 87.9% 79.6% 52.2% 4.8 5.4
2012Q1 86.2% 77.8% 56.3% 5.0 5.8
2012Q2 77.5% 69.8% 48.4% 4.4 5.7
2012Q3 70.7% 66.3% 42.0% 4.1 5.7
2012Q4 67.0% 60.8% 37.1% 3.8 5.7
2013Q1 64.7% 60.8% 36.3% 3.8 5.8
2013Q2 67.3% 63.8% 38.7% 4.1 6.1
2013Q3 64.8% 59.8% 38.7% 3.9 6.0
2013Q4 66.0% 61.3% 37.7% 3.8 5.8
2014Q1 69.1% 60.8% 34.5% 3.7 5.3
2014Q2 61.1% 53.2% 25.0% 2.9 4.7
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