2025.06.02
ビルオーナーの実態調査2025①全体集計
~業況は回復するもコストの増加が大きな不安~
ザイマックス総研は、2015年から早稲田大学建築学科石田航星研究室と共同で、全国の賃貸ビルを保有する企業(ビルオーナー)を対象に定期的にアンケート調査を行い、賃貸ビル事業の業況や今後の見通し、ビルを取り巻く環境変化への対応や課題などについて継続的に分析を行ってきた。本年度は全体集計および回答企業の規模別で比較し、それぞれの集計結果をまとめたレポートを公表する。本ページは全体集計の<概要版>として一部を抜粋したものである。なお、同日公表の「ビルオーナーの実態調査2025②企業規模による比較」では企業の売上で分けた結果をまとめて公表している。
- ・ 賃貸ビル事業の直近1年間の業況は、良いと考えるビルオーナーが6割を超えた。
- ・ 直近1年間の収入は「増加した」が33%となった。支出は「増加した」が65%となり、コロナ禍以降増加傾向が続いている。
- ・ 今後の見通しは、短期的には楽観派の割合が悲観派を上回っているが、中長期的には悲観派が楽観派を上回った。
- ・ 今後のビル事業における不安について、「ビルの老朽化」が最も多く、次いで「コストの増加」、「ビルの物理的な寿命」となった。
- ・ ビルの価値向上のため何らかの施策を行う上で支障となることは、「多額の投資が必要となる」が最も多く、次いで「費用対効果が見込めない、わからない」、「ビルの物理的な寿命」となった。
- ・ 行政に期待することは、「税金の負担軽減」が最も多く、「耐震や省エネ対応などの補助金・施策の拡充」、「建替え時の容積率の緩和」と続いた。
<調査概要>
調査期間:2025年3月~4月
調査対象:東京商工リサーチ(TSR)データより抽出した計23,830社
【売上】1,000万円以上(東京都のみ3,000万円以上)
【業種】賃貸事務所業を「主」または「従」(1位または2位に登記)
とする企業
有効回答数:1,020 件(回答率 4.2%)
調査地域:全国(東京都および全国政令指定都市)
調査方法:郵送およびメール送付による
topic 1
賃貸ビル事業の直近1年間の業況についてきいたところ、良いと考える(「良い」「やや良い」の合計)ビルオーナーが6割を超えた【図表1-1】。
直近1年間の収入は、「増加した」が33%となり、「減少した」(14%)を大きく上回った。一方、支出は、「増加した」が65%となった【図表1-2】。
【図表1-1】直近1年間の業況(n=1,020)
【図表1-2】直近1年間の賃貸ビル事業の収支(n=1,020)
topic 2
今後の短期的(今後3年程度)、中長期的(5~10年後)の賃貸ビル事業の見通しをきいた。短期的には、楽観派(*)の割合が悲観派を上回り、逆に中長期的には、悲観派が楽観派を上回る結果となった【図表2-1】。
今後の賃貸ビル事業における不安については、「ビルの老朽化」が72%で最も多く、次いで「コストの増加」(67%)、「ビルの物理的な寿命」(50%)となった【図表2-2】。特に、「コストの増加」においては、建設・修繕費の高騰や金利の上昇、人手不足などの影響が大きいと考えられる。
【図表2-1】今後の見通し(n=1,020)
【図表2-2】今後のビル事業における不安(n=1,020)
topic 3
建設費が高騰するなか、建替えをせず今後もビルを使い続けたいと考えるビルオーナーは多いと考えられる。そこで、ビルの価値向上のため何らかの施策を行う上で支障となることをきいた【図表3-1】。「多額の投資が必要となる」(56%)が最も多く、次いで「費用対効果が見込めない、わからない」(37%)、「ビルの物理的な寿命」(32%)となった。
さらに、行政に期待することもたずねたところ、「税金の負担軽減」(57%)が最も多く、「耐震や省エネ対応などの補助金・施策の拡充」(48%)、「建替え時の容積率の緩和」(31%)と続いた【図表3-2】。
【図表3-1】ビルの価値向上のための施策を行う上で支障となること(n=1,020)
【図表3-2】行政に期待すること(n=1,020)
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